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濁った瞳のリリアンヌ  作者: 天界
第一部 第3章 2年目 中編 1歳
55/250

53,魔闘演2日目のち大歓声



 翌日。魔闘演2日目。


 朝起きるといつものように、掃除をしているエナを眺めていると尿意が来た。

 我慢しつつエナを呼ぶと、すぐに察してくれてオマルの下へ連れて行ってくれた。

 オマルはすでにベビールームに常備してあり、すぐにパジャマのズボンとオムツも脱がせて貰う。

 まだ我慢は出来ている。今日はイケル気がする!


 オマルに座らせて貰うとそのまま放出。



 ふー……。



 こうして記念すべきオマル記念日は、満足感と共に迎えることが出来た。

 だが勘違いしないで欲しい。トイレトレーニングはオマルにおしっこが出来たら終わりではない。

 トイレトレーニングとは、オムツをしっかりと外す所まで行ってトイレトレーニングなのだ。

 戦いの日々はまだ始まったばかり。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 昨日と同じ劇場で今日は魔闘演2日目を鑑賞する予定だ。

 昨日同様正装に着替える……もとい、着替えさせられる。


 今回は趣が異なり、半袖ワイシャツにネクタイ。胸に小さな花のブローチ。スカートはガーリーアンドゴージャスなチュチュスカート。ドット柄のふんわりしたタイプ。

 裾のひらひらレースが華やかなアクセントになり可愛らしい。

 どこからどう見ても女子学生スタイルだ。

 正装といえば正装なのだろう……。ちょっと納得がいかないが、むしろ見慣れた装いの気がするのは気のせいだろうか。


 女性陣大人組みの2人はどちらもタイトなパンツスーツ。

 すらっとした体躯のエナにはとても似合っている。まさにキャリアウーマン然とした格好良さだ。

 いつもアップにしている髪を今日は流している。


 アンネーラお婆様もパンツスーツで今日はメガネ着用だ。


 ていうかメガネなんて初めてみた。この世界にメガネが存在しているというのがびっくりだった。

 あったとしても片メガネ――所謂モノクル程度だと思っていただけに、耳に掛けるタイプの生前の世界でもありふれていた形のメガネとは思ってもいなかった。


 メガネを掛けたアンネーラお婆様は6倍増しくらいの凛々しさと可愛らしさだった。

 腰に手を当てて、メガネの端をクイッと持ち上げる仕草は、まさに女教師のイメージそのままだった。

 眩しすぎて直視できない輝きを放つお婆様に、平伏しそうなほど似合っている。

 完璧すぎるお婆様がさらに完璧になったと自信を持っていえよう。


 残った女性陣少女組のエリーは、やはりというかなんというか、自分と同じ半袖ワイシャツにチュチュスカート。

 胸につけているブローチの花の種類が違うくらいでまったく一緒だ。

 仲良し姉妹を絵に描いたようなお揃いっぷりだ。

 エリーが自身の服装選びを手を抜くとは思えないので、これは初めから狙ってやっていることなのだろう。

 背景に咲いている幻の花からもわかるように、素敵な笑顔で自分の隣に並んでいる。


 男性陣2人はというと、ローランドお爺様は大柄のその体躯に似合うテーラードジャケット。

 ボタンは留めずラフに着こなしている。下に着たワイシャツも首下のボタンを留めずに楽にしている。

 もちろんネクタイはつけていない。ラフな中にもフォーマルさが滲み出ているのが不思議だ。


 テオもワイシャツにネクタイ、ゆったりとしたスクールパンツ。

 胸にはやはりブローチが留めてあり、柄は苗木だった。おそらくアシラの木なのだろう。


 6人が並ぶと入学式にでも行くかのようだ。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 昨日と同じボックス席に着くと、階下は昨日同様の賑わいだ。

 今日は自分達が入ってきても特に静かにする必要もないらしい。予めそういう通達でもされていたのだろうか。

 今は4年に1度のお祭り中ということもあるのだろう。

 昨日ローランドお爺様も演説で労うような発言を行っていたし、つまりはそういうことなんだろう。


 席についてほとんど待つこともなく、銀の眼が活性化し映像が映し出されたようだ。

 今日はさすがに微調整とかいらないらしい。昨日10ハルス(時間)くらい無事に見れていたのだから当然かもしれない。もしくは、事前に調整を済ませていたか。

 実況のアナウンスが今日の競技内容を伝えていたが、事前にアンネーラお婆様に教えてもらっていたから知っている。

 今日は団体戦だ。


 もちろん、クレアも出る。それどころかアレクも出る。

 両親はオーベント王国代表チームという、まんまなネーミングで登録している。


 団体戦は1~5人まで自由に登録できるチーム戦だ。

 チーム戦なので、個人名ではなくチーム名を登録する。

 チーム名も公序良俗に反しない名前ならなんでもいいそうだ。

 お婆様がパンフレットらしき物を見て面白い名前があったと教えてくれた。


" エクス "


 なんとこの名前、例の無機物とか2本足で立たない生物なんかが立ち上がるストーリーの作者のペンネームだ。

 作者本人ではないそうだが、きっとファンか何かなのだろう。

 自分の好きな名前をつけられるため、店の名前をつけて資金を出してもらうなどの宣伝目的にも使われるそうだ。

 まぁ無様に負けたら逆に信用が落ちるという諸刃の剣ではあるわけだが。

 だが、大半はまともな……いやそれほどまともでもない、中二溢れる名前が多い。

 例えば、空翔る天馬とか、闇の剣とか、聞いててゾワゾワしちゃう名前が多い。

 これらに比べたらオーベント王国代表チームはましな部類に思う。無難とはとてもいい言葉だ。無難最高。


 ちなみにルールに関しては個人戦とあまり変わらない。

 せいぜいが試合時間が5リン()から15リン()になり、最大5人まで同じチームのメンバーが戦える、つまりは最大で10人が舞台で戦うということだ。

 あとは全員が身代わり魔道具でダメージを肩代わりされる代わりに、身代わり魔道具が全損したら強制的に場外に弾き出されて麻痺状態になるらしい。

 団体で戦うので、そういった全損後の措置がないと反則行為が罷り通ってしまう可能性があるからということだ。



 試合は15リン()と個人戦より長くなっているが、その分人数が5倍だ。

 団体戦特有の駆け引きや連携が見所だろう。銀の眼の映像が見えない自分は解説を聞きながら音で判断するしかないが。


 1試合目、2試合目と時間いっぱいかけて判定に持ち込まれた。

 どうやら団体戦は基本的に時間いっぱいまで相手にダメージを蓄積させ、判定に持ち込むのが一般的らしい。

 5対5という微妙な人数に加えて、15リン()しかない試合時間では全員を倒すのは難しいようだ。

 1人切り崩しても4人いるので、2人くらい5リン()程度で倒せないと全滅させるのは難しい。

 本選出場人数が25チームなので、試合数自体は個人戦と比べると少ないものの倒す人数が5人になるので、魔道具を連続使用していては後の試合に影響をきたすということらしい。


 最初の9試合は判定狙いの地味めの試合内容になるのが通例だそうだ。

 その言葉通り、9試合目までは全て判定で勝敗が決まった。

 ちなみに、団体戦は前大会1位~3位と4カ国の特別枠チームがシードとなる。シード枠が7枠と多いが、これも通例らしい。

 個人戦と違い、団体戦はクレアとアレクのチーム名からわかるように国を代表したチームとなるのが4カ国代表のチームだ。

 その他のチームは、個人戦同様の厳しい予選を潜り抜けてきた猛者達だ。

 だが4カ国代表チームも代表になるだけあり、相当な実力者揃いのようだ。

 ちなみに予選の参加登録は個人戦同様1年半前から始まり半年前から予選が開始、振るいに掛けられ選出される。団体戦の登録者は約200チーム、約900人ほどが予選を競い合ったそうだ。1000人じゃないのは最大が5人なだけだからだ。1人だけのチームもあったそうだが、無論本選までは残っていない。

 本選出場チームは全て5人のチームだ。数は力なりを体現しているといえる。


 10試合目がクレアとアレクのチームであるオーベント王国代表チームだったが、安定した試合運びで判定で勝利を掴んでいる。

 団体戦では個人戦で猛威を奮った白焔は使えず、連携を重視した戦闘方法だったようだ。

 白焔は術者を中心とした展開方式のために周りに仲間がいたりすると使いづらい、アンネーラお婆様からの解説ではそんな感じだった。

 使えなくはないようだが、それはクレア以外の4人が倒れた場合限定らしい。


 ちなみに、オーベント王国代表チームは前大会ではベスト8にすら残っていない。

 前大会1位を勝ち取った双子の小人族を含む、予選を勝ち抜いてきたチームに1試合目で当たり敗れた。

 その双子の小人族というのが曲者だったらしく、クレアの白焔を2人で正面から打ち破ったのだそうだ。

 単独では出来ない芸当だったらしいが、2人で、しかも双子だったからこそ出来たことらしい。最強と思われた白焔を正面から打ち破り団体戦優勝を勝ち取ったチームの双子は、今大会は長耳族と長毛族と小人族の国――サウドヘイト共和国の枠で出場している。

 チームメンバーが多少違っても3人以上が同じなら、前大会1位~3位までのチームのシード出場は問題ないらしい。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 11試合目の途中で尿意が来たが、無事我慢することに成功した。



「ばーば、ちーち」


「あらあら、偉いわねぇリリーちゃん。エリアーナさん」


「はい、さぁリリー今度こそオマルまで我慢しましょうね」


 すぐさまお婆様からエナに受け渡され、素敵装備のスカーレットさんが先行しゲストルームのドアを開けてくれる。

 これなら間に合うかもしれない。だが、油断はいけない。なんせいつ決壊するのかわからないからだ。



「リリー頑張って。もう少しだからね」



 エナの励ましに頑張ろうと思うが、どう頑張ればいいのかわからないのでとりあえず腹筋に力を入れて我慢し始める。

 だが、これがいけなかった。

 腹筋に力を入れた途端、小さな貯水タンクは決壊した。



 あー……。



「あー……」



 エナもすぐ気づいたようだ。

 湿り始めたオムツを確認して、残念そうな顔を一瞬だけした。でもすぐに優しい笑顔になって慰めてくれる。



「大丈夫よ、リリー。また次頑張ればいいんだから、ね?」



 赤ん坊相手に親はネガティブな顔をするのはあまりよくないらしい。赤ん坊というのは親の表情をよく見ているものだ。それで色んなことに気づく。

 だからネガティブな顔をすれば、赤ん坊もそれに気づき悲しくなる。その直前の行動なんかをその原因と結びつけることも多く、今のようなおしっこを我慢できなかった場合はそれ自体がプレッシャーになってしまうようなこともあるらしい。

 そのためにオムツをする期間が延びやすくなってしまうそうだ。

 エナはそのことをちゃんと知っているのかもしれない。だからこそ残念そうな顔も一瞬だけですぐに笑顔を向けてくれたのだろう。


 エナの笑顔にちょっとだけ安堵している自分がいるのだから、その効果は確実に大きい。



 次は腹筋に力を入れないで我慢しよう。

 でも我慢ってどうすればいいんだろう。生前むかしはおしっこの我慢なんて無意識レベルだったから、どう我慢したらいいのかまったくわからない。

 困ったものだ。



 手早くオムツを交換してもらい、またオマルに座る練習をしてから席に戻った。


 短時間だったので試合は1試合しか進んでいなかったが、この試合が終わったら昼休憩になるようだ。

 おしっこがいっぱい出るように、いつものより果実水を多めに飲んでいたのであんまりお腹が空いていない。

 放水したけど、お腹はたぷたぷ気味だ。



 今日のお昼はあんまり入らないかもしれないなぁ……。

 いつもより多く飲んでたけど、幼女の体じゃそんなに飲めなくてもお腹いっぱいになっちゃうんだよねぇ……。



 ちなみにお昼は昨日と同じくサンドイッチだったが、挟んである物が違っていて新鮮で美味しかった。

 昨日よりもたっぷり時間をかけてゆっくりと食べたので、戻った頃には試合がだいぶ進んでいた。

 今日はお昼寝するほど眠くなかったので、そのまま試合を聞き続ける事にした。


 例の双子を含むサウドヘイト共和国代表チームも順調に勝ち進んでいるようだ。大番狂わせはないらしい。


 我らがお母様とお父様のオーベント王国代表チームは、2試合目も時間いっぱいフルに戦い抜き無事勝利を納めた。

 これでベスト8である。前大会では苦渋を飲んだだけに周りの、特に階下の反応は激しかった。勝利の判定が確定した時には大歓声で劇場が揺れたほどだ。


 お婆様も普段ののほほん笑顔が更に眩しくなるほど微笑んでいた。

 よほど嬉しかったようだ。前大会がよほど悔しかったのだろう。



 その後の試合は大番狂わせもなく、順調に進み、サウドヘイト共和国代表チームが前大会1位になったチームをあっさりと下し、オーベント王国代表チームは準決勝を危なげなく勝ち抜き決勝進出を決めた。

 サウドヘイト共和国代表チームも順当に準決勝を勝ち抜き、決勝戦は大方の予想通りにオーベント王国代表チーム対サウドヘイト共和国代表チームとなった。


 その前に3位決定戦が行われたが、会場でも劇場でも盛り上がりは今日1番ひどいものだったのは仕方あるまい。

 次の決勝が前大会からの4年ぶりの雪辱戦となるのだから。



 今日一番の注目の1戦となった決勝戦は、予想とは少し違った形であっさりと決着がついた。

 開始直後にクレアの放った焔弓により、双子の片割れを一瞬で飲み込み戦闘不能にしたからだ。

 開始直後の一瞬の隙を的確に突くことができたからこその一撃だったらしい。

 アンネーラお婆様にお見事、とメガネをクイッと上げて言わしめた一撃だった。

 その直後の階下と会場の大歓声は先ほどより大きく劇場を揺らす凄まじいものだった。


 双子の片割れを失ったため、その後の試合展開はほぼ一方的なものだった。

 なんとも呆気ない幕切れだったが、会場も階下も大盛り上がりだった。開催国だからこその盛り上がりだろう。

 自国の代表が活躍しているんだ。しかも雪辱戦を圧倒的有利に進めている。興奮するなというのが無理だろう。


 程なくして15分経たずにサウドヘイト共和国代表チームは壊滅。

 団体戦優勝はオーベント王国代表チームが手にすることになった。



 4年振りの雪辱を果たしたことと、クレアの個人2連覇、団体優勝という偉業に劇場も会場も大歓声のまま、魔闘演2日目は幕を閉じた。




ダイジェスト2日目。


オマル記念日はあっさりと、です。

部屋だとこんなもんですよね。

肝心なのはお外なんかでちゃんと我慢できるかどうかです。


ご意見ご感想お待ちしております。


9/7 誤字修正

11/19 おかしかった文章修正

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