149,魔術 of 奇跡
狐、猫、子豚、狸、啄木鳥ときていきなり方向転換してワンポイントリボンからカボチャに至るまで制覇した後に最終的にガーターベルトとローライズになった我らが神々しいポーズさまは未だ魔術の製作中だ。
何の話かはちょっと込み入った話になるのでやめておこう。
見えそうで見えないわけでもなくちょっと首を傾げれば簡単に見えるアレとだけ言っておこう。
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大量に確保した魔片は5分の1程度を魔道具化してみた。
お婆様達におねだりしてゲットした魔道具の大半はレキ君ルームのレキ君の玩具箱に保管してある。
この玩具箱にはいくつか仕切りがしてあるので魔片と魔道具と廃石を分けていれることにした。
もちろん自分が魔道具を製作しているのを知られないようにするためにこの玩具箱には隠蔽魔術がいくつかかけてある。
見ただけではただの魔片にしか見えないように幻覚の魔術がかかっていて、手にとって確認できないように幻術の魔術と意識誘導の魔術で常に魔術の封じられていないただの魔片を手に取るようになっている。
魔道具は基本的に封じられている魔術と残りの使用回数が表示されるようになっている。
簡単な素材の組み合わせ――主成分として廃石を利用している――でこの表示が可能で魔片のどこにでも表示させることが可能なため、加工された魔片と装飾の位置に応じて後付けされるのが定番だ。
エリオットの工房でも同じで確保した魔片は当然ながらこの処置は施されていないようだ。
廃石が主成分なため自分にも見えるはずなのだが、どうやら廃石以外の素材で表示しているらしく見ることができない。
廃石を磁石、表示する素材を鉄などと言い換えてみるとわかりやすいかもしれない。
なので表示部分に使う素材を使用しなければ自分にも見えるというわけだ。だが現状では自分1人ではこれを作るのは難しい。
使い終わった魔道具である廃石の確保は簡単でも、この表示処置を施すにはそれだけでは当然足りないからだ。
まだまだ素材関連については手の出せない状況なのがちょっとだけ歯がゆい。
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魔片に魔術を封じる練習は今の所1度も失敗していない。
使用も問題ないが今の所封じている魔術は全て8級以下の魔術だ。
確保した魔片には7級以上の魔術を封じるには魔力が足りない。無理やり封じようとすると失敗して最悪爆発するので危険だ。
魔片に封じられる魔術は魔片の魔力の量によって決まっているが、普通は魔片の魔力の量なんて正確にはわからない。
物質に宿る魔力の量には一定の法則があるので大体の大きさでどの程度の魔術を封じられるかを学ぶ事により安全に魔術を封じられるようになるのだ。
ただこの法則も完璧ではないため、極稀に大きさに見合わない魔力の量によって失敗したり予定より使用回数の多い魔道具が出来てしまったりすることがある。
魔力の量が多い分には使用回数が増えるだけなので問題にならない。
少ない場合でも封水晶である程度判別が可能なため大事に至ることもほとんどない。
ちなみにエリオットから貰った魔片はさすがはクリストフ家のお抱え魔道具職人が使う魔片だけあり、大きさに応じた魔力の量がかなり均一になっていた。
魔片を全部魔道具にするわけにもいかず、かといってサニー先生がいないので自分の勉強も進まない。
クティも神々しいポーズのまま今日はレキ君がデフォルメされた物を履いていたのでいつものようにじっくり眺めていたけれど、やはり大分暇だ。
ちなみにレキ君が覗こうとするとなぜか見えなくなるそうだ。
さすがクティだ、抜け目がない。
一応今までの勉強の復習をしつつ、レキ君に教えているのだがレキ君にはさすがに難しすぎるようで始めるとすぐに大あくびをかましてくれる。
でも気にせず眠そうにしているレキ君に講義を続けているとスヤスヤと気持ちよさそうに居眠りを始めるレキ君。
ちょっとイラッとしたけれど自分の教え方が悪いので仕方ない。
クティの魔力の図解がどれほどすごいことなのかがわかるというものだ。
あの図解がなければサニー先生の難解な授業についていくのにもう少し時間がかかっただろうことは言うまでもない。
スヤスヤとマジ寝に入っているレキ君になんだか勉強意欲も削がれて来たのでふかふかのレキ君ベッドにダイブしたがこの犬っころには3歳児の体重では無意味だ。
ぺしぺしと腹いせにお腹を叩いてみるがこちらもまったく効果がない。
もうなんだかどうでもよくなってきたのでまったく獣臭くないどころか爽やかな匂いさえするレキ君のお腹に顔を埋めて自分もお昼寝タイムに突入するのだった。
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鈴を転がしたような澄んだ声が聞こえる。
耳に心地よく、心から安心できるこの声を自分は知っている。忘れるわけがない。
たゆたうような不安定な思考がだんだんとはっきりとしてくると顔にいつもの感覚がすることがわかってきた。
へばりついて一部は吸盤のように張り付いているこの感覚は最早馴染み深いものがある。
「ぷは! げへへへ……久々のリリアンニウムは神の味だぜぇ……!」
へばりついたままなので顔は見えないけれど吸盤のように吸い付いていた部分がキュポン、と音が出そうな勢いで離れたと思ったら予想通りの内容が聞こえてくる。
【クティ、おかえりなさい。魔術は完成した?】
「おほっ! り、リリー起きてたの? どこから起きてたの?」
【げへへへ……の辺りかなぁ。私の味って神の味なの?】
「そりゃあもう神をも超える最高の味だよ!」
最近は神々しいポーズさましか見ていなかったので久々に見るドヤ顔になんだか胸が熱くなる。
郷愁を感じる感覚にも似たなんだか懐かしくも心の琴線に触れ、自然と涙が出てきそうになるこの顔に笑みが零れる。
【そっかぁ……私もクティの味を味わっていい?】
「もちろんだよ! もちのろんだけど、餅の味はしないよ!?」
その後クティの味を確かめて確かに餅の味はしなかったけれど、しっかりと神の味を体験することができた。
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【ところでクティ】
「ん~~~~~ぷはっ!」
ちっこいさま曰くの神の味をたっぷり味わっていたクティにそろそろいいかな、と魔力文字を見せると最後にたっぷりと吸い付いてきたが満足してくれたようだ。
「何かな、マイラヴァー!」
神々しいポーズの時よりもずいぶんと艶々になったような気がするちっこいさまは「ヴァ」を強調した発音でサムズアップしている。
【魔術の方はどうなったの? クティが戻ってきたという事は出来たんだよね?】
「もちろんだよ、マイハニー!」
今度は強調することなくさらに空いている方の手でサムズアップして完成したダブルサムズアップと共にちっこいさまの歯がキラリと輝く。
もちろん光の反射は見えないのでちっこいさまの魔力で描かれたものだ。
【それでどんな魔術が出来たの?】
「ふっふっふー。まぁまぁ落ち着きたまえ!
この魔術は私が作った魔術の中でも最高傑作といえるものだよ!
これが落ち着いていられるかーッ!」
空中で体の5倍はあるちゃぶ台をひっくり返しているちっこいさまが鼻息荒く興奮しているがこれは相当期待できる魔術のようだ。
無意識領域に入る際のやる気のほどでもわかってはいたがいつも以上のテンションの高さのちっこいさまに更に期待が大きく膨らむ。
【それでそれで?】
「そこまで言われてしまってはこのクレスティルト!
期待に応えるしかないのだよーッ!」
期待に満ちた瞳を向ければ背後に銀河を背負ったちっこいさまが今まで以上の神々しいポーズを取り、チラッとスカートをめくって履き替えた自分のデフォルメした顔が大きくプリントされた神器を見せて、てへ☆ぺろっとしてから魔術を展開していく。
ちなみに顔の上には大きくリリアンヌとアーチを描くように書かれていたので自分だとわかった。
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いつものように術式が緻密に積み上がっていき、大胆な中にも繊細さを併せ持ち、膨大な熱量を極寒の冷気で引き締めたかのような濃密な構成が少しずつ広がっていく。
今までとほとんど変わらない――それでも天才という名を欲しいままに貪れる――印象を受けていた構成ではあるが、ある一点まで来ると一瞬で鳥肌が全身に立つほどの恐ろしい印象を受けた。
今までは術式の構成から受ける印象はクティという存在そのものを表していた。
掴み所がなかなか難しく、紛れもない天才として驚くばかりの才能を発揮するまさに光。
だが今展開されている構成はそんな光の妖精とは真逆の存在だ。
陰鬱で荒々しく、だがその中に確固とした信念と昏き意志が介在した夜よりも深き闇。
肌が粟立ち背筋に冷たい汗が流れていくが決して視線を外す事ができない。
まるで魅入られたようにただただ展開していく術式を分析することもすっかり忘れて見ていることしか出来なかった。
一体どれほどの時間が経ったのかすらわからないほど我を忘れて魅入っていたが、レキ君ルームを埋め尽くさんばかりにまで展開された術式が遂に終焉を迎える。
「さぁ……完成だよ!」
クティの声と共に展開された膨大な量の術式が一気に圧縮されていく。
圧縮され、1つになるその様はまるで世界が新たに誕生しているかのような心の底から震えるような光景だった。
でもわかっていた。
クティはまた気づいていない。
とても重大なことを忘れている事に。
完璧に構築された術式が発動段階にまでなり……そして消滅した。
「……あるえ?」
【クティ……魔力足りてないよ……】
「……あるえー?」
次元間通信魔術のように奇跡のような術式で構築された魔術にはどうやらクティにドジッ子属性を付与するらしく、ドジッ子さまの可愛らしい声はレキ君ルームに乾いた風を吹かせるのだった。
さくっとクティ帰還です。
展開される術式は引き込まれるほどに魅力的です。
でもやっぱりオチがありました。
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