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濁った瞳のリリアンヌ  作者: 天界
第一部 第7章 3年目 後編 2歳
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112,早められた計画

 外堀からゆっくり埋めるはずだったのだが、なんだかミラは抱きついただけでは物足りないという感じだ。

 当然それを表に出すほどミラはメイドとして低レベルじゃない。

 隠すことの出来ない魔力の流れのおかげで知りえた情報だ。


 ミラにはすでに2回もふもふを実行している。

 レキ君でわかっていたことだが、自分のもふもふを受けると相当な快感が得られるのだ。

 クティに効かなかったことから人によるのだろうこともわかっているが、彼女にはそれはそれは効いた。


 そんな彼女に触れえる機会は専属メイドのはずなのに意外と少ない。

 特にエナやお婆様達が介在しない自分だけの状況だとめっきり減って日に1回あるかどうかといったところだろうか。

 だから今回のように自ら抱きつくということでもしない限り彼女に接触することはなかったので今まで分からなかったのだろう。


 だがわかってしまったのだ。

 知ってしまったのだ。


 練り上げたミッションプランは時間をかけてゆっくりと外堀を埋めつつじわじわと内部から毒を垂れ流すものだ。

 毒はもちろん弱めの魔力でゆっくりとじっくりもふもふすることだったのだが、彼女は時間をかける必要性がないのかもしれない。


 そう、練りに練ったミッションプランだろうと臨機応変に。トラブルは付きものなのだ。

 状況状況で最善を。



 だが焦ってはいけない。

 急いては事を仕損じる、ともいうじゃないか。



 まずはミッションプランの前倒しで事を進めることにする。

 外堀がほとんど埋まった状態で行うはずだったプランを実行するとしようか。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 ミラに抱きついてから、まだ時間もそう経っていない。

 未だレキ君ルームでレキ君タイムの最中なのである。

 レキ君はミラに劣らぬ――1歩か2歩くらいは劣っているが――僅差の極上毛質だ。

 そんなレキ君には毎日ブラッシングしてあげるというとても大事な日課がある。



「ミラ~。レキくんのぶらしください」


「……あ、はい、お嬢様」



 いつもより近い位置で魔力の流れに残念無念です。またアレして欲しいです、と貼り付けていたミラにお願いすると1拍の間があったがすぐに了承の返事を返してくれた。


 普段は間なんてないんだけど、今日は仕方あるまい。

 これはやはり魔力の流れの読み間違いではないようだ。確信できるレベルだろう。

 まぁ今まで一度も読み間違えたことはないんだけどね。



 ミラから受け取った自分の手に合わせた小さなブラシは魔道具だ。

 これもクリストフ家で作られた魔道具でお気に入りの1つとして選んだものだ。


 このブラシの魔道具、エナ達が使っている掃除機代わりの雑巾魔道具よりも複雑な構造をしている。

 まず毛先に使われているのが特殊加工して弾性を強化された魔片である。

 この時点でおかしい。


 一体何を合成したら結晶のように硬い魔片がこんなに曲がるようになるのか。

 魔片は実に奥が深い。


 当然毛先なのでいくつも魔片が密集してあり、その全てに魔術が封じられている。

 その全てを手元部分で制御するのだが、この毛先1つ1つに魔術が封じられているため非常に高性能な動作をさせることが出来てしまう。


 例えばブラッシング。

 基本的に毛のもつれをほぐしゴミや死んだ毛などを取り除き、発毛を促し、皮膚に刺激を与え、血行を良くし新陳代謝を促進するなどの効果がある。


 ただブラシで梳けばいいというものでもない。

 人と違ってレキ君はオオカミ種なのだが、犬に近いのか、もつれや毛玉なんかは根元付近に多くある。

 なのできちんとやるなら毛をより分けて根元からやらなければいけない。

 よく見る毛の表面を撫でるだけ~みたいなブラッシングではこのもつれや毛玉なんかは取れないのだ。


 だがこの魔道具があれば恐れるに足りず。

 まずすごいのが表面を撫でるだけでは届かない奥まで毛先が侵入する。

 もつれや毛玉などの微妙に硬い部分を瞬時に柔らかくして解しやすくしてしまう。

 なので軽く梳くだけでいいのだ。


 2歳児の自分でもレキ君が気持ちよくブラッシングされるように作られたこの魔道具は当然他にも機能があるがそれを全て説明すると数日がかりになってしまうほど多機能高性能なのだ。


 そのおかげもあって魔力を纏うほどではないが、レキ君はブラッシングを非常に気に入っている。

 体が大きいので全体をブラッシングできるわけではないが、主に尻尾やお腹などを中心にやっている。



 そんなわけで今日もレキ君の尻尾をこのお気に入りブラシ1号君でブラッシングである。


 なぜ尻尾か。

 ミラにお腹の毛をブラッシングさせてって言うのはどうだろう。

 そもそもミラは毛深いわけではない。

 見た感じだと頭の上に狼の耳がついていて、ふさふさの尻尾が生えているだけであとは普通のだ。

 お腹の毛がない可能性の方が高い。

 言えば見せてくれるだろう。でもメイド服はお腹を見せるような服ではない。

 そもそもそのお願いはどうなのだろうか。お腹だけに。


 でも尻尾ならばミラの場合外に出している。

 長いし、ふさふさなので収納しておくのは難しいのだろう。

 実に素晴らしい。



「レキくん、きもちーですかぁ?」



 るんるん、とちょっと鼻歌も交えつつご機嫌アピールをしながらいつもより近いミラを意識してレキ君の尻尾を丁寧にブラッシングする。

 レキ君も右足でパシパシ、と床を叩いてご機嫌だ。



「れきくんのしっぽはきもちーですからねー。ミラのしっぽみたいねー」



 何気なく。そう、何気なくを装った発言に斜め後ろのミラが生唾を飲み込む音が聞こえた気がする。

 だがここですぐに行動してはだめだ。

 急いては事を仕損じるのだ。急がば回れなのだ。


 体を左右に揺らしつつ、レキ君のふさふさの尻尾のブラッシングを続ける。

 斜め後ろがちょっとそわそわしているのは気にしてはいけない。


 いつも通りにレキ君の尻尾にブラッシングをし終わってミラを振り返ってみると、やはり表面上は何事もない。

 そわそわもしているようには見えない。

 いつも通りのミラだ。


 だがその実、内面である魔力の流れは非常に雄弁だ。

 まず非常にそわそわしている。そわそわ大会があったらぶっちぎりで優勝してお立ち台で叫んでしまうくらいのそわそわっぷりだ。

 残念と期待と不安がそれぞれ入り混じり、よくわからないぐらいにもなってしまっている。


 ちょっと焦らし過ぎたかもしれない。

 なのでそろそろプランを進めることにした。



「ミラのもやったげるぅ~」


「は、はい! ……ぁ、で、ですが……その……」


「んぅ~?」



 お預けをくらいまくっていた腹ペコの犬が如く飛びつくように瞬時に返した返事だったが、そのあとすぐにハッとして言いよどんでしまう。



 まぁ専属メイドなのだから主人に尻尾を梳いてもらうのはだめだと思ったのだろう。

 正直そんなことはどうでもいいのだ。

 いいからもふらせろ。



 おっと、いけない。すていくーる。

 どこぞの定評のあるお方も言っておられた。まままままだ焦るような時間じゃない。あわわわ、と。



「ミラ~はやくぅ~」


「は、はぃ……。ぁ、あの……ど、どうぞ……」



 若干渋ったがお婆様をチラリと見たミラは頷いてくれたのを確認するとおずおずと自らのふさふさの尻尾を差し出すように後ろを向いた。



 さぁ、祭りの始まりじゃー!

 すていくーるなんぞ知ったことかー!



 目の前に出されたご馳走を見た瞬間、焦らずじっくり、とか、久々なんだから手加減してゆっくりとか、そういった配慮はちょっと探すのが難しくなってしまった。


 だって久々にこんなに間近で自分の為だけにあられもない姿で極上尻尾さまがおわすのだから。



 そこからは――魔術習得授業のペースとは関係なく教えてもらったいくつかの――魔術を知覚不能にするクティ製魔術などを行使し、ミラが盛大にアレしちゃってもいいように偽装を施したりなんだりを一瞬で済ます。


 ブラッシングするはずがブラシを投げ捨てて、まるで某孫な泥棒のようにダイブを決めてしまった。

 実際にはダイブといっても尻尾に飛びついただけなんだけど。



 お婆様やエナの目もあるのでこの魔術を知覚不能にする魔術を使っておかないとその後に魔術を使いづらい。

 特に視認できる光景を偽装する魔術は魔術を使っているというのがモロバレなのだが、この知覚不能にする魔術と併用すると結構凶悪な代物になったりする。

 なんせ触れなければまったくソレとわからないものになるんだから。


 外から見れば普通に尻尾をブラッシングされているミラ。

 その実は……必死に口から漏れる声を抑えて床で痙攣する艶かしい女性。


 ちなみに声も偽装してあるので喉が張り裂けんばかりに叫んだとしても問題ない。


 大魔王からは逃げられないのだ。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 夢中だった意識が戻った頃には色々とアカン状態でした。

 はっきりいってやりすぎました。

 その光景をばっちり見ていただろうサニー先生は顔が引きつっていたし、クティはなにやらもやもやの雲がいっぱい浮かんでいる中で顔を両手で覆って、でも指の隙間からばっちりみているという構図だった。

 あの靄はきっとピンク色だったに違いない。



 すっきりしてすっかり賢者モードになり、冷静になるとずいぶん色々と溜めこんでいたのだということがわかる。

 やはり息抜きは必須だ。抜くことが大切なのだ。

 無論2歳児で女の体なので性的なアレコレではない。でも大切なのだ。


 ミラの意識もぶっ飛んでいたのでまずやらかしてしまった粗相を綺麗にして、なかったことにした。

 レキ君で慣れているのでその辺はぬかりはない。

 知覚不能魔術と視覚偽装魔術の併用の中でなら魔術は結構使いたい放題だ。


 まぁいくつか欠点もあるので条件が整っていないとだめだが、今は問題ない。

 条件が崩れる前に証拠隠滅も済み、綺麗になったミラの意識をクティに浮上させてもらう。

 まだ当身のような目覚ましのようなよくわからないこの気付けの魔術は使えない。

 意識が戻ったミラはレキ君の大きな体によりかかっている状態だ。

 触れずに物体を動かすサイコキネシスのような魔術もクティ製。まだこれも使えない。これがあればかなり活動範囲が広がるのだがクティは攻撃魔術と同じと思っているのでまだまだ先の話になりそうだ。


 自分はミラの意識が戻る少し前から彼女の尻尾をブラッシングしている。なのですぐにそれに気づいたミラがわたわたと慌てているが知らん振りだ。

 今彼女の魔力の流れはすごいことになっている。

 羞恥と悦楽と満足感と疑問と、もうごちゃ混ぜになっていて何が何やら、だ。


 でも知らん振りをする。

 しれっと尻尾をブラッシング完了し、にっこり笑顔でミラを解放すると混乱していながらも丁寧にお辞儀をしてお礼を言ってくるミラ。


 未だ魔力の流れはすごいことになっているけれど、残念とか物足りないとかはまったくなくなっていた。



賢者モードリリーです。

魔術を完璧に行使してお婆様にすら気づかせないレベルで事に挑むことができるレベルになっているのです。

成長とは凄まじいものです。


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