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濁った瞳のリリアンヌ  作者: 天界
第一部 第8章 4年目 前編 3歳
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144,魔術 of サルバルア Part,4



 レキ君の体内に侵入した魔術が効果を発揮する。

 特級の魔術とはいえ、既存の魔術でしかないこの魔力吸収の魔術は設定を細かく弄っても吸収できる量に限界がある。


 レキ君の魔力総量はかなり高い。

 高いとは言ってもそれは一般的な人種と比べての話で、クティや自分から見れば誤差範囲でしかない。

 限界がある魔術でもさすがは特級。レキ君の魔力はほぼ一瞬で吸い尽くすことができる。

 なので慎重にレキ君の魔力を減らし、魔力溜まりが起動するまで吸い尽くす。

 レキ君の総量と比較して算出された限界量に達したところで魔術を解除すると同時に魔力溜まりが起動したのか魔力の流れが魔力溜まりに繋がり再びレキ君に魔力が流れ出す。

 この魔力溜まりに繋がった魔力の流れを利用して再び瞬時に構築された魔力吸収の魔術がレキ君の魔力を吸い上げ始める。


 だが今度は先ほどのような速度では吸い尽くす事はできない。

 レキ君自体が持っている魔力総量よりこの魔力溜まりは遥かに容量が大きい。

 それこそレキ君の魔力を3桁単位で使い尽くしてもまだ半分に届かない量が貯蔵されているほどだ。


 そして気づいた。

 気づいてしまった。



「リリー……顔が青いよ、大丈夫?」


【……この魔力溜まり……私の魔力だ……。私がレキ君を殺そうとしているの……?】



 そう思ってしまった瞬間にはもう手の震えが止まらなかった。

 すでに構築され、効果を発揮している魔術は自分の手が震えても問題は無い。

 だが視界が若干悪いのは涙が溜まっているからだろう。動揺して出た涙にも魔力は篭っているんだ、とどこかで現実逃避を望んでいる自分が呟いたような気がした。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 吸い取ってわかったのはこの魔力溜まりに貯蔵されている魔力が完全に自分の魔力と同一であるということ。


 レキ君は通常とはまったく異なるほどの急激な成長をしていた。

 それは自分がもふもふしてあげていたのが影響していたと思っていた。

 いや、確かに影響していたのだろう。


 より正確に言うならば、圧縮した魔力で撫でることにより自分の魔力がレキ君の体内に侵入して影響を与えた。

 それが今はっきりとわかる。

 魔力溜まりから流れる魔力がレキ君の魔力の流れに入ると魔力の流れが急激に活性化されているのがわかる。

 活性化された魔力の流れは通常とは異なるほどの成長速度で魔力の流れを太く強化してあっという間にレキ君の魔力と混ざり合っている。

 今は魔力吸収の魔術で即座に吸い尽くしているからすぐに元に戻ってしまうが、これがこのままだったらどうなってしまうのか。



 いやわかっている。

 レキ君の今までを見てきた自分にならわかる。



 まず種族の限界までの急激な体の成長。

 これは自分の魔力により急激な魔力の流れの強化が肉体にまで影響を与えた結果だろう。

 異常なほどの速度で強化された魔力の流れが通常では考えられないほどの成長を可能としている。



 次に魔力の質の異常なほどの向上。

 2級魔術を完全に無効化するほどの身体強化をすることができる魔力はレキ君の魔力に自分の魔力が混ざり合った結果だ。

 魔力溜まりの魔力はレキ君へのもふもふ――圧縮した魔力での愛撫が溜まった結果なのだから通常の魔力より遥かに強い魔力による変質が起こったのだろう。


 レキ君の魔力総量では2級魔術を無効化するほど身体強化は行えないはずなのに実際は行っていた。

 自身の魔力を消費し、足りない魔力を魔力溜まりから得ていたからこそあそこまでの身体強化を軽々と行えていたのだ。



 最後に魔力溜まりの物質化。

 通常の魔力とは質が異なる魔力を一箇所に長期間溜めてしまった。

 通常はその程度で魔力が物質化することはありえない。

 だがレキ君は肉体の成長にもこの魔力溜まりの魔力を使っている。

 魔力溜まりの魔力が強く影響を与えた肉体なら、環境としては最適化されていても不思議ではない。

 むしろレキ君の異常な成長は副産物である可能性のほうが高いのだ。


 結果として魔力が物質化する環境が整えられた。



 魔力を持った物質。

 それは一般的には魔片と呼ばれる。



 レキ君は体内で魔片を作り出してしまったのだ。

 魔片を作り出せる存在などこの世界には迷宮しか(・・)存在しない。



【私が……レキ君を迷宮にしてしまったの……?】


「リリー! 今は考えるな! やるべきことをやれ! レキを死なせてもいいのか!?」


「ッ!? ぁ、あい!」



 サニー先生の初めて聞く怒声に我に返って、最悪の考えを振り払い魔力文字にするのももどかしく自分を奮い立たせるかのように大声で返事を返す。

 考えれば考える分だけ悪い方向にばかり思考が及んでしまい、手の震えが酷くなる。

 全てを振り払うかのようにただただ魔術にだけ精神を集中させ悪くなった視界を頭を振ってなんとかする。


 吸収しても吸収しても終わらない作業は長く続くかと思ったが、設定を変更して限界まで吸収量をあげた吸収魔術を同時に3桁展開したことにより、短時間で一気に吸い尽くす事ができた。

 当然吸い尽くし過ぎないようにある程度減ってからは数を減らし、調整してなんとか魔力溜まりを空にし、レキ君自身の魔力には影響がでないところで止める事に成功した。



「リリー、どうだ? 魔力溜まりは消す事ができたか?」


【はい、どうやら魔力がなくなったことにより消滅したようです。

 体内の傷口は消滅するときに徐々に小さくなっていったからなのか、クティの魔術で無事塞がっているみたいです。

 レキ君の健康状態は衰弱しているだけで他に異常は見当たりません】


「ふむ……。体内で生成された事によりまだ不完全だったということかもしれんな。

 額の出口から出るという過程で物質化が完了するのかもしれん」


【先生……私は……】


「気にするなというのは無理だろうが、今回の件は誰にも予想など出来なかったことだ。

 体内に魔力が蓄積して物質化するなんてことは一部の例外を除いて今まで聞いたことがない。

 君の愛撫も一度や二度ではなく長く続けなければ物質化することもないはずだ。

 それに物質化する前に魔力溜まりとして蓄積が始まる。そこを叩いてしまえば物質化に至る前に対処することも可能だ。

 そして今回の経験でクティに新たに専用の魔術を作らせる事にした。何も問題はなかろう」



 今回の経緯と今後の対策もしっかり固めているサニー先生はさすがの一言だ。

 だがその通りなのだが、たとえ対処法があるからといって魔力が物質化してしまうかもしれない事をまた行うのはどうなのだろうか。

 確かにもふもふは言葉に出来ないくらいいいものだ。

 でもそれが害となっては意味が無い。

 それならばいっそのこと……。



「君は悪い方ばかりに考える癖があるのが欠点だな。

 君の魔力の愛撫は悪いことばかりではないだろう? むしろ良い効果の方が遥かに多いはずだ。

 レキが怪我も病気もせずにずっと健康なのも君の愛撫が理由だと知っているか?

 君の専属の肌艶ややる気が君の愛撫のおかげだと知っているか?

 君の愛撫には健康状態を良好にする効果が特に高いが、それだけではない良い効果があるんだ。

 やりすぎは問題があるだろうが、やりすぎても今回のような問題なら対処が可能だ。

 だから悪い方ばかりに考えすぎるな」


【はい……】



 専属に関しては知っていたが、レキ君が今まで怪我や病気をまったくしていないのがもふもふの力だったのは知らなかった。

 レキ君自体が非常に頑丈だし、あんまり外にも出ていないから怪我や病気をする要因がないのかと思っていたのだ。


 自分の保守的な考えはわかっているつもりだったが、今回サニー先生に諭されて思っている以上にネガティブな方向に偏っているのがわかった。

 冷静に考えてみれば専属にもレキ君にも中毒になっているもふもふを断つというのはかなり酷な事だろう。

 今後は魔力溜まりができないようにしっかりと深層までチェックして行くことにして徐々に回数を減らしていこう。



【よし、まずは専属達に魔力溜まりが出来ていないか確認しないと】


「まぁレキは成長の過程で特殊な固体になった可能性が高いから専属達には出来ていないと思うぞ」


【それでも可能性はないわけじゃないですから!】


「まぁそうだな。

 ふ……やっと調子が戻ってきたな」


「よかったよぉ~リリー」


【心配かけてすみませんでした。

 クティもごめんね。心配させちゃって……】


「ううん、サニーのせいで私の出番がなくなっちゃったけどリリーが元に戻ってくれるならなんでもいいよ!」


「悪かったな出番を奪って」


「まったくだよ! リリーを慰めるのは私の役目なのに!

 あ、もちろん喜ばせるのも、prprするのも私の役目だよ! むしろ全部私の役目だよ!」


【クティ……】


「リリー!」



 愛を感じながらも顔面に張り付いて離れないクティの隙間からレキ君の様子を見る。

 深層部分まで細かくチェックしても魔力溜まりは一切無い。

 いつの間にか額に出来ていた魔片が嵌っていたところも元に戻っている。

 どうやら魔力溜まりが解消されたことにより肉体にまで変化が及んでいるようだ。


 そしてすぐに専属全員を集め、1人1人深層まで隅々チェックした結果、やはりサニー先生の推測通り誰にも魔力溜まりは出来ていなかった。

 だが今ないからといってこれからも出来ないとは限らない。今後も注意していこうと思う。


 尚、4人集められた専属はまた他のメンバーに痴態を見られながらもご褒美がもらえると思っていたようで解散させたときの落胆ぶりはすごいものがあった。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆








【それで……コレ、どうしましょう?】


「うむ……そう、だな……」


「う、うん……」



 コレとは最初にレキ君の額から取れた魔片のことだ。

 いやもうコレは魔片とはとても呼べないものだということがわかっている。


 なぜならば、この物体に蓄積されている魔力の量は圧縮に圧縮を重ねた自分の魔力がかなりの時間をかけて蓄積した物だ。

 その蓄積した量というのが尋常ではなく……。


 大迷宮の最奥にあるという、1つ手に入れるだけで億万長者間違いなしであり、このクリストフ家の超巨大防御魔術壁の燃料として使用されている巨大魔石クラスの魔片と比べても圧倒的なほどの魔力を秘めた物だったからだ。



迷宮は生きていると言われています。

そして魔片が入手できるのは迷宮の中だけです。

迷宮は魔片を魔物の中に生成しますが魔物の中から勝手に出てくることはありません。


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