153,智の脈動
ウィンドウ型ノート――クティパッドは超進化し、いくつか機能が増えた。
代表的な書き物用のノート機能。
落書きモードのペイントソフト的な機能。
自身のアーカイブへアクセスし出力や保存などを行う機能。
実用性の高い所だとこの3つだろうか。
ちなみに現在の大きさは自分の小さな体の半分くらいの大きさだ。結構大きい。
でも重量はほとんどなく片手でも軽々もててしまうほどだ。しかし強度は恐らく物理攻撃では損傷しないレベル。というか魔力で構成されているため魔術で影響を与えないと壊せない。
しかもクティ製の保護魔術がしっかりとかけてあるので早々魔術でも壊せない。簡易的な盾としても利用できそうなくらいだ。
さていくつかある機能のうちでも重要な機能の1つであるアーカイブへのアクセス機能だが今現在はまだ静止画像としての出力しか出来ない。
自身のアーカイブにアクセスできるというだけでもかなりすごい事だと思うが動画を出力できないのはちょっと残念だ。
だが動画も静止画像として切り取ってなら出力できる。
なのでクティベストショットを壁紙にしてみたりした。
壁紙をランダムで変更するようなものはまだないので今度クティにおねだりしてみよう。
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「あ~……そろそろ魔力切れかなぁ~?」
【そうだね。一旦全保存っと。
レキ君も保存して~】
「わう」
クティパッドはこの世界――オーリオールと世界の隣の森含めても創めての魔術だ。
当然ながらクティの奇跡のような芸術の域を遥かに超えた荘厳な術式構築の元に成り立っている。
そしてクティパッドは適性を利用した魔術ではないので燃費が激しく悪い。
次元間通信魔術の初期バージョンの約60倍の精霊力を使っても使用できる時間がたった1ハルスだ。
それを自分、クティ、レキ君と3つ出しているので消費も3倍。1ハルス単位で詠唱しているので次元間通信魔術の180倍の精霊力を使っている計算だ。
とはいっても次元間通信魔術は1度行使してしまえばかなりの長い時間通信が行える。
しかも今は軽量版があるので実際の精霊力消費量はもっと少ない。
燃費を考えると自分以外には恐らく扱えないほどの凶悪な消費量だがそれ以上に有用性が高いので問題ない。
それに自分の総魔力量から考えるとこれだけの精霊力を1ハルス毎に消費しても回復量の方が勝ってしまう。
1度に100個単位で出しても1日中使っていられる程度には膨大な量になっているのだ。
「リリーお願い~」
【了解だよ~……それ~】
クティパッドの魔術ははっきりいって複雑怪奇だ。
様々な機能が複雑に絡み合っているので作った本人にしか理解できないレベルのものに仕上がっている。
しかも今尚自分とレキ君の使用感を聞いて新規に機能を追加したり改良したりしている。
昨日初めて触って大興奮してレキ君と一緒に弄くりまくって次々にクティに、こうしてああして、と注文を出してほとんど実装している。
アーカイブの映像を出力したり、カメラ機能などをつけたりするのはかなり難しいようでまだ実装していない。
ちなみにスピーカーもマイクもないので音楽を流したり録音したりも出来ない。
アーカイブの映像に関しては映像自体が凄まじく重く、クティパッドの処理能力では処理しきれないのでクティパッドの処理能力自体を向上させないと無理という結論に達した。
カメラ機能やスピーカーやマイクも同様でこちらも処理能力不足が原因。
でもカメラ機能が実装したとしても自分が見れるような処理を施すにはアーカイブに保存しなおして再出力しても恐らく不可能らしい。
元々アーカイブに保存してある映像も画像も、今も見えている自分の魔力しか見えない視界でのものだからだ。
「わうわふ!」
「はいはい、わかってるってーそんなに急がないでよー」
【ふふ……レキ君はすっかりクティパッドに夢中ですね】
「わう!」
レキ君用のクティパッドは体格にあわせて大きい。
画面の領域がその分大きいので何かに使えないかと思って色々クティに提案してみた。
まずは最優先事項としてクティパッド毎に優先度設定をつけた。
自分やクティのクティパッドは優先度最高でレキ君はその下位にした。
優先度が高いクティパッドはそれ未満のクティパッドに対してアクセスが自由に出来るようにした。
自由にアクセスできるようにはしたが画面を共有したり覗いたりするための機能がなかったのでその辺も発注。
出来たのは会議用共有ソフトのような全員で共有できるスペースを作成できる機能と完全なリモートコントロール機能。
例えばレキ君のノートにリアルタイムに問題を書き出してあげたり、採点してあげたりもできるようになった。
だがリモートコントロール機能は優先度が自分未満のクティパッドにしか使えないのでレキ君がクティや自分のクティパッドに同様のことはできない。
そのため作られたのが会議用共有スペース作成機能だ。
これは単純に全員で共有できるスペースを作成する機能で、そこに何かを書いたら全員のスペースにも表示されるという感じ。
その他にも細かいところで各機能のウィンドウの拡縮や最小化や最大化などの一般的なOSについてそうな機能などを次々実装してもらった。
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どんどん機能が追加されて便利になるクティパッド。
まるで生前の世界のタブレット端末やスマホなどを思い出すレベルの出来だ。
それもこれも新たに開かれた鍵部屋にあった術式のおかげではあるが、無くてもクティなら作れたかもしれない。
まぁまずこれほど汎用性の高いものを魔術で作成しようとはまだ思わなかっただろうけど。
「レキってほんと器用だよね」
「わふん」
【むぅ~難しい……】
「頑張って、リリー! リリーなら出来るよ! 間違いなく昨日より綺麗になっているよ!」
【ありがとう、クティ。がんばる!】
「わふふふん」
レキ君が鼻高々に調子に乗っているのは理由がある。
クティパッドのノート機能か落書き機能を使うと付属のペンでいろいろ描ける。
つまり文字も書けちゃうということで、今まで口頭か魔力文字でしかやっていなかったことをペンで書くということをやっているのだ。
つまりは文字を書く練習というやつだ。
だがこれが結構難しい。
3歳児の小さい手ではまだまだペンを器用に扱うのは難しくどうしても字が汚く荒れてしまう。
レキ君は大きな手を器用に使って……本当に器用に使って綺麗な字を書いている。
まぁレキ君はこのリズヴァルト大陸で使われている文字はかけないので汎用数字だけど。
それでもかなり綺麗だ。美しくすらある。
それに比べて自分の字はミミズがのたくったような酷いものだ。
生前もあまり字は綺麗な方ではなかったがコレは酷い。ぎりぎり読めるけど一瞥しただけで目を逸らしたくなるほどだ。
【魔力文字ならレキ君に負けない綺麗さで描けるのに……】
「わふふん!」
「リリー、こいつ調子に乗ってるよ!? 乗ってるよ!?」
【でも実際にレキ君の字は綺麗だし……】
「むむむぅ……」
「わふふふふぅ~ん」
天狗になっているレキ君に唇を尖らせてみるが彼の鼻が更に伸びるだけだった。
ちょっと悔しいのでこれから毎日字の練習をすることを心に誓った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
毎日改良され、新しい機能が実装されて進化していくクティパッド。
新しい機能もいいけど現状の機能を進化発展させるのも大事だ。
ノート機能と落書き機能は連結できるようになってノートに落書きが出来るようになったり、更にそこにアーカイブの画像を貼り付けできるようになったり、会議用共有スペースにも同様のことが出来るようになったり、色々と進化している。
さらにたった数日しか経っていないのにクティパッドの処理能力が最初の4倍程度には上がっている。
まぁまだアーカイブの映像は見れないけど。
たくさんの機能を同時に実行すると処理能力不足でパンクしていたのが今ではかなり快適だ。
ノートと落書きと共有スペースを実行したらそれでかなりキツキツ状態だったのが今ではさらにそこにレキ君の画面状況を表示して、更にカレンダーや術式構築用の専用機能を実行したりしても余裕があるくらいになった。
術式構築用の専用機能は既存の魔術やクティの魔術などを無意識領域で見た場合のプログラムのような状態で表示する機能だ。
自分の目にはそれ以上に細かく見えるが大まかなチャート代わりに利用すると便利だ。
まだ自分で新しい魔術を作って行使などはしていないがこの機能を使って仮バージョンのものを試作したりはしている。
ちなみにこの機能の1番の利点は魔術のシミュレートが出来るということだ。
かなり詳しく環境設定が出来るので非常に便利だ。
クティのアーカイブにはこれがあるのに自分のアーカイブにはない。
クティの方に映像保存の機能がないのと同じ理由だろうか。
クティのアーカイブにあるシミュレート機能はクティパッドに実装している現バージョンよりも遥かに優秀だ。
それを再現しようとして作られたのがこの術式構築用の専用機能なのだがクティはまだまだ満足してはいない。
自分としてももっと術式を細かく表示できるようにしたい。
改良点はいくらでも出てくるのでクティパッドは日々進化してくれるだろう。
クティのやる気も留まる所を知らないという勢いで加速に加速しているし。
ちなみにクティパッドのデータはクティなら本人のアーカイブに保存し、レキ君はアーカイブがないのかまだ使えないのかわからないがとにかく今は保存先がないので自分と一緒に保存してしまっている。
データ量がかなり増えていて細分化されているのにアーカイブには問題なく保存出来、さらには呼び出しても何の問題もないのだからすごい。
ただ問題がいくつかあるにはある。
所謂名前をつけて保存ができないのだ。
現状を丸ごと保存しておくという感じでの保存しかできない。
だがこの辺はサニー先生が解決出来る可能性が高いことがわかっている。
サニー先生が使っている外部記憶領域をクティパッド用に改良しようという案が出ている。
世界の隣の森で例の魔石を分析している先生にはすでに次元間通信魔術で連絡は入れてあるので外部記憶領域用の様々な物を持って帰ってきてくれるらしい。
まだまだ夢が広がるクティパッド。
これからもどんどん改良されて便利になっていくことは間違い無いだろう。
自分の字もミミズがのたくって窒息死しそうな酷さから、なんとか地中で土を肥やしているような状況になったので負けないように頑張ろう。
ちなみにレキ君もリズヴァルト大陸の字を練習し始めた。
一言だけ言おう。
超悔しい。
ノートが進化してタブレットのようなものになりました。
まだ色々と足りない部分はありますが、それもどんどん日々改善されていっています。
レキ君は非常に器用でリリー相手でも怪我をさせずに遊べるくらいには力加減をうまく変更できます。
その器用さをもってすれば字を書くのも楽勝なのです。
しかも美文字。
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