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濁った瞳のリリアンヌ  作者: 天界
第一部 第2章 2年目 前編 1歳
16/250

15,妖精と声と





 小さく、鈴がなるような高めの、透き通った声が聞こえた。




 その声は嬉しそうに、うまく出来たことを褒めていた。



 耳のすぐ側で聞こえたその声は、この部屋にいる誰の声でもない。

 聞き覚えはなく……1年以上一緒にいる兄姉達の声を聞き間違えるはずもない。



 今は部屋には兄と姉と自分と……妖精しかいない。



 聞き覚えがない声。




 結論は一つしかないだろう。

 この声は、 " 妖精の声 " なんだ。



 今までどんなに大きな声を出しているように見えても、まったく聞こえなかった声。

 一体何がきっかけで聞こえたのか。



 未だに頭を撫でながら褒めてくれている妖精。


 彼女は気づいていないようだ。

 彼女の声が自分に届いていることを。



 彼女の声が聞こえているということは、自分の声も彼女に届くのではないか?

 そんな疑問が浮かぶが、今この部屋には兄と姉もいる。

 そんな状況で会話をするのは、まずい気がする、いやまずい。


 自分が1歳ちょっとの赤ん坊だということを差し引いても。

 1歳の誕生日に一言いっただけですごい騒ぎになった。

 そして、つい最近言葉の練習で極々簡単な言葉を発しただけだ。

 あの二の舞だけは避けたい。


 現に、今までもやめたはずの無口無表情キャラのままだ。


 そう、あれからほとんど喋っていないし、表情もほとんど変えていない。




 いや……なんか慣れちゃって……こっちのが楽なんだもの……。





 そんなわけで喋るわけにもいかないし、冒険するには準備がかかりすぎるので、覚えた単語で短文を作ってみる。

 THEカタコトだけど問題ない。


 意味さえ伝わればいいんだ。



 妖精に見えるように魔力(仮)で短文を描き出す。



【声 聞こえる】



 端的なだけに、非常にわかりやすい短文に仕上がった。

 勉強の成果だな。



「ええ!?ほんとにほんとにき――」



 驚いた声が聞こえて、鈴を鳴らすような綺麗な声が聞こえた……のだが途中で聞こえなくなった。


 妖精が自分の目の前で口をぱくぱくさせ、何かを喋っている。



 あれれ……どうして途中から聞こえなくなったんだろうか。



 とりあえず現状を報告しよう。



【声 途中 聞こえる ない】



 はいカタコトー。

 でも意味は伝わったようだ。


 妖精も小首を傾げて、わざわざ魔力(仮)で頭の上にクエスチョンマークまで作っている。

 芸が細かい。



 自分も同じように小首を傾げて、クエスチョンマークを描き出しておく。







  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 状況を検証することにする。




 Q,彼女の声が聞こえたのは、どんな状態のときだったか?

 A,うまく出来たことを褒めてくれて、頭を撫でてくれた時だ。


 でも、撫でてくれたことは今までもいっぱいあった。

 今回に限って声は聞こえた。


 それはなぜだろうか。



 以前の撫でとさっきの撫での違い。




 体を密着させていた?




 可能性があるなら、試してみるべきだろう。

 なので報告する。



【頭 撫でる 体 くっつく 声 聞こえる ?】



 魔力(仮)文字を見てすぐに、頷き彼女がぴたっと額にくっつく。

 その状態で少ししてから、魔力(仮)文字で聞こえたか聞いてくる。



 全然聞こえなかった。



 どうやらただ密着させただけではだめなようだ。



 先ほどはどうしていたっけ?



 再現して、検証した方がいいだろう。

 というわけで妖精に先ほどと同じ態勢をとってもらう。



 すると……。




「聞こえるー?」




 おおお!聞こえた!

 ちょっと不安げだったけど、確かに聞こえた。



 すぐに魔力(仮)文字でそう伝える。



「へーなんでだろうねー?

 でもこの状態で私の声聞こえるんなら、文字の勉強もすごく捗りそうだなぁ!」



 確かにそうだ。

 一方通行といえど、片方の声でも聞こえるってのは非常に大きい。

 しかも先生役を務めてくれてる方の声なんだから、自分が話せるより遥かに大きい。



「にしても不思議だなぁ……。

 普通妖精族の声は人間には認識できないし、接触しただけで聞こえるなんて話は聞いたことないんだけどなぁ……。

 今度女王様に聞いてみようかな?」



 何やら彼女達は王政のようだな。

 女王様なんているのか。


 っていうか、今このドヤっさん……妖精の声は人間には認識できないって言ったよな!?

 知ってるくせに、今まで声かけ続けてたのか……。

 まぁ、自分を認識できる稀有な存在だからもしかしたらっていう理由もあるか。



 それはそれとして、妖精族の女王様かーどんな人なんだろ。



 気になったので聞いてみる。



【女王 誰?】



 やっぱりカタコトは不便だな。

 声が聞こえるようになったから、余計に思う。

 早いところ短文で、ある程度会話できるくらいにはならないと!



「女王様はねー」



 彼女の話の要点をまとめるとこうだ。

 ・妖精族は王政で、頂点が女王。

 ・2000年以上生きている長命種で、その間に女王が代わったことはないそうだ。

 ・彼女自身も2000年以上生きているらしいが、古参ではないそうだ。

 ・最古参の妖精になると、もう自分が何歳なのかわからないそうだ。

 ・世界の隣?の森に住んでいて、人間に見つけることはできないそうだ。

 ・妖精族自体、認識できるモノはほとんどいないそうだ。

 ・普段は森から出ないが、彼女は女王の直属部隊で " 特級魔力保持者 " というモノを探しているらしい。

 ・あんまりにも見つからないんで、たまたま覗いた窓で彼女を認識できた自分のことが不思議で今に至るらしい。

 ・ちなみに任務は気長にゆっくりでいいらしい。

 ・すでに捜索任務を受けてから300年くらい探しているらしい、超気長だ。



 なんかいきなり色々教えてもらえたけど、この妖精……意外とお偉いさんじゃないか……。

 女王直属部隊ですってよ……。

  " 特級魔力保持者 " と " 世界の隣? の森 " ってのはよくわからなかったけど、あとで教えてもらえばいいや。

 まず、単語に直せないから聞くのが難しいけど。



 それにしても、妖精族って長生きだなぁ、2000年って……。

 妖精っていうかエルフ?

 でも自分の知識の中のエルフと全然合わないや。



 まぁ妖精族は妖精族なんだろう。



 実際に目にして声聞いて、実在してるんだから仕方ない。



「声が伝わっているのは嬉しいんだけどさー、一体どんな理由で声が聞こえるようになったんだろう?」



 透き通った声に意識を引き戻され、疑問は膨らむ。

 とにかく色々検証してみる必要があるのは確かだ。


 それを彼女に伝えてさっそく色々検証してみる。



 密着している状態なのでちょっとずつ体を離してみて、どの部分が影響してるのかを調べる。


 少し検証した結果、見事にドンピシャな検証方法だったことが判明した。


 彼女の体の一部が自分の耳に接触していれば、声が聞こえることがわかったのだ。


 実に幸先がいい。



 彼女の体の一部が接触さえしていればいい。

 次は魔力(仮)を体の一部として認識されるかどうか。


 もし魔力(仮)が体の一部として認識されれば、魔力(仮)を伸ばした状態で接触すれば声が聞こえるということになる。


 彼女の顔をみながら会話が可能になるということだ、これは大きい。





 結果として。



 これまたドンピシャ!

 魔力(仮)も体の一部として認識されるようだ。



 順調な検証結果に体いっぱいで喜ぶ妖精族のお偉いさん。


 そんな彼女を見ていて、ふと思った。



  " 魔力(仮)が体の一部 " としての認識。





  " 体の一部 "



  " 一部 "




 以前、まだうまく魔力(仮)を判別することができなかった時、ちょっとした思い付きでそれを補うことができた。



 そう…… " 視力の強化 "



 柔軟性の変更で部位を覆うようにして濃度をあげる、すると視力が向上した。

 耳に使ってもあのときには何の変化もなかった。



  " 妖精族を認識できるモノはほとんどいない "



 ばらばらだったピースが、少しずつ嵌り出す感触がする。




 自分の魔力(仮)も家族には認識できない。




  " 認識できない "


  " 妖精族 "


  " 魔力(仮) "







 もしかしたら、妖精族は魔力(仮)で出来ている?




 もしこの仮説が正しいのならば、妖精族の声は魔力(仮)で強化した状態ならば聞こえるのではないだろうか?


 妖精族は魔力(仮)で出来ているという前提。

 今までの経験から魔力(仮)は " 物理法則に縛られない "



 声は空気を振動させて発生しているモノだ。



  " 物理法則の中のモノ "



 魔力(仮)で出来ているのならば……物理法則の外にあるはず。


 だから物理法則の中に適応している人間の器官には認識できない。



 では……視力を強化したときのように、耳を強化したならば。









 魔力(仮)は自分が思っている以上に素晴らしい力なのかもしれない。







 なぜならば。






 目の前を浮遊している彼女の魔力(仮)を、自分の体に接触させていなくても。








 強化した耳には、鈴を鳴らすような綺麗な声がしっかりと聞こえたのだから。



身体強化第2弾です


これからやっと会話を増やすことができそうです

長かった・・・



まぁ、実際に会話描写できるまでまだありますけどね


ご意見ご感想お待ちしております


3/9 句点、文頭スペース、三点リーダ修正

3/10 禁則処理修正

3/26 誤字修正

4/24 誤字修正

5/3 誤字修正

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