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濁った瞳のリリアンヌ  作者: 天界
第一部 第10章 4年目 後編 3歳
214/250

188,革命のリリアンヌ




 圧縮。

 圧力を加えて容積を縮小させること、など。


 魔力を圧縮することはクティにすら出来ない自分だけの技術だ。

 当然ながらサニー先生にも出来ないし、レキ君にもできない。おそらくお婆様達にも無理だろう。


 魔力というものは様々な顔を持っている。

 最たるものが燃料だろうか。

 もちろんこの世界――オーリオールでは生物は必ず魔力を持って生まれてくるので生命活動に必要なものという認識もある。

 特殊な才能が必要になるが魔力で身体を強化することもできる。


 しかし魔力というものは基本的にそのまま使用されるものだ。

 何かしらの変化を齎すものは全て魔力以外のものが魔力を燃料として消費した結果の産物でしかない。



 自分だけが使えるこの圧縮という特殊な技術は魔力を燃料としてより上位の存在である精霊力に変換することができる。

 その他にも魔力をより感知できる部分的な身体強化をさらに強化するためにも使える。

 魔力を見ることが出来る魔眼の強化などがコレにあたる。



 では圧縮という特殊な技術がほかにはどんなことに使えるか。

 今回自分が作り出した魔術がその答えとなる。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆








「……まったく新しい術式を作り出す『圧縮術式』……か。凄まじい魔術だ」


「リリーが作ったこの新しい術式を使えば処理能力が今までの……にーしーろー……18倍になるよ!? どうなってるのこれ!?

 私が頭を捻りまくってパワーアップさせて遂にどん詰まりになった処理能力があっさり向上しちゃったよ!?

 すごいよ、リリー! さすがリリーだ! 私はいつでも信じてたよ!」



 サニー先生がクティパッド上の共有領域に展開された術式群を見て唸り、クティは絶叫しながらスピンして空中を駆け上がりつつも、自分に突撃してヒシッと抱きついてきた。

 クティの優しい感触を顔全体で感じながらも最高傑作ともいえる自分の作った魔術に胸を張る。



「今までのような既存の魔術やクティ製の魔術の改変とは違って完全に1から作り上げた君だけの魔術か。

 本当に大したものだ」


「さっすが、リリーだよね!

 私じゃあこれは思いつかなかったなぁ。……いや思いついても多分作れなかったかも」


「かもしれないな。

 圧縮というリリーだけの技術を用いているから、これはクティ云々ではなくきっとリリー以外には誰にも作れない魔術だったろう」



 張り付いていた顔から離れたクティが神妙な顔でサニー先生と『圧縮術式』について話している。

 確かにこの魔術は自分の特殊技術を再現するようにして作られている。

 圧縮という技術を使い続け、その性質や特性を完全に理解しているからこそ作れたのだ。

 圧縮の技術を知っているだけでは難しいだろう。実際に使って身体で感じ、心で感じ、そして魔力で感じたからこそ、だ。



 そしてこれほどまでの魔術を作れたのも自分の視野の狭さに気づけたからこそだ。

 自分は今までサニー先生の言うとおり、既存の魔術やクティ製の……所謂完成している魔術をベースとしてそれに改変を行うことしかしてこなかった。

 新たに魔術を構築できる変異型2種という特殊な存在であるのに、ベースとなる魔術の改変しかしてこなかったのだ。

 そんな状況ではベースとして『魔紋探信』を選んだ以上、限界が見えていたのだ。

 どうしても『魔紋探信』という魔術の限界の領域を抜け出すことが出来ず、その結果としてあの苦悩の日々だったわけだ。


 しかし今は違う。



「『圧縮術式』によって作られた新たな術式を使って新たに物理情報を取得する魔術を作る。

 『魔紋探信』をベースとして作っていた今までの魔術ではどうしても物理的障害により限界があった。

 しかし術式自体を新たに作ってしまう以上その限界はなくなる……。やはり凄まじいな」


「事実上『圧縮術式』で術式を作ってしまえば弱点のない魔術が作れちゃうからねぇ……。

 クティパッドの処理のキー部分が術式1個で成り立つっておかしいレベルじゃないんだからね? リリー、私自信なくしちゃうよ? でもリリーがすごい事が証明されて嬉しいよ!

 嬉しいんだけど! だけど! あるえー!?」



 驚愕の事実にクティの脳が遂にスパークし始めてしまったようで、嫉妬と歓喜の感情が入り混じり放電現象を起こしてしまっている。

 クティは天才を超える大天才といえるほどの魔術師だ。

 そんな大天才魔術師であるクティは当然ながらソレに見合う魔術の腕に自信を持っている。

 だからこそそれを追いかけ続けている自分を暖かく見守っていられた。

 しかしこの『圧縮術式』は彼女の領域に踏み込むことが出来るほどの魔術だと認識したのだ。

 その結果として彼女に追いつきかけている自分に対する嫉妬と追いついてきてくれた嬉しさが混同してしまっているのだろう。

 今までにない感情に困惑してしまうのは仕方ない。


 だからこそ自分はクティに感謝する。

 最高傑作といえるこの『圧縮術式』は実のところまでまだクティには遠く及ばないと思っている。

 『圧縮術式』は術式を新たに作り出す魔術でしかなく、その術式をどう使うかがポイントだからだ。

 クティの領域に踏み込めたからこそ、クティという存在の神がかったその圧倒的なまでのすごさがわかる。

 まだまだ自分は追い続けることができる。あの小さくも頼もしく、愛すべき背中を。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 『圧縮術式』により新たに作られた術式は魔術の歴史を大きく塗り替える存在といえる。

 例えば明かりの魔術がある。

 この魔術は既存の魔術でも初級に位置する非常に簡単な魔術ではあるが、術式の数は1つではない。


 術式単体で成立する魔術など初級にすら存在しない。

 しかし『圧縮術式』により圧縮された術式はそれを覆した。

 明かりの魔術に使われている術式全てを圧縮し、たった1つの術式として成立させてしまったのだ。

 これにより得られた結果は実に劇的だ。


 まず消費魔力。

 既存の魔術でも大して使わない魔力がさらに少なくなり、術式を削減し軽量化された状態からさらに消費魔力を下げることができた。

 明かりの魔術という消費魔力の少ない初級の魔術でありながら、さらに消費魔力を下げることが出来、結果として既存のソレと比べて400分の1という脅威の消費魔力となったのだ。


 非常に単純な明かりの魔術ですらこれほどの効果を齎した『圧縮術式』。

 しかし『圧縮術式』の真価は術式の量の多い魔術にこそ発揮される。


 様々な詠唱――設定に対応するために幅の広い術式構成となっている中級、上級の魔術では1つの術式とすることは出来ないが、術式の数を大幅に減らすことは可能だ。

 その大幅に減った術式の分だけ消費魔力が下がり、結果として消費魔力だけなら中級の魔術は初級以下。

 上級の魔術でも初級の中でも上位に位置する程度の消費魔力となるほどの結果が出ている。

 さらに既存の魔術とは比べ物にならないほどの術式量で構成されているクティ製の魔術となると最早別物というしかないほどの消費魔力の削減になる。

 今までクティパッドを起動するのに必要だった精霊力は自分が負担しなければ起動不可能だった。

 それがあっさりと覆った。


 『圧縮術式』を使用したクティパッドはクティ1人で何十台と通常起動――1時間制限――できるようにすらなっている。

 しかも『圧縮術式』で作られた術式で処理能力を大幅に向上させた状態でなので、その分まで考えると最早数字にするのも馬鹿馬鹿しいほどの消費削減だ。



 次に魔術の制御。

 術式が増えると魔術は制御が難しくなる。

 魔術の制御とは基本的に魔術が発動するまでの制御だ。

 その後の制御は詠唱時に決定した通りに行われるので問題とならない。

 術式が増えれば制御が難しくなる。

 それは言い換えれば術式が減れば制御が容易くなるという事に他ならない。


 『圧縮術式』で術式を作り上げた既存の上級魔術は初級レベルの制御力で扱うことが可能になってしまっている。

 制御の簡易化だけなら問題も少なく……はなかったかもしれないが、それに消費魔力の大幅削減というものが追加されてしまうと最早手がつけられない。


 その消費魔力の多さで上級に位置している魔術もたくさんあるのだ。

 その制限がなくなれば……魔術に革命が起こり、世界は大混乱どころの話ではなくなるだろう。

 全ての魔術師が大量破壊兵器となるのだから。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 妖精ズと自分しか知らないことであるし、『圧縮術式』を外に出すということはまずない。

 だから実際にはそんなことにはならないが、『圧縮術式』の持つポテンシャルと危険度は天井知らずだ。

 きちんと対策はしておく必要がある。

 そのためにも『圧縮術式』には使用制限が組み込まれている。

 使用制限なしの『圧縮術式』はすでに破棄されている。

 最早制限有りの『圧縮術式』から解析して制限無しの『圧縮術式』を作ることは出来ないようになっているほどだ。


 使用制限はもちろん自分と妖精ズの2人にしか使えないというもの。

 将来的に『圧縮術式』を残すつもりもない。


 作ってしまってから言うのもなんだが危なすぎて危なすぎて世に残すことは絶対できない。


 だが有用すぎる魔術であることは疑いようがない。というかすでに結果が出すぎている。

 だから使わないという選択肢はありえない。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆








【テストナンバー4577。状況……開始!】



 『圧縮術式』で作られた新規術式群により展開された魔術が世界を塗り替えるべく情報を集めていく。

 集められた情報がプールされる蓄積領域は以前用意した領域では最早コンマ数秒ですら持ちこたえられなくなってしまったために新たに『圧縮術式』で作られた術式で専用に用意してある。


 圧倒的なまでの容量を誇る蓄積領域に凄まじい速さで情報が蓄積していき、すぐにその情報はフィルターを通して精査されていく。

 その処理の早さも以前とはすでに比べることなどおこがましいほどのものだ。




 魔術が起動してここまでコンマ数秒という領域。

 刹那といえる時間で構築された世界が遂にその姿を現した。




上級中級の既存魔術は制御の難しさの他に消費魔力によってその位置になっている物が多く存在します。

しかしリリーが今回作り出した『圧縮術式』で術式を圧縮してしまえば、最早魔術師ならば誰でもどんな魔術でも使えてしまうことになります。

これを革命といわずして何というのでしょうか。

実に恐ろしい魔術なのです。


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