133,魔術 of 2級
先日、遂に解禁となった攻撃魔術をさくっと習得しまくった結果、現在自分が使える魔術はすでに3級を含むそれ以下の全ての魔術となった。
普通は既存の魔術だけでも膨大な数があるため全ての魔術を使えるというのはありえない。
でもサニー先生とクティによる英才教育により、というよりはサニー先生のコレクト魂で全部習得させられたのだ。
でもこれも必要なことなのだ。
既存の魔術を全て習得するというのは実際の所、変異型2種――魔術を新規構築するにあたって必須とも言えるものだ。
なぜなら既存の魔術は膨大な数あるだけあり、基本を押さえたものから応用編までかなりの領域を網羅している。
これらを見本に、時には丸々使って思い描く魔術を構築するのだ。
ちなみに現在リズヴァルト大陸に伝わっている既存の魔術は本来あるべき量ではない。
大昔の大戦で失われてしまったりした分は当然現在でも見ることは出来ない。
だが世界の隣の森では違う。
その為、既存の魔術でも人前で使えるものとそうでないものがあったりする。
まぁ現状ではどんな魔術でも人前で堂々となど使えるわけが無いんだけどね。
もちろん隠蔽しまくってからは使いまくってるけどね。
「では今日から2級魔術の習得に入る。とはいっても今までと変わらん。
術式を覚え構築法を覚え、そして実践するだけだ。
君ならば今まで通り何の問題もないだろう。
むしろこんなところで躓いてもらっては困るくらいだ」
【サニー先生。2級魔術って一応お母様がすごく頑張って習得した魔術ですよ?
確かに今までも結構簡単に覚えてきましたけど、大丈夫なんでしょうか?】
「リリーにかかったら2級なんて目じゃないよ! 鼻でもないよ! 口でもないよ!
むちゅーん!」
【きゃぁあんっ。もうクティ~】
「えへぇぇ~げへへぇ~」
ちっこいさまが鼻息荒く暴走を開始したけど、軽く啄ばむようなバードキス止まりなので大丈夫だ。
2級魔術といえば我らがお母様が得意とする白焔とかがある急激に凶悪になる魔術領域だ。
もちろん全てがそうであるわけではない。
でも代表的な魔術は非常に難易度が高いとされている。
自分でもあまり躓くとは思えないが、それでもやはり少し不安になってしまう。
「まぁ確かに君の懸念もわかる。
だが術式を見てもらえればすぐに納得するだろう。君にとってはこの程度応用の域をでないものだ」
サニー先生のニヤリと上がった口角がなんとも頼もしい。
お喋りはこれまでだ、と展開し始めた術式がゆっくりとした詠唱の下に構築されていく。
蓄積した術式が幾重にも重なり構築が完了するとその結果として隠蔽空間に炎の壁が発生してすぐに消え去った。
【なるほど。白焔ってただの複合構造の温度の高い火の壁だったんですね。これなら楽勝ですね】
「うむ。高難易度と位置づけられているのはただ単に複合構造にする際の精密さと温度が問題なだけだ。
この程度ならいくつ重ねようといくら温度を上げようと君にとっては児戯に等しい。
2級魔術の中ではもっとも簡単といえるくらいだ」
「まーそれでも普通は使えたら天才ってレベルだけどねー。
リリーは天才だよ! きゃー!」
「魔眼の恩恵もあるだろうが、リリーは天才ではないぞ。
これは日々の積み重ねの結果だ。蓄積された知識が実を結んだのだ。
これからもガンガン行くぞ!」
【はい! ご指導ご鞭撻の程よろしくお願いします!】
2級魔術の実態を知ってしまって少し拍子抜けしてしまったけれど、サニー先生に言わせればこれらはまだまだ入り口にも達していないのだ。
なのでこの程度では満足してはいけない。
自分の目指す所はクティであり、世界の隣の森最高の魔術師の隣なのだから。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
【空間断裂砲!】
「わぅぉぉぉんッ!」
【くっ! これでもだめなの!?】
空間を引き裂いて極少ブラックホールから打ち出されたぽよぽよの丸い物体が音速に近い速度で飛来するが、それを軽々と口で受け止めるレキ君。
レキ君の口が魔力による強化によってとんでもないほどの硬度になっているのと、投げられた玩具の玉が射出時の圧力で爆発しないように多重防壁で守られている以外は至って普通のとってこーいだ。
「次は炎獄断絶剣だよ、リリー!」
【すごく中二すぎる名前ばっかりなのが気になるけど……炎獄断絶剣!】
再度射出される玩具の玉が今度は地獄の炎も画くやというほどの炎を纏った一本の剣のように飛来する。
しかしレキ君は冷静に、むしろ嬉々としてソレをさっきより強化された口で見事にキャッチしてしまう。
【むぅぅぅう! 2級魔術を簡単にキャッチするなー!】
「わふんッ」
「あいつなんか調子乗ってるよ! リリー、調子のってるよ!?」
【毎日マッサージしすぎたかなぁー。なんかレキ君の体の成長が頭打ちになったと思ったら今度は魔力の向上が半端じゃなくなったよねぇ】
「うむ。レキはどんどん規格外になっていくな。
元々規格外の絶滅危惧種ではあったのだが……。これもリリーのペットとして可愛がられているが故……か」
しみじみとサニー先生が魔力で出来た本から顔を上げないまま言って来る。
そうなのだ……。
レキ君の体の成長が止まった代わりに、今まで主に足にしか使っていなかった魔力が彼の任意の位置で使われるようになった。
しかもかなりの高出力で行えるようで2級魔術を殺傷能力をかなり低くしているなら簡単に受け止めてしまうくらいだ。
普通は空間断裂砲で打ち出された物体なんて受け止めたら、接触した瞬間体が爆発する。
炎獄断絶剣は言うに及ばず、接触した瞬間燃え尽きる。
この2つは現在のリズヴァルト大陸では使い手が存在しない既存の魔術だ。
所謂失われた魔術の一角で一般披露できないものだ。
でもこのいぬっころは簡単に受け止めてしまう。
調子のってるなー。
「まずいよ、リリー。
あいつちょっとなんかむかつく目しはじめたよ!」
【レキ君、ちょっとこっちきなさい】
「わふんッ!」
軽く手招きして調子乗ってるいぬっころを呼ぶが、顔をブン、と背けてそっぽを向いてしまった。
ちょっと教育間違えたかもしれない。
こんな子に育てた覚えはないんだけどなー。
最近甘やかしすぎたかもしれないなぁー。
お仕置きが必要だなー。ヒツヨウダナー。
【レキ君、『伏せ』】
「ぎゃわんッ!」
「うわぁ……り、リリー……それはえげつないよぅ」
一瞬にしてレキ君を覆った網目状の――完全に遮断すると酸欠になるため――断絶空間が空間内の重力を10倍にして押しつぶす。
もちろん四肢の踏ん張りを効かなくするために床面の摩擦係数を0にする魔術も同時進行だ。
そのため文字通り強制的に伏せの状態にされたレキ君はまったく身動きが取れなくなり、断絶された空間の中でジリジリと自らの重みで潰されていく。
「ギャインギャイン……ぎゃ……わふ……わひゅぅん……」
【分かればいいのです。あんまり調子乗っちゃダメですよ?
出る杭は打たれちゃうのです。高い鼻は切断されちゃうのですよ?】
「わふぅぅんぅ」
涙目で謝ってくるレキ君に諭すように言ってあげて魔術を解くとわかってくれたようで、そろそろと弱々しく近づいてきて優しく擦り寄りながら円らな瞳でこちらを見てくる。
【もう、こんな可愛い目で見られたら続きをしてあげたくなっちゃうじゃないですか】
「わふ」
「やっぱり調子のってるー」
【これくらいならいいよー。レキ君の遊びタイムなんだしー】
「むぅ、リリーがそういうなら仕方ないなー。
レキ! リリーがそういうんだから遊び倒してやる! うりゃー!」
「わふ~ん」
クティの掛け声で㌧を超える体重のレキ君が宙を舞う。
風を圧縮してレキ君を打ち上げたのだ。
だがレキ君も慣れたもの。空中で猫のように体を捻って余裕綽綽で着地する。
「まだまだー!」
着地した瞬間に先ほどより高く打ち上げられたレキ君は今度は空中で魔力の足場を作り、タンタンタンと音がしそうなほど軽やかに下りてくる。
「こしゃくなー!」
【クティ、がんばってー。レキ君も負けるなー】
「うおりゃああああ」
「わふふ~ん。わぅ~ん」
空中に何度も打ち上げられては体勢をすぐに立て直して余裕で下りて来るレキ君と、なんとかそれを崩そうとするクティのお遊びタイムはクティがキレてレキ君を吹っ飛ばすまで続いたのだった。
尚、レキ君はそれでも余裕で無傷でした。
無事2級魔術を順調に習得しております。
レキ君もどんどん規格外になっていっております。
ちなみに最近はレキ君の遊びタイムの時は周囲を隠蔽空間で覆い、幻惑の魔術等を多重起動して周りの目を誤魔化しております。
じゃなければ危ないですからね、色々と。
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