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濁った瞳のリリアンヌ  作者: 天界
第一部 第7章 3年目 後編 2歳
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117,意外な弱点



 完全に拘束されたラクリアはジェニーとは比べ物にならないほど丁寧に丁寧に、それはそれは丁寧にもふもふされた。

 いやこれはもふもふというよりは実験といった方がいいかもしれない。

 ふかふかの毛質ではあってもミラやジェニーと比べても異なった短い毛とこりこりとした筋のその触感を味わうべく模索する。

 結果としてその味わい方を学ぶ間にラクリアは徹底的にもふもふされた。


 気づいた時には筆舌に尽くしがたいことになっていたがラクリアは女性として果てしなく満たされた顔をしていた。

 完全に拘束された状態でのその表情はある種異様なものがあったが、何事もなかったかのように全て処理してちょっと震えているクティに活を入れてもらった。


 ちょっと記憶が飛んでしまっているラクリアはものすごく気だるそうに、だが素晴らしい笑顔とその肌はジェニー達同様に、いやそれ以上に非常に美しくすらあるほどに磨き上げられた状態になっている。

 もふもふされると肌艶が非常によくなるのはどうやら確定のようだ。

 まさかのエステ効果にこれだけで食べていけるんじゃないかと思ったが、クリストフ家にいる以上そういうのはまだまだ考えなくてもいいことだと思い直した。

 それに獣族には効いても他の人種には効くのかどうかもちょっとよくわからない。

 試そうにも生贄の選定がなかなかに難しい。

 専属だってもふるのにすごく時間がかかったというのにあまり接点のない人達だともっと難易度が高くなる。

 無論家族に対して行うのは無理だ。



 もし……もし、同じような効果を発揮してしまったら……。

 たまには考えないというのもいいことかもしれない。脳には休息も必要だ、うん。



 自分の専属としてちょっとやそっとの鍛え方をしていない凄まじい体力をしているはずのラクリアがふらふらになってしまっている。

 ちょっと今日はまずいということでお婆様にラクリアを休ませるようにお願いしたところ、快く了承してくれた。


 交代したのはミラだったのだが、ラクリアの惨状を見てひと目で何が起こったのか理解して、生唾をゴクリと喉を鳴らして飲み込んでいた。

 ラクリアの惨状を見てそれがどういうことなのか身をもってよく知っているはずのミラだったのだが、どうやら惨状よりもそれを引き起こす快感の方を意識してしまっているようだ。

 魔力の流れがものすごく期待したものになっている。



 表面にはなんとか出ていないもののいくらなんでも正直すぎるよ、ミラ。

 でもちょっとこれからのことを考えて色々プランを練ってあるので今日はミラの期待に応えることはできなさそうだ。

 まだニージャも残っているしね。

 君をもふれないのは非常に悲しいが、これもまた長期的に考えた場合の最善手というヤツなのだ。

 計画は大事なのだ。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 期待に胸を高鳴らせながらも決して表面には出すことなく、専属としての仕事を順調にこなしていくミラを尻目に1番の難敵と思しき対ニージャプランの最終確認を行う。

 彼女ははっきりいって騎士団を赤子の手を捻るかのような扱いが出来てしまう猛者だ。

 それでもミラ達の話と今日のラクリアの惨状を聞いて、きっと今にもはちきれんばかりに尻尾を振り乱しそうなミラのように、とはいかないまでも期待してやってくるだろう。


 今のところ氏族の違いは無視して魔力によるもふもふは激しい効果を示している。

 ニージャにも同様のことが起こるのは想像に難くない。

 だが実際に起きたときに彼女ほどの者ならばそれにすら抗えてしまうのではないかという不安もある。


 いや、目的は別に専属を全員倒すことではないのだから問題ないといえばない。

 こちらはもふもふ出来ればそれでいいのだし。

 ならば何も問題なさそうだ。


 どうも今日のラクリアのように過剰なまでに反応を返してくれると期待に応えたくなってしまっていかん。

 自分の悪癖だと思う。

 きちんと制御せねば。



 今後自分の前に積み上げられるたくさんのあられもない獣族の娘達の姿が透けて見えるような気がするのでしっかりと制御することを心に誓った。たぶん。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 ところで魔術は代償を必要とする。

 言わずと知れた魔力だ。


 通常この魔力というものは自分の意思では動かすことはおろか見ることすら叶わない。

 たまにその系統の魔眼を持つ者が限定的に見ることはあるが、自分のようにはとてもじゃないが無理だろう。


 エリオットのように他人の魔力を色として見ることが出来る魔眼があるが、あれは局所的な超限定仕様だ。

 常に見れるわけでも、任意に見れるわけでもない。

 自身の意思とは関係なく発動してしまうタイプだ。

 魔力関連の魔眼はこの系統が非常に多くを占める。


 例えば、自身に向けられる悪意を見ることが出来る魔眼。

 この悪意というのが魔力の流れを差す。


 人の意思に対して働くタイプの魔眼は大抵が魔力の流れを局所的に見るタイプになるのだ。


 それを考えると自分の魔眼というのは全てを網羅していると言っても過言でもない。

 サニー先生に特別と言わしめるだけの価値はあるのだ。

 無論それらを理解できる知識が前提として必要になるのでなかなか難しいものではあるのだが。



 閑話休題。


 魔術の代償は魔力。

 では魔力を代償として魔術を行使するのだから当然魔力がなくなれば魔術は使えない。

 詠唱をしていざ発動という段階で発動具が機能しなくなる。


 つまり、魔力は多ければ多いほど魔術を使う上で有利になる。

 この辺は非常に簡単だ。

 生活魔術と呼ばれる基礎的な簡単な魔術はとても魔力の消費が少ない。

 逆に上級魔術と呼ばれる高度な設定が必要な魔術は魔力の消費が多い。


 この魔力の総量というものはほとんど変動しない。というのが通説。

 魔術の理解がリズヴァルト大陸よりも進んでいる世界の隣の森ですら、そう信じられている。

 多くの結果もそう示している。


 故に自分の総量増加という現象は特異なものとなる。

 今尚増大し続けている魔力総量はすでに魔術をいくら使っても何の問題もないくらいだ。

 それどころか総量が増える条件である残存魔力量を1割から2割まで減らすという行為を行うだけでも一苦労だ。


 膨大な魔力を圧縮し、精霊力へと変換しクティ製隠蔽魔術を早業で使用することで通常の魔術使用の遥か上を行く魔力消費を実現しても、それを嘲笑うかのように増え続ける総量により日々工夫を求められる。

 でもこの総量アップ作業はやめる気はない。

 クティのようにいつかは自分で魔術を作るつもりなので魔力消費に縛られない燃費の悪い魔術というカテゴリーを排除するような気はないのである。


 多い分にこしたことはないのだ。

 魔力を見ることはなかなかに難しいのだから。


 これが魔力総量なんかを漫画みたいに見れるような環境だったら話は違ったのだが、自分のような魔眼は滅多に、いやまったくいないのだ。


 故に今日も魔力を消費する作業を続ける。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 翌日も生憎の雨。

 訓練も室内となり、雨音に混じって聞こえる鋭く空気を切り裂く音と重く空間に捻りこむ様な音が延々と繰り返される。

 そんな三重奏をBGMに授業を受けているのだが、どうにも集中できない。

 いや授業はきちんと聞いている。

 クティのわかりやすい図解があるので理解に何の問題もない。


 問題があるとしたら割かれた思考に浮かぶ斜め後ろに佇む専属さんのことだろうか。

 今日の専属は順当に順番が回ってきたニージャだ。


 その彼女であるがクリストフ家のメイドは全員が支給された制服を着ているのに対して、なんと今日はその服とは違った服を着ている。

 全部洗濯してしまって替えがないわけがない。そんなことにならないように同じ制服を十数着支給されているのだから、明らかに故意である。

 でもそんな彼女に誰も何も言わない。

 専属だからといって、戦力が強大だからといって許されるほどクリストフ家は甘くない。

 戦力なんてもっと強大な人がいるのだし、専属だからこそ模範にならなければいけない。


 だが今日のニージャは違う服を着ている。

 いつもの足首ぎりぎりのロングスカートではなく、膝より大分上のミニだ。

 上着はいつも通り。

 何よりも目を引くのはガーターベルトだろう。

 小柄なニージャがつけるとなんとも背徳的な雰囲気が漂う。


 そんな彼女はいつも通りの半眼無表情。

 まるで何事もなかったかのようにいつも通りだ。

 魔力の流れもいつも通り。


 でもガーターベルトだ。



【おかしい……。なんでみんな何も言わないの……?】


「何が何が?」


【ニージャのガーターベルトとミニスカートだよ。専属があんな服を仕事中に着てるなんてはじめて見るよ?】


「ミニスカート? 誰が?」


【え、ニージャがだよ。あんなに膝上のミニスカートでガーターベルトだなんて……見えちゃうよ?】



 別にもじもじすることもなくはっきりきっぱりと書き切ったのだが、ニージャを確認しているクティは可愛い顔を傾けている。



 何かおかしいことがあっただろうか。

 いやニージャの服装がおかしいからおかしいことはあるんだが、そういうことじゃない。



 何かがおかしい。

 自分の勘がそう告げている。



「ニージャがミニスカートでガーターベルトなの?」


【うん。なんで誰も何も言わないんだろうね】


「私には別段普通のロングスカートにしか見えないが」


「私も……。リリーの言ってることを疑うのはありえないけど、ニージャが履いてるのはロングスカートだよ。

 ガーターベルトは……ちょっと中見てくる!」



 サニー先生も小首を傾げながら言ってくるが、ニージャに突撃して行ったクティにちょっと呆れている。


 そして、スカートに突撃したクティはスカートに触れようとしてびっくりしている。

 クティが触れようとしていたその場所は見事に何もない。

 だが触れようとしたところにある変化が起きていた。



【あ、そういうことか……】


「ふむ。なるほど」



 2人で納得しているとクティも納得顔で戻ってきた。

 納得顔はすぐにドヤ顔になり、安定のちっこいさまによるすこぶる短い解説が始まった。



「アレ、魔道具だね」



 そう、どうやらニージャはロングスカートの幻影を作り出す魔道具を使っているようだ。

 その幻影は魔術によるものなので、自分の目は誤魔化せなかったようだ。

 ただ普通の幻影ならば自分も気づいたはずなのだが、どうやら他にもいくつかの魔術を駆使している結構高度な組み合わせのようだ。


 結果として幻影に誤魔化されない自分の目には幻影が見えず、見えるはずの術式が組み合わさった魔術によりなぜか不可視となった。

 クティが触ろうとしたことにより生じた魔力干渉のノイズで術式が見えてやっとわかったのだ。


 幻影の魔術にいくつかの魔術を織り交ぜることにより高度に現象を再現させるのは手法としては一応ある。

 ただコストが馬鹿にならないので誰もやらないだけだ。


 そしてどうやらそれは自分の魔眼の弱点を突くもののようだ。

 弱点というほどの弱点ではないのだが、高度な幻影を使っていることを認識しづらい結果となる。

 まぁ何かを隠す為に使う方法なので、結果的にまったく隠せてないのだから弱点ではないと思うが何かしらの対策が欲しいところだ。



 そしてそこまでのことをしてまでミニスカートとガーターベルトをつけてきたニージャの真意は……。



「ラクリアみたいにお尻のラインが出るのが嫌だったのかな……?」



 なんとも乙女なことである。

 ガーターベルトはつけてくるくせに。




弱点……? な弱点でした。

複雑に絡み合った術式は時として変な現象を引き起こします。

でも結果としてリリーの魔眼は、その魔術の実際の効果を無効化してしまうためあまり意味がありませんが。


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