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濁った瞳のリリアンヌ  作者: 天界
第一部 第10章 4年目 後編 3歳
200/250

174,舞踏のリリアンヌ

今日でなろうに投稿を始めて1周年です。

短いような長いようなあっという間の1年でした。

もうすぐ完結ですのでそれまでラストスパートです!


 9の月に入ってすぐに我らが母――クレアの誕生日がある。

 今年は表面上の情報ではあるが自分の情報が多少流されているのもあり、これを機にクリストフ家とつながりを持とうと画策する貴族達がたくさん誕生会への参加を申し込んできたそうだ。


 まぁそれでなくてもクレアは王宮魔術師だし、アレクも第2騎士団の副団長だし、アンネーラお婆様とローランドお爺様はオーベントの英雄だしでどんな些細な理由であろうと逃す手はないということだろう。


 オーベント王国で最多の第1級魔術を使える魔道具職人を有しているクリストフ家は商売の面からも戦力の面からも突出している。

 仲良くなろうとはしても敵対するなど無意味に尽きるのだ。



 すでに自分の情報も多少は流されているので完全に隠しておく必要はなく、それでもお婆様達の厳重な裏取りチェックを潜り抜けられた者だけが今回の誕生会に参加を許可された。

 とはいってもそれはあくまで対外的な誕生会であってメインとなるのはその後に行われる家族だけのお誕生日会だろう。

 こちらはクレア以外の家族だけで会場の飾りつけなどを行い、全部家族だけで手がけている暖かい物だ。


 貴族達を招く誕生会は豪華絢爛でクリストフ家の威光を余す所なく敷き詰めた感じらしいのだが、そんなものは見慣れている光景といっても差し支えないだろう。

 まぁそれでも質実剛健という言葉が似合う感じではあったらしいようだけど。


 貴族達を招く誕生会には自分達は少しだけ顔を出してクレアに誕生日おめでとう、と挨拶するだけだった。

 基本的には子供達にはあまり長い時間貴族達を近づけないというスタンスだ。

 というか出来るだけ接触をさせないという方が近いかもしれない。実際誰一人としてテオにもエリーにもましてや自分にも話しかける暇などなく退出したのだから。



 だがここからが自分達の本番だ。

 お婆様は依頼通りに、いや依頼以上の結果を持って帰ってくれた。

 当たり外れがある魔物からの魔石入手のはずなのだが、入手してきた魔石はエリオットが望んだ魔石の質と大きさを十分超えるものが10個以上あった。一体どれだけの量を倒してきたというのだろうか。

 だがこれでばっちり練習もできた。やはりテオとエリーは持ち前の運動神経を発揮してあっという間に慣れてしまい練習も大分魔石を余らせて終えることが出来たほどだ。余った分は後で使おう。



 最後のリハーサルを終えて自分達だけで飾りつけなどもした部屋に移動する。

 もちろん自分には魔力のない紙の飾りなどは見えないのでみんなに手伝ってもらいながらちょこちょこやっていただけだが。



「はい、これをつけたらおしまいよ。さぁリリー」


「はぁ~い」


「頑張れ、リリー。そう、そこだ!」


「んしょ~」


「よく出来ました。偉いわ、リリー」


「リリー、ご苦労様。頑張ったね、偉いよ」



 テオとエリーの両方から労いを受けながら最後の紙飾りのセットは終了した。

 これで会場準備の方も万全。あとは貴族達向けに開かれている誕生会が終われば、本番のお誕生日会の開催だ。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆








「「お誕生日おめでとうございます、お母様!」」


「おめでとぉ~」


「ふふ……ありがとうね、私の可愛いみんな」



 会場に入ってきたクレアはそれまで面倒くさい貴族達を相手にしていて疲れていたとは思えないほど華やいだ素敵な笑顔で答えてくれる。

 まだ何もしていない段階なのにすでにクレアからは魔力の発露が出ていて、その魔力の発露は触れる者に皆に安堵と幸せを分け与えてくれる。



「お母様! 私達からの誕生日プレゼントを受け取ってくださいますか?」


「えぇ、もちろん!」



 代表してエリーが言葉を紡ぐと魔力の発露を一層溢れさせたクレアが笑顔で答えてくれる。

 さぁここからが本番だ。練習の成果を発揮しよう。



「では、準備してまいります!」


「えぇ、楽しみにしているわ」


「行ってきます、お母様!」


「いてきます~」


「ふふ……頑張ってねぇ~」



 お誕生日会の特等席に座っているクレアから小さく手を振られて見送られる。

 プレゼントを手元に用意しておらずこれから準備をしてくるという言葉を聞いてある程度不思議に思わない辺り、もしかしたらクレアは今回のプレゼントの内容を知っているのかもしれない。

 まぁお婆様達が数日とはいえ屋敷を留守にしたり、エリオットに魔道具作成を頼んだりしているのだ、筒抜けか。

 それでもそんなことは微塵も表に出さず本当に楽しみにしてくれているのは魔力の流れを見なくてもわかる。



「さぁ頑張りましょう、テオ、リリー」


「うん、練習もいっぱいしたし。あとは楽しんでやろう!

 お母様も楽しそうにしてるしね」


「たのしぃ~」


「そうね、楽しくやりましょう! リリー」


「リリー」


「あい」



 舞台袖で準備を終え、テオとエリーと両手を繋ぎ舞台に上がる。

 照明で明るく照らされているはずの舞台上に出た瞬間にはそこら中から拍手が舞い上がり、たくさん詰め掛けている使用人の皆の期待と黄色い悲鳴が沸きあがっている。

 クレアも負けないくらいの声援をお誕生日席から送って大きく手を振ってくれている。


 さぁ始めよう。



 エリーの合図で魔道具が起動し、曲が流れ始める。

 それと同時に背中に背負った2対4枚の羽根が大きく羽ばたき空中に体を浮き上がらせた。

 繋いでいた両手も上昇するに連れて離し、3人がそれぞれの位置につく。


 曲が変化し、少し盛り上がり始めるとテオとエリーの2人は羽根を羽ばたかせて空中を優雅に、そして華麗に動き回る。

 その動きは流麗で華やか。

 まるで舞い踊る妖精のように美しくも華麗であり、1つ1つの動作を取ってみても見惚れるほどに完璧であり、魔闘演の演舞に出場しても十分に上位に入れるのではないかというほどの出来だ。


 時にスレスレで交差し、時に舞台の端と端で左右対称的な動きを完璧にシンクロして行う。

 2人の練習どおりの完璧な空中を舞台としたダンスに自分も追従するように端に寄った2人に合わせて舞台の真ん中に一旦降り立ち、ふんわりとしたスカートを両手で摘みスポットライトに照らされている――はず――の中、綺麗なカーテシーを行う。

 それまで隠蔽の魔道具で隠していたテオとエリーと同じ羽根を出現させる。

 先ほどまでテオとエリーの流麗なダンスに見惚れていた観客達が全て自分へと注目しているのが分かる。

 翼を広げ、更に隠していた魔道具の隠蔽を解除する。


 そこに現れたのはオオカミの耳と尻尾。

 オオカミミオ14世である。


 同時に上がる黄色い悲鳴。最早会場中が熱狂の渦だ。

 だがこれはまだ始まりに過ぎない。


 BGMが変わり自分へのスポットライトも一気に増え――ているはず――、小さな手を丸めてお尻を軽く突き出してわんこぽーずからのワンワンダンスが始まった。


 第1級魔術『精神感応波特定』で自在に動く尻尾と耳に合わせてお尻をふりふりしながら丸めた手で猫パンチならぬオオカミパンチを繰り出しながらくねくね踊る。

 一瞬静まり返った会場は爆発的な盛り上がりを見せ、先ほどの熱狂がまだまだ本気ではなかった事がわかるほどに大熱狂の渦に包まれる。


 お尻の動きに合わせてふぁさふぁさ、と振られる尻尾に黄色い悲鳴が何度も重なる。

 オオカミパンチに合わせてピコピコ、と動く耳にも黄色い悲鳴が重なり、最早何をやっても黄色い悲鳴ばかり上がっている。



 ちなみに当然ながらこのワンワンダンスは監修エリーである。


 練習中にも何度も鼻血を堪え、他所様にはとても見せられない蕩けるような笑顔で幸せそうにしていた。

 テオは鼻血を我慢できずに何度か治療を受けていたほどだ。


 今も2人は舞台の端で必死に鼻血を堪えながら蕩けそうな顔で身を捩っている。



 でもそろそろ出番ですよ、お2人さん。



 チラッと2人に視線を送れば鼻血を堪えきった2人が用意を始める。


 曲が変わった次の瞬間には舞台の端にいた2人が床スレスレを高速飛行して迫り、それにあわせてふんわりと浮き上った自分。

 交差の一瞬で2人のあげた手に着地し、自分を基点にぐるっと1回転したあとそのまま空中に浮かび上がる。

 兄と姉の手の平に乗ったまま上昇し、曲も最高潮に盛り上がった所で髪を後ろで留めていたバレッタを外す。


 次の瞬間にはスポットライトを上回るほどの眩しい輝き――のはず――と共に2対4枚だった羽根が3対6枚に増え、それに伴い発生した魔力の粒子が可視化されて舞台上に舞い散る。

 自分の髪も魔力の粒子の放出と共に風がないのに自然と靡き、ふんわりと浮かぶようにたゆたっている。


 バレッタに仕込まれた魔石は取り外す事をトリガーとしている。

 その魔石に封じられていた魔術は『虚飾流星』。


 3対6枚の羽根から発せられる燐光と『虚飾流星』が作り出す魔力粒子が彩る幻想的空間が舞台を支配すると会場で見ていた使用人達が1人、また1人と祈りを捧げるように腕を組み涙を流していく。


 我らが母――クレアも同様だ。

 素晴らしい笑顔と共に発せられる魔力の発露は最早頂点といった様子でその放出具合は過去最高といえるほど。

 そして慈愛に満ちた笑顔は女神も画やと言う最強のものだった。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆








 曲がゆっくりと終わりを告げ、それに合わせて舞台に降りると会場中から拍手喝采の嵐が吹き荒れた。

 それだけで割と広い会場が振動に包まれてしまうくらいの大喝采だ。


 そしてその中をアレクと一緒にクレアが小走りに走ってくる。

 舞台に風の魔術を使って一気に上がったあとはそのままの勢いのままに3人纏めて抱きしめられた。



「すごかったわ、3人共! とても素晴らしくて感動して震えたわ!

 演舞に出てもきっと優勝間違い無しの素晴らしい出来だったわ。

 最高のプレゼントをありがとう。私の可愛い子供達……」



 興奮しながらも優しく慈愛に満ちた笑顔で抱きしめてくれるクレアからお褒めの言葉を貰いテオもエリーも満面の笑みを浮かべている。

 自分も久しぶりに表情が動いているのがわかる。



「ふふ……。リリーちゃんが笑ってくれてる。

 ありがとうね、こんなに嬉しい誕生日は初めてよ」


「リリー……。素敵……。もう一回笑って!」


「天使だ……。天使がいるよ!? リリーは天使だよ!」


「リリーが笑っただと!? ちょ、俺にも見せてくれ!」



 ちょっと笑っただけで大騒ぎを始めた4人に離れてみていたお爺様やお婆様も参加し始めてどんどん舞台上は混乱していく。

 自分の笑顔が見れたという言葉を聞きつけたエナや専属達も舞台に集まってきてその後ろには使用人達も取り囲み始め……だんだんと収拾がつかなくなりそうだったので――。



「きゃ……。ふふ……すごいわぁ~リリーちゃん」


「びゅーん」



 魔力のまだ残っていた魔道具を起動させて3対6枚の羽根を羽ばたかせてクレアを一緒に無重力で捕まえながら囲みを飛び出してお誕生日席に飛んでいった。

 混乱し始めていた舞台上の注目を一気に集めて飛び去ると混乱は一先ずなんとか収まってくれたようだ。


 お誕生日席に戻ったクレアが舞台上に集まっているみんなに声を掛けるとお誕生日会は粛々と再開される。

 一時的に混乱したとはいえそこはクリストフ家の使用人達。すぐに目が覚めて元に戻ってくれた。



「ありがとうね、リリーちゃん。最高のプレゼントだったわ」



 みんなが戻ってくる間に魔道具を外してクレアの膝の上に移動した自分に小さな声で我らが女神様が呟き、未だ放出されている暖かい魔力の発露が会場中を満たしていた。



見事なワンワンダンスでした。

お尻をふりふり尻尾もふりふり。

お耳がぴこぴこ、お手手もぴこぴこ。

最強じゃないですかね?


気に入っていただけたら評価をして頂けると嬉しいです。

ご意見ご感想お待ちしております。

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