130,エピローグ
12の月3順目黒の日。
所謂12月20日が自分の誕生日だ。
エリオットのパレードの最終日も今日となり、今日の午前と午後に最後のパレードが行われる。
最終パレード予定地点の大通りは大規模な飾りやたくさんの人達でまるで祭りのような様相を呈しているそうだ。
その他の通りや商店なども祭りのようにセールを行ったりして客足をなんとか掴もうと必死だろう。
その様を見に行けないのは残念だが、見にいけたとしても自分の目では見れないのだからあまり意味もない。
ガヤガヤとした喧騒を聞き、祭りの雰囲気だけでも味わうというのもありかもしれないがやはり音だけでは物足りないだろう。
それにここ3年ほど大規模な人の集団の中を歩くなど数回しかないし、それも自分を気遣い理解してくれる人達の中とは違った雑多な人ごみとなるときっと人酔いしてしまうだろう。
……などと言い訳を並べて見たが別にそこまで行きたいわけではない。
3歳児では祭りを最大限楽しむというのは難しいしね。言い訳じゃないよ?
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ここ1年で自分の周りには人が大分増えた。
専属に白結晶騎士団。
人じゃないけど、特にレキ君。
毎日一緒にいる人達だけど、基本的に戦闘行為が可能だ。
純粋に護衛としては騎士団より専属の方が分があるが、周辺警戒などは騎士団の方が人員面的にも勝っている。
それに最強の人が自分の横には常にいる。
3歳の誕生日は家族だけの誕生日会というわけではなかった。
最早お決まりの新調された、まるでウェディングドレスのような薄いブーケと強調されるような大きなリボンで頭部を彩り、合わせる様にたくさんのリボンで飾ったドレス。
完全に足元まで隠してしまっていて動くには引きずるしかないがお婆様の胸の中にいればあまり変わらない。
両親はエリオットのパレードが終わってから合流予定となっている。
最終日なのでその後に行われるダンスパーティにも本来なら出席しなければいけないが、自分の誕生日に丸々出席しないなどありえないそうなのでパレードだけとなっている。
そのパレードにさえも出席をごねたほどだが、そこは2人の地位の高さからどうしても無理だったようだ。
最終的に笑顔で送り出したら、自分の誕生日なのになんて健気なリリーちゃんなの! と、泣かれてしまった。
まぁ大体予想してた通りだったのは言うまでもない。
そんなわけで現在誕生日パーティ中です。
今回家族や使用人達だけの身内パーティではなく、数人を他所から招いている。
恒例の祖父母による厳重なチェックを見事通り抜けた人達が今回も招かれたわけだが、いつぞやで見た人達が数人居たのはわかったのだがその人達の見た目が前回見たときとは違っていた。
このリズヴァルト大陸では様々な種族が暮らしている。
オーベントはその中でも人間の国として有名だが、多種族もかなりの量暮らしている。
だが貴族の慣例というか礼儀というか、そういうものがあるようで公式なパーティなどに招かれた場合、その国々の代表種族としての変装をして出席するのが正式だ。
どうやら今回招かれた数人の中の半分は人間種族ではなく、獣族が1人と魔人族が1人混ざっているようだ。
獣族の人はキリンの耳が付いた人で使用人にも何人かいたので別段驚かなかったが、魔人族の人は額から角が2つ小さく生えて、小さな蝙蝠の羽根がある人だった。
でも変装をしているので見た目は人間種族に見えるらしい。
自分の魔眼には変装で使用している魔道具の効果は意味がないので元々の姿も見えている。
ちなみにどんな風に見えているかというと、術式が表面を間隔を大きく空けて覆っている感じで、隠している部分に対して術式を纏っている感じだ。
魔道具を使っている辺りが前世の変装とは違うところだろう。
お婆様が自分を抱えて、お爺様が先導しつつ相手をする。
どちらも有名人ではあるが、お爺様よりはお婆様の方が圧倒的に有名なのでお爺様はどちらかというとフォローに徹している印象が強い。
現に窓口というか、交渉役というか。そういう動きで招かれた人達を次々捌いてはお婆様と自分の負担にならないように話も短く切り上げてくれる。
誕生日プレゼントは事前に贈られ、部屋の中央にうずたかく積まれている、らしい。
さすがに魔道具系の家具が増えたとは言っても全部交換済みというわけにはいかない。
それに贈られてくるプレゼントにまでそれを期待はできない。
せいぜいが安全確認のために内容物を細かく検査される程度のものだ。
午前中の軽いお披露目パーティが終わると昼食会となり、ソレが終わると招待されてきた人達は最終日のパレードとその後のダンスパーティに出席するために帰っていった。
これからは身内だけのパーティとなる。
使用人達もパレードよりもこっちを選ぶ人が大多数で、というよりほぼ全員こっちだ。
普段のエリオットの不人気効果というよりは、例の神輿行脚の効果が高い気がする。
国を挙げてお祝いされる第1級魔術師よりも、幼いお嬢様のコスプレを期待しているのだ。実に嘆かわしい。
なのでそんな期待に満ちた目で見るのはやめて欲しい。
テオもエリーも、エナでさえも期待している。
仕方ないのでまだ数が少ないので対エナ用として温存しておきたいのを渋々使う事になってしまった。
自分の誕生日なのに他人を喜ばせてしまうとは、なんとも悲しきエンターテイナーの性か。
その日、クリストフ家の大規模ホールには黄色い歓喜の嵐と共に救護室が埋まるという現象がまた再発したのは言うまでもない。
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無表情が張り付いた顔とは対照的に、感情豊かに動き回る耳や尻尾や羽達は数がそんなになかったのですぐに在庫切れになったので普通の誕生日パーティが再開された。
まぁ確かに黄色い歓声とは別に何かの液体を抑えるように悶えている、もしくは倒れて担架で運ばれている使用人達が参加している誕生日パーティというのは普通じゃない。
そもそも担架で運ばれる人が続出する誕生日パーティって何よ……。
一先ず落ち着き始めた大規模ホールでは軽やかな音楽と共にダンスパーティが始まっている。
これも王宮で始まるであろうダンスパーティを再現しようというエリーの発案である。
参加できない自分や祖父母、使用人達に雰囲気だけでも、というのが狙いだ。
ちなみにテオとエリーはダンスを踊れる。
難しいステップのダンスもしっかりと踊れるようで様々な曲調にも柔軟に対応している。
テオとエリーの身長では大人とは踊れないので、2人は兄姉仲良く手を取り合って踊っている。
くるくる美しく回るエリー。
それを導くように優雅にフォローしているテオ。
【テオとエリーってダンスできたんだ……。しかもすごく上手! 美少年と美少女のダンスってなんであんなに綺麗なんだろう】
「リリーが大きくなって踊ったら会場を独り占め出来るくらい当たり前になるよ!
むしろ今でさえ会場独り占めだよ!」
「まぁテオもエリーも訓練とは別にダンスの練習をしていたようだからな。それにしてもうまいな。
ダンスの動きは格闘にも通ずるところがある。やはり彼らの才能は凄まじいな」
ダンスはどうやら学園ではなく、うちで練習したみたいだ。
そのうち自分も習うのだろうか。いや、目が見えないのだから習わないかもしれない。
でも魔力は見えるのだから……。
まぁまだ先の話だろう。
【2人とも綺麗……】
「リリーの方が綺麗だよ! 今日のお姫さまドレスも素敵すぎてもうやばかったよ!
それ以上にコスプレ装備がやばかったけどね!」
【それはもう黒歴史として葬った方がいいと思うなぁ……】
「コスプレリリーprprpr!」
ちっこいさまが多少暴走しているけれど、それとは関係なく曲がゆっくりと終盤を向かえ、終わる。
優雅に一礼して戻ってくる兄姉がなんとも堂々としていて眩しい。
そして少しの間を置いて、その間に人が入れ替わり曲が始まる。
大規模ホールでは途切れることなく、曲が流れ続け美しいダンスが続く。
お婆様とお爺様による、熱烈な激しい2人だけのダンスのあと、テオとエリーに導かれるように5人で初めてのダンスを踊った。
空中にはクティの描いた何百という規模の動物達が楽しそうに踊っている。
お婆様もお爺様もテオもエリーも、皆感情の発露による魔力が見え、それに重ねるように自分も暖かい魔力を放出し覆いつくす。
粉雪のような、だが触れれば暖かく心を彩ってくれる魔力が舞い散る中、曲が終わり最後に皆で一礼をすると割れんばかりの拍手が巻き起こり、その中をゆっくりと席まで戻った。
ダンスが終わると食事が運び込まれ、立食パーティに様変わりする。
軽く摘む程度のものを専属達が持ってきてくれて、それを兄姉と祖父母が食べさせてくれる。
立食パーティ中には両親も合流し、パーティもそろそろ終わりだ。
さすがに午前中からずっと参加しているので疲れてきてしまった。
特にコスプレが疲れた。
やっぱりコスプレが疲れた。
何をおいてもコスプレが疲れた。
そんな風に思っていると、会場の思い思いの場所に散らばって食事や休憩をしていた使用人達がざわめいたあと、一気に扉のある方向と自分のいる主賓席の場所まで、まるでモーゼの十戒のように人が割れて道が出来た。
その先に居たのは――。
さぁ誰でしょう?
といっても分かり易過ぎですよね。
そんなわけでこれで第7章終了です。
無事3歳になりました。
リリーも順調に大きくなっています。
普通よりはちょっと成長が遅いですが、まぁ誤差ですよね。
まだ3歳ですし。
次回から外伝になります。
いつも通りに色々と本編では明かされない驚愕の事実が出てきます。
でも基本的に本編には影響がありません。
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