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濁った瞳のリリアンヌ  作者: 天界
第一部 第10章 4年目 後編 3歳
212/250

186,心癒のリリアンヌ



 自分の誕生日まであと残り2巡り(週間)といったところ。

 別に誕生日までに魔術を完成させなければいけないわけではないが区切りとしてはちょうどいいので目標にはしている。

 しかし立ちはだかる難題の数々に阻まれてかなり絶望的だ。

 クティの方も処理能力向上の伸び悩みに苦しみこちらも絶望的といっていいだろう。

 それでもフィルター設定は日々増えていっているのがまだ救いだ。

 『情報解析』により得られた情報を精査するためにも絶対必要なものだが、躓くことなく順調なのはこれくらいしかないのもまた事実。

 寝ても覚めても難題解決のために頭を捻り続けてきたがちっとも決定的な案は出てこない。


 遂に見かねたサニー先生から今日は完全休養を取るようにと厳命を受けてしまった。



「わふぅ~」


「はう……あぶ……むふぅ~」



 レキ君の尻尾がぱたぱた、と自分の顔を優しく撫でる様に薙いでいく。

 毎日丁寧に梳かれているこのお尻尾さまは大変気持ちがいい。

 顔を埋めてもよし、ぱたぱたされてもよし、ともふもふレベルは最高峰といってもいい。

 自分の若干やさぐれた心も徐々に癒されていくのがわかる。



「レキの尻尾はなかなか気持ちいいよねぇ~」


「わふ」


「わっぷ……ふふ……むふぅ……」



 同じくサニー先生から完全休養を言い渡されているクティが自分の頭の上で一緒にレキ君の尻尾による癒しを受けている。

 自分だけでなくクティもこのお尻尾さまは大好きだ。

 でもクティは残念ながらもっふぃーではないので自分ほどこのお尻尾さまを堪能することはできない。


 ちなみにレキ君はクティパッドでナンプレをやっているので文字を書く余裕はない。

 尻尾の動きはほとんど無意識にやっていることなのだろう。

 それでも優しく撫でるような動きなのはさすがだ。


 レキ君がちょっとでも強めに動かしたら自分なんて軽く吹っ飛んでしまうことは想像に難くない。

 尻尾とはいえレキ君が本気になれば凄まじい凶器になりうる。

 しかし無意識でも自分に対しては完全なセーフティがかかり、絶対にそういったミスを犯さない。



 まぁクティがかけてくれているオート防御の魔術や自分が幾重にも展開している魔術があるので、例えすでに体重が軽くトンを超えているレキ君が乗りかかってきても大丈夫だけど。



「これだけでも結構気持ちいいのにリリーはもっと気持ちよく感じる方法を会得してるんだよねぇ?」


【うん。でもこれはなかなか難しいと思うよ?】


「そうなんだよねぇ~……。なんで私が魔力を纏っても同じような気持ちよさは得られないんだろう?」


【不思議だねぇ~】



 小首をコテン、と傾けると頭の上のクティがコロン、と落ちてくる。

 床に落下する前にレキ君の尻尾で掬い上げられたクティが尻尾の動きのままに自分の頭の上にまた戻ってくる。

 絶妙すぎるタイミングだがクティとレキ君のコンビプレイはかなりのものだ。この程度で驚いていてはもたない。



「私が魔力を纏ってレキに触ってもレキは気持ちよくならないしねぇ~。

 ほんと、リリーの魔力は不思議だよねぇ~。

 しかもその状態で私とかサニーを触っても特に変化なしっていうねぇ~」


【そうだねぇ~。結局効果があるのはレキ君や専属達だけだもんね。

 みんな獣、もしくは獣族っていう共通性はあるんだけどね】


「あとは毛の部分を通してでしか効果がないっていうのもあるね」


【うん。直接肌を触ってもだめだったのはびっくりだよねぇ~】



 そう、自分のもふもふによる快感はどうやら毛を介さないと効果を発揮しないようなのだ。

 これはレキ君や専属達へのご褒美などで何度も試した結果から確定している。

 しかし髪の毛や髭などでは効果がなかった。

 いやより正確に言うならば若干あったけど、それは快感といえるほどではなかったみたいだ。


 総合的に見て獣の毛の部分に自分の魔力に反応する何かがあるのではないだろうか、という結論に達しているがそれ以上はわかっていない。

 肌や体調に良い影響を与えているのは自分の魔力が魔力の流れを拡張し、スムーズにしている副産物によるものだ。


 しかしこの副産物。侮れないほどにすごい影響を与えている。

 レキ君は特殊な例だろうから置いておくとして。

 専属達は一目見て違いがわかるほどに違いが出ている。

 もふもふ前と後では別人……というほどではないがソレに近いほどに肌艶がよくなり、体調がすこぶるよくなる。

 それにより精神的にも良い傾向が生じ、正のスパイラルとでも言うべき循環が生まれる。



「ミラのあのお肌の輝きようは凄まじいものがあるよねぇ~」



 頭の上のクティが見ているだろう方向には先日ご褒美をもらえたミラがいる。

 自分の目から見ても魔力の流れが非常にスムーズで絶好調なのがよくわかる。

 ほんの少しではあるが、あった魔力の影が綺麗に消えているのも確認している。あれは放っておくと病気の元になるがご褒美のおかげで消失し、すこぶる健康体だ。

 魔力的に見ても染み1つない珠のお肌といえる。……魔力以外では見えないけど。



【解決策が思いつかない苛立ちからもふもふに逃げて結構強めにやっちゃったけど……ミラには更なるご褒美だったのかな】


「……だねぇ……」



 先日のご褒美の激しい光景が思い出される。

 それはそれは激しく……失神と覚醒を繰り返したミラは久しぶりにご褒美で足腰立たなくなるまでになった。

 サニー先生に止められなければ大変なことになっていただろう。



 ……いや、止められる前にすでにタイヘンナコト(・・・・・・・)にはなっていたけど。



【……レキ君の尻尾もいいけど、ミラの尻尾もいいよね】


「うん、いいよね」



 レキ君の尻尾をすりすりしながらミラの尻尾にも狙いを定める。

 今日は完全休養だ。ならば休養しなければいけない。

 これは使命だ。ある意味使命なのだ。

 ならば全力でその使命をやり抜かねばならない。

 手を抜くなんてそんなことはできない。


 つまりは――。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







「お、お嬢様ぁ……」


「むふぅ~」


「はぅぅぅ……」



 未だにナンプレをやり続けているレキ君を隠すために幻術空間をぎりぎりのところまで展開している状態でミラのお尻尾さまとレキ君のお尻尾さまを堪能する。


 なんとも贅沢なことにダブルお尻尾さまによる挟み込みプレイだ。


 上から下から世界の至宝といえるもふもふがもふもふでもふもふなのだ。

 これはもうやばい。


 だが残念なことにここはレキ君ルーム。

 幻術空間を展開しているとはいえ、ミラはそのことを知らない。

 そのため魔力を纏って快感を与えるようなもふもふはできない。……できなくはないが、お婆様やエナなどの視線を受けながらのプレイとなるため、ミラの新たな扉が完全に開き兼ねないので自重した。


 つまりは自分へのもふもふレベルも下がってしまうということだ。

 それでもかなり気持ちいい。むしろ気持ちいい。至福すぎる。



「……ふむ。なかなかだな」


「……これは癖になるねぇ~やばいよやばいよーまじやばいよー」


「むふふぅ~」


「はうぅぅ……」



 クティだけでなく、サニー先生も参戦してダブルもふもふを堪能する。

 普段もふもふにあまり興味のないサニー先生すらも参戦するほどの危険な魅力を秘めたプレイに最早言葉はいらない。


 ただひたすらに齎される至福の時に癒され続けた。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 気が付けばナンプレに飽きたらしいレキ君により尻尾からお腹の上に移されていた。

 どうやらあまりの至福空間に眠ってしまっていたようだ。

 ミラもレキ君がお腹の上に自分を移動させたから解放されて定位置での待機に戻っている。

 どのくらい寝ていたのかはわからないがそう長い時間ではなかったようだ。



【レキ君、おはよ~】


「わふ(おはよ、リリー。よく眠れた? 最近辛そうだったから心配してたんだよ~?)」


【ごめんね、心配させちゃったね。でも大丈夫。レキ君とミラのおかげでいい気分転換になったと思うし、明日からまた頑張るよ!】


「わふふ(頑張ってぇ~。ボクは応援しかできないけど何かできることがあった言ってね!)」


【ふふ……。その気持ちだけでとっても嬉しいですよ。

 レキ君は毎日元気にしていてくれればそれでいいんです。

 あ、でもちゃんと勉強はしないとだめですよ?】


「わ、わふぅ……(も、もちろんだよ? 大丈夫だよ? ほんとだよ?)」



 少し焦って視線を逸らすレキ君の仕草にほっこりしながらも今朝まで感じていた焦りからの苛立ちはすっかり消えてなくなっていたのを実感することができた。




すっかり癒されたリリーでした。

レキ君とミラのダブルお尻尾さまによる挟み込みプレイ……。

やばいですね。


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