148,魔術 of 魔道具
光を発する魔術がある。
詠唱で設定される項目は光量、範囲、持続が一般的だ。
10級の魔術の中でも中ほどのランクにあたる魔術であり、1番簡単というわけではないが利用頻度の高い魔術だ。
級をあげれば設定項目が増えて攻撃力を持たせることが出来たり、ソレに伴って行動範囲の指定ができたりするようになる。
この光を発する魔術を魔道具に封じた場合、極々一般的に使われている明かりの魔道具となる。
もちろん封じる魔術の設定次第で価値が変わってくるし、当然利用される場所も変わってくる。
だがしかし、今現在展開されている魔術はこの既存の光を発する魔術ではない。
魔道具として魔術を魔片に封じるためには封水晶という道具が必要となるが、これはクティが作った魔術で代用できる。
封じる魔術に応じて様々な封水晶を使わなければいけないのに対して、クティの魔術であればコレ1つで全て対応できるので上位互換なことは言うまでもない。
ただ魔術なので魔力を使うし、クティ製なので精霊力が必要であり普通の人種には扱えないという点がネックだろうか。
精霊力を生み出せる自分には何の問題もない事だけど。
【光量最小、範囲極小、持続中で設定】
神々しいポーズのままのクティとわくわくして尻尾が忙しなく動いているレキ君に見守られながら初めての魔道具製作を行う。
魔術は10級の魔術だし、設定自体も問題ない。
認証もつけないので難易度的には初心者が行うには適性といえる。
例え1級までの魔術を全て修めている自分でも魔道具を作るのは初めてだ。念には念をいれて簡単な魔術で試す事にした。
物語なんかで出てくる主人公なんかはここですごい魔術を封じて最強のアイテムが完成だ! とかやっちゃうんだろうが、自分には無理だ。
やれないことはないだろうが、そんなものを作っても使い道がないし、もし万が一誰かに発見されでもしたら目も当てられない。
かなり確率は低いだろうし、隠蔽魔術でなんとでもなるだろうと思うだろうがソレはそれ。コレはこれだ。
クティ達に頼れない状態でやるべきことではないのだ。
封水晶の魔術により魔片に魔術が封じられていく。
その光景は完成した魔術が発動する寸前で活動を完全に停止し、変質していくというなんともいえないものだ。
魔道具に封じられる魔術は例外なく全て変質する。
それは魔片の中に封じられるという現象に際して必要な事であるがなんとも見ていてもやもやする。
術式を見ることが出来る自分だからこそ思うことかもしれない。
実際尻尾をばさばささせているレキ君はキラキラした魔力の流れを瞳に宿して興味津々に眺めている。
【出来ました。では起動実験ですね。
大丈夫だと思いますけどやっぱりドキドキしますねぇ~】
「わぅ!」
術式の変質が完了し魔片に魔術が完全に封じられた事により、ただの魔片だったものが魔道具となった。
だがこれで終わりではない。
魔道具は起動した時に中に封じられた魔術が設定した通りに発動しなければいけない。
特にはじめての魔道具なのだからきちんと起動実験をしなければ安心など出来はしない。
レキ君もワクワクが止まらないようで耳が忙しなく動き、尻尾の動きははちきれんばかりだ。
以前の魔力溜まりがあったレキ君なら尻尾の動きだけで空すら飛べたのではないだろうか。今はもう無理だけど。
【起動】
完成した魔道具を掲げ、起動と念じる。
起動する際のアクションは基本的に声でもいいし、念じてもいい。
条件としては本人の魔力のある程度浸透している物と接触していればいい。
それは服であったり、武器であったり、なんでもいいので条件としてはかなり緩いだろう。
ちなみに魔力が浸透している物と言ったが魔力でももちろん問題ない。
体の外に魔力を放出できる自分やクティは遠隔で魔道具を起動することも可能だ。
「わふー」
レキ君の感嘆の声。
魔道具が活性化し、術式が変質はしているが綺麗に展開しているのがわかる。
変質している過程を見ているからどの部分がどの部分の術式であるかがはっきりとわかるため、ホッと一息吐くがコレで終わりではない。
きちんと設定した通りに光を発する魔術が展開していることを確認すると魔道具を停止させる。
遠足が家に帰るまでが遠足であるように、魔道具は安全に停止するまでが魔道具なのだ。
【魔道具『灯明』、完成です!】
「わふわふー!」
神々しいポーズのまま静かに見守ってくれているクティに捧げるように初めての魔道具が完成した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
【レキ君、魔道具にはそれぞれ大体の名前があります。
大体なのはなぜだと思いますか?】
「わぅ~?」
完成した魔道具『灯明』は5回ほど時間いっぱいまで起動させると使用回数が切れてしまった。
だがこれも予定通りなので問題ない。
むしろ予定通りにいかなかったら問題だ。
【そうですね。名前がないと呼びづらいですもんね。
でも魔術というのは使う人によって、設定によって違いが出てきます】
「わう」
【そうです。ですから大体なのです。
ある程度の範囲に設定された魔術を封じた魔道具を総称してそう呼ぶことによって分類を楽にしているんです。
レキ君が言った様にいちいち細かく分けていたら大変ですからね】
「わふふ」
正解を導けたレキ君を撫でてあげながら使い切ってしまった魔道具『灯明』をレキ君に見せる。
【ではレキ君。この使い切ってしまった灯明はなんていうんですか?】
「わふん!」
起動と念じても一切反応のない完全に活動の停止してしまった灯明。
魔道具には例外なく使用回数制限というものが存在するため使い切ってしまった魔道具はすでに魔道具ではなく別の名前で呼ばれることになる。
【はい、正解です。この灯明はすでに魔道具『灯明』ではなく、廃石と呼ばれるようになります。
でも廃石は専門用語のようなものなのであまり一般的ではありません。
一般的にはゴミとか使い終わった魔道具とか、結構呼び方も適当です】
「わぅ~」
【まぁ確かにちゃんとした名前があるならそう呼ばれるほうがいいんですが、使い終わった魔道具というのは基本的に魔片の素材以外には利用価値がありませんから仕方ないんです】
「わぅぅ~」
【レキ君は優しいですねぇ~。
可哀想かもしれませんがこれも現実です。現実は厳しいんですよ?】
「わう!」
【そんな現実ぶち壊してやる?
ん~レキ君がもっとお勉強を頑張れば出来るかもしれませんね。
でもさっきも言ったように魔片の素材としては利用価値があるんです。ですので廃石は必ず回収されます。大きな街なら当たり前ですけど、小さい村にまで必ず廃石の回収する箱があるそうですよ?】
「わふ!」
【そうですね。なら大丈夫ですよね】
レキ君に1つ1つ教えながら魔道具に関する知識を復習していく。
レキ君にとっても魔道具は身近な存在なので詳しく知らなくてもある程度のことは理解しているが、専門的なことになったり人種としての一般常識に関する事になるとそうもいかない。
もちろん自分も廃石を回収するためのリサイクルボックス的なものなんて見たこともない。
サニー先生の授業によって得られた知識でしかないが知識は知識だ。
【ではもう1つ灯明を作ってみますね。
次はレキ君も魔道具を使用してみましょうか】
「わふ! わふ!」
【はいはい、急かさないの】
レキ君が待ちきれないとばかりにぴょんぴょん飛び跳ねて催促する様子に苦笑しながら魔術を封じていく。
2度目になるともう緊張も何もない。
さくっと完成した魔道具『灯明』を念の為起動させてみて問題がないか確認したあとにレキ君の前に置いてあげる。
【ではレキ君、コレに触って起動させてみてください】
「わふっ!」
鼻息荒く目をキラキラさせながらレキ君の右前足が灯明に振り下ろされるとガラスが砕けるような音がして灯明は粉々になってしまった。
「わ、わふぅ……」
【ん~……レキ君……魔道具は基本的に壊れやすいんですよ?
そんなに勢いよく足を叩きつけたら壊れるのは当然でしょ?】
「わふぅぅぅぅ……」
魔力溜まりがなくなっても元々頑丈なレキ君の肉球には怪我1つなかったのが幸いだが、灯明は完全に壊れてしまった。
まぁまだ大量に魔片があるから別に問題はない。
でもレキ君にはしっかりとお説教をしておいた。
しっかり反省はしたけれどシュン、としてしまったレキ君を慰めてからもう1つ作った灯明で今度こそレキ君は自身の意思でもって生まれて初めての魔道具起動を成功させたのだった。
レキ君の肉球はぷにぷにで素晴らしい感触ですが、逆に凄まじく頑丈です。
ただの武器程度では傷をつけることすら困難なほどです。
でも触るとぷにぷに。
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