175,合唱のリリアンヌ
クレアの誕生日プレゼントは大好評だった。
クレア本人ももちろんのこと、家族全員、ひいては使用人達全員にも大好評だった。
そりゃあもうすごいくらい大好評だった。
特にワンワンダンスを監修したエリーに数多くの賛辞が集まった。
もちろんそれを踊った自分もたくさんのお褒めの言葉を頂いた。
恐らくワンワンダンスはこれからも誕生日などのパーティでリクエストされることだろう。
それくらいに熱狂の渦が激しかった。
無事終わったクレアの誕生日。
クレアの誕生日の次はすぐにテオの誕生日がある。
今回クレアのプレゼントの為にテオも一緒に練習をしていたのでテオへのプレゼントを練習するのが大変だった。
そう、テオへのプレゼントにも練習が必要なものにしたのだ。
今進めている『情報解析』の分解調査はクティ達と共にかなりの成果が上がってはいるがまだ終わらない。
特にサニー先生が頑張っているが術式の分解から始まり、構築方法、行使の際の魔力の消費や流れに至るまで全て調査しているので時間がかかっている。
そこまで詳しく調査しているのには当然訳がある。
この『情報解析』は術式が隠蔽されている上に、その隠蔽を解いた状態で見ると構築方法なども見たことがないような方法で行われている箇所がいくつかあったりしたのだ。
そこでしっかりと調査して完全把握することから始まった。
そこにきてクレアへのプレゼントのダンス練習とテオへのプレゼントの練習。
まぁ息抜き気分でやっているので問題ないけど。
さてテオへのプレゼントだが……。
以前、テオと手を繋いでレキ君ルームをちょっと散歩していた時に鼻歌で歌っていた曲がちょっと気になった。
ゆったりと流れ、優しいメロディの中で楽しそうに語らう星々の歌だ。
その後にもテオが鼻歌で歌う時は大抵この『星々の夜』だった。
なので自然と自分も覚えていて、テオもこんなに歌っているということは好きな歌なのだろうと思ったのでエリーに聞いてみた。
「ねーね。にーにがよくうたってるおうたは、なんていうの?」
「うん? テオが歌っている歌?
えっと……何か歌っていたかしら……。リリー、どんなお歌だったか覚えてる?」
「あい」
エリーはちょっと思い出せないらしく、軽く歌ってみる。
その歌声を聞いたエリーは目を大きく見開いて口を両手で押さえてすごく驚いていた。
「……リリー、あなたはやっぱり天才だわ!
すっごく上手よ! 私こんなに綺麗な歌声を聞いたのはエナ以来だわ!」
「うんうん! リリーすっごい歌うまいんだねぇ!
歌姫もびっくりの美声だったよ! ちょーすげー!」
軽く歌っただけだったのだが、エリーとクティからものすごい褒められた。
2人にそれぞれ声と魔力文字でお礼を言ってからエリーに再度聞いてみると、曲名を教えてもらえた。
ついでに『星々の夜』を歌ってあげたらきっと大喜びするだろうとエリーに言われたのでプレゼントが決まった。
生前では結構歌うのは好きでカラオケとかよく行ってたけど、あまりうまくはなかった。
でも今世ではエナほどではないと思うがかなりうまいらしい。
「じゃあ一緒に歌詞を覚えましょうね。
『星々の夜』ならエナも知っているからエナから色々教わりましょう。
あ、でもテオには内緒よ? お母様と一緒でびっくりさせてあげましょうね」
「はぁ~い」
悪戯っ子っぽく笑うエリーと手を繋いでエナの元へと向かう。
エナも話は聞こえていたようでニッコリ微笑んで待っていてくれている。
その日からクレアへの誕生日プレゼントのワンワンダンスの練習の合間にテオに隠れて彼へのプレゼントの『星々の夜』の練習が始まった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
歌の練習は基本的に魔道具とかいらないので身1つで出来る。
歌詞はすぐに覚えたのでエナが先生となってエリーと一緒に歌う。
まず最初にエナに歌ってもらい、その通りに歌っていく。
途中でちょこちょこエナからのダメ出しが入るが概ね好調だ。
ただちょっとエリーが音程を外す時があり、そういう時はエナがすごく厳しかった。
エナの歌声はプロ顔負けのすごいものなのだが、本人も歌声に自信があるせいかちょいと厳しくなってしまいがちだ。
まぁエリーもたまに音程を外すときに厳しくされるくらいでほとんどは優しく楽しく歌っているだけだったのだけど。
一通り歌えるようになった頃にはエリーも音程を外す事はなくなった。
「ふふ……。リリーちゃんは本当に天使のように綺麗な歌を歌うのねぇ~」
「ばーばもうたう~?」
「あらあら、でも残念だけどばーばはお歌があんまり上手じゃないの。
リリーちゃんの歌を聞いているだけで幸せだからもっと聞かせてくれるかしら?」
「あい」
お婆様はどうやらあまり歌が得意ではないらしい。
お婆様の才能を色濃く受け継ぐエリーが最初の頃音程を結構外していたのはこの辺も受け継いだのだろうか。
自分とエリーの合唱を楽しそうに聞くお婆様。
自然と体が左右に揺れてリズムを取っていく。
今日の専属のラクリアも小さく揺れている。
しかしその魔力の流れは非常にうずうずしている。もしかして一緒に歌いたいのだろうか。
「ねーね、らくりあもいっしょしていい?」
「あら、ラクリアも?」
「あい」
「お、お嬢様、よろしいのですか?」
「いっしょにうたお~」
「はい!」
自分の誘いに花が咲いたかのように素晴らしい笑顔になったラクリアがすぐにこちらに来て位置につく。
エナの合図と共に始まる3人の合唱はすぐにラクリアだけのものになった。
それもそのはずラクリアの美声はエナを超えるほどの素晴らしいものだったのだ。
歌唱力、声の質、表現力。
どれをとっても1流というに相応しいほどの素晴らしいものだ。
『星々の夜』を1曲丸まる歌いきったところで自然と他のメンバーから拍手が奏でられる。
1人で歌いきってしまった事に恥ずかしそうに恐縮しているラクリアだったが、魔力の流れは誇らしげな流れも大きく見える。
「らくりあ、じょうず~」
「ほんとう……。すごく上手かったわ。ううん、上手いなんて言葉じゃ表せないくらいすごかったわ!」
「えぇ、素晴らしい歌声だったわ。まるで本当に星々が語らっているかのように聞こえたわ」
「本当ねぇ~。ラクリアにこんな素敵な特技があったなんて初めて知ったわぁ~」
「ありがとうございます。歌う事はぬいぐるみの次くらいに好きなんです」
深々と一礼してからにこやかに話すラクリア。
そういえばぬいぐるみがすごく好きだって言ってたな。
いつぞやの屋敷見学の時に嬉々としてぬいぐるみの素晴らしさを語ろうとしてたっけ。
「そうだ、ラクリアも一緒に歌ってもらいましょう。
でもラクリアだけだと不公平かしら?」
「ならみんないっしょ~」
「そうね、さすがリリーだわ! 名案よ!」
ラクリアの美声をこのまま埋もれさせてしまうのは勿体無いのでテオへのプレゼントに専属みんなで参加してもらうことにした。
すぐにラクリアが通信機の魔道具で他の3人を集めてくれた。
そして1人1人歌ってもらったがやっぱりラクリアほどの腕前というわけではなかった。それでもみんな人並み以上にはうまかったけど。
基本的には自分がメインで歌う事になり、それを補佐するようにエリーと専属達が歌う。
ラクリアは補佐に回るとその美声と歌唱力をうまく使い、メインである自分を引き立てるように歌ってくれる。
おかげで今まで練習した中でも1番と確実に言えるほどの出来になっていた。
他の専属達もそれに追随するように皆一生懸命歌い、頑張ってくれている。
『星々の夜』は結構有名な歌だったようで専属達は皆知っていたので覚える時間は必要なかった。
練習も合わせるくらいで済み、あとは楽しんで歌っていた。
自分が知っている曲が『星々の夜』だけなので1曲しか歌っていないが何度歌っても飽きない曲だったので問題なかった。一応練習だったし。
「これだけ出来ればもう問題ないわね!
さすが、リリーだわ! ダンスも歌も最高よ!」
「あい。おかーさまとにーによろこんでくれるかなぁ~?」
「もちろんよ! これで喜ばないはずがないわ! 私だったら泣いて喜んじゃうもの!
ふふ……。だから心配は無用よ。
本番では一緒に楽しく喜ばせてあげましょう」
「あい!」
エリーの頼もしい発言にお姉ちゃんなんだなぁ、としみじみ思った。
ラクリアの隠れた特技発見です。
エナでさえプロ顔負けなのにこんなところにもっとすごいのがいました。
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