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濁った瞳のリリアンヌ  作者: 天界
第一部 第10章 4年目 後編 3歳
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176,観察のリリアンヌ




 テオの誕生日会は普段の手作り誕生会とは違って、今回は大々的に行うようだ。

 何せテオは今年から中等部に進学している。

 初等部でも結構な有名人ではあったようだが、中等部になってからは生前で言う所の生徒会のような組織にも所属して派手に活動していたのだ。

 どのくらい派手かというと、銀閃の貴公子とか言われるくらい派手だったそうだ。

 おかげで自分と遊ぶ時間が減って悲しそうにしていたのは記憶に新しい。



 その分エリーが喜んでいたけど。



 そんなわけで、人脈がかなり広がっているテオの誕生会なのでそれなりの人数が来る。

 そこで大々的に行う事にしたそうな。

 もちろんお婆様とお爺様の部下達が念入りに調査をして厳選はしている。

 テオはクリストフ家の長男なのだ。

 自分以上に取り入ろうとしてくる人間は多い。


 とはいってもクリストフ家は長男が必ず家を継ぐというわけではない。

 だがそれでもまだまだアレクが現役なので家督云々は早いかもしれないが、まず間違いなく自分がクリストフ家を継ぐということだけはないだろう。



 時間通りに誕生会が始まり、続々とたくさんの人が入ってくる。

 公式な貴族のパーティというほどではないので、人種に合わせた変装の必要性がないため様々な種族が入り乱れている。


 始まってまだ少ししか経っていないのに会場は結構な賑わいだ。

 テオはアレクとクレアと一緒に3人で続々と入場してくる人達から祝福の言葉を受け取っている。

 プレゼントに関しては全て事前に中身がチェックされ、会場のどこかに山積みされているらしい。

 当然見えないのでどこにあるんだかわからない。


 自分はエリー、エナ、お婆様、お爺様の4人でテオ達を一段高いところから見ている。

 テオ達がいる場所が1階だとすると2階に設けられた休憩所のようなところだろうか。

 始まってすぐここに来るような輩は事前チェックで排除されているので会場中をゆっくり見渡せる。

 クリストフ家の長男――次期当主と目されている――の誕生会だけあり、皆着飾って如何にも貴族のパーティといった具合だ。


 自分もお婆様とエリーが意見を白熱させて選んだドレスを着ている。

 今回はテオが主役なのでシンプルに抑えていて、腰の右側に大き目の花のコサージュがあるのが1番目を引くくらいだ。

 エリーは当然、自分と鏡映しのドレスを着ている。

 2人並んでいるとそれだけで美しく心を震わす絵画のような雰囲気を醸し出している、とお褒めの言葉を頂いている。


 お婆様もエナも今回は大人しめでシックに纏めている。

 お爺様はいつもの軍服なのであまり変わらない。


 後ろに控えている専属4人とスカーレットも今日はメイド服ではなく、揃いのドレス姿だ。

 しかしどこかメイドっぽく見えるのは頭につけているブリムのせいだろうか。



 専属達に視線を向けていると、階下でどよめきが起こった。

 何事かと見てみると人垣が見事に割れて一直線にテオの下に道が出来ている。

 その道を歩くのは短く刈り込んだ短髪に切れ長の瞳が妙に似合っているテオと同じ学園の服を着込んだ少年だった。

 その後ろにも同じ制服を着ている少年少女達がいるが、本当に同じ服なのかと思うほどに印象が違う。

 身に纏っている雰囲気もさることながら、その堂々とした振る舞いが実に堂に入っている。

 その人物達を見ているテオは若干苦笑している。

 でも特に嫌がっているというわけでもなく、むしろ嬉しそうだ。



 少年がテオと握手をして何やら楽しげに会話をしている。

 後ろに続いていた少年少女達も皆笑顔で一言二言話している。

 だがやはりメインはあの少年のようだ。


 ここからでは少し遠いので当然会話までは聞こえてこない。

 だが少年の親しげな雰囲気とテオの対応からも2人はそれなりに親しい間柄だとわかる。



「リリーちゃん、あの今テオちゃんとお話している子がこのオーベントの王子なのよ」


「おーじ」


「えぇ、ちょっと見ない間にずいぶん大きくなったみたいね。

 わたくしが会った時はリリーちゃんくらい小さかったのよねぇ」



 お婆様が懐かしそうに目を細めて教えてくれる。



 王族が同じ学園にいるのか。

 しかも親しそうだし、交流してるんだろうな。

 まぁクリストフ家は王族ですら手が出せないほどの貴族なんだし、繋がりは早いうちから作っておこうってことかな。



「私、ジノーヴィ殿下は少し苦手です……」


「エリーちゃんが苦手なんて珍しいわねぇ~」


「殿下はすぐ求婚してくるのです」


「あらあら、エリーちゃんモテモテなのねぇ~。

 ……ふふ、さすがエリーちゃんね」



 頬に手を当てて微笑むお婆様にエリーが大変微妙な顔で苦笑している。



 うちのお姉ちゃんは学園では深窓の令嬢のような感じらしいし、モテモテだろうとは思っていたけどまさか王子様に見初められているとは思わなかった。


 階下をもう1度見てみると件の王子様がこちらを見て笑顔で手を振っていた。

 それに微妙な顔のままエリーが手を振り返す。

 距離があるし、こちらはテオ達がいるメイン会場よりも若干明かりを落しているそうなのでエリーの微妙な顔まではわかっていないかもしれない。


 ジノーヴィ王子殿下は切れ長の目が特徴でかなり格好いい。

 うちのお兄様と並んでいると美少年2人組みという、目の保養になりそうな状況になっている。



 自分の目には保養にならないけど。

 でもあれほどの美少年ならエリーと並んでも釣り合いが取れそうだ。

 うちのお姉さまもかなりの美少女ですからね!



 王子殿下の後ろにいた少年少女達はどうやらテオのクラスメイトや、生徒会のような組織の役員だったり様々なようだ。

 慣れているような感じで気楽にしている人もいれば緊張でかなり堅い人もいる。

 テオの通っている学園は貴族、平民関係なく通っているが中等部からは平民の数が大分減ってくる。

 普通は初等部を卒業していれば十分だからだ。


 なので緊張している子はきっと平民とかだろうか。

 まぁ身分とかテオも自分も全然気にしない。だからこそ誕生会にも呼んでいるんだろうし。


 そんな緊張している子にテオは優しく笑顔で話しかけ、すると何やら堅かった子もやっと笑顔になり堅さが若干取れたようだ。



 さすがお兄様。

 さり気無い気遣いが憎い! 銀閃の貴公子の面目躍如だね!



 しばらく少年少女達と楽しそうに話すと彼らは会場のどこかへと移動していった。

 その後もテオはひっきりなしにやってくる客の相手をしていた。

 テオの誕生会なのに主役はお客の相手ばかり。これもクリストフ家という大貴族の性なのだろうかと少し思ったが、自分にはこういうのはないだろうと思い直してちょっと安心した。

 そういうのは全部お兄様とお姉さまにお任せしてしまおう。



 王子殿下の後はこれといった事もなく、順調に客の相手をしているテオを眺めていたらエナがお婆様達に耳打ちをした。


 小さな声だったけどお婆様の膝の上にいた自分には聞こえた。どうやら王子殿下がここに向かっているそうな。

 恐らくエリー目当てだろうか。


 それをお婆様から聞いたエリーは眉を寄せて微妙な表情をしていたが、すぐに気を取り直していつもの顔……ではなく、明らかに他所行き用の顔になっていた。

 その顔は物憂げで儚ささえ漂っている。



 学園のエリーはこんなんなのか……。

 これで静かに読書でもしていたら誰でも深窓の令嬢と思ってしまうだろう。

 すごい猫被りっぷりだ。



 そんなエリーに驚きながらも感心していると、件の王子様がやってきた。

 取り巻きのように引っ付いていた少年少女達は置いてきたようで1人だ。


 やってきた王子様に合わせてこちらも全員立ち上がり、迎える。



「お久しぶりでございます。我がオーベントの大英雄、アンネーラ様、ローランド様」


「久しぶりですね、ジノーヴィ殿下」


「久しぶりだな、王子殿下。元気そうでなによりだ。だがうちのエリーはやらんぞ」


「あらあら、あなたったら……ふふ」



 いきなりのお爺様からの言葉にびっくりしたような顔を一瞬だけした王子様だったが、すぐに表情を取り繕って何事もなかったかのようにしている。

 お婆様も自分にばかり構っているように見えるけど、エリーやテオにもしっかりと溺愛している。

 言葉には出さないけれど、刺々しい雰囲気を王子様も結構感じているだろう。

 抱っこされている自分からは王子様の魔力の流れがかなり尻込みしているのがわかる。



 まぁこの2人に攻められたら誰だって逃げ出したくなる。

 表情を取り繕っただけでもこの年の子としてはマシな方だろう。まだテオとそう大して変わらないのだし。

 テオにフォローされてた緊張してガチガチだった子だったら腰を抜かしてマジ泣きしそうだけど。



「そ、そのお話はいずれゆっくりと……」


「そうだな、まずエリーが欲しかったら俺を倒してからにしろ」


「あらあら……ふふふ。それはいい考えねぇ~」


「えっ!? い、いやあの……ろ、ローランド様……ご冗談を」


「俺もアンをそうやって手に入れたんだ。いつでもいいぞ。もちろん今からでもな!」



 お爺様の雰囲気が冗談ではなく、本気(マジ)で言っていることを物語っている。



 孫に甘甘でものすごい溺愛っぷりなのは嫌というほどわかっていたけど、ここまでか! ここまでなのか!?



 当の本人である王子殿下は魔力の流れ的にも完全に血の気が引いている。

 若干震えてもいるし、これはあかんやつだ。あかーん!



「じーじ、にーにのおたんじょーびだよぅ」


「おおぉ……そうだったそうだった。リリーは偉いなぁ!

 今日のところは見逃してやる。とっとと他の連中の所に戻れ、ジノーヴィ」


「は、はい!」



 完全に目じりの下がった好々爺な顔をこちらに向けるお爺様だが、王子殿下には冷たい魔力の流れと有無を言わせぬ迫力のある声で告げると、彼は脱兎の如く逃げていってしまった。

 王子様にあんな物言いとか大丈夫なのかと思ったが、お爺様もお婆様もオーベントの大英雄であり、クリストフ家の重要人物なのだ、きっと何の問題もないのだろう……。



 なんというか……王子様、南無。



 お婆様の柔らかい腕の中からお爺様のとても硬い胸筋へと強制移動させられ、頬をすりすりされながら哀れな王子様を見送ったのだった。




王子殿下の恋は果たして報われるのでしょうか。

リリー激ラブのエリーをゲットするにはまず、お爺様を倒し、次にお婆様を倒し、さらにはテオを倒して、最後にリリーの前にクティを倒さないといけません。

難攻不落どころではないですね。


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