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外伝30,みんなのお姉ちゃん

 本編に出てこないような設定が出てくるような出てこないような。

 この回の各人の性格が、必ずしも正しいものであったかどうかは定かではありません。

 クワガタムシは食べられません。

 今回のネタはプロデューサーのK様より頂きました。

 ありがとうございます!



 気がづけばレキ君の部屋だった。

 天井を見上げればいつものステンドグラス。

 だが、不思議な違和感が私を包んでいる。

 なんだろう……とても大事なことなのに思い出せない。

 色とりどりの光(・・・・・・・)が差し込む天井から視線を戻せば、いつものテーブルに椅子。

 私専用に誂えられたそれらは、毎日専属たちがピカピカにしているので汚れなど一切ない。

 真っ白なテーブルと、真っ白な椅子。

 テーブルにはこれまた真っ白なテーブルクロスがかけられ、日によって違う果実水が置かれている。

 普段は私しか使わないそのテーブルには、すでに誰かが席について果実水を一生懸命飲んでいた。


「……だれ?」


 呼びかける私の声は小さい。

 だが、果実水を飲んでいた子どもにはしっかりと聞こえたようだ。

 彼女は振り返ると――


「あ! リリーお姉さま!」


 私の声にこれ以上無いほどの歓喜を滲ませて答えたのは、とても美しい毛艶が見事な可愛らしい幼女だった。

 頭の上には狼の耳。

 狼氏族の獣人種の幼女だ。

 尻尾がはちきれんばかりに振られ、一直線に私に向かって駆け寄ってくる。


「リリーお姉さま! これあげる!」

「え、なに……クワガタ? って、痛い! 痛いよ!」


 駆け寄ってきた幼女が、スカートのポケットから取り出したのは一匹の昆虫――クワガタムシだった。

 そして何を思ったのか、幼女はクワガタムシの二本の角で私の鼻を挟んできた。

 痛い! 尋常じゃなく痛い!

 これはまずい。傷なんて残ったら、間違いなくエナが悲しむ。

 魔術! 魔術を!


「って……あれ? クワガタいなくなった。もう痛くないし……。あれ? 幼女は?」


 突然のことで混乱している間に、先程まで鼻を挟んでいたクワガタムシはいなくなり、目の前にいたはずの幼女までいなくなっていた。

 一体どういうことなのか……。


 だが、考える時間はもらえないかのように、事態は進行していく。

 先程まで狼氏族の幼女が腰掛けていた椅子には、別の幼女がいたのだ。

 今度は狐氏族の幼女だ。

 なんだかとても自信満々に笑ったかと思うと、短く一言呟いた瞬間には彼女は消えていた

 だが、私には彼女がどうやって消えたのかがわかった。

 あれは、魔術だ。

 特異体質による極端な詠唱省略が可能とする、とても珍しい魔術の発動方法。

 特定の魔術でのみ行使が可能だが、その発動速度は私に匹敵する。

 狐耳の幼女が発動した魔術は隠蔽。

 私にとってはまったくもって意味のない魔術だが、なぜだか消えた彼女は見つからない。

 キョロキョロとあたりを見回していると――


「お姉ちゃんのパンツゲットぉ!」

「きゃああああああっ!!」


 後ろから思いっきりスカートを捲りあげられてしまった。

 それはもう、悲鳴を上げるレベルでの出来事だ。

 女の子に生まれ変わって、早六年。

 まさかスカートめくりで悲鳴をあげる日がこようとは……!

 おのれ、幼女! 許すまじ!


「って、また消えた!?」


 スカートをめくって消えた狐耳の幼女を必死で探すが、まったく見つからない。

 魔術を発動させようとしても、まったく発動せず、それどころか、魔術の作成もできない。

 どうなっているのかまったくわからないが、不思議と焦りあっても不安ない。

 そして、今度は椅子に座っていたのはクマ氏族の幼女だった。

 だが、今度はとても見覚えがある、なにせこの幼女はそっくりそのままサイズを小さくしただけのニージャだったからだ。


「ニージャ……?」

「……リリーねぇ」

「え、えっと……」

「……ふふふ」


 幼女なニージャに恐る恐る声をかけると、帰ってきたのは眠そうな目と平坦な声だった。

 狼耳の幼女と狐耳の幼女のいたずらから、ニージャも同じようないたずらがあるんじゃないかと警戒していたが、どうにも何もしてこない。

 それどころ、不敵な笑みを見せるばかりだ。


「あ、あの……ニージャ? どういう……って、またクワガタ!? ニージャ大丈夫!? やめなさい、あなた!」


 ニージャに一歩近づいた瞬間、どこに隠れていたのか、また狼耳の幼女が現れ、クワガタムシをニージャに取り付け始めてしまった。

 されるがままのニージャはどんどんクワガタムシまみれになっていく。

 まんまるのクマ耳はもちろん、こぶりな鼻も小さな手も、ニヤリとした笑みを崩さないぷっくら唇までクワガタムシに挟まれたニージャ。

 絶対痛いでしょう!? 私は一匹で無理だったよ!?

 っていうか、嬉々としてクワガタムシを何匹も取り出している狼耳の幼女は何なの!? 全然やめてくれないし!


 やめさせようにも、クワガタムシまみれになったニージャをどう助けたらいいのかわからずオロオロしていると、突然腰に衝撃が走った。

 振り返って腰に張り付いたものを見ると、兎氏族の幼女だった。

 うるうると今にも泣き出しそうな瞳をこちらに向けて、その小さな口を開く。


「リリーおねえちゃん。捕まえた。もうわたしの。誰にもあげないの。綺麗な綺麗なお人形さん。わたしの。おへやいこ。いっしょなの。もう離さない」

「ひっ!?」


 とても不穏な言葉を放つうさ耳幼女からは、不安しか感じられない。

 それどころか、抱きかかえるように腰に回されていた腕のちからがどんどん強まっていくのを感じる。

 恐怖心が心を満たしていくが、うさ耳幼女はいつの間にか狐耳幼女に取り押さえられていた。


「めっ! でしょぅ! リリーお姉ちゃんはみんなのものだよぉ!」

「だってー」

「……みんな一緒」

「クワガタ食べる?」


 幼女たちが、いつの間にかうさ耳幼女の周りに集まっていた。

 うさ耳幼女を諭す、幼女ニージャと狐耳幼女だが、狼耳幼女だけちょっとおかしい。

 クワガタムシは食べ物じゃないよ?


「ほらぁ、お姉ちゃんに謝ってぇ」

「……心配いらない。リリーねえはこんなことじゃ怒らない」

「うぅ。りりーおねえちゃん、ごめんなさい。怒ってる?」

「えっと……怒ってはいないよ?」


 幼女ニージャと狐耳幼女に付き添われて、瞳に涙を浮かべて謝ってくるうさ耳幼女のなんと可愛らしいことか。

 そんな可愛い姿を見せられては怒ることなんてできない。


 狼耳の幼女だけは、新たなクワガタムシを手に狐耳の幼女に忍び寄っていたけど。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 幼女ニージャを見たときに、他の幼女の正体にも薄々気づいていた。

 仲直りを済ませ、そのままベッタリと私に張り付いて離れないうさ耳幼女は、ラクリアだった。

 クワガタムシを片手に、狐耳幼女を追いかけているのはミラ。

 追いかけられている狐耳幼女は、ジェニー。

 専属たちがなぜだか知らないが、みんな幼女になってしまっている。

 しかもみんなとても可愛い。

 特にべったりと張り付いているラクリアと、ポケーとしているニージャがたまらない。

 なぜこんなことになっているのか、とか。そんなものどうでもよくなるくらい、可愛らしいのだから仕方ない。


 張り付いて甘えるラクリアの頭を撫で撫でしつつ、ポケーとしているニージャのぷにぷにほっぺをツンツンする。

 私たちの周りを走り回っているミラとジェニーも楽しそうだ。


 みんな普段見れない行動ばかりだ。

 ……いや、ニージャはそうでもないかな?

 でもほっぺをツンツンなんてしたことないし、たぶんさせてくれない。

 ラクリアが私に甘えてくるなんて……いや、ご褒美のときは結構甘えているか。

 ミラとジェニーの行動は、一切みたことないね。

 なんでミラはあんなにクワガタムシでいたずらばかりなのか。

 ジェニーもまったりした言葉とは裏腹に、とても俊敏にミラの繰り出すクワガタムシをかわしつづけている。

 まあ、ふたりとも楽しそうだからいいんだけど。


 そんな幼女たちに囲まれていると、ラクリアはいつの間にか私の腰に張り付いたまま寝てしまっているし、ニージャも椅子から降りて私の膝の上だ。

 その頃には、ミラとジェニーのおいかけっこも終わっており、ふたりとも私に背を預けてすやすやと寝息を立てていた。


 いつもお世話になっている専属たち。

 ご褒美をあげるときはとても幸せそうにしているが、今回はそれと同じくらい幸せそうだ。

 こんな時間がいつまでも続けばいいのに。

 だが、どんなに願っても時間は誰にでも平等に過ぎていく。


「リリーねえ」

「んぅ?」

「……これ夢だから」

「あ、やっぱりそうなんだ」

「そう」


 寝たと思っていたニージャの言葉だが、きっとそうだろうと思っていた。

 だって色々とおかしいもの。

 みんな幼女だし、変なことばかり起きているし。

 でも、夢なら納得だ。


 なら、起きる時間までこの幸せな時間を満喫するとしよう。


「それまでは、私がみんなのお姉ちゃんだよ」


 心地よい不思議な夢のお話。


濁った瞳のリリアンヌ2発売中です!

続巻のためにもみんな買ってね!


活動報告で外伝のネタを募集しています。

今回も提供して頂いたネタを元に書き上げたものです。

もしかしたら、あなたのネタを元に外伝が出来上がるかも!?


よろしくお願いします!

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