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濁った瞳のリリアンヌ  作者: 天界
第一部 第2章 2年目 前編 1歳
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14,妖精と勉強と




 生後14ヶ月が過ぎた。





 自分に絵心がないのはわかった。

 だがそれで諦めていたら、せっかく繋がった道が閉ざされてしまう。


 別に絵で食べていきたいわけでもないんだし、とにかく妖精に伝わりさえすればいいのだ。

 特徴を抑えてそれっぽく見えさえすればいいんだ。



 それに……魔力(仮)で形を作れればいい、絵である必要性はない。



 平面でなくても、立体でもいいのだ。

 とにかくそれっぽく見えればいい。



 食器なんかの造形は比較的簡単に立体として、魔力(仮)を変化させられる。

 始めはこういう簡単なモノで、且つわかりやすくて単語としても使えるモノで文字を覚えればいいんじゃないかと思った。


 とにかく簡単でわかりやすいモノを文字として学習する。

 覚える文字数が増えてくれば、共通項から文字の種類や編成がわかるかもしれない。



 もちろん、そんな言語学者のような能力はもっていないが。




 それでも知らない言葉を覚える時には、まず単語を覚えないとどうしようもないと思う。

 ヒアリングの時だって同じようにして覚えたんだ。


 やってやれないはずがない。


 ぶっちゃけ、ヒアリングの方が遥かに難易度高いと思う。

 何せ意味を雰囲気で理解しないといけなかったし、聞き間違いなどもあったわけだし。


 それでも日常会話に問題ないくらいには習得できた。



 これが大きな自信になっているのは間違いない。







  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 一ヶ月くらいかけて、とにかく単語をたくさん学んだ。



 魔力(仮)で形を作って、ソレを妖精に見せる。

 妖精がソレの単語を魔力(仮)で形作る。

 それを一つ一つ覚えていく。


 覚えたら、何度も何度も魔力(仮)でその文字を形作る。

 作った文字を妖精に見せ、判定してもらう。


 ちなみに対面しての勉強の仕方ではなく、同じ方を向いて勉強している。

 文字をいちいち逆に書くのはしんどいし、時間がかかるからだ。

 書いた文字を反転させればいいだけだとも、気づいたのだが指摘してもらう際にやはり対面しているとやりずらいのだ。



 文字が違っている場合は、身振り手振りで指摘してもらう。

 どうしてもわからない時は、正しい文字を再度形作ってもらい比較して行く。


 何度も間違い、その都度何度も何度も修正していく。

 最初の頃はものすごく間違えた。


 そりゃそうだ。

 手探りで見覚えのない文字の習得をしているんだ。

 しかも会話もできない状態で、身振り手振りのジェスチャーも意思疎通としてはあまり役に立たないような状態で、だ。


 正直、生前ならこんな状況で文字を習得しようなんて正気じゃないと思うだろう。

 でもそれは生前の話だ。


 今は " 濁った瞳 " という大きなハンデがある。

 正気じゃないからと、そんなことには構っていられない。


 できそうな気がするから、やる。

 何も問題ないじゃないか!



 妖精も文字を形作れる回数も最初は少なかったけど、何度も何度も文字を作ってもらっているうちにどんどん多くなっていってくれた。

 凄まじいほどの成長力で形作れる回数を増やしてくれたおかげで、どんどん勉強ができた。



 事実少しずつ少しずつ文字を習得している。







  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 テオとエリーの言葉の訓練もやり始めて少し時間も経過したので、 " にー " とか " ねー " とか言ってみた。

 兄様の " にー " と姉様の " ねー " だ。


 案の定テオとエリーの喜びようはすごいものだった。


  " やっぱりボク達の天使は天才だ! "


 とか。


  " リリーの姉として鼻が高いわぁ! "


 とか、もうあの親にしてこの子達ありだ。





 文字のお勉強はかなりの時間やっている。


 勉強を始めてから、朝起きるとすぐに妖精が来るようになり、朝食を食べてからすぐに勉強を開始する。

 朝食のあとは大抵はエナがお昼近くまで本を朗読してくれるので、朗読を聞くと見せかけて文字の勉強をしているのだ。

 お昼を食べたら少しの食休みを挟んでお昼寝タイムとなるので、妖精と一緒にお昼寝する。


 2時間も寝れば十分なので、お昼寝のあとも大抵エナの朗読になるのですぐに勉強を再開する。


 学校がある日はテオとエリーがお昼寝のあと2時間もしないうちに帰ってくるので、朗読を交代する。

 学校が無い日はお昼寝のあとは、彼らの朗読に切り替わる。



 最近は朗読もあまり集中して聞いていない。

 今は文字の勉強の方が大事だ。



 ごめんよお三人さん、でも内容は覚えてるから大丈夫だよ。

 ちゃんと前に読んでもらった本だったら指摘してるからね!



 マルチタスク能力もずいぶん上がったものだ……。




 お勉強の先生はと言えば、勉強を始めてからは朗読はほとんど聞いていないご様子。

 こちらとしては勉強に集中できて嬉しい限りだけれど、朗読を楽しそうに聞いていたのを覚えているのでちょっと心苦しい時もある。



 夕食の時とお風呂の時は勉強は当然、休憩だ。

 適度な休憩はもちろん必要だ、根を詰める必要なんてどこにもない。

 気長にゆっくりのつもりではあるのだが、文字のお勉強が楽しくて仕方ない。

 生前、こんなに楽しく勉強できたのはあまりなかったので自分でもびっくりしている。


 あとは、眠くなるまでずっとお勉強だ。

 もちろん、兄姉に朗読してもらいながらだ。


 こんな感じで1日が終わる。

 ほとんど文字の勉強漬けの日々。


 楽しくなければやってられないくらいだろうけど、毎日があっという間に終わってしまうくらい楽しいんだから仕方ない。


 頭ばかり使っているように見えるけど、もちろん身体的なトレーニングもしている。

 頭の休憩がてらか、朗読の区切りがよかったりしたときなんかにだ。

 といっても、文字の勉強とは比べ物にならないくらい短いけどね。


 それでも成果はきちんと出ていて、今では歩くのにバランスをあまり取らないでもよくなった。

 そろそろ普通に走っても、転ばないんじゃないだろうか。

 転ばなくても何かにぶつかるだろうけど、見えないし。


 食事の方も離乳食を一人で食べ始めるようになった。

 やっとフォークとスプーンを一人でも、使わせてもらえるようになったのだ。

 取っ手の付いたコップなら、一人で飲めるようにもなった。

 とは言っても、料理はもちろんのこと、食器も見えないので誘導してもらわないといけない。

 それでも、口に運んでもらうよりはいいかなと思ったのだ。

 実際は食事の世話が面倒になっただけだろうけど、これも成長過程と割り切った。



 母乳はついに卒業できた。

 エナがおっぱいを飲まそうとするところで、顔を背けて拒否するのを何度か続けたら卒業となったのだ。

 エナは少し寂しそうだったけど、このくらいの時期にはもう卒業しておくべきだろうと思ったのだ。


 慣れたとはいえ、恥ずかしいのは恥ずかしいのだ。




 実に、成長著しい。



 心身共に成長しているのがわかる、楽しいのもコレが一役買っている。

 生前でこれほどまでに自分の成長を実感できたことはないかもしれない。


 自分が赤ん坊なのが、今だけはちょっとだけ嬉しい。



 夜寝る前に、妖精先生はどこかへ帰っていく。

 どこに帰るか聞きたいのだけど、まだまだ勉強不足なので後回しにするしかない。







  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 覚えた文字もかなりの数になった。

 そろそろ次のステップに移ってもいい気がする。



 次は " 短文 " だ。



 簡単な動作を魔力(仮)で形作る。

 ずいぶん手馴れたもので、絵心がないと嘆いていた頃が嘘のように的確に形作れるようになった。


 例えば " コップで飲む動作 " を作る。



 コレを見せて文字を形作ってもらう。


 そうやって文字と文字との繋がりや、文章構成なんかを覚えていく。

 丸暗記に近いけど、塵も積もればなんとやら。


 きっといけるはずだ。




 毎日妖精と文字のお勉強。


 妖精先生もそれが楽しいのかずっと付き合ってくれている。


 最初の頃は妖精もスキンシップはほとんどしなかったのに、最近では間違えたらチョップしてきたり、うまく出来たら頭を撫でてくれたりする。


 着実に仲良くなれてるようで嬉しい。




 彼女は文字の先生であり、今生での初めての友達なのだ。







  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 短文の勉強が始まって、数日したある日のことだ。



 何気なく、いつも通りにうまく出来たことをほめてくれた彼女が頭を撫でてくれた。


 今日はちょっと違ったほめ方で、頭を手で撫でるだけじゃなくて体を摺り寄せて全身で撫でてくれるような感じだったのだ。





 彼女の体が触れた時。









 鈴の鳴るような高めの、透き通った声が聞こえた。





エナっぱいを卒業です


授乳プレイは出てきません


ご意見ご感想お待ちしております


3/9 句点、文頭スペース、三点リーダ修正

3/10 禁則処理修正

4/24 誤字修正

5/3 誤字修正

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