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濁った瞳のリリアンヌ  作者: 天界
第一部 第3章 2年目 中編 1歳
43/250

41,至宝のち究極



 踏み出した一歩。


 そしてその一歩から続くルートは、素敵装備(イヌミミ)のメイドさんの後ろを取るように回り込む形を取る。



 目標物は、彼女の尻尾。ふさふさで柔らかそうな滑らかな毛並み。至高の芸術品と遜色ない遥か高みの世界だ。


 そんな世界の宝をもうすぐ我が手にできる。

 興奮と期待と様々な感情をない交ぜにし、冷静な思考など当の昔に消し飛んでいたのは言うまでもない。


 だから気づかなかった。気づけなかった。

 エナの発した小さな声。



「ぇ……?」



 その小さな呟きにも似た声が耳に届いてはいたが、全ては目の前の宝に奪われた思考により右から左へと通過していった。



 一言で言うならば究極。



 手にした感触、肌触り、指の間をすり抜けるかのようなきめ細かい毛質。その全てが極限にまで引き絞られた最高の存在を主張する。

 感動。いや……そんなものは遥かに飛び越えた感情が自分の全てを支配していた。

 想像していたより遥かに素晴らしい存在に、心が完全に無になってしまったかのように、何も考えることができない。


 まさに衝動的といって過言ではない動きで、手にした究極の至宝――もふもふ尻尾に顔を埋める。

 直後に聞こえた " ひやぁあぇぇぁ " という小さな叫びには耳を貸すことなど不可能だった。

 もはや自分を止めることは誰にもできない。止めようものなど全て蹴散らしてくれる。


 手で感じることができた感触とは、まったく違う。全てを増幅するかのような奔流のような感触。最早言葉は無粋だった。

 さらさらのふわふわで暖かく……されど、熱すぎず触れているだけで負の感情など全て消し飛ばしてしまうほどの最高の感触だった。



 まさに最高のもふもふ様。



 31年と半分の人生において、これほどまでの感触は味わったことがない。断言できる。生前の世界ではこれほどの感触には到底出会えなかっただろう。



 もふもふ様に埋めた顔ですりすりする。



 匂いは甘く、そして美しい。美しい匂いなどという抽象的すぎる感想だったが、美しい匂いというものは確かに存在していた。今まで嗅いだ匂いとは一線を画す、素晴らしく煌びやかな、目を閉じればまさに明確に思い浮かべることができるほどの美しさ。それがこのもふもふ様から感じられた匂いだった。


 一体どれほどもふもふ様を堪能しただろうか。数分……いや数時間。あるいは数秒だったのかもしれない。時間の間隔が完全に消失するほど夢中になってしまった。


 こんなことは初めてだった。


 初めての感覚に全てを委ねてしまっていた。だが、気づいてしまった。



 もしかしたら、魔力で顔とか接触してる面を強化したらもっと……魔力的にも、もふもふ様を堪能できるのではないだろうか!



 誰も止めるものはいない。当然だ。全ては自分の思考の中で決定されたのだから。


 そして即座に実行されるは、今までで最高の集中力により圧縮された超高圧縮率の強化魔力。

 超高密度の魔力をもふもふ様に接している手の平、顔全体に満遍なく配置し、強化が完了する。



 そして得られたモノは……最早天にも届く言葉にできないナニカ。



 今まで感じられた素晴らしい感触をさらに数倍以上に増幅された、すでに至高の快感による拷問と表現するに相応しい凶悪さと恍惚とした時間。



 さいっこぅやでええええぇぇぇえ!!!

 あぁあぁ……人生って素晴らしい……。



 凶悪な快感に身を委ねている事しばし、気づいたら頭の上の方から変な声が聞こえていた。

 まるで押し殺したような涙交じりのような小さな声だった。ひぅとかあぅとかはぅとか時には色っぽい声で、まさに嬌声と呼ぶに相応しい声だったが、口を覆って塞ぎ、且つかみ殺しているかのようにくぐもって聞こえていた。



 恐る恐る顔を上げてみると、至宝の究極――もふもふ尻尾の持ち主のメイドさんは両手で顔を覆ってぷるぷる震えていた。



 やっべー! やっちまったー!?



 気づいた時には冷や汗が背中を一気に湿らせていた。

 もふもふ尻尾から名残惜しいが離れ、未だにぷるぷる震えながら顔を覆っているメイドさんの横に移動して顔を覗いてみるが、完全に泣いてしまっているように見える。



 あー……どないしょ……これは完全にやってしまったな。謝って許してもらえるかなぁ……



 目の前に広がる惨状に、恍惚の時間はすでに霧散してしまっている。取るべき行動は一つだけなので潔くすぐさま実行する。



「めーどしゃん……ごえんなしゃぃ」



 そういって深く頭を下げる。謝って許してもらえるならそれでいいが、無理かなぁと思う気持ちの方が大きかった。

 しかし、そんな思いは次のメイドさんからの言葉ですぐに打ち消される。



「ぇ……ぁ……そ、そんな頭を上げてくださいお嬢様!」



 下げた頭の上から聞こえてきた声に、チラっと上目遣いで見てみると顔を覆ってしくしくと泣いていたメイドさんはあたふたと、挙動不審になっていた。


 自分とエナやローランドお爺様やアンネーラお婆様の方を何度も見やり、可哀想なくらいに狼狽している。



 この子は今日だけでものすごい数、あたふたしたよね。



 主な原因は自分にあるのだが、そんな風に冷静に酷評してしまう。



 エ、エリアーナさまぁ……とメイドさんが泣きそうな顔でエナに助けを求めると、その声に完全に停止していたエナが再起動を果たす。



「ハッ! ぁ、ぇ……えっと……」



 再起動を果たしたはいいが、まだ状況をうまく処理できていないようだ。他の5人は全員まだ放心しているし、エナは立ち直りが早かった方だろう。



 しかし、すぐにエナがメイドさんに近寄り、小声で



「ね、ねぇ……獣族って尻尾が弱点なの……?」



 と聞いてきた。小声でもすぐ側にいる自分には丸聞こえだった。



「い、いえ……そんなことはないはずですけど……そ、その……お嬢様の……テ、テクニック? と、いいますか……はぅ」



 顔を真っ赤にしているのだろう恥ずかしそうにしながら、なんとかそこまで話すが、メイドさんはまた両手で顔を覆って俯いてしまう。その仕草は超可愛かった。男心を妙に擽るというか、実にいぢめたくなるいい表情だった。



 ジュルリという効果音が聞こえてきそうなほど、今の自分はきっとそんな表情をしているだろう。もちろん心の中でだ。無表情キャラは伊達じゃない。



「……そ、そう……なの……?」



 ちょっと顔が引きつっているエナだったが、すぐに " と、とりあえずあなたはもう戻りなさい " と命じるとメイドさんも、はぃ、と恥ずかしそうに小さく答えてそそくさと移動を開始しはじめた。


 隅の壁の方に移動するのかと思えた――真っ赤な顔をしているだろうメイドさんだったが、立ち止まらずにそのままドアを開ける仕草をして、部屋を出て行ってしまった。



 なんだか、悪いことしたなぁ……。

 でもちょー気持ちよかった。またもふらせてくれないかなー。



 嗜虐心を十分に擽る最高の顔をしてくれた、至宝にして究極のもふもふ尻尾を持つ彼女には、是非ともまた会いたいものだ。


 泣かせてしまったという罪悪感よりも、そちらの期待の方が遥かに大きくなってしまったが、そこは最早諦めてもらおうと、心の中で舌なめずりするのであった。






全国のもっふぃーさん達には満足いただけると思います。

ですが、もふりストさん達には、物足りないでしょう。


快感のあまりに失禁はぎりぎりしてません。



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