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濁った瞳のリリアンヌ  作者: 天界
第一部 第9章 4年目 中編 3歳
190/250

168,智の軽量




 既存の魔術の軽量化。

 魔術全体の構成から必要ない部分を抜き出して術式をすっきりさせていく。もしくは術式自体を書き換えてしまう。

 基本的に詠唱――設定の数を減らす事は汎用性を減らす事に繋がるのでその部分の軽量化は悪手なのでしない。

 では術式をすっきりさせるとどう違ってくるのか。



 それは、消費魔力の削減だ。



 一般的に魔術は設定と消費魔力が増加するごとに難易度を増していく。

 設定は知識や経験で補う事がある程度可能ではあるが、消費魔力はどうしようもない。

 自分のように今尚増大中のような莫大な量の魔力があるわけがないのだ。

 もちろん何もしなければ自分の魔力も増えたりはしない。今尚続けている限界までの魔力消費の積み重ねなのだ。



 まぁ普通の人は自分のような魔力増加法はできないらしいけど。



 一般的には魔力というものは生まれた時から決まっている。

 極々例外的に若干の増減はあるらしいが法則性がなく、解明には至っていない。

 無論自分のように魔力を一定量まで減らして回復させるという手ではないのは言うまでもない。


 生まれ持った魔力量が消費魔力を超えていなければ当然ながら魔術は使えない。

 完璧な設定で魔術を行使しても魔術のエネルギーたる魔力がなければ成功しないのだ。


 つまり自分以外のほとんどの魔術師にとって魔術に必要な魔力が減るというのは非常に喜ばしいことであり、それと同時に魔術の歴史を塗り替えるほどの大事件でもある。

 実際、魔術の研究に4桁単位の年月をつぎ込んでいるサニー先生ですらこの消費魔力の削減には至っていないのだから。



 まぁ……でも……やっぱりサニー先生はすごい。

 10級から7級までの魔術の消費魔力削減のパターンをいくつか提示しただけでノウハウを理解してしまった。

 もう自分の意見はほとんど必要ないのではないかというほどに。


 この辺はさすが世界の隣の森の魔術研究所所長といったところだろう。

 まぁそれでも術式量が増えてくる中級に入ると減らせる術式と変更できる術式が極端に減ってくるのでまだ入り込む余地がある。



 負けませんよ、先生!








◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 ここ数日いつもの授業の時間が既存の魔術の軽量化研究に充てられている。

 そのおかげか自分、サニー先生、クティの3人で活発に意見を交わしあい、普段よりもずっとレキ君ルームは賑やかになっている。


 とはいってもクティが研究に混ざっているのでレキ君が1人で自分の作ったミニゲームで遊んでいるので彼女らのいつもの戯れがない分は静かかもしれない。



 2級の既存の魔術の軽量化に入り、以前非常に注目していた魔術の番になった。



「次は『魔紋探信』だな。

 そういえばリリーはこの魔術にずいぶん期待していたんだったな。だが現実はそう甘くないという結論だったか」


【そうですねぇ……。魔力をソナーのように飛ばして周囲の状況を探れる魔術だと思っていたのに実際はもっと低レベルなものでしたからねぇ……】


「とはいっても他に似たような魔術はないのだから仕方あるまい。

 設定が少ない割りに消費魔力が非常に多いという理由で2級に分類されている珍しい魔術でもあるしな」



 そう、この『魔紋探信』は設定する項目が他の2級の既存の魔術に比べてかなり少ない割に消費する魔力量が2級の中でも上位に位置するほどの多さなのだ。

 その効果だが、一応探索系の魔術としては2級に位置するだけあり優秀ではある。

 ただ問題は探索系の魔術が悉く使い物にならないという点だろうか。


 そんな中で優秀というだけなので実際はほとんど使えないレベルだ。


 効果は設定で決めた範囲に魔力の波を飛ばし、範囲内の魔力を感知するというもの。

 これだけ見ると使えるような気もするだろう。

 だが弱点が多すぎた。


 まず、物理的な障害であっさりとこの波が霧散する。

 ちょっと強い風なんかでも霧散してしまうとなれば一体どこで使えというのか。

 しかも波が霧散したりしてもその情報は術者に伝わることがない。

 伝わるのは波が魔力を持ったモノに接触した時だけ。

 その魔力を持ったモノというのも感知できる範囲が狭い。当然ながら妖精族なんかは感知できないし、気配を断てるような技術を持っているモノにも効果がない。レキ君で実際に試したので間違いない。

 魔力量が少なすぎる場合も、多すぎる場合も感知できない。


 使い勝手が悪すぎて意味がわからないレベルの魔術なのだ。



 ただそれでも前述したように探索系では優秀な部類。

 意味が分からない魔術のくせに優秀な部類なのだ。

 既存の魔術に探索系の魔術というものが少なすぎる上に使い勝手が悪すぎるのが原因だが。


 そんなわけで習うまでは非常に期待していた魔術。

 蓋を開けたときの自分のがっかり具合は想像に難くないだろう。



「これも消費魔力が減れば大分マシになるんじゃないか?」


「本音は?」


【焼け石に水。暖簾に腕押し。馬の耳に念仏……かな】


「たまに君はよくわからない事をいうが……まぁ意味はなんとなくわかった」



 サニー先生も消費魔力を減らした所で使い物にならない魔術であることは十分承知している。

 でも自分が期待していたのも知っているので一応こうしてフォローしてくれる。



 まぁ結局の所消費魔力は3分の2くらいにまで減らせたが使えない魔術である事に変わりはなかった。

 正直な所自分の魔力はとんでもない量あるので消費魔力が多い程度では苦にならない。

 よって減ろうが増えようが変わらないのだ。



「だがまだこの『魔紋探信』を元にして改良を加え続けているんだろう?」


【えぇ……一応探索系では優秀ですからねぇ……】



 がっかり魔術ではあるが探索系では優秀なのも事実。

 既存の魔術は魔術の基礎なので探索系もこれが基本となる。

 他のがっかり以上のがっかり探索系を元にするよりはマシという事で改良を加え続けてはいるがあまり成果はない。



「探索系に物理的な探知系がないのが1番の問題だよねぇ~」


「魔力を対象とした探索が基本だからな。

 探す相手が敵対生物ならまず間違いなく魔力があるからそれを対象とするのは間違っていない。そしてそれで事足りる。

 物探しに魔術を使うことを前提としていないというのも辛い所だ」



 クティも自分のために物理的な物が探知できるような魔術を作ろうとはしてくれているけれど今の所成果はない。



 自分の為ならどんなことでも簡単にやってしまいそうなクティが未だに何の成果もないのは魔術的な難しさというよりは、自分があまり困っていない(・・・・・・)からだろう。


 日常生活でもまだまだ小さい事もありエナやお婆様が付きっ切りだし、クティ達もいる。

 最近は魔片で家具を作ってもらったりしてさらにマシになっている。

 もっと成長して活動範囲が広がれば困るような状況も増えるだろうが今の所問題がないのが実情だったりする。


 魔力のあるものなら見ることが出来ているのも大きいだろう。

 これが完全な盲目だったら話はかなり違った。

 もう3年以上もこんな生活を続けているのだ、いい加減なれるというもの。

 目が見えないからといって悲観し続けても得はないし、実際あまり困っていないのでクティもその影響で成果が出ないのだろう。

 何せクティは感覚派だ。

 自分が本気で困っていたら一瞬だろうが、今のように困っていないならそうでもないということだ。



 それにこれは自分で解決したいとも思っている。

 せっかく魔術を学び、魔術を作れるという特殊な才能まであるのだ、頑張りたい。








◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆








 2級の魔術も順調に軽量化が進み、もう数日すれば1級に入ってしまうだろう。

 自分が既存の魔術を習得したスピードよりも軽量化の方が断然早い。

 さすがに3人でガンガン意見を交し合っているだけある。



 ちなみに3人が既存の魔術の軽量化に夢中になっている間にレキ君はティト言語で作ったランダム画像3000ピースのパズルに挑戦している。

 100ピースのパズルを作ってあげたら簡単に攻略されたので難しくしてみた。

 絵柄はサニー先生提供の屋敷見取り図など。

 かなり難しいと思うけどさっきチラッと見たらもう半分くらい攻略されていた。



 どうもレキ君はこういったコツコツ系やパズル物が大好物のようだ。

 色々なパズルをやらせてみたけどかなり夢中になってくれていたし。



 今度数独でもやらせてみようかな。



「リリー、次をやるぞ」


【あ、はい。

 じゃあレキ君、続き頑張ってね?】


「わう」



 よほど夢中になっているのかこっちを見もしないで生返事を返すレキ君。

 頭を軽くポンポン、と叩いてから軽量化に戻るのだった。




やっと出てきた探索系。

でも実際は超がっかり系魔術。

しかもこれでも既存の魔術では優秀な部類ときているのです。


クティは感覚派なのでリリーが本当に困っていたら恐らく一瞬でこの問題も解決してしまうでしょう。

それくらいクティには斑があります。

やる時は超弩級ですが、普段は軽巡洋艦クラスです。



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