19,妖精と初めての・・・と Part,2
【不思議現象体験中】
頭の上に魔力文字を看板にして出している。
茶目っ気全開なのは、ちょっとした芸人根性の賜物だ。
生前はお笑い番組をよく見ていたし、自分も突っ込み役だと思っていた。
まぁそんなことは今はどうでもいいのだが。
現在は降下できた床のような地面のようなモノの上を適当に徘徊している。
何かしらこの不思議現象の解明に繋がればいいのだが、と思いながら適当に歩く。
床のような地面のようなモノは、結構広い。
見た感じだとテニスコートより広いくらいだろうか。
ちょっとテニスしたくなってきた……あ、でもテニスなんて軟式しかしたことないや。
本当にどうでもいいことを考えながら散策は続く。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ふむ……何もないな、ほんと……何もないなおい」
口をへの字に曲げながら憤慨したように、いや別に腹は立ててはいないんだけど、独り言ちる。
この不思議空間には見回しても、自分ひとりしかいないので遠慮なく喋っている。
独り言を遠慮なくとか、さびしいやつだと自分でも思うが、ここ1年ちょっと喋ること自体に制限がかかっていたんだ、こんな時くらい発散したい。
「何もないわけではないか……一応床……のようなモノと、上に文字があるしなぁ」
あとは、自分も在る……なんて哲学的なことを思ったりもした。
【不思議現象体験中|(散歩Ver)】
頭の上の魔力の看板を少し変更して、今度はくるくるゆっくり回転させながらもう一度何かないかと探し始める。
床のような地面のようなモノの端っこを覗いてみた時に気づいた。
さっきは大体の広さを測ったり、何かないか適当に探していただけなので端っこの方は見ていない。
「わーを……床がいっぱいだ」
端っこから見えたものは、無数の床のような地面のようなモノだった。
ものすごい数が見える。
どうやら自分はそのうちの一つに立っているようだ。
「ますますわからん……なんだってこんな床ばっかりの不思議空間に来てしまったんだ……」
疑問は膨らむばかりだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
【不思議現象体験中|(迷子Ver)】
今日何度目かの看板を書き換えて、うーんと首を捻る。
自分には、まだまだ余裕があるらしい。
「見えてる無数の床もこことあんまり変わらないようだな、まぁ見える範囲だけど」
今いる床のような地面のようなモノを見返しながら、端っこから見える床のような地面のようなモノとを見比べる。
「……さて、見るべきものもないし……どうやって帰ったものかねぇ」
足を投げ出すように、大の字になる。
頭の後ろに手を組んで、空……ではないけど、文字の浮かんでいる方を見上げる。
「 " 起動 " ……何を起動するんだ?」
浮かんでいる文字を読み上げている。
そのほかにも浮かんでいる文字を一つ一つ読み上げてみようかなと思ったが、なんだかめんどくさくなってきたので、最初に目に付いた " 起動 " だけに留めた。
そのまま、ぼーっと浮かんでいる文字群を眺め続ける。
どれだけ時間が経ったのだろうか、疲れるでもなく、眠くなるでもなく、体調的な変化は一切無い。
本日何度目かわからない溜め息を吐き出すと、床のような地面のようなモノに投げ出していた体を起こして、手をつけたまま呟く。
「はぁぁぁああぁー……帰りてー」
変化は一瞬だった。
浮かんでいた文字が全て消失し、暗闇が全てを包み。
そして、意識が覚醒した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
開けた瞳の、暗闇と魔力の白さだけが見える世界で、自分があの不思議空間から帰還したことを悟った。
安堵感は特にない。
不思議空間でも恐怖感はなかったし、焦りもあまりなかった。
最後の方でちょっと焦ったりもしたけど、それもただ帰りたいと思っただけのものだ。
帰りたいと口に出したから帰れたのかな……。
不思議空間だけに、訳の分からない不思議な体験だった。
「リリーだいじょうぶ?
苦しくない?辛くない?」
すっかり耳の強化は身に付き、寝起きのようなのにクティの声ははっきりと聞こえる。
【うん、平気 心配かけちゃってごめんなさい】
「ううん、心配はいっぱいかけていいんだよ!
だって私達は友達だもの!
友達にはいっぱいいっぱい頼っていいんだからね!」
安心のドヤ顔さんだ。
その言葉に頬が緩みそうになるが、表情が変化する前に、はっと気づく。
未だに無表情キャラだから、微笑とかテオとかエリーに見せるとちょっとした騒ぎになる。
危ない危ない……っと、周りには誰もいないようだ。
寝かされているベビーベッドの上にお座りして、周りを見回して確認した結果、誰もいないことがわかった。
普段は部屋に誰かしらいるのだが、見回して見た感じだと誰もいない。
おかしいな、と思ったらエナがいつも寝ている部屋の隅の方に置かれているベッドの反対側に " 足 " が見えた。
どうやら、寝相が悪くて落っこちたらしい。
ベッドは魔力が無いので見えない、陰に隠れるように落ちていたので見つけられなかったようだ。
寝相わるいなぁ……。
微笑ましげに嘆息してから、今が夜なんだと気づいた。
光が見えないので、昼なのか夜なのかわからないから、普段は昼寝以外で寝てるときは夜、起きたら昼と割り切っていた。
【クティ、今は夜だよね?今日は帰らなかったの?】
「リリーが熱だして苦しんでる時に帰るわけ無いでしょ!
ご飯になっても起きないし、みんな心配してたんだからね!」
自分のことが心配で家?に帰らなかったようだ。
これは悪いことしたなぁと思ったが、それ以上に嬉しい。
夜なのは確定なので、クティ以外誰も見ていないので遠慮なく笑みを浮かべる。
「……っ!?」
クティがなんだかすごくびっくりしていたが、このドヤ顔さんはどこで驚くのかいまいちわからない挙動の怪しい妖精さんだ。
なのでいちいち気にしていたら身が持たない。
【それより、私は熱を出していたの?
今は全然平気なんだけど。
お医者のご老人のランドルフさんはなんていってた?】
「……ぁ、ぇえっと、確か軽い熱だとかどうとか、エナが寝てるあなたに水に溶かした薬を飲ませてたわ。
なんかやたら苦そうな顔をテオとエリーがしてたわよ。
苦かった?」
クティもすっかり家族の名前と顔を把握している。
軽い熱か、大事にならなくてよかった。
今元気なのは薬が効いてくれたのかな、よかったよかった。
【寝てたから、苦いかどうかはわからなかったけど。
今はもう熱もないみたい、かなり元気だよ】
「そっかー元気ならよかったぁ~。
あ、でも無理しちゃだめだからね!
ちゃんと治るまでは勉強も訓練もなしだからね、約束して!」
【約束って……信用ないなぁ】
ちょっと苦笑しながらも、クティの差し出す小指に自分の小指を軽く触れさせる。
「平和と大地の神、緑神アラストリアの名において、我が約束を結ぶ」
【約束を結ぶ】
生前で言うところの『指きりげんまん嘘吐いたら針千本飲ます』みたいな感じだ。
こういう、童歌のようなモノも数多く教えてもらっている。
「ふふ……さぁ寝た寝た!
ちょっとよくなったくらいが一番危ないんだから、しっかり寝ないとだめよ!」
【はーい それじゃおやすみなさい】
優しく穏やかに微笑む妖精さんに促され、ちょっと空いたお腹は我慢しつつ眠ることにした。
空いた小腹とは関係なく、案外すんなりと意識を手放せた。
今度はあの不思議空間に迷い込むことはなく、夢の世界に旅立つことに成功できたようだ。
くるくる回ります
まだまだ続きます
ファンタジーライフを買ってしまった
おかげで今日書き上げるはずだった話が中途半端に!
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3/9 句点、文頭スペース、三点リーダ修正
3/10 禁則処理修正




