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濁った瞳のリリアンヌ  作者: 天界
第二部 第11章 6年目 世界の隣の森編
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208,漂流物と調査準備




 調査対象の漂流物は、なんと三日ほど前に出現した非常に新しいものらしい。

 とはいっても、出現した時期が三日前というだけで、現物が新しいものであるかはまだわからない。

 だが出現した際に、どうやら地面をずいぶん抉って地中に埋没してしまって部分が多いらしく全体像が把握できていない。

 無論、これから調査をするわけだから内部なんてまるでわからない。

 先行して行われた事前調査も、外観や周辺状況の確認に留まっているのだ。

 その外観も地中にほとんどが埋まっているため詳しくはわからないのだけれど。


 漂流物が出現する際に、このように地中に埋没してしまったり、出現位置に被害を与えたりすることはあまりない。

 ほとんどが静止状態で現れ、ほとんど被害がでないらしいのだ。

 ただ、静止状態だから危険がないわけでは決して無い。

 過去には、静止状態で現れ、事前調査では危険がないと判断されたが、調査隊が内部を調べている間に爆発し、周辺をまるごと焦土にした漂流物もあったそうだ。恐ろしい。


 今回はそういった危険への対策として、スカーレットたち調査隊には私が作った防御系魔術を封じた魔道具を大量に持たせているし、もしものためにも最初から宇宙服の魔術をかけていく。

 例え、生存不可能な環境に激変したとしても、即座に被害を被ることはないし、ダッシュするだけならスカーレットの能力なら問題ないはずだ。

 もちろん、そのための魔道具も各種用意してある。

 調査も大事だが、まずは怪我ひとつなく戻ってくるのが前提だ。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 すでに妖精族の調査隊とスカーレットは、朝早くに出発している。

 私たちは彼女たちが目標の漂流物に到着次第送られてくる通信を待つため、宮殿にある会議室にやってきていた。

 ここは人種サイズの会議室で、円形のテーブルと椅子が配置された実用的な部屋だが、妖精族が使うにはあまりにも大きい。

 埃ひとつ落ちていないが、普段は使わないそうだ。


 集まったメンバーは、私たちはスカーレットを除く全員。

 無論、ミラとレキ君も連れてきている。昨日の轍は踏まない。

 まあ、お説教をしておいたので、また留守番をさせても同じことはしないだろうとは思うけれど。一応、ね。


 妖精族側は、ナターシャと漂流物研究を行っている専門の妖精族。その他にも調査には参加していないが、解説役として呼ばれている調査隊の妖精族なんかもいる。

 その他にも、漂流物は魔道具の参考にもされているので、魔道具製作に携わっている妖精族が大勢集まっているが、彼らが何人集まってもこの会議室はスペース的に問題ない。


 問題があるとしたら、レキ君だろう。

 彼は巨体だ。

 いくら会議室が大きくても、レキ君の巨体から見れば狭い。

 でも、外で待たせるのも可哀想なので、無理を言っていれてもらった。

 宮殿自体が大きいのもあって、レキ君が会議室まで来るのに問題はなく、会議室でも寝そべっていられる程度にはスペースがあってよかった。

 でも、やっぱりちょっと窮屈そうなのは仕方ない。


 レキ君一匹で圧迫感がすごいけれど、ふわふわの彼の毛並みにナターシャもご機嫌だ。

 クティとふたりでレキ君の頭の上に陣取っているし。

 なんだかんだで仲の良い姉妹だよね。ちょっと嫉妬しちゃう。


 ちなみに、椅子に座っている人はひとりもいない。

 私もレキ君をソファーにしているし、妖精族のほとんどはテーブルの上か、空中だ。

 ミラは壁際で待機している。

 会議室じゃなくてもよかったんじゃないかな?


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 サニー先生が、魔術研究所の職員たちを数名こき使って用意していた魔道具の設置が終われば、あとはスカーレットからの通信待ちだ。

 今回サニー先生たちが設置してくれた魔道具は、リズヴァルド大陸でもお馴染みの銀の眼の改良版だが、あちらよりも遥かに優れているし汎用性も高い。

 さらには小型化にも成功しているので、サニー先生ですら持ち運びができる。

 まあ、その分機能は完全に特化されているので、受信と映像と音声の出力のみなんだけれど。


 私にも見れるように作ってはあるが、私は私でスカーレットから送られてくるデータを視覚膜に直接描画するので問題ない。

 むしろ、特化された情報のみよりも多くの情報を得られる。

 スカーレットから送られてくるのは映像や音声だけじゃないからね。


 ナターシャたちには、何台か機能を制限してあるクティパッドも貸し出しているので、そちらの方でデータは見れるようになっている。

 映像だけはわからない情報も確認できるとあって、専門の妖精族は非常に興味をそそられていたようだ。

 あと魔道具製作の妖精族も。

 何せクティパッドは、漂流物をいくつもみている妖精族にとっても画期的なものだったみたいだからね。

 スマホやタブレットなんかは流れ着かなかったのだろうか?


 妖精族たちが、クティパッドを囲んでワイワイガヤガヤと結構な賑わいを見せているが、女王の前だからとそれを諌める人はいない。

 これがオーベント王国などだったら違うのだろう。

 妖精族の女王というのは、少し権力のある事務職に過ぎないので不敬罪などにはならないのだ。

 そもそも、妖精族の法律に不敬罪があるのかどうかわからないのだけれど。


 当のナターシャもクティと楽しそうにお喋りをしている。

 話題はやはりクティパッドだ。

 製作者である私のことを、それはもう手放しで褒めているクティがちょっと恥ずかしい。

 それを優しい眼差しで聞いているナターシャを見ると、どちらがお姉さんなのかわからなくなってしまいそうになる。


「リリー、こちらの準備は終わったぞ」

「お疲れ様です。サニー先生、職員の皆様」

「いえいえ! あれほど見事な魔道具は初めてみましたよ! ぜひともクリストフ様には研究所に一度おいでいただいて術式についてお話を伺いたいですよ!」

「今回は日程的に無理だったが、次の機会があれば研究所の案内も含めて行ってみるのも悪くないかもしれんな。リリーにとっても刺激になるものがそれなりにあるだろう」

「はい、ぜひともよろしくお願い致しますね」


 サニー先生たちの準備も終わり、あとは本当にスカーレット待ちだ。

 目標の漂流物までは、それほど距離も離れておらず、移動にもバギーのような乗り物を使うので時間もそれほどかからないはずだ。

 車があるのであまり驚かなかったが、オフロード用のバギーまであるとは恐れ入る。

 もしかしたら、ほとんどの乗り物は網羅しているのかもしれない。

 ただ、川はともかく、海が少ないこの世界の隣の森では船はどうなのかわからないが。

 ただでさえ、人種サイズの乗り物は妖精族にとって実用性が薄いわけだし、それがさらに巨大で使い所もずっと少ないとなれば……。


『お嬢様、現地に到着致しました。環境データを合わせて送信致しましたが、環境汚染及び、有害物質は確認できませんでした。至ってクリーンな環境です。光合成できそうです』

『了解です。データの受信及び、通信状況の安定を確認しました。行動予定A2に移行してください』


 スカーレットが光合成ができるかどうかは置いておくとして、彼女からの通信により、各種データが視覚膜に次々と表示されていく。

 フィルターを通して瞬時に整理、グラフ化されたデータは、現地が極めて安全であることを示している。

 漂流物によっては、周辺環境が著しく汚染されてしまうこともあるので、今回は安全そうだ。

 ただ、当然ながらそれだけでは安心できないので油断は禁物だが。


 行動予定A2に移行し始めた調査隊は、用意しておいた魔道具を漂流物を囲むように配置していく。

 これはもし、漂流物が爆発しても周辺への被害を極力抑えるための措置だ。

 要するに強力な結界で囲んでしまう、というもの。

 同時に、外部からの干渉もできなくするので余計な妨害などもされなくて済む。

 基本的には妖精族に敵対している存在は、世界の隣の森にはいないらしいが念のためだ。

 尚、私が作った術式を使って作られた魔道具なので、当然ながら通信などの魔術には干渉しないようにできている。


 結界の準備が終われば、本格的に映像と音声が送られてくる。

 もうすぐ、現地の状況が見られるということで、ざわざわしていた会議室内も少し緊張度合いが増してきた。


 私はすでにひと足早くスカーレットから送られてくる映像データを見ているのだけれど……小山に埋もれるようにして漂流物が少しだけ確認できた。

 確かにこれでは、全体像を把握するのは無理だろう。


 だが、その見えている範囲も何やら長方形の形の鉄を高温で切断したような形になっている。

 縦に長い口が小山の洞窟の入り口のようにもみえる。


『ダンジョンの入り口のようにも見えますね』

『スカーレットはダンジョンに入ったことがあるの?』

『数回ですが、学校の実習であります。どういったものかを実地で研修する程度のものだったので、むしろあの学校では楽な部類です。魔物を相手にする方が生き残る確率が高いというのもおかしな話ですが』


 お婆様たちが運営している学校の恐ろしさを、再認識できる話に苦笑が漏れそうになる。

 だが、言われてみれば小山にぽっかりと口をあけたその光景はダンジョンの入り口そのものだ。

 人工的な感じとかまさに。


 この先の道のりが予想よりもずっと長いものになるのではないだろうかと心配になる。

 持たせている魔道具は、効果時間がそれほど長いものではない。

 今も効果を発揮している宇宙服の魔術でも、最長で八時間(ハルス)程度しか持たない。


 今までの調査では、漂流物を調査しても生命体は一切発見できていないが、セキュリティが生きているものはいくつかあったそうだ。

 対襲撃者用のセキュリティなんかもあり、警告のあとに機銃で掃射されたり、ビームの類を撃たれたことなんかもあるらしい。

 ロボットの類が襲い掛かってきたことはないようだが、十分に注意して進まなくてならない。


 しばらくして、結界の魔道具の設置が終わり、本格的な映像と音声のデータが送信されてきた。

 サニー先生たちが設置した魔道具に、映像が映され、たくさんの妖精族たちから驚きと称賛の声があがる。


 だが、無論ここからが本番だ。



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