179,会議のリリアンヌ
クリストフ家お誕生日ラッシュ第1陣のクレア、テオの誕生日は無事終了した。
2人も大いに喜んでくれて大満足のご様子だったし。
だが、第2陣は結構すぐにやってくる。
当然だ。何せラッシュなのだから。
第2陣は2人の誕生日があった9の月から約一ヶ月の期間しかない。
次のターゲットはクリストフ家長女――エリスティーナ・ラ・クリストフ。つまりは我らがお姉さまである。
とりあえず今回は一応一ヶ月しかないとはいえ、多少の猶予があるのも確かなのでテオ達とプレゼントを考える時間もそこそこある。
ちなみにクレアとテオの誕生会は外から客を招いて大々的に行われたが、エリーの誕生会は身内のみの誕生会になる予定だ。
なのでもっと身内限定でやっていいプレゼントでもよいことになる。
身内限定でやっていいプレゼントとは、要するに幼女メイドとか我が侭券とかそういうのだ。
あぁいうのを客を招いて行うのはさすがにアウトだ。
主役が許可しても自分的にアウトなのでアウトだ。
しかし去年も似たようなことをしているので今年も同じ事をするのでは味気ない。
今年は主役以外で色々アイディアを出し合って合同プレゼントにしている事もあるので今回のエリーのプレゼントも合同パターンになるだろう。
「それでどうしよっか……」
「どしよぅ~」
「う~ん……。ダンスも歌もやっちゃったし……」
「うぅ~んぅ~」
「あぁ……悩んでるリリーも可愛いなぁ……」
「にーに、ちゃぁんとかんがえてぇ~」
一緒にレキ君のふわふわのお腹の上で寝そべりながら、エリーへのプレゼントを考えているテオが蕩けそうな表情をして心此処にあらず状態になってしまったのでぺしぺし、叩いて正気に戻す。
「ハッ!? あまりにもリリーが天使すぎて意識が飛んでたよ!」
「むぅ~」
「ごめんごめん。ちゃんと考えるから機嫌直して。ね?」
中等部に通うようになってからテオはぐんぐん男らしくなってきている。
あのイケメン王子殿下と一緒にいると実に目の保養になるであろうくらいに格好いい。
毎日見ているのに違いがわかるくらい急成長しているテオにこの年頃の子はちょっと目を離すとどんどん成長していってしまう事を思い出した。
きっと1年もしないうちにテオはもっと男らしくなって、もっともっと格好よくなるだろう。
今でも十分格好いいが、まだまだテオの成長は止まらないだろう。
「それにしても何かないかなぁ……。エリーが喜ぶこと……。エリーが好きなこと……。
花? リリー? 格闘?
……花でリリーを飾ってリリーに格闘技を教える?
だめだめ! 危ない!」
テオの考えがどんどん変な方向に行っている。
でも自分もいいアイディアが浮かんでこない。せいぜい浮かんでくるのはエリーに自分を好きにさせるくらいしかない。
まぁ好きにさせるといってもエリーも自分もまだまだ子供。
せいぜいが1日中一緒に居るとか、着せ替え人形にさせられるとかだろう。
……着せ替え人形?
「にーに、みんなでおきがえするのはぁ~?」
「お着替え? 着替えて……確かにリリーが色んな服に着替えてファッションショーをしたら喜ぶね。
ボクもみたい。すごく見たい!
イイネ! このアイディアすごくいいよ! リリーのファッションショー!」
「えぇ~」
みんなで着替えて絵でも描いて貰おうかと思って提案したのだが、なんだか変な方向に向かっていってしまっている。
しかもテオはもうやる気満々だ。
まずい……。非常にまずい。
このままではボクの考えた最高の妹展覧会が開催されてしまう。
「に、にーにもでないとだめぇ~」
「え、ボクも? あ、そうだね! ボクがリリーをエスコートしないと!
よーし! 決まりだ!
エリーへのプレゼントはリリーのファッションショー!」
やっぱり暴走気味のテオだがとりあえず観客からこちら側に引き込んだのであとはどうとでもなるだろう。
エスコートするんだから彼もしっかりと着せ替え人形になってもらう。
さっそくテオに手を引かれてエナとお婆様にファッションショーの話をしにいく。
話を聞いた2人もかなり乗り気のようで、どんな服を用意するかで大いに盛り上がった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
【テストナンバー247、開始】
増幅強化された魔力の波が限定空間を舐めるように走っていく。
走る波が触れた全ての物理的障害から得られた情報が全て構築された情報蓄積用空間に集まっていく。
情報蓄積用空間から更にフィルターを通し、厳選された情報だけが3Dワイヤーフレームとして空間投影される。
「ふむ。まだまだ甘いが、かなり情報を選別できてきているな」
「24区画から45区画までのフィルターの精度を上げたほうがいいと思うかな」
「ならば79区画のフィルターは逆に下げたほうがいいだろう」
【主隔壁Bで大きく篩いにかけちゃうのも手かなぁ】
「ふむ……。ありだな」
「ありだね」
『魔紋探信』の波部分を抜き取って改良に改良を重ねた強固な魔力の波。
この部分だけでも既存の魔術を大きく超える魔力量を必要とする術式構成となっている。
多層構造の魔力の波により、最初の波が物理的障害にぶつかっても次の波へと移り変わっていく。
魔力の波の間に情報解析を挟んでいるので情報はどんどん取得できる。
波が壊れる度に最後尾に波が補充されるようにしてあるのでとにかく魔力を喰う大飯ぐらいの魔術だ。
今までの『魔紋探信』を連打するような魔術とは違い、魔力の波が1つの生き物のように連動しているのでちょっとやそっとでは全部壊される事はない。
しかしこれでは『情報解析』により集まってくる情報が凄まじい量になる。
そこで1度情報を蓄積できる空間を確保して、そこからフィルターを通して厳選された情報だけを取得する事にした。
しかし問題はこのフィルター。
必要な情報だけを抜き出すだけでもとんでもなく面倒くさい。
とにかく徹底的に篩いにかけて情報をこそぎ落としていかないと無駄な情報が多すぎて使い物にならない。
しかもこの篩いも必要な情報に応じて様々な設定を作らないといけない。
そのためにフィルター設定を区画分けしてナンバーを振り、さらに分けられた区画を壁で区切る。
街を作り上げるように壁を築き、区画整理する、そんな感じだ。
今はまだ手動でフィルターを変更しているが、最終的には『精神感応波特定』などを使って無意識での思考制御で瞬時に切り替えられるようにしたい。
そのためにも求められるのは様々な状況に対応したフィルター設定だ。
今現在でも基本的なフレーム作りに膨大なフィルターを必要としている。
これを状況に応じて増やしていくのだからとんでもなく時間がかかることは想像に難くない。
その辺もなんとかするためにクティやサニー先生とも協議しているがなかなか良いアイディアはでない。
「だんだんと情報が絞れてきているとはいえ、やはり空間投影の速度も問題になってきているな」
「パッドの方の処理能力の引き上げも頭打ちになってきたし、こっちは限界かも……」
【やっぱりシングルコアではここまでが限界かなぁ……。そろそろデュアルやクアッドに移行する時期かな】
現在の空中投影技術はクティパッドの処理能力に依存している。
何せこの空中投影技術はクティパッドが現在では最高性能だからだ。
普通に魔術でやる場合は様々な魔術と合わせて使わないといけないので非常に面倒な上に管理が大変になる。
その辺を全部クティパッドに丸投げしているのだ。
「デュアル? クアッド? 何それ!」
【今の所クティパッドに使っている処理システムは1つだけでしょ?
それをいくつも2つとか4つとか作って並列処理させるの。あとはキャッシュ……使用頻度の高いデータなんかを蓄積して共有できるようにするといいかも】
「そそそそそ、そんな方法が!?」
「ふむ、確かに理に適っているが……」
「精霊力の消費がたぶん2つにした場合は単純に2倍じゃ済まないね。4つにしたら一体どのくらい消費するのかわからなくなるかも」
【そうなんだよねぇ。今は私が精霊力を供給してるからいいけど、いずれはエーテル結晶体から供給できるようにしたいから精霊力の消費量は抑えたいんだよねぇ】
クティパッドの進化はまだまだ止まっていない。
現在の自分がいないと使えない状態からの脱却の為にエーテル結晶体を燃料にする計画が持ち上がっている。
だがエーテル結晶体が非常に優れた燃料であっても限界が存在する。
今現在のシングルコアでもかなり短時間でしか起動できないのに、コアを増やすのは最早起動できるかどうかも怪しいことになってしまう。
「まぁでもリリーが使う分には問題ないし、クアッドだっけ? とりあえず4つに増やしてみるよ」
「そうだな。我々ではシングルコアで十分だ。
エーテル結晶でのバッテリー計画はシングルコアの方で進めればいいだろう」
【そうですね。エーテル結晶体の蓄積量も時間をかければ増やせるわけですからいずれはデュアルやクアッドにも対応していくということで】
「うむ、そうだな。
心配はしていないが、クティ。大丈夫だろうな?」
「たぶん大丈夫。というかリリーのお願いを叶えられないわけがない! 私はやるよー!」
【ふふ……。クティ、頑張って!】
「がんばるよー!」
クティパッドの更なる進化を期待し、フィルター設定は日々増えていくのであった。
プレゼントを考えるのも大変です。
ちなみにエリーも中等部に進学したら外部の人を招いての誕生会が開かれるでしょう。
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