190,エピローグなプロローグ *挿絵有
私、リリアンヌ・ラ・クリストフは先日6歳になりました。
物理観測再現結界『視覚膜』の基礎を作り上げた4歳の誕生日の前日から2年の月日が流れている。
その間に色々なことがあった。
本当に色々あった。
まずは『視覚膜』の改善。
2年前に作った『視覚膜』は完璧といえる出来だと思っていたのは誕生日から数日間だけという短い期間だった。
どんどん出てくる不具合と問題に改良改良また改良という日々を送り、1年くらい前にやっと安定したバージョンにまでこぎつけることが出来た。
もちろん『視覚膜』の改善だけをしていたわけではなく、同時進行で『視覚膜』をベースとした拡張型魔術の考案や、『視覚膜』とは直接関係ない私独自の魔術もたくさん作った。
その中には次元間移動魔術の改良版も含まれていたりするが、まだまだどんな人でも使えるものではない。
『視覚膜』のおかげで生活面で苦労することはほぼなくなったと思われるだろうが、まだ家族には話していない。
『視覚膜』の話をするには私が魔術を使えることを話さなければいけないし、ではなぜ魔術が使えるのかを話さなければいけないという非常に面倒くさくややこしい話になるのは言うまでもない。
最終的に私が転生者である話にまで行き着くのでなんとも話すきっかけがないという状況だ。
しかし、そんなややこしい話を問題にしない人物に出会ってしまった。
というかもっと前から出会ってはいたんだけど、まさかこんな身近に私と同じ境遇の人物がいるとは思ってもいなかったという驚きで当時は非常に混乱した。
その人物とはエナの専属メイドをしているスカーレットだ。
彼女は1年前に私が物理的視覚を得ていることを見抜いた。
というか生前の母国語での『次でボケて』という言葉を紙に書いて見せてきたのだ。
思わず飲んでいた果実水――ライム味――を噴出してしまったのは今も克明に思い出せる。
あのときの鼻に入った果実水の痛さは忘れない。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
スカーレットは私と同じ世界の同じ国で生まれ、私が生きていた生前の世界よりは少し未来から転生したそうだ。
しかし転生したこちらの時代的には私がうまれるより以前に誕生しており、時間的な違いは関係ないみたいだ。
彼女もラノベなんかによくある神様からチートな能力をもらって……ということはなかったそうだ。
しかし彼女の身体能力はクリストフ家のメイド達を超えるほどの凄まじいものだ。
それはチート能力と言われても信じてしまえるほどすごい。
しかしそんなことはかすんでしまうほどの事実を知ることになった。
そう、彼女こそがECS――2本足で立ち上がる物語の作者だったのだ!
この事実に当時5歳になってもあまり動かない表情筋がとてもよく動いたのを覚えている。
それだけ驚愕の事実だったのは言うまでもない。
しかし彼女は事も無げに私の魔術の方がよほどチートだという。
結果だけ見れば確かにそうかもしれないが、これはうまれてからずっと努力し続けてきた結果だ。
チートと呼ばれるのはあまりいい気がしない。
それは彼女も同じことだったのだろう。
それから自分たちの手にした能力についてはチートと呼ばないようにしている。
スカーレットという新たな協力者を得ることに成功した私は新規魔術開発の他に魔道具開発にも手を出している。
魔道具といえば4歳の誕生日にエリオットが本を贈ってくれた。
その本はエリオットが作り出した新しい魔片――柔軟性を得た特殊な魔片により作り出された本だ。
その本は魔道具でありながら本として機能している素晴らしい作品だった。
内容は天使に見初められた職人が彼女のために世界でただ1つの作品を苦労の末に作り上げるという話だった。
まぁ言いたいことはたくさんあったけれど、『視覚膜』なしでも読める最初の本として今でも大事にしている。
私が作り出した魔道具はスカーレットとサニー先生の手によって保管されている。
1つでも世に出たら危険すぎる魔道具達だが彼女たちによって管理されている以上、何の問題もない。
ちなみにスカーレットにはクティやサニー先生の姿が見え、声が聞こえるようになる魔道具を渡している。
メガネ型の魔道具でデザインも彼女の要望通りに作ったので妖精ズがいないところでも愛用しているそうだ。
初めてスカーレットが妖精ズを見たときの感想は、なるほど、の一言だった。
何がなるほどだったのかは今でも教えてくれないが彼女にとって何か納得できるものだったのだろう。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
この2年で私を取り巻く環境は少しだけ変化した。
様々なことがあったけれど、周りから見ればほんの少しだけの変化だ。
もちろん2年で私もだいぶ大きくなった。
平均以下だった身長や体重も順調に増えて……いや、うん。平均以下だけどね、まだ!
身体的成長度合いは置いておいて、そろそろ物理的視界を得ていることを家族に打ち明けるべきだろうと思い始めている。
スカーレットにも相談して妖精ズの姿を見せればややこしい話は一先ず置いておいても問題ないだろうという結論に達した。
そして運命の神様はそんな私たちにちょうどいいタイミングで贈り物をしてくれたのだった。
スカーレット曰く、イベント開始ですね。
クティ曰く、やっぱりかー。
サニー先生曰く、まぁ当然だな。
レキ君曰く、わうん?
世界の隣の森の女王様――ナターシャからの招待状が届いたのだった。
第1部 完
あとがきっぽいやつ
まず最初に最後まで読んでいただきありがとうございました。
たくさんの方々に支えられて『濁った瞳のリリアンヌ』を書き終えることができました。
『濁った瞳のリリアンヌ』は小説家になろうで初めて投稿した作品です。
そんなはじめての投稿作品が長編になり、そして無事完結できたことはなかなかに考え深いものがあります、たぶん。
元々『濁った瞳のリリアンヌ』は長編予定のものではありませんでした。
というか作中でも出てきた物理観測再現結界『視覚膜』というアイディアが最初にあり、作られた作品です。
『視覚膜』が必要なので当然目に障害を持っている主人公となります。
異世界転生ってあんまり障害持ちで生まれてくることないですよね。
マイノリティに憧れるダークヒーロー好きの自分はコレダ! と思ってしまったわけです。
そして始まった『濁った瞳のリリアンヌ』。
これは割烹などでも結構書いてたことですが、皆さん大好きクティも最初はあんなにおばかさんキャラじゃなかったんです。
原案のクティはクールなお姉さまでした。
テオやエリーもこんなに出番がある子達じゃなかったんです。
家族で出番があったのは主にお婆様だけという……。
最初のプロットなんてこんなもんですよね。
最終的に4歳直前で終わっていますが、そのプロット通りならば4歳なんてあっさり過ぎてます。
だって『視覚膜』を活かすにはとっとと出さないといけないですからね。
それが幼女を愛でるほのぼのファンタジーになったのはたまたまです。
たまたま第2章が長くなったのでプロットを色々変えて、その結果色々出てきたアイディアを練りこみまくってクティとリリーの織り成すほのぼの幼女ライフになったのです!
その結果、幼女好きと思われたり、ロリコン疑惑が出来たり、もしかしてペド? などと言われたりしましたが、単純に可愛いのが好きなだけです。問題ありません。
さて変な方向に向かってきたのでこの辺にしておきましょう。
長々とお付き合いくださりまして、本当にありがとうございました。
『濁った瞳のリリアンヌ』の第1部はこれで終わりです。
第2部は全部執筆完了してからの投稿になる予定ですが、予定は未定です。
第2部として新規投稿するのか、このままここを使うのかはわかりません。
ではでは。
3/29 超素晴らしい挿絵追加




