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濁った瞳のリリアンヌ  作者: 天界
第一部 第9章 4年目 中編 3歳
187/250

165,智の狂乱



 翌日。

 レキ君ルームに行くと瞬間移動していた。

 何を言ってるのかわからないだろうが自分も何をいってるのかわからない。

 既存の魔術とかそんなチャチなもんじゃない。何かレキ君の本気的なものの片鱗を味わったぜぇ……。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 エナと今日の専属のラクリアは唖然としていたけれど、お婆様だけはあらあら、ふふふ……。と全てを見透かしているかのような嫣然とした微笑を浮かべている。


 瞬間移動したような凄まじい速さで掻っ攫われた自分に対して特に何もせず微笑を浮かべているお婆様からは信頼と微笑ましいものをみているような感じがひしひしと感じられる。


 瞬間移動の原因はもちろんレキ君だ。

 自分の匂いが近づいているのを敏感に察知していたレキ君。レキ君ルームに足を踏み入れた瞬間にはかなり広いレキ君ルームの真ん中辺りから自分の下に移動が完了していて、瞬きの間に自分を背中に乗っけて定位置に戻っていたのだ。


 まさに電光石火。

 一瞬過ぎて瞬間移動でもしたのかと本気で思ったほどだ。しかもまったく振動も何も感じさせず負担など欠片も感じることがないという超絶的なテクニックでもって完遂している。


 まったくびっくりしたなぁもう。



「わふわふッ!」


【もう、レキ君、だめでしょ。エナもラクリアもびっくりしてたよ?】


「わふぅー」


「昨日の続きが早く見たかったんだってさ」



 瞬間移動のような速さで連れて行かれたのは自分だけなので追いついてきたクティがレキ君の代わりに言ってくる。

 まぁ大体そんなところだとは思ってたけどね。



 驚いていたエナもお婆様がフォローしてくれて大丈夫だと手を振っている自分に手を振り返してくれている。

 向かう先はいつものテーブル。お婆様のフォローのおかげでそのままお茶にするようだ。ありがとう、お婆様。



【でもレキ君。まずはお勉強が先じゃないですか?】


「わ、わふぅ……わふッ!」


「なになに? ちゃんとやるから先がいい? ほんとかー?」


「わふッ! わふッ!」


「リリーに誓うだって!? くッ!? 卑怯だぞ!」


「わふぃー」


「く、くそぅ! 私だってリリーに誓っちゃうもんね!

 えっとえっと……。prprしたい!」



 なんだかクティとレキ君がよくわからないやり取りをし始めた。

 レキ君も自分を掻っ攫うほど楽しみにしていたようだし、今日だけは先にしてあげるか。



【じゃあ、クティ】


「prpr! おっと! 了解だよ!

 よかったな、レキ!」


「わおぉ~ん」



 すでにいつもの幻術空間は展開しているので問題なくクティパッドを4つ出してさっそくサニー先生にお願いする。



「うむ。では昨日の続きからだな」


【あ、レキ君ルームは飛ばしてください。お願いしますね?】


「う、うむ」



 昨日のなんだかとっても恥ずかしい自分の姿は見たくなかったのでちゃんと先生にお願いしておく。

 少し気圧されたように後ずさったサニー先生が不思議だったけれど気にしてはいけない。

 ちょっと意識して(・・・・)優しい笑顔を向けただけなのだし。



「わふわふ!(始まったー!)」


【次はどこへいくのかな】


「階段登っていくみたいだね」



 さっそく始まった映像の中では煌びやかというほどではないが、品の良い調度品をさり気無く各所に配置した美しい廊下を進み、大人が10人は並んで歩けそうな階段をゆっくりと登っていく。

 緩く螺旋を描く階段の手すりは滑り台が出来そうなくらい広い。

 生前のアニメとかで見たときにやってみたいと思った行動の1つだ。いつかやりたいけれど難しいだろう。


 階段を登り終わると更に続く廊下を進み、他の部屋とは趣が違う扉が現れた。

 他の部屋がシンプルでありながら重厚な扉であるのに対して、この部屋の扉は一言で言えばファンシー。



【もしかして……?】


「うむ。君の部屋だ」


【こ、こんなにファンシーな扉だったんですか……】


「とっても可愛いよねぇ~。特に全体に掘り込まれたたくさんの花がいい感じ~」



 全体が数多くの花々の彫刻で彩られ、葉と茎が絶妙なアクセントになっているがそれすらもファンシーとしかいえない扉はどうやら本当に自分の部屋の扉のようだ。


 他の部屋の扉が普通だっただけにこれはちょっと引く。



「わふわふわお~ん!(いいなぁ! いいなぁ! ボクもあんな扉ほしい!)」


【れ、レキ君はあぁいうのがいいんですか?】


「わふッ(うん!)」



 レキ君ならもうちょっと格好いいのを欲しがると思ったけれどそうでもないようだ。



 周りが女の子ばっかりだからだろうか……。

 でもテオもいるし、たまにアレクやお爺様も来るんだけどなぁ。

 まぁレキ君はレキ君だし、彼がそれでいいというのならそれでいいだろう。



 そんなことを思っているうちにファンシーな扉が開き……扉よりファンシーな内装が1番大きな主ウィンドウから飛び込んできた。



「わふぅー(可愛い!)」


【こ、これは……。私の部屋ってこんな感じだったんですか……?】


「そうだよ~。リリーの部屋はこんな感じだよ。

 あ、でもレキが部屋に入れなくなってから1回模様替えしたっけな」


「わふ!(ボクが前に見たときはこんなに可愛くなかった!)」


【そ、そうなんだ……】



 まず最初に目に入ったのは大きなタヌキのぬいぐるみ。

 たくさんのクッションと一緒に鎮座しているソレは1度も触った覚えがない。

 部屋の各所にクッションと共に様々なぬいぐるみ達が鎮座ましましている。

 カーテンや壁紙もハートや花々を散りばめた、まさにTHE女の子のお部屋である。


 正直なところ、最近この部屋は寝るだけに来ているような感覚だった。

 レキ君が大きくなりすぎてこっちの部屋に連れてこれなくなったのも大きい。

 レキ君ルームに入り浸ることが多かったので内装が魔片製の家具に変わったくらいしか認識していなかった。

 まずぬいぐるみとかカーテンとか壁紙とか見えないし。


 レキ君ルームで運動もしてくるので部屋を駆け回ったりもしないし、基本お婆様かエナかテオかエリーに抱かれているしかしてなかったのだから当然といえば当然だ。

 あとは寝るだけだったし。



【それにしてもすごい部屋ですね……。さすがにびっくりですよ】


「私は最初から知ってたからもう慣れちゃったよー」


「エリーの部屋もここまでではないからな。君の場合は皆に愛されているからこうなったのかもしれない。

 クッションとぬいぐるみが各所に設置されているのは君がもし駆け回ってどこかに突撃しても大丈夫なように配慮してだろう。

 そのままぬいぐるみに抱きつくリリーが見れるというのも計算のうちだろうがな」


【な、なるほど……】


「ぬいぐるみに抱きつくリリー……。ぶはっ」


【く、クティ!?】


「ふ……ふふ……。大丈夫、大丈夫だよ……ぐふふ」



 鼻から何かキラキラした魔力が噴出しているクティだったが、その表情はちょっと表現できないナニカだった。


 そんなクティは何のその。ウィンドウ内ではファンシーすぎる部屋を一周してようやく次へと向かい始めていた。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 その後に周った部屋は武器庫だったり、宝物庫だったりと普段お目にかかれない見ごたえある物が多かった。

 やっぱりクリストフ家はすごい家だ。

 美術館にありそうな類の装飾品から宝剣のようなものまで本物の美術館のように飾られている。

 でも宝箱に大量の金貨とかそういう如何にもな物はなかった。まぁ当たり前だけど。



 ちなみに今回環境設定してもらったのは自分の部屋やレキ君ルームなんかがある1番大きな屋敷で、ここほどではないが他にも使用人達が寝泊りしている中規模の屋敷や別館などがまだ何件もあるそうだ。

 その他にも魔道具職人達の工房や、様々な訓練施設などもあり、まだまだ見たりない。


 是非ともサニー先生には頑張ってもらわなければならない。



【よろしくお願いしますね、サニー先生】


「わふわふわふぅ!(楽しみ! 頑張ってね、サニー!)」


「い、いや……これを作るのにも結構大変」


「アレとコレとソレもばらすよ?」


「任せ給え! はっはっは!」



 クティは一体どれだけサニー先生の弱みを握っているのだろうか。

 というか弱み握られすぎじゃないですかね、サニー先生……。




レキ君が本気出すと超すごいです。

でもクティパッドを出すにはクティが必要だし、環境設定を呼び出すにはサニー先生が必要だしでまったく足りていないレキ君なのでした。



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