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濁った瞳のリリアンヌ  作者: 天界
第一部 第10章 4年目 後編 3歳
198/250

172,提案のリリアンヌ



 クティとサニー先生と自分の3人で解析を済ませた『情報解析』は今までにない術式が使われていることが判明した。

 いくつもの術式に偽装されて混ぜ込まれていたコレらは明らかに術式を解析するものに対して意図的に隠されていた。

 しかし誰が一体どういった理由で隠したのかまではわからず、それ以上の解明は難しい。

 それに隠されていたことがわかっても魔術自体には変化はない。

 発見された術式は確かに今までに見たこともない術式ではあったが用途は完全にこの『情報解析』という魔術に特化されているため他に流用するのは難しいかもしれない。


 だが新しい術式発見という事実がサニー先生の研究魂に火をつけたのは言うまでもない事だった。



「とりあえずこの術式のことはサニーにお任せしよう。ね、リリー……」


【う、うん。あんなにマッドな先生ははじめて見たかも……】



 レキ君ルームの高いところでいつものようにクティパッドを操っているサニー先生の表情は今までに見たこともないほどの狂喜を宿したマッドな笑顔だ。



「新しい術式なんてここ400年くらい見つかってなかったからねぇ……。

 まぁこれを機にリリーの魔術のために何か有用な情報でもたたき出してくれればいいよ」


【400年ぶりの新術式かぁ……。でもなんで偽装して隠してたんだろうね?】


「ん~……。以前世界のアーカイブで見つけた魔術にはそういうのはなかったんだけどねぇ。

 あ、でも今回リリーは隠してあった場所から発見したんだよね。

 もしかして2段構えだったとか?」


【なるほど……。そういう可能性もあるかもね。

 ということはもしかしてもう1回くらい隠してあったり……】


「……2度あることはぁ~」


「わふん(3度ある!)」


【ふふ……。きっとサニー先生が見つけてくれるよ。

 私達は私達で研究しないとね】


「おうさ!」


「わふわふぅ~(ボクも研究する!)」



 元気よくドヤ顔で薄い胸を張って踏ん反りかえる頼もしいクティとクティパッドで練習中の新しく作った格ゲーの研究をし始めるレキ君。



 さぁサニー先生に負けないように自分も頑張ろう。




 もちろん格ゲーの研究じゃないよ?





◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 転生してからすでに3年と10ヶ月くらい。

 暑かった夏も終わり、そろそろ涼しい秋も終わろうかという頃。

 基本的な行動範囲はエアコンの魔道具で環境コントロールされているので1年中ほとんど温度は変わらないが、兄姉の訓練なんかで外に出ることも多いので季節をしっかりと感じることが出来る。


 今年の終わり頃には4歳になる。だがもちろんその前には家族の誕生日ラッシュが待っている。


 トップバッターは我らが母――クレアの誕生日だ。

 きっと今年も去年に負けないプレゼントをアレクが贈るだろう事は考えなくてもわかる。

 テオ、エリー、自分と子供達3人でも何か贈ろうということで3人集まってレキ君ルームで話し合いをしている。



「今年はお父様はどうやらドレスを贈るみたいなんだ。しかも真っ赤なの」


「真っ赤なドレス……。お母様なら素敵に着こなしてしまうわね……。

 どうするの、テオ! このままじゃお父様に負けちゃう!」


「いやいや勝ち負けじゃないよ……?」


「まけぇ~?」


「……! うん、負けちゃだめだよね! 勝つよ、リリー! エリー!」


「「おー!」」



 なんだかよくわからないがエリーが自分を後ろから操って手をフリフリさせているので乗ってみたらテオの思考があっさりと変化してしまった。

 プレゼントをあげるのに勝ちも負けもないと思うけど、まぁ2人ともやる気満々なのでよしとしよう。



「問題は何を贈るか、だね」


「そうね……。去年のように我が侭券ではだめね。やっぱり何かインパクトがあるものを……」


「インパクトかぁ……。お父様が一昨年やったみたいな大量の花束とか?」


「私の花壇で毎日丹精込めて育ててはいるけど、あそこまで大量の花束を作るには少し足りないわ。

 リリーと一緒に育ててるアンブロジアはまだ花をつけていないし……」


「う~ん……。難しいねぇ……」


「リリーは何かいい案はない? なんでもいいのよ?」



 頭を捻ってうんうん、言っている兄姉2人が若干期待の篭った瞳を向けている。

 魔力の流れ的には期待3割、今日も我らが妹は超可愛いが7割といったところだろうか。

 自分で言っておいてなんだがどうなのよそれ。



「んぅ~……あ」


「うん?」


「どうしたの、リリー?」



 ちょっと思いついたのでレキ君のふかふかクッションに埋もれていた顔をあげる。

 そして今日の専属のジェニーを呼んでレキ君の玩具箱を持ってきてもらうとその中に収納しておいたある物を取り出す。

 魔片で構成されたソレは見た目よりもずっと軽く、そして美しい。

 だが残念ながらすでに魔力が尽きているため以前のように背負って使うこともできない。

 しかしそれでも十分彼らには意図が伝わるだろう。



「リリー、もしかしてそれで?」


「確かに……インパクトはあるわ! それに最近私達も上達したもの。

 それをお母様の前で披露して誕生日プレゼントにするのよ!」


「そうか……。悪くないね。いや……すごくいいと思うよ! やろう!」



 やはり見せただけで彼らはこちらの意図を正確に読み取ってくれたようだ。さすが自分の自慢の兄と姉だ。

 2人も賛成のようだし、今までも何度も遊びながら練習を積んできた。その集大成といっては大げさかもしれないがクレアに披露するというのはかなりいいと思う。

 それにコレを使ってやればインパクトもばっちりだしね。



「「さすが私の(ボクの)リリーだ()!」」



 2人が息もぴったりに言うがその後にすぐ火花を散らしている。本当に仲がいい。



「えりおっとにおねがいしないとぉ~」


「おっとそうだね。まずはエリオットにお願いしないといけないね。

 ボクとエリーの分も作ってもらわないと」


「そうね。まずはエリオットのところに行きましょう!」



 エリオットの所に行くのが決まったけれど自分を抱っこする順番で早速揉め、結局レキ君に乗っかった自分を見てがっくりと2人共項垂れるのだった。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







「ふむ……。アレを君達の分もか……。

 我が天使の新たな分はすでに完成間近ではあるが、正直な話材料が問題だな」


「材料……ですか?」


「うむ。アレには魔石がつかわれていてな。

 我が天使に捧げた作品を作るのにも手に入れるのに多少時間がかかったのだよ」



 エリオットの工房にやってきてさっそくエリオットにテオとエリーの分も作ってもらおうとお願いし始めたのはいいのだが、魔石が必要と言われて兄姉2人も固まってしまった。


 魔石は相応の量の魔力を溜め込んだ魔片だ。

 ただ魔物を倒して手に入れるにも強力な、それこそ到達が困難なほどの深い層の強力無比な魔物を倒さなければいけないだろう。

 それでも確実というわけでもない。確実に手に入れるなら迷宮の心臓となる魔石を手に入れるのがベストだろう。

 だがそんなものはそうそう手にはいる物ではない。



 確か今は魔力が尽きて動かないアレの機体制御用に使われていたのが魔石だろうか。

 そうなると誕生日までに用意するのは難しいかもしれない。



「……どうしよう」


「ふむ……。私も我が天使の麗しい姿は見たい。ここは1つ協力してやろう」


「い、いいんですか!?」



 エリオットは基本的に自分(リリアンヌ)以外には厳しい。というか眼中にない。

 今回のお願いも基本的に自分が多少前面に出てお願いしてここまで持ってきている。

 そんなエリオットがテオやエリーのために協力するというのはかなり珍しいといってもいいだろう。

 クレアの誕生日のためだとか、テオとエリーが自分の兄姉だからとか、そういった事では絆されないのがエリオットだ。



 今回は一体どういう心境の変化だったのだろうか?

 まさか自分と接する間に真人間になってきたのだろうか……? いやないな。

 たぶん自分を引き立てるための役に据える為、だろうか……。



 まぁどうだろうと協力してくれるならそれでいいだろう。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







「――というわけだ。出来るか?」


「た、たぶん……」


「……言うだけ言ってみます」


「まぁ無理でも君達が困るだけだ。頑張りたまえ」


「「はい!」」



 エリオットの協力は助言だけのようだ。

 まぁ魔石が手に入れば彼らの分も作ってくれるというのだから十分だろう

 実行は兄姉の2人に完全に任せるようだけど、自分も一応一緒に行くが……はっきり言って難しいだろう。



「リリー、テオ、頑張りましょう!

 なんとしてでも魔石を手に入れるのよ!」


「うん、でも大丈夫かなぁ?」


「魔石が必要なんだから手に入れるしかないのよ! これは負けられない戦いなのよ!」


「今からでもプレゼントを考え直すとか……」


「リリーの出してくれた案を却下するっていうの!?」


「ッ!? そんなことしないよ!」


「じゃあやるしかないわよ!」


「やるしかないね!」



 なんだかとてもやる気漲る兄姉がちょっと怖い。

 適当に思いついただけの案だったんだけどなぁ。



 自分の乗るレキ君の前を歩いている2人を眺めながら決戦の地へと向かうのだった。




忘れがちですが、サニー先生は世界の隣の森の魔術研究所所長です。

ずっとこっちにいますが所長です。

所長というくらいなので魔術バカです。

他にも知識すごいですけど。


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