外伝14,専属メイド達の内緒話 Part,2
本編に出て来ないような設定がちょろっとだけ出て来ます。
そういうのが嫌な人はブラウザバックと見せかけて本編を読みましょう。
姦しい話が苦手な人はブラウザバックと見せかけて心を無にして読みましょう。
話がころころ変わるのが苦手な人はブラウザバックと見せかけて……え、どうしよう?
今回のお話はちょっと短めです。
精緻な装飾を施された枠を持つ鏡台。その前には色取り取りに飾り付けられた化粧品の数々が鎮座している。
その全てが使用済みであり、少しずつ量が減っている。
特に薄い紅色の彩りが美しい瓶の減りが1番早い。
その瓶を傾け数滴手の平の上に落とすと薄く揉み込むように伸ばす。
さらに頬から中心に円を描くようにゆっくりと広げるように顔全体に浸透させていくが、薄い紅色だったその滴は無色透明になり、肌にゆっくりと定着していく。
「ジェニーのお手入れはいつも念入りだよねぇ~」
「……金食い虫」
「あらぁ~ひどいわぁ~。女性にとって肌のお手入れは必須よぉ~?」
「私は支給品だけで十分かなぁ」
「……不必要」
「ニージャわぁ~卑怯なほど肌がぁ綺麗なのよねぇ~」
淡い緑色の太く短い瓶の蓋を開けて中のクリーム状の粘質の濃い液体を手の平で広げながら、間延びした口調のキツネ耳の女性――ジェニーは肌のお手入れを続ける。
卑怯と言われた艶々お肌のクマ耳の女性――ニージャは半眼の瞼をそのままに口の端だけ少し上げてニヤリと笑う。
「私だってぇ~ニージャほどの卑怯な肌があればぁ~……」
「……鍛錬の賜物」
「そうかなー。ニージャのは天然だと思うけどなー」
鏡台と比べると質素な飾り気のないベッドの上に寝転がりながらロングスカートが翻るのも気にせず、ウサギ耳をぴこぴこ動かしている女性――ラクリアはほとんど棒読みのセリフで相槌を打つ。
「……そんなことよりミラ遅い」
「そんなことじゃぁ~ないのよぉ~? 女にとってお肌はとても大事なのよぉ~?」
「ジェニーにとっては、でしょー? 私はぬいぐるみがあれば……ううん、お嬢様がいればそれでいいし」
「……超同意」
「そりゃぁ~お嬢様のお傍に居られれば多少のことは吹き飛んじゃうけどぉ~。
ソレはそれぇ~。これはコレよぉ~」
「……余裕がむかつく」
「ジェニーは今日お嬢様付きだったもんねぇー。明日同じ事がいえるかなぁ? かなぁ?」
「そ、それはぁ~」
「遅くなりましたっ!」
3人の会話に割り込むように扉を勢いをつけて開けたオオカミ耳の女性――ミラは肩を上下させつつ膝に手を付いて荒い息をなんとか整えようとしている。
「おそぉ~い」
「……遅い」
「お疲れーミラー」
「はぁ……はぁ……。す、すみません……遅くなりました……はぁ……はぁ」
「そんなにぃ~急いできたのぉ~?」
「……鍛錬不足」
「まぁほらコレでも飲んで落ち着きなー?」
ラクリアが棚から取り出したコップに水差しの水を注ぎ、大分安定してきたミラに渡してあげる。
受け取ったコップを一息に飲み干したミラは気持ちよさげな息を吐いた。
普段から鍛えているミラの呼吸はすでに平常時のソレに戻りつつあるが、ここクリストフ家の使用人達の中ではかなり遅い立ち直りでもあった。
「ほらほらぁ~じゃあみんな揃ったことだしぃ~?」
「……うん」
「そうだね」
「はい!」
4人揃ったクリストフ家次女リリアンヌの専属メイド達はさっそく今日のお嬢様報告会を開始するのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ところで先輩方、レキってどこまで大きくなるんですか?」
「「「……」」」
いつも通りに一通りのリリアンヌのここが可愛い、綺麗、麗しいの3拍子を交し合った4人は次の話題に移る前に淹れた紅茶で乾いた喉をゆっくりと潤していたのだが、そこに投下されたミラの一言で動きが止まる。
「あ、あれ? 私また変なこと言っちゃいましたか……?」
おろおろと身を縮めるミラに他の3人がゆっくりと紅茶を飲み干してからカップを置く。
「あの子はぁ~……サルバルアだしぃ~」
「……サルバルアだから」
「サルバルアだよねぇー」
身を縮めていたミラの首が傾き3人の答えに疑問を呈する。
「あなたぁ~ちゃんと資料読んでないのぉ~?」
「よ、読みましたよ……。で、でもレキはまだ幼生態のはずですよね?
そうすると大きくなっても今の4分の1くらいのはずじゃ……」
「あー」
「あぁ~」
「……ふあー」
ジェニーとラクリアの同意の声にニージャの欠伸が混じる。
だがいつものことなので特に気にせず3人は話を続ける。
「サルバルアはぁ~元々ぉ~知られていないことの方がぁ~多かったしぃ~」
「そうそう、レキはわからないことだらけなんだからいいのいいの。
それにあのお嬢様が毎日可愛がってあげてるんだから何があっても不思議じゃない!」
「……うるとら同意」
「そうですねぇー……。毎日ですもんねぇ……」
「そうそう、ミラが大変なことになっちゃったアレを毎日だよ毎日!」
「ミラがされたらぁ~体がもたないわねぇ~」
「……廃人」
「本当にそうなりそうなのが怖いです……。……でも……」
なんともいえない表情のミラだったが、俯いて右と左の人差し指をちょんちょん、とくっ付け始めると聞こえない位の小さな声でごにょにょしはじめる。
「経験者はぁ~語るってやつぅ~?」
「1人だけお嬢様に気持ちよくしてもらってずるいよねー」
「……すぺしゃる同意」
「そ、そんなつもりじゃ……で、でも……あれはその……あの……」
「まぁでもあんな下着をすぐに替えなきゃいけないようなことを人前でされちゃうのはちょっと怖いなぁー」
「ななななななな、なんでしってるんですかー!?」
「あらぁ~私達の間で知らない事なんてないわよぉ~」
「……ぬれぬ」
「きゃあああ! やめてくださいいいぃぃぃぃ!」
顔を真っ赤にしてオオカミの耳の毛を見事に逆立たせたミラがニージャの口を塞ごうと慌てて近寄るが、当のニージャはしれっとかわし更に伸ばされたミラの追撃の手もあっさりとかわし続ける。
「それにしても確かにレキはいつまで大きくなるんだろうね」
「そうねぇ~もぉ~お嬢様が1人じゃ乗れなくなっちゃったものねぇ~」
「大きなふかふかのサルバルアの背に跨ったお嬢様も素晴らしいよねー」
「うんうんぅ~お嬢様はぁ~何をしてても様になって素晴らしいわぁ~」
ウットリと自分達の幼き主人の姿を思い出して相好を崩し始めた2人の周りを、ニージャが逃げミラが追いかける。
その姿はいくつかある休憩時間の中でも、専属4人全員が集うことが出来る1日に1度だけの長い休憩時間が終わるまで続くかと思いきや、ミラがベッドの上でニージャの拘束術を受けて羽交い絞めにされて終わった。
今日もリリアンヌ・ラ・クリストフ専属メイド4人の姦しい内緒話は賑やかに、されど愛らしく続くのであった。
いつも通りの姦しい4人でした。
降りてきた神様が不調だったようで短めです。
出来たらもっと華のある会話を書きたかった……。
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