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濁った瞳のリリアンヌ  作者: 天界
第一部 第8章 4年目 前編 3歳
160/250

141,魔術 of サルバルア Part,1


 翌日からレキ君へのスパルタを控え、あまり褒めすぎず、だが適度に褒めて少しずつ伸ばして行く方向で教育方針は決定、実行された。


 褒めまくって超効率になって天狗にも超特急で変化したあの時よりは効率も悪いけれど、鼻が伸びても適度に叩き折れる今の環境の方が長い目で見れば効率的なのかもしれない。

 伸びた鼻を折ってもいつもの降参のポーズを取らない程度の優しさで折っているので授業中断も適度に少なくなっている。


 あとは四則演算が実際に魔術を効率的に運用するのに役立つというところをしっかりと実感できればいいのだが、自分たちが実践してあげてもどうもピンとこないようだ。

 やはり自分である程度できるようにならないとこういうのは実感できないものなのだろう。


 特にレキ君はその傾向が強いように思う。

 自分で体験したもの、見たものしか信じないようなタイプなんだろう。まったく困った子だ。



【今までよりは多少マシになりましたけど、やっぱりレキ君は勉強時間が少ないと思うんです】


「そうは言ってもこのポーズになったらお手上げだろう」


「ぶっ飛ばしても絶対やめないからねぇー」



 そうなのだ。

 レキ君のサルバルアの特徴が自分の可愛がりの結果として規格外な能力を持ってしまったがための弊害というか、体がでかいからその分頑丈というか。

 とにかくレキ君はずいぶん高いと思われるレキ君ルームの天井に向かって、結構な高さで打ち上げられてそのまま落下して地面に激突しても両前足で目を隠して伏せる――降参のポーズを取ったらガンとして譲らない。

 というか拗ねた子供のような状態になる。


 この状態になってしまうとレキ君は勉強を絶対続けようとしなくなってしまった。

 今までは渋々続ける時もあったのだが、いつからかこうなってしまった。変な所で頑固で困る。


 でも鼻先にボールを転がしてやればすぐに降参のポーズは解かれる。

 だがそこからが大変だ。

 レキ君は1度遊ぶとなると電池がきれて突然寝てしまう子供のように体力の限界まで遊んでもらおうとする。

 そうなると当然勉強の続きなんてできない。

 そんな状態で無理やりやらせても能率があがるわけがない。身に付かなければ意味がないのだ。



「しかし前と比べれば大分長くやったと思うぞ?」


【まぁ確かにそうですが……】


「リリーあんまり詰め込みすぎるとレキもきっとばてちゃうよー」


「レキは君と違って効率よく吸収できるわけではないからなぁ」


【む……むぅ】



 自分には生前の知識という下地がある。

 だがレキ君はまっさらな状態で挑んでいるんだ。

 しかもレキ君はまだまだ幼い。ちょっと急ぎすぎているんだろうか。



【わかりました。ちょっと急ぎすぎていたかもしれません。

 レキ君はやれば出来る子ですが、押し付けすぎるのもいけないですよね】


「そうだな。急ぐ必要などない。それぞれのペースでいいだろう。

 まぁ君はもっとペースをあげてもいいくらいだがな」


「そうだよ! リリーの吸収効率は天元突破の勢いだよ! レキに半分でも……いや10分の1でも……いや爪の垢でも……だめだ! それは私のだー!」



 クティがくるくると回転しながら急上昇して背後に魔力の花火と宇宙を背負った状態で降参のポーズのままのレキ君をぶっ飛ばしている。

 ぶっ飛ばされたレキ君はまったくダメージがないので降参のポーズのままで両前足で目を覆ったままだ。ちなみにひっくり返っているので見た目的にも完全に降参のポーズだ。


 結構今のは威力あったんだけど、このいぬっころはどこまで頑丈なんだろう。

 2級魔術でも無理やりねじ伏せるくらいの強度の肉体を作り出せるし、その強度に物を言わせた速度で動き回ることも可能だ。

 恐らく全力で動き回るだけで轢殺体を量産できるのではないだろうか。



「しかしレキは頑丈になったな。

 サルバルアはこんなに頑丈ではなかったはずなんだがな。やはり君のペットであることが大きいのだろうか」


【でも専属達は別に頑丈になったりしてないですし】


「まぁ確かにそうだな。サルバルアという種族と君の力がうまく噛み合ったのかもしれん。だがこれだけの頑丈さを見せると実に興味深い」



 久々にマッドサイエンティストと化したサニー先生が怪しい笑顔を見せながら呟く。


 実際の所どうなのだろうか。

 レキ君がサルバルアという種族だから魔力でのもふもふでここまでに成長したのか、それとも他の種族でも可能なことなのか。

 人種に対しては専属にも行っているが見られる反応はお肌の艶が異常によくなったり健康になったりする程度だ。

 共通するのは快感だが。


 その人種に関しても獣族にしか今まで魔力を纏った状態でのもふもふを行った事は無い。

 なので人種でも違う種族には効かない可能性がある。

 妖精種であるクティにはまったく効かないので可能性はないわけではない。


 ただ他にもレキ君が特別という可能性もある。

 魔力のもふもふなしでもレキ君はここまで成長する要素を持ち合わせていた可能性だ。

 でもその可能性は低いと見ている。

 なんせレキ君は世界の隣の森で知られているサルバルアの常識を大きく逸脱しているからだ。

 レキ君の年ならば成体よりも巨大な今の状態には決してならない。

 それどころか2級魔術を力でねじ伏せるような強度の肉体を魔力を用いて作り出すことなどありえないのだ。

 特にこの強度の肉体は成体となり、熟練したサルバルアでも不可能な領域だ。

 もしこの領域に普通のサルバルアが到達する事が可能なら人種など簡単に滅ぼされている。



「ほあーとありゃー!」


「わふぅ~ん」



 相変わらず降参のポーズのままのレキ君が宙を舞い、目を隠しているのにも関わらず完璧な身体能力で着地を決めてそのまま伏せてポーズを続ける。

 くるくると空中で回転しながらレキ君に背後に背負った星々を投げつけて吹っ飛ばしているクティも楽しそうだ。


 レキ君の降参のポーズですでに勉強するような状況ではなくなっていたので特に問題もない。

 楽しそうなクティと遊んでもらえて嬉しそうな、でも降参のポーズのままのレキ君を眺めるのだった。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 レキ君の現在の算数レベルは小学3年生くらいだろうか。

 生前の世界での小学3年生クラスなので、今世での初等3年ではない。

 今世の学校――兄姉が通っている学園の学習レベルは前世と比べても遥かに低い。

 その点で見てみるとレキ君はすでに計算ならテオの上をいっていることになる。


 ただレキ君は算数ばっかりやっているので他の部分がおざなりなのは言うまでも無い。

 でも基本的にレキ君はペットなので歴史や教養なんて身につけてもあまり意味がない。

 常識的な配慮として人を傷つけないなどの極々当たり前のことは一緒に過していれば自然と身についてくれている。

 特に巨体なレキ君は普通の子より成長の遅い小さな自分を潰さないようにかなり慎重に接してくれている。


 遊びに夢中になっているときでもうっかり潰さないようにしっかりと注意しているのがわかる。

 他にも専属にもお婆様達にも他のレキ君のお世話係の人達にも決して牙を剥かないし、怪我をさせることもない。


 というかレキ君が威嚇していたのなんて最初の方だけだ。

 特に心を圧し折った後からは1度も見たことない気がする。


 でもたまに人を小ばかにしたような態度を取るので知恵がついた分だけ悪化したようにも思える。



「……調子のってるよこいつ」


【調子のってるね】


「調子のってるなー」



 褒める頻度をちょっと間違えて多めに褒めてしまったのが悪かった。

 また鼻頭を天井に向けて鼻息荒くふんふん言っているこのいぬっころは学習能力があるのかないのか本当にわからない。


 前回はここで勉強をやめて遊ぶといいだしたのだが、また今回もそうなるのだろうと高を括っているとレキ君は前足で床をたしたし、と叩きなにやら催促を始めている。



「……なんか今日はちょっと違う?」


【何か催促してるね。レキ君何を催促しているの?】


「わふん!」


「ほぅ……次の問題とは」



 なんとレキ君、遊びではなく次の問題を催促してきたのだ。

 これにはクティもサニー先生も自分もびっくりだ。

 今まで自分から率先して勉強することはほとんどなかった。だが調子にのっている態度ではあるが自分から勉強しようとしているのだ、そりゃあ驚きもする。



【レキ君! 自分から問題を求めるなんて! なんて成長したの! 嬉しいよ!】


「こいつぁ~びっくりだぜぇ~とっつぁ~ん」


「わふふん!」


【よしよし、じゃあこの問題ね!】


「わふ!」



 今のやる気を無くさせないようにすぐに問題を作って描き出してあげればレキ君はすぐにその問題を解き、しっかりと正解してみせた。


 今日のレキ君はいつもとは一味違う。

 クティもサニー先生も皆そう思っただろう。

 自分もそう思ったのだから間違いない。


 次々と描き出される問題を解いていくレキ君に妖精ズと自分は釘付けだ。



「すごい、すごい! レキ、どうしちゃったの!?」


「ふむ……昨日までは嫌がってばかりだったというのにどうしたというのだ」


【一体何があったんでしょうか……】


「わふん!」


「りぇきくん!?」


「「レキ!?」」



 鼻息荒く最後の問題を解いたレキ君がブシュー、と音がしそうなくらい鼻息を噴出したと思ったら突然体から力が抜けてばったりと倒れこんでしまった。


 突然の事態に急いでレキ君に駆け寄って見るとそこにはスヤスヤと眠るいぬっころがいた。



【ど、どういうことでしょうか……】


「わ、わからん……」


「……リリー、これ……」



 クティが掠れるような小さな声と共に指差したところは、スヤスヤと気持ちよさそうな寝息を立てるレキ君の額。

 そこには今までになかった何かが存在していた。



レキ君はあほの子ですが非常に優しいです。

リリーの事を潰さないように傷つけないように慎重に接します。

でもあほの子なのですぐ調子に乗ります。


さぁ……あほのk……レキ君の額に出来たものとはいったい。


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