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濁った瞳のリリアンヌ  作者: 天界
第一部 第2章 2年目 前編 1歳
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26,妖精と反省会と


 魅惑のもふもふワールドへと至る作戦の第一号は失敗に終わった。


 生前の世界では " 失敗は成功の母 " という言葉があった。

 失敗した原因を究明し、対策し次に繋げる。

 失敗は成功を生むという意味を実現すべく、今回の原因を考えてみる。



 一つは、両親二人からの部屋からの外出禁止令。

 一つは、施錠音も、仕草もなしに掛かっていた鍵。



 禁止令に関しては、どうしようもない。

 両親を説得しようにも自分は1歳半の赤ん坊。

 言葉は喋れる、理解もできる。

 だが、それは自分とクティだけしか知らないこと。


 もふもふワールドのためにもこの制限を外したいところだが、それに伴う予想されるリスクは看過できないものがある。

 従って行動で示すしか、意思疎通の方法がない。

 両親二人とも仕事が忙しいのか、最近は滅多に帰ってこない。

 よって、すぐにどうこうできる問題ではない。



 もう一つはさらに難解だ。

 施錠音も、施錠の仕草も無しにドアを施錠しているのだ。

 外から鍵をかけているという可能性もあるかもしれないが、そこまでしなければいけない状況なら部屋から出ることなどもっと難易度が上がるのではないだろうか。


 なので、できれば考えたくない。


 施錠の理由を考えるよりは、施錠されていない状況を利用する方が建設的だ。

 この部屋には少ない人数ではあるが、毎日必ず出入りしている人は確かにいるのだから。







  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 結果から言えば、魅惑のもふもふワールドは手の届かない桃源郷だということがわかった。


 施錠されていない状況、つまりドアが開いている状態を利用すべく多くのミッションを実行に移した。

 その全てが失敗に終わったのは言うまでもない。



 ミッションNo,2 " おーぷんざどあーばいえな " エナが昼食を取りにドアを開けるタイミング。

 ベビーベッドに移され、行動不能。

 クティがドアの外から顔だけ出して、していた素敵な笑顔は当分忘れないだろう。



 ミッションNo,3 " ごーほーむぶらざーあんどしすたー " テオとエリーが帰ってきて部屋にくるタイミング。

 エナの手を掻い潜り、開いたドアまで行く前に障害物に足を取られテオに捕獲される。

 素早く行動した結果として、置いてけぼりになったクティがぷんすかしつつ腹を抱えて笑うという器用なことをしていた。



 ミッションNo,4 " かもんでぃなー " エナが夕食を取りにドアを開けるタイミング。

 エリーに抱かれたまま、脱出できず。

 今度は妖精様に事前に説明していたが、何もできなかったのでドアから出した素敵な笑顔は意識的に見ないようにした。



 ミッションNo,5 " れっつごーぶらざー " テオがお風呂に行く為にドアを開けるタイミング。

 ドアを開ける前にテオに捕獲され、エリーに引き渡される。

 捕獲された瞬間にニヤリと笑った、あの妖精の性悪な顔は今度魔力看板にして出し続けてやる。



 ミッションNo,6 " れっつごーしすたーとぅ " エリーがお風呂に行く為にドアを開けるタイミング。

 今日の数多くのミッションに気づいたのか、エナにしっかり拘束される。

 完全な拘束状態だったので、性悪妖精も諦めたのか特に反応もなかった。




 一体どうしてこうなった!

 ドアを潜るどころか、その手前まですらいけないではないか!


 最後のミッションなんて、エナに完全に勘付かれて何もさせてもらえなかった。


 これは日を置くしかないかもしれない。

 エナの警戒心が薄れた頃に再度突撃をかけるべきだろう。


 それに、今回のことで両親に話してくれるかもしれない。

 エナ自身は部屋の外に出てもいいのではないかと言っていたわけだしな!


 今日一日ドアの開くタイミングのほとんどに行動したのだから、行動で示すという項目だけは達成できたはずだ。



 あとは運を天に任せるのみ……。

 魅惑のもふもふワールドへ思いを馳せながら、その日は眠るのだった。







 夢の中では、もふもふの性悪妖精が手の届かないところを飛んで肩を竦め続けるという酷い悪夢を見せられたのだった。







  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






 翌日の寝起きは最悪だったのは言うまでもない。

 酷くシュールな悪夢を見たような気がしたが忘れることにした。



 完治のお墨付きを受けた後も寝泊りを続けている、未だ夢の中の妖精様を横目で見ながらそう思った。


 自分が目を覚ましたことに気づいたエナから、朝の挨拶と額に軽くキスされる。

 彼女はあまり頬にキスをしない。

 何かポリシー的なものでもあるのだろうか。


 クレアやテオやエリーは額でも頬でもあまり変わらずキスするのだが……アレクは言うまでもない。

 だが、未だ唇だけは死守している。



 まだ寝惚けているのか、どうでもいいことを思考していたらエナから昨日のことで釘を刺されてしまった。



「リリー……部屋から出てみたいのはよくわかったから、昨日みたいに無理やり出ようとしないでね?

 クレアには私から言ってあげるから。

 一人ではまだだめだろうけど、私が一緒なら多分大丈夫よ。

 だから約束して?ね?」


【いえすまむ】



 少し伸びてきた自分の髪の毛を柔らかいヘアブラシのような物で梳かしながら、優しく諭す。

 当然エナには見えない魔力文字だが、自分の心の表れを示すように出しておく。



「1歳半の子にこんなこと言ってもわかってもらえないんだろうけど、リリーは賢いもの!

 きっとわかってくれるよね?」


「あい」



 返事くらいならいいだろうと、短く一言いってこくりと頷いてみる。

 髪の毛を梳かしていたエナの手が、一瞬で石像と化したのかコキンと硬直する。



 しまった……まだ早かったか?



 そう思ってエナを振り返ろうとしたら。



「やああぁん!もう!リリーはなんて可愛いの!」



 ヘアブラシを放り投げて自分を抱き上げていやんいやんと、自分の頬とエナの頬をすりすりすりすり。



 やああぁんて……エナさんあなた可愛すぎですよ!



 騒ぎを聞きつけて、寝惚け眼のクティもエナが擦り付けている頬とは反対側で自分の頬をすりすりする。



【おはようクティ】


「おあーよーまたなんかしたのー?」



 まだ眠いですよもう少し寝かしてくださいよと、副音声が聞こえてきそうな寝ぼ助様だ。



【いつもの発作かなー】


「あー」



 ダブルすりすりはしばらくの間続くのだった。







  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






 朝食を食べた後、クレアとアレクの二人が揃って部屋にやってきた。

 久しぶりに会う二人に、抱擁とほっぺすりすりとキスの嵐の洗礼を受ける。


 ちょっと辟易した辺りで、お座りさせられ二人は並んで自分の前に座ると。



「リリー……私達はこれから一月ほど帰ってこれないわ……。

 ……でもね!あなたやテオやエリーのために精一杯頑張ってくるわ!」


「あぁ……可愛い可愛い俺のリリアンヌ……。

 ただでさえ、今まで会えない日が多かったのに……パパはまたおまえに一月も会えないよ……」



 二人とも悲しそうなのは一緒なのだが、意気込みの程が対照的だ。

 何に対して意気込んでいるのかはよくわからないが。



「ほら、アレクしっかりしなさい!

 あなたは私を守る役目と剣舞を披露する役目があるんだから。

 リリーのためにも格好悪いところなんて見せられないのよ!」


「う、うむ……そうだった。

 リリーよパパは頑張ってくるからな!

 パパの勇姿を見せられないのは悲しいが、その分4カ国一の座を勝ち取ってみせる!」


「その意気よ二人とも、リリーのことは私とテオとエリーに任せてしっかりやってきなさい!」



 凛々しいクレアとそれに勇気付けられたアレクが、拳を握って自身のやる気を漲らせる。

 その姿からは、魔力が炎のようにメラメラと吹き上がる。


 アレクが始めて放出した魔力は炎のようだった。



 強い感情の発露で無意識に魔力が放出されているのだろうか。



 二人のやる気漲る姿を適当に眺めながらそんな考察をしていた。

 なんせ、何を頑張ってくるのかこの二人は一切口にしていないのだ。


 意気込みだけを謳われても、こちらとしては何のことだかさっぱりだ。


 散々意気込みを語って、漲る炎のような魔力を滾らせるアレク。

 そんな夫のことを頼もしそうに優しく見守るクレア。



【↓バカップル↓】



 アレクのやる気の炎を鬱陶しそうに見ていたクティが、二人の頭上に看板を掲げていた。

 間違っていないだけになんとも反応に困る看板だ。


 両親の仲がいいのは嬉しいことだが、お熱いやり取りは子供の前ではやめていただきたい。

 ほらそこ、熱烈なキスとか始めない。


 エナもやれやれといった感じに、肩を竦めているし。



 熱い抱擁とキスが終わったあと、二人はまた真面目な表情に戻り自分の方へ振り向くと。



「では、行ってくるぞリリー。

 赤神ウレトムへの祈りをしっかりな!」


「行ってきますねリリーちゃん。

 すぐに帰ってきますからね」



 赤神ウレトムは確か、戦いと愛の神だったか。

 つまりこれから二人は戦いに赴くわけか。



 あ、 " 魔闘演 " が近いとか言ってたからソレに行くのか。



 やっと合点がいってなるほどなーと思いながら、アレクがドアノブを回そうとしたところでちょっと行動しておくことにした。


 トテトテとちょっとだけ歩いて、二人に近寄りながら。



「とーしゃま、かーしゃま」



 声を掛け。



「いっれらっひゃ~い」



 とにっこり笑って手を振った。





 瞬間、溢れんばかりの笑顔で一瞬で歩を詰め、抱きしめられ頬をすりすりされ、涙を流しながら我が子の成長を称えているアレク。


 それに負けじとアレクごと抱きしめるクレア。



 抱擁と賛辞の嵐はしばらくの間続いた後、エナのとっとと行きなさい!の一言で強制幕引きと相成った。



 嵐の中で頭上を仰ぎ見た時に、お妖精さまの出したと思われる看板が非常にいい味を出していた。



【親馬鹿× 馬鹿親○】



 にんまりと鼻の穴を大きくして満足げのクティであった。




ご意見ご感想お待ちしております


3/9 句点、文頭スペース、三点リーダ修正

3/10 禁則処理修正

6/20 誤字修正

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