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濁った瞳のリリアンヌ  作者: 天界
第一部 第9章 4年目 中編 3歳
185/250

163,智の蓄積



 いつものレキ君ルームではいつもとはちょっと違う雰囲気で妖精ズと自分が向かい合っている。

 普段通りの白衣っぽい衣装と半眼が印象的なサニー先生が半眼はそのままに真剣な声音で自分に対して語りかける。



「これで既存の魔術は全て修めたことになる。

 だが君も分かっている通りまだまだここがスタートラインに過ぎない。更なる高みへと至る為にまだまだ学ぶ事は多い。

 ついてこれるか?」


【当然です。既存の魔術を全て修めることが前提だっていうのはわかってたことです。

 私はまだまだ学びたいです。

 サニー先生。よろしくお願いします!】



 サニー先生の確認に間髪いれずに即答し、まだ見ぬ知識を得るために気合を新たにする。



 そう、自分はつい先ほど既存の魔術の全てを修めた。

 とはいっても所詮は既存の魔術。

 妖精ズにも自分にとってもそれは前提でしかなく、これから至るであろう高み――クティと肩を並べるための布石でしかない。


 そしてここからは変異型2種――まったく新しい魔術の創造を行っていくのだ。



「気合のほどは十分だな。では早速始めよう。

 まずは――」







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆








「こっちをこうして……あっちをあぁして……」



 上空を埋め尽くす最小単位の術式群は以前にも増して増加の一途を辿っている。

 どれもこれも既存の魔術を全て修め終わってからのサニー先生による最小単位の術式の勉強による成果だ。



 この最小単位の術式というものは魔術における基礎の基礎であり、基礎であり奥義である。



 とかなんとか格好いいこと言ってみたけど、最小単位の術式は一切の変更ができないものでそれらが組み合わさって作られるのが魔術であり、単体では何もすることはできない。


 最小単位の術式を適切に配置し、1つの『群体』を作り上げる。その様はまるでプログラムのようであり、見ているだけで懐かしさがこみ上げてくる。


 群体の基本的な機能は例えば、Aという行動に3つの処理が必要だとして何度もAという行動が必要になる場合に群体Aとして保存しておき、Aという行動の際に群体Aを呼び出して処理させるのだ。

 こうすることによりいちいち3つの処理を書き込む必要がなくなり、群体Aだけを呼び出すだけで済む。

 もちろん群体により、ただ呼び出しただけで済むものだったり、必要なデータを入力したりする必要がある。

 群体は処理の内容が増えることにより利便性があがる。ただその分汎用性は減っていくのだけれど。



 いくつかの汎用性のある群体を作り上げ、それらを必要に応じて呼び出し効率よく処理を進めていく。

 まずはこの汎用性のある群体を思いつく限り作ってしまった方が効率よい。

 思いつく限りとは言ったが新規魔術構築における大先輩であるクティからこれら汎用性のある群体についてたくさん学んでいるのでまずはそれらを作り上げてしまうことにしている。


 クティパッドに実装されている機能には魔術シミュレート機能があるがまだまだ発展途上であるし、クティパッド上で作成した群体では実際の魔術を作る際にもう1度自身のアーカイブに保存する必要性がある。

 現在のクティパッドの性能では二度手間になるということだ。

 なので群体作成はクティと一緒にある程度の概要だけをまとめて作り、無意識領域に引っ込んで最終的な作成を行っている。


 無意識領域では領域内速度を最大にしてあるのでそこそこ時間をかけても現実の時間は全然進んでいない。非常に便利だ。



 すでにアーカイブに保存してある群体は相当な量になっている。でもこれでもまだまだ足りない。

 すでに構想を練ってある自分の魔術を作るには圧倒的に足りないのだ。


 とはいっても最初からすごい魔術を作るつもりはもちろんない。

 まずは簡単なところから始めるつもりだが、その前にまずはクティと一緒に考えた群体達を作り上げねばならない。



「……できたー」



 今日作る予定の群体を作り終わり、諸手をあげてコロン、と転がる。

 無意識領域でも生前の世界での体ではなく、こちらの――現世での体になっているので3歳児の小さな体ではあるが別段不自由はない。

 ただちょっと術式を書き込む際に作ったキーボード型の入力装置が打ちづらいだけだ。

 何せ3歳児の手は小さいのだ。

 それに合わせてキーボードも小さくすればいいのだが、調整がなかなか難しい。


 でもやっぱりこの辺も慣れてしまえばどうということもないようで、確かに打ちづらくはあるが今ではちょっと(・・・・)打ちづらい程度になっている。

 調整するよりも慣れてしまう方が早そうなのでそれほど優先度が高くないという感じだ。



 このキーボードのように無意識領域内である程度のカスタマイズが出来るようになったのは既存の魔術を全て修めた直後だった。

 サニー先生曰く――。



「無意識領域にはいくつかロックがかかっている。

 それらを解除することにより、無意識領域の機能が解放されていく。

 特に有用な機能の解除には既存の魔術の全習得というものがあるのだ。新規魔術構築の前に既存の魔術を全て習得させたのはこういう理由があるのだ。

 まぁもちろん既存の魔術は基礎や応用を学ぶのに適しているという理由もあるがな」



 ということで解放された機能の1つが無意識領域内での術式に対する改変構築機能補助――手動入力だ。

 この辺は自身のイメージが重要で自分の場合は生前慣れ親しんだキーボードにしたのだが、クティの場合はノートに手書きだ。


 久しぶりにキーボードを見たときにはちょっとだけ感動した。

 キーボードといえば対となるのがマウスなのだけれど、マウスを使うよりは思考による操作の方が断然早かった。

 無意識領域では思考することによりデータを自由自在に呼び出せるし、保存できる。

 入力に関してはそうもいかないが、整理整頓するにも思考操作でできたりするのでマウスはぶっちゃけいらないのだ。



 生前はキーボードを叩きすぎて腱鞘炎になりかけた事もあるのだが、無意識領域では肉体的な疲労は一切ないのでどれだけキーボードを叩いても問題ない。

 その代わり運動しても現実の肉体には一切反映されない。

 なので精神と○の部屋みたいな修行はできない。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







「さてー……。そろそろ戻ろうかな……。っとその前にっと」



 ひと段落ついたのでそろそろ無意識領域から出ようと思ったのだがその前に群体の整理をしてしまうことにした。

 群体を保存している領域を呼び出して目的ごとに分類していく。

 もともとある程度分類していたのもあり、それほど時間もかからずに作業が終了する。



「こうしてみるとずいぶん作ったなぁ……。

 まだ既存の魔術を修めてからそんなに時間経ってないのに……」



 実際まだ既存の魔術を修め終わってから4日程度しか経過していない。

 その間に作った群体の数は結構膨大だ。

 まぁ普通ならこれだけの量を作るにも、考える時間だけで相当な期間が必要だろう。

 すでにこの辺の作業を終えていて、尚且つ今も必要に応じて群体を作り続けているクティがいるから出来ることだ。


 群体は単純な単一動作から複雑な動作まで数多く存在する。

 それらはもちろん目的ごとに改良を加えた専用の物として作る事もできるのでどんどん数が増えていくのだ。


 クティの作った群体概要からどういった目的で使われているのかが推測できる。

 それらは新規構築する魔術に対しての新たなインスピレーションにもなる。


 自分は結構凝り固まった思考をすることが多いのでクティの自由且つ奔放な思考により作られた群体は頭を揉み解すのにちょうどいい。

 まだ群体作成をしている段階なので新規魔術を構築するつもりはないけれど、思いついた魔術はさらっとメモを取っている。

 整理していて思いついた魔術も白紙のウィンドウを呼び出してキーボードをカタカタ打ち込んでいく。



「ふふふん。もうメモも結構いっぱいになってきたなぁ。

 あぁ早く魔術作ってみたいなぁ~」



 口元がつい緩んでニマニマしてしまう。

 無意識領域では現実とは違って心の動きにより表情が動きやすいように感じる。


 現実ではこの程度ではまだまだ表情はあまり動かないのだ。

 伊達に無口無表情で生活していたわけではなく、その制限を解いたはずなのに未だに表情が乏しい。

 まぁ普段接する相手が家族や専属だけということで自分の小さな変化をしっかりと読み取ってくれるので問題になっていないのも原因のひとつかもしれない。


 でももうあと1年ちょっともしたら学園に通う歳になる。

 普通の子供は5歳になったら学園に入学するのだ。

 自分は濁った瞳という病があるからどうなるかわからないが、それでも身内にしか会わないという生活はいつか変化するだろう。

 その時までにもうちょっと表情を作れるようにしなくてはいけない。



 まぁ今後も無表情キャラとしてやっていくならそれでもいいかもしれないけど。

 それもどうかなぁとは思うのだけれどね。




ついに既存の魔術全習得完了です。

といっても特に何もありませんが。


リズヴァルト大陸の全魔術師達の頂点は、リリーたちにとっては前提条件でしかないのです。


気に入っていただけたら評価をして頂けると嬉しいです。

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