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濁った瞳のリリアンヌ  作者: 天界
第一部 第2章 2年目 前編 1歳
25/250

24,妖精と種族と



 生後17ヶ月とちょっと。

 熱が出てから6日目。




 今日もランドルフ医師が診察に来てくれた。


 今日の体調もばっちりで、熱っぽくもなくだるさもない。

 これなら大丈夫だろうと余裕綽綽(しゃくしゃく)だ。



「うむ、もう問題ないじゃろう。

 また何かあったら夜中だろうが、遠慮なく呼び出すがよい」


「ありがとうございます、ランドルフ様。

 では、運動なども元に戻してもよろしいでしょうか?」


「問題あるまい。

 ぐずりもせずにいい子にしておったようだしの、本当に聡明な子じゃ。

 普通の赤ん坊ならば、もっと手間がかかるだろうにのぅ。

 赤ん坊はもっと我侭を言ってもいいのじゃぞ?」



 医師の真剣な顔から一転、好々爺然としたご老人が優しく頭を撫でてくれる。

 今日から運動や朗読は解禁だ。

 やっといつも通りの日常に戻れると思うと、あの暇な日々もなんだか感慨深くなってくる。



 まぁ……暇すぎてだめになりそうだったけどな。



 それにしても、このご老人は濁った瞳の調査といい、今回の熱といい、親身になってくれるいいお医者様だな。

 なんか自分を見る目も孫を見ているようなそんな慈しみがある。

 年齢的にもまさにおじいちゃんって感じだし、血縁上の祖父母が存命しているのかわからないし、本当のおじいちゃんに見えてくる。



 じーじとでも言ってやれば喜んでくれるだろうか?



 チラッとよぎった考えは頭を撫で終わったご老人の代わりに、寝惚け眼な妖精様が朝の挨拶をしてきたので払拭しておいた。

 いくら親身になってくれるとはいえ、彼は他人だ。

 あまり軽率な行動はしない方がいいだろう。



 頭を左右にゆさゆさ揺らしながら、寝惚け妖精が髪の毛の中に突っ込んでくる。



「……ふぁぁわあぁぁ……リリーの髪の毛はいつもいい匂いだなぁ……」



 髪の毛に顔をぐりぐり押し付けて、くんかくんかしている変態はもう少ししないと起きないだろうから当然放置だ。







  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 ご老人から完治のお墨付きを貰ったので、今日から勉強と訓練が完全に解禁となった。


 勉強は大分比重が軽くなり、朗読してもらっている内容をたまに魔力で描き出し、誤字脱字、文法のおかしなところを指摘してもらう形で行っていく。

 他にはクティがたまに朗読中に出てくる言葉で、意味が同じだが用い方や違う単語で構成された言葉だったりする応用系を教えてくれる。

 熟語や慣用句の類だ。


 元母国語と似たような意味を持つ言葉も多いようだ。



 勉強が解禁されたことにより、棚上げしておいた項目を処理しようと思って " 魔闘演 " についても聞いてみた。



「あーなんかねーこのリズヴァルト大陸にある4つの国で順番にやる大きなお祭りでね。

 色んな種族が戦ったり、舞ったりするの」



 色んな種族だと!?



 クティ先生はあまり興味がないのか、詳しくは知らなかったようだがその説明の中には、かなり気になる一言が混ざっていた。

 大陸の名前だったりとか4つの国とかそんなものは、その一言により消し飛んでしまった。



【色んな種族っていうことは、人間以外にもいるのかな!?】



 きっと今の自分は目をキラキラと輝かせていることだろう。

 他種族がいると分かればここが異世界だと確定する。

 少なくとも、生前の世界には人間以外の知的に高度な人型の種族は存在しなかったのだから。



「え、えと……リリーの目がなんかすごくキラキラしてるんだけど、気のせい?」


【気のせい!それより種族!】



 やはりキラキラしていたようだ。

 だが、そんなことはどうだっていい。

 今は種族についてだ。

 急かす様に、クティの言葉に喰い気味に魔力文字を書き出す。



「え、えっと、このリズヴァルト大陸にある4つの国には大まかに6種類の種族がごちゃごちゃにいてね。

 リリー達みたいな特に特徴のない、普通なのが " 人族 "

 人族は基本的に平均的な能力を持っているとされていて、リズヴァルト大陸で一番人口が多いかな」



 目をぱちくりさせて驚いていたクティだったが、持ち前の立ち直りの早さで先生モードに切り替えてくれた。


 やはり、生前読みまくった色々な異世界モノと同じように人間が一番多いらしい。

 そして、一番多い人族が平均となりそれが基準となるわけか。



「次に多いのが~人族に獣の耳とか尻尾とかをくっつけた感じの " 獣族 "

 まぁそれ以外に特徴はないんだけどねー。

 能力的にも人族と変わんない。

 獣の種族って割には別に力も強くないし、俊敏でもないしねー」


【どんな耳と尻尾なの?】


「んーとねー……」



 顎に人差し指を当てて、小首を傾げる可愛らしい仕草でクティは自身の上空に魔力で、獣の耳を描いていく。



 犬耳、猫耳、狐耳、兎耳……。

 描き出される多種多様の耳達。

 そこに描き出された耳達は、生前の世界でも見られた有り触れた獣達の耳だった。

 こっちの世界特有の耳は特になく、描き出された全てに見覚えがある。


 耳を描き終わったあとは、尻尾を描き始める。


 細い尻尾、太い尻尾、丸い尻尾、短い尻尾……。

 その全てが毛に覆われたふさふさ感たっぷりの尻尾達。

 実にもふもふしたい。


 生前の世界では尻尾でも毛がない種類もあったのだが、クティが描き出す尻尾達は全てもふもふな尻尾だ。

 実に素晴らしい。


 もふもふできない尻尾なんて切り取ってしまえ。



「こんな感じかなーわかったー?」


【うん、よくわかったよ!ありがとう!!】



 素晴らしき獣族。

 あぁ、なぜ自分は人族に転生してしまったのか。

 獣耳ともふもふ尻尾があれば、目が見えなくてもどうってことなんてなかったというのに。


 神が憎いぜ……!



「次が~ " 魔人族 " かなー。

 獣族が獣の耳と尻尾なのに比べて、この種族は角とか羽が生えた人族って感じ。

 能力的にも人族と変わらないのは獣族と一緒。

 あ、でもね、羽があっても妖精族みたいに空が飛べるとかじゃないんだよ?

 ちなみに、魔人族に対して魔族とか魔物とか言ったりすると、すごく怒るみたい!」



 素晴らしきもっふもふ達が薄れ、丸まった角や尖った角や短い角など、1,2本の角をつけたたくさんの顔がクティ先生の上空に描かれる。

 空を飛んでいるクティとその下に少し距離をあけて地面のような線が引かれたモノも描かれるがそれを描いた後、大きく " ○ " がつけられる。

 ○が付けられた空飛ぶクティ……羽が動くオプション付きの下の地面のような線の上に、棒人間のような適当な人型を描き背中だか正面なんだかよくわからないところに、蝙蝠の羽や鳥の羽が描かれて大きく " × " が付けられる。

 もちろん羽が生えてる棒人間には頭に角がある。

 飛行の有無を表しているらしい。


 描き終わったあとに、空飛ぶクティの絵の○には花びらがついて花丸になっていた。



【じゃぁ魔人族と魔族や魔物は違う種族?】


「もちろん違うよ~。

 魔物は魔物、魔族は魔物が知性を持ったやつを総称したモノかな。

 魔人族としては、あぁいうのと一緒にされるのが許せないみたいだねぇ」



 魔人族を描いていた魔力が変化し、牙や爪なんかをでっかくした獣っぽいモノや " 吹きだし " のついた奴なんかに変わる。

 吹き出しには。


  " ボク魔族!ちょーつよい "


 と書かれていた。

 大先生的にはアレが知性らしい。



 魔族や魔物が蔑称ということは、魔物や魔族には魔人族の特徴である角や羽なんかを持ったものが多いのだろう。

 見た目が似ているというのは、十分な迫害対象となる。

 辛い時代があったのかもしれない。


 まぁそんな暗いことはどうでもいい。

 重要なのは角っ娘!

 ビバ!羽っ娘!



 やばい、何この世界……最高すぎる。



 妄想で高血圧になりそうな自分だが、表情には出さない。

 なんせ周りにはクティ以外にも人がいるのだから!

 だが、鼻血は出ても不可抗力だと思うんだ!

 それくらいは許していただきたい!





 でませんけどね。

 興奮して鼻血が出るなんて漫画だけの話なのですよ。

 あんなもの迷信です。


 心の鼻からは大量に赤いパトスを噴出しながらも、クティ大先生の種族講義を一言も聞き逃さないように妄想の処理領域とは別の領域が高速で処理を始める。

 当然、妄想処理領域も高速稼動している!



「残りの3種族は人口が大体同じくらいでー " 長耳族 " と " 長毛族 " と " 小人族 "

 長耳族は、種族名通りに耳が他の種族と比べると尖ってて長め。

 綺麗な人が多いけど、他の種族と比べるとちょっと体が弱いかな?

 その代わり芸術とか音楽とかは得意かなー」


【長耳族ってエルフ?】


「エルフと長耳族は違うよ~。

 エルフはエルフですごく数が少ないけど、ちゃんと種族としているよ。

 本に出てくるエルフもちゃんと実在してる種族なんだよー?

 長耳族の特徴の耳の長さと綺麗な顔立ちとかは一緒だけどねー。

 森とか自然を大事にしててねーほとんど他種族と関わろうとしない閉鎖的な種族で、私達の調査ではほとんど全滅寸前かなー」


 花丸クティと魔物、ボク魔族!ちょーつよいを消した後に、耳の尖った顔が描かれる。

 今までに描いた顔は適当だったのに、やけに精密に美形に描かれていた。

 精密な美形が2つ描かれた後、その間に≠《ノットイコール》が描かれる。

 当然2つの美形の上の方には長耳族とエルフと名札が振ってある。


 長耳族とエルフは違う種族なのか。

 しかもエルフは絶滅寸前とか……。

 クティ達の調査ってのが、どの程度の精度なのかはわからないからなんとも言えない所だな。



 元は同じ種族が、森か都市かに住まいが分かれて別種族と呼ばれるようになったのだろうか。



【エルフと長耳族は元々同じ種族だったりするの?】



 気になったので大先生に聞いてみる。



「ん~私達が調査し始めたときには既に別種族だったからなー。

 ちょっとわからないかも」


【そっか、じゃぁ仕方ないね】



 わからないんじゃ仕方ない。

 別にそこまで詳しく知りたいわけでもないしな。

 長耳族は長耳族、エルフはエルフと割り切ればいいだけだ。

 それに絶滅寸前なら自分が出会う確率は相当低いだろうしな。


 ぶっちゃけ耳が長くてエルフっぽけりゃどっちでもいい!


 エルフ耳万歳!

 妄想が暴走しそうですクティ先生!



「そうそう、仕方ないのよ~まぁ私が調べたわけじゃないしねー。

 調査なんて下っ端の仕事なのよ。

 じゃぁ次ね~。

 次は長毛族だけど、性別でちょっと違いがある種族なんだー。

 男は成長しきる前に髭がもっさもさに生えるの。

 女は髪が伸びるのが、他の種族や長毛族の男と比べると格段に早いっていうのが特徴かな。

 あとは、男女共に成長しても人族の成人の平均と比べると身長が低いっていうのもあるかな。

 あーそうそう、あと腕力が他の種族と比べると強いっていうのもあるね。

 強いっていっても、最大の特徴になるほどではないけどね。

 最大の特徴はやっぱり、髭と毛かな。

 あ、あと女の方が強い!腕力的に!」


【なるほど……だから、長毛族なんだね】


「そゆこと~」



 精密な美形が変化して、もっさもさの髭の顔と髪の量がかなり多いウェーブがかかった顔になる。

 髭の顔とウェーブの髪の顔との間に " < " がしっかり描かれている。

 もちろん、髭 < ウェーブ髪 の図式だ。


  " 腕力的に! " の時に腕を曲げて力瘤を作ろうとしても細い二の腕には何の変化もなかったが、大先生的には問題ないらしい。



 つまるところ、女尊男卑なドワーフのような感じか。

 ドワーフといえば鍛冶師って感じなんだけど、この世界では違うみたいだな。

 それともドワーフはドワーフでいる種族なんだろうか?

 エルフの例もあるしな。



【ドワーフはいないの?】


「ドワーフってアレでしょ?前にエナが読んだ本に書いてあったやつでしょ?

 本に出てくる種族が現実にいるってことはあんまりないんだよ~?

 ちゃんと現実と妄想の区別はつけなきゃだめだよ~?」


【ぐぬぬ】



 妄想の産物のような姿のクティに言われるとすごく悔しい……でも!



 ……クリムゾンしそうになったが、寸でのところで踏みとどまれた。

 クティなんかに負けない!キリッ!



「最後は~小人族だね。

 この種族はすごく特徴的だよ。

 大人になっても人族とかの平均身長の半分より少し高いくらいにしかならないの。

 でもその代わり、すごく素早くて器用。

 あと、耳の形が丸くなってるのも特徴かな」


【まさに小人なわけだね】



 ノッポとチビとその中間くらいの3つの棒人間を描き、ノッポの方に " 人族 " チビの方に " 小人族 " 中間くらいの方に " 長毛族 "と振ってある。

 確かに特徴的だ。

 ついでに顔だけの小人族が描かれ、耳が丸くなっている。



「そゆこと~、リズヴァルト大陸に住んでる種族はこの6種族がほとんどだね。

 あとのエルフとか " 竜族 " とかはほとんどいないかな」


【竜族?】



 なんとなく想像がつくが初めて出てきた種族名なので、興味津々だ。

 だってあれだろ?

 竜っ娘だぜ?竜っ娘!



「竜族は調査では1人しか発見してないし、もう大分昔の話だからいないと思うなぁ。

 ちなみに、長毛族なんて目じゃないほどの腕力と、小人族なんて霞んじゃうほどの俊敏さを併せ持った、強靭な種族だよ。

 単独で、国を潰すくらいの強さを持ってたから大昔に他の種族に恐れられて滅ぼされたんだって。

 そんな過去があるから、他の種族の前には滅多に現れないし、妖精族を認識できるリリーみたいな珍しい力も持ってたから、調査も思うように進まなくてね~」


【単独で国を滅ぼすほどの戦闘力……それは恐れられても仕方ないかもしれないね】


「まぁそうなんだけどねぇ……滅ぼされるほどではないと思うんだけど、如何せん大昔の話だからね。

 正直文献で多少残ってる程度で、分かってないことの方が多いみたいだよ」


 6合目あたりがぎざぎざの境界線を境に分かれて、上の部分にあたるモノがちょっと斜めにぶっ飛んだ形で止まった変な山と、拳を突き出した棒人間が描かれる。

 山をも吹っ飛ばす拳と言いたいらしい。


 拳を突き出した棒人間は口から炎っぽいのを吹いている。

 謎だよねぇ~と肩を竦めながら首を振っている妖精さん的には、炎を吹いてて山を吹っ飛ばすのが竜族のようだ。


 恐ろしい種族もいたもんだ。

 でも、今はいないみたいだし特に問題もないだろう。

 竜っ娘には会ってみたかったが、命の方が大事だし!



 それにしてもこれは異世界確定だよねぇ。

 まぁ思ってた以上に素晴らしい世界っぽいから、むしろオッケーだけどね!


 あぁ……むふむふさんと早く仲良くなりたい。





 ……そういえば、アレクの誕生日会でのコスプレは……本物だったというわけだ。


 使用人がもっふもふ……ごくりっ。



 クティ大先生の講義によると、4カ国にごちゃごちゃに……つまり入り乱れて住んでいるわけで、このオーベント王国にも数多く住んでいるということだ。

 それだけ多くの種族が入り乱れているということは、種族排斥なんかの差別は少ないんじゃないだろうか。

 竜族に関しては大昔のことだっていってたし。

 魔人族は、蔑称があるけど長耳族や長毛族や小人族よりは多いわけだし。


 まぁまだ実情がわからないので、結論付けるのは控えるとしよう。

 なんせ情報源はこのドヤ顔さんしかいないのだから。



 本などを自分で読めれば、もう少し情報を集めやすいんだがなぁ。

 朗読してくれる本も彼らの好きなものばかりだし、排斥運動とかその辺は出てこないものばかりだ。




 もふもふさんや角っ娘、羽っ娘、エルフにドワーフ、幼女にショタっ子。

 ぜひとも仲良くしたい。



 何この……素敵ワールド。



 そうだ……クティは大まかに6種族といい、エルフや竜族なんかの数が少ない種族は数に入れていなかった。

 つまりは、他にも種族がいるかもしれないということ……!



 もしかしたら……あいつらが……!




 心の顔でグフフと怪しく笑い、目の前の一番の謎種族に向かって期待を込めて魔力文字をぶつける。




【草や貝が物理的に立ち上がったりする種族なんかも……!】


「そんな種族いません!」




 ……がっかりだよ。





THE説明回DEATH


ようやくといった感じで世界設定説明回にまで到達しました

ずいぶん掛かった気がします



まぁ気のせいってことにしておきましょう


ご意見ご感想お待ちしております


3/9 句点、文頭スペース、三点リーダ修正

3/10 禁則処理修正

5/3 誤字修正

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