20,妖精と初めての・・・と Part,3
不思議体験の翌日、すごい苦味で目が覚めた。
毒でも盛られたのか!?と思うほどの苦味で、眠気が一瞬でどこかに消し飛んでしまうほどだった。
おかげで、思いっきり口の中の苦味を吐き出してしまった。
「きゃっ!リリーちゃん大丈夫よ、これはお薬なの。
ちょっと苦いけど、我慢してね?」
苦味を吐き出した結果、口の中は大分ましになったがそれでも顔を顰めるくらい苦い。
どうやら、寝ている自分に薬を飲ませようとしたら、苦味で起きて吐き出してしまったようだ。
「クレア、ほらこれでまずはリリーを拭いてあげて、毛布はこっちに取り替えて」
「ありがとうエナ、ほ~らリリーちゃん綺麗綺麗しましょうねぇ~」
思いっきり吐き出したので、掛けてあったバスタオルのような軽い毛布に薬が飛び散ってしまったようだ。
エナに汚れてしまった毛布を渡し、渡された布で服や顔を綺麗にしてくれるクレア。
服にも飛び散ってしまっていたようだ。
薬は魔力がないので見えないので、どこまで飛んだのかわからない。
綺麗にしてもらったあとに、エナが違う毛布を掛けてくれる。
最近は仕事で忙しいのだろう、めっきり会うペースが減ったクレアだが今日はいるらしい。
忙しくて大変だろうに、手間を掛けさせてしまって申し訳ない気持ちになる。
「はい、綺麗になったわねぇ~よかったねぇ~リリーちゃん」
そんな自分の気持ちとは裏腹に、嬉しそうな笑顔のクレアだ。
久しぶりというほどではないが、会えない時間の分だけ笑顔が素敵になっている。
普段のテオやエリーのように、自分を構っている時間は本当に幸せそうなのだから仕方ない。
でも、自分に非があるので謝っておこうと思ったのだが、謝ったら謝ったでまた大騒ぎにならないかとちょっと不安にもなる。
うーん……どうしたものか……。
そんなことを考えていると、エナが。
「目も覚ましたみたいだし、お腹空いてるだろうから下で何か作ってきてもらうわ。
あと、これも洗濯に回しておく、ランドルフ様からは熱は引いたけどしばらく安静にするようにって言われてるんだから、ちゃんとベッドに寝かせておくのよ?」
「は~い」
なんとも妹に言い聞かせるように、クレアに言い含めてから部屋を出て行く。
クレアもクレアで可愛らしく返事をしている辺り、二人は本当の姉妹なんじゃないのかと思ってしまう。
「さぁリリーちゃん、ちょっとだけ寝ましょうねぇ~。
エナがすぐにご飯持ってきてくれるわよぉ~。
そしたらお薬頑張って飲もうねぇ~」
げ……あの苦いのまた飲まなきゃいけないのか……。
1歳児にあの苦さはかなり無茶なんじゃないかねぇ……。
とりあえず、寝かされても首を振っていやいやしておく。
「だめよぉ~ちゃんとお薬飲まないと、きちんと治らないかもしれないんだから~」
むむぅ……せめて牛乳とかで味を円やかにしておくれよお母ちゃん……。
牛乳っぽいものは何回か飲んでいるので、あるのは知っているがそれを伝える術がない。
こういうときに喋れないという制限がめんどくさい。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
10分くらいで、エナが食事を持って戻ってきた。
部屋にいい匂いが充満する。
さて、食べようと思ったらどうやら今日はクレアが食べさせてくれるようだ。
誘導こそ必要だが、もう一人で食べられるようになったんだがなぁ。
まぁ一応病人だから、この辺は妥協しよう。
クレアが嬉しそうに、あーんとか言って、スプーンを口に運んでくれる。
クティはそれを見ながら自分に運ばれているわけでもないのに、あーんと口を開けている。
そして、病人食のような離乳食の初期の頃のような具がどろどろの胃に優しそうなスープを食べる。
スープでもちゃんと噛んで食べる。
この辺は生前の小さい頃から染み付いた癖だろうか。
牛乳を噛んで飲む、と同じ感じ。
クティも実際には食べていないのに、美味しそうな表情ではむはむ噛んでいる。
そういえば、クティが何かを食べているところを見たことが無い。
見るのは大抵今のような感じで、自分達が食事しているところで何もないのにはむはむやっているところだ。
【クティは食事はしなくてもいいの?】
なので聞いてみたのだが。
「妖精族は基本的に食事はいらないんだけどねー。
リリーが美味しそうに食べてるから、なんか真似したらおいしいんだよねぇ~。
びっくりだよねー」
なんだかよくわからない答えが一緒に返ってきた。
食事がいらないって、栄養補給はどうしてるんだろうとか思ったが、それ以上に何も食ってないのに真似しただけで美味しいって……。
何?もしかして他人の味覚とかそういうのを受信してんのこの子?
やだ怖い!
「大丈夫だよー別に心が読めるわけじゃないしー真似してると美味しいって感じるだけだよー」
極々たまにこちらの心を読んだように、的確に答えてくることがあるクティさん。
やだ怖い!
【やだ怖い!】
「ぷふーっ!」
魔力文字にしてあげたら、笑われた。
こんな感じに冗談も言い合えるくらい仲良くなったのだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
昨日の夕食を食べていなかったので、エナが持って来てくれた量では少し足りなかったが、それでも7分目くらいにはなったのでよしとしたのだが……。
食事の後に地獄の苦い飲み薬を我慢して飲んで、お昼寝タイムとなったのだが、如何せんさっきまで寝ていたので眠くない。
エナがその美声で、優しく子守唄とか歌ってくれるが、全然眠くない。
熱も下がってるし、体調も病み上がりってだけで悪くない。
あーこりゃぁしばらく暇でやばいかもなぁ。
とか思ったりして現実逃避をしたりしながら、適当にクティに話を振ろうと魔力文字を作成しようとしたら。
「文字の勉強は治るまで禁止!
訓練も禁止!
わかった!?」
という始末だ。
ぶっちゃけ、クティとの意思疎通には魔力文字が必須なのだが、それも禁止らしい。
つまるところ、ベビーベッドに寝かされたままで会話もできず、暇で暇でしょうがないというわけだ。
なので、子守唄を歌うエナと自分のお腹をぽんぽんと優しく叩いて睡眠誘導しようとしているクレアをぼけーっと眺めるくらいしかやることがない。
しばらく眺めていたが、エナが手元に何かを取り出し、それを見た後クレアに告げる。
「クレア、そろそろ時間よ戻らないと」
「えぇ~もうそんな時間~?
リリーちゃんの傍にずっとついててあげたいわぁ~。
はぁ~ごめんねぇ~リリーちゃん……お母さんがんばってくるから、リリーちゃんは大人しくして早く元気になってね?約束だよ~?」
どうやら、今日は休みというわけではないらしい。
溜め息なんてほんとに珍しい、というか初めて見たかもしれない。
いつもは明るく笑顔でのほほんとしているのだ。
溜め息を吐く姿なんて微塵も想像できない。
額にキスして名残惜しそうに見つめてから、クレアは仕事へ向かっていった。
病気の自分の息子……じゃなかった娘を、心配するのは当然なのだろうが最近のクレアの忙しい様子を見ると、こっちが心配になってしまう。
仕事もほどほどになーお母ちゃん。
結局赤ん坊なので出来ることなんてほとんどないと諦めて、労いの言葉を心の中だけで呟く。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
しばらく暇を玩んでいると、テオとエリーが仲良く帰ってきた。
どたばたと全力疾走して。
「こら!二人とも!
廊下は走っちゃいけないって前にも言ったでしょう!
それに手洗いうがいはしたの!?
リリーが病気なんだから、普段よりももっと気をつけないといけないのよ!」
「「はーい……」」
部屋に入った瞬間にエナに窘めれて、すごすごとまた部屋を出て行く二人。
微笑ましいなぁとか思ったが、もちろんクティはドヤ顔だ。
君がいったんじゃないよ?エナさんが言ったんだよ?わかってる?ねぇわかってる?
突っ込みたいが、とりあえず魔力文字禁止令が出ているので我慢しておく。
しばらくして戻ってきた二人は、ちょっと小さめの声でベビーベッドの横に座りながら、今日学校であったことを話してくれた。
朗読は禁止なので、学校の話をしてくれているのだ。
「それでね、ヤティルが花壇の花を勝手に摘んじゃったのよひどいよね」
「でもそれは教室に飾るための花だったんだろう?」
「まぁ確かに、教室の花瓶に飾ってはあったけど……花壇の花を勝手に摘むのとは話が違うと思うわ」
学校の花壇も漏れなくエリーの管轄のようで、勝手に摘んでしまった友達に憤慨しているご様子。
テオはきちんと理由を理解しているのか、相手の肩を持っているようだが、エリーとしては花壇の花ではなく飾るのなら別の花を用意すべきだと思ったようだ。
まだ7歳の子にはその辺はまだ難しいんじゃないかなぁと思ったのだが、当然口にはしない。
そんな感じで二人の学校の話を静かに聞いて過ごした。
まだまだ続きます
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