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濁った瞳のリリアンヌ  作者: 天界
第一部 第6章 3年目 中編 2歳
122/250

109,walk



 春の柔らかい日差しですら遮るように差された日傘の中で今日も訓練に励む兄姉を見守るのが自分の役目だ。

 休憩のときに手を振ってあげるのも役目のうちだけど、自分が来ていると普段真面目に訓練を受けている兄姉はより一層気合が入るそうだ。


 最近はテオが中等部に行くようになって授業数も多くなり、訓練の時間もエリーと一緒に受けることが少なくなっている。

 なので毎回彼らの訓練を見れるというわけではないのだ。それでも毎日の訓練をテオは欠かすことはない。

 エリーもテオに悪いと思っているのか2人の訓練の時間が合う時以外は無理に見に来て欲しいとは言ってこない。



 まぁ3回に2回は見に行っちゃうけどね。

 テオが1人で訓練している時も見に行ったりするし。



 もちろんテオが1人で訓練しているというのはエリーと一緒ではないという意味で、テオだけで剣を振っているわけではない。

 常に騎士団の誰かかお爺様が教官を勤めている。


 彼らが訓練を開始してからすでに半年以上が経過している。

 元々テオは自主的に色々やっていたようなので体力も普通の子よりあるし、センスも抜群らしい。

 お爺様や騎士団の人が良く褒めている。

 もちろんエリーも良く褒められているが、エリーの場合格闘術はお婆様から手ほどきを受けているのもあり、目標がお婆様に設定されているのか多少褒められた程度では気を抜くこともない。

 テオも手抜きなんてことはまずないので、2人はその有り余る才能は留まることを知らず成長している真っ最中だ。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 テオの訓練は剣に振り回されていた頃とは違い、剣が体の一部であるかのように扱っている。

 まるで熟練の戦士の如き力強い素振りは本格的な訓練を開始してまだ半年程度とはとても思えない。


 素振りの音1つ聞いてもその違いがわかる。

 以前は空を切るような音がしたら剣を止めることなんて出来なかったのに、今ではしっかりと自分の意思で止めている。

 使っている剣も――木で出来ている両刃剣――木剣らしいのだが、テオが持てば数ゴウ()しないうちに見えるようになる。

 最初の頃は見えるようになるまで時間がかかったのに毎日素振りしているからか、ここまでの速さになっている。

 やはり武器は手に馴染んだ物なら服のような影響を受けるようだ。


 最近重量を増した木剣も少し使うことがあるのだが、そちらは見えるようになるまで大分時間がかかる。

 だが使っていれば愛用している木剣並の速さで見えるようになるんだろう。



「ハッ! ヤッ!」



 鋭い声と共に打ち出される木剣が打ち込み用に用意された藁人形に斬撃を浴びせる。

 藁人形は当然見えないけど、クティが魔力で描いたテオが叩いているのは五寸釘が深々と刺さった藁人形なのだからしょうがない。

 ちなみに顔の部分にはアレクの似顔絵が張ってある。



 クティから見るとテオはアレクを嫌っているように見えているんだろうか?

 自分から見るとテオはアレクのことを尊敬しているように見えるんだけど……。



 そんなことを思っていたらいつの間にかに藁人形が胴から真っ二つになって顔の似顔絵はレキ君になっていた。


 もちろん実際のテオは木剣で藁人形を真っ二つに出来るような腕は持っていないからあれはクティのお遊びだ。

 いつの間にかテオだった魔力の塊は決め顔のクティになっているし。

 ドヤ顔じゃないところがポイントだ。



 本物のテオは上段中段下段と複雑な軌道を描く打ち込みを続けている。

 真剣な表情で俊敏に立ち位置を変えて打ち込まれる斬撃。

 真剣なら今頃藁人形はばらばらになっているんじゃないか、と思えるほどの鋭い打ち込みだ。


 これで10歳だというのだから末恐ろしい。


 テオの成長速度は半年間じっくり積まれた基礎訓練の成果も相まって凄まじい速度だ。ちょっと見ないと別人のように成長してしまう。


 でもよく一緒に入るお風呂で見る彼の体はマッチョではない。

 むしろ薄っすらと筋肉がある程度で年相応ですらある。


 きっとピンク色な筋肉の所持者なんだろう。

 まったく羨ましいぜぇ。


 ちなみに魔力の流れは徐々に徐々にゆっくりとだが洗練されていってるように思える。筋肉があまりついていなくても大人顔負けの鋭い斬撃が可能なのはその辺に秘密があるんじゃないかと思う。


 だってお婆様がそうだから。

 お婆様は引き締まっているけど、筋肉たっぷりではない。女性らしい丸みは黄金比率だし、触ってもぷるんぷるんなのだ。


 魔力による肉体の強化はお婆様やレキ君なんかが特に顕著だけど、お婆様の血を引くテオもその傾向にあるらしい。

 きっとエリーもそうなんだろう。



 ということは自分もそうなのだろうか。

 魔力を自在に操れる自分ではあるけれど、そんな風に扱えたことは未だに1度もない。

 一体どうやるんだろうか。


 出来るならやってみたい。

 自衛にも使えるし、何よりお婆様みたいな超人になれるかもしれないんだ。やれるならやってみたい。



 テオとエリーの2人の訓練も少しずつ時間が延びて今は最初の頃の倍以上の時間になっている。

 ずっと見ているとさすがに飽きてしまうが、その間にもサニー先生が授業をしてくれるので何も問題ない。

 おかげで訓練の1部だけみてレキ君ルームに戻るとかもあまりない。



 生前なら居眠りしてしまうような暖かい春の息吹の中、今日も2人の訓練が終わるまで庭での見学タイムは続いた。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆








「リリー、今日も天気がいいし、たまにはお外に散歩にいきましょう」



 訓練でかいた汗を流してきたエリーがまだちょっと季節的には早いんじゃないかな、と思えるようなノースリーブのワンピースを着て素晴らしい提案をしてくれた。


 散歩。

 そう、散歩。


 庭には基本的にテオとエリーの訓練の見学でしか行っていない。

 まずは庭の冒険の為のエナの許可を取らなければという気持ちが先行していたからだろうか、単純に散歩というハードルの低そうな発想が思い浮かばなかった。



 なんという盲点。

 さすがエリーだ。自分が気づかないことをさらっといってのける! そこに痺れる憧れるぅ!



「いきたぁ~い!」


「じゃあ決まりね。テオも行くでしょ?」


「もちろんだよ!」


「あらあら、今日はいいお天気ですものねぇ~。たまにはのんびり散歩もいいかもしれないわねぇ~」



 テオもお婆様もエリーの意見に賛成のようだ。

 あとはエナだけど……。



「外に出るならちゃんと帽子を被らないとだめよ?」


「「はーい」」



 なんともあっさりすぎるほどに許可が下りた。

 やはり冒険ではなく散歩から始めればよかったようだ。

 屋敷の探検に行ってからというもの庭での冒険という発想が頭から離れなかったのが痛すぎる。



「はい、リリーも帽子をちゃんと被るのよ?」


「はぁ~い」



 片手をあげて元気よくお返事を返すとエナもにっこり笑顔で帽子をかぶせてくれる。

 自分が被った帽子はエリーとお揃いのつばの広い帽子だ。

 エリーが被るとワンピースと相まって夏のお嬢様といった具合で実に似合っている。


 ちなみにクティはすでに帽子の上で定位置確保ー! と叫んでいる。

 叫び終わるとそろりそろりとゆっくりと逆さまになったちっこいさまが顔を出す。つばから覗かせた顔は当然のドヤ顔だ。

 ひっくり返ってもそのご尊顔はド級の安定感だ。



 皆の準備も整い、レキ君も鞍を装着するとその上にエナに乗せてもらう。

 これで散歩の準備は完了だ。


 レキ君の上なので兄姉2人の手は届かないがぴったりと横についている2人がなんだか頼もしい。

 冒険とは違うけれど、庭の散歩というのは初めてだ。


 どこか目的を決めていくわけでもないのが散歩だ。

 だから初めてなのだ。



 エリーの大きな花壇から香ってくる春らしい甘い香りが一瞬鼻先を掠めるように風に流されていった。


 空を見上げても真っ黒だけど、まるで春特有の抜けるような青空を幻視するかのような清々しい気分だ。



「気持ちいい~」


「うん、暖かくてすごく気持ちいい」


「きもちー!」



 仲良し兄姉妹きょうだいがほとんど同時に声をあげ、そんな微笑ましい光景を笑顔で見守る2人が続いてゆっくりと歩く。


 楽しい楽しい散歩タイムが始まった。



テオの成長は目覚ましい限りです。

さすがはお婆様の孫です。


男子三日会わざるばうんたらというですしね。でも毎日会ってますけどね。



気に入っていただけたら評価をして頂けると嬉しいです。

ご意見ご感想お待ちしております。


8/13 脱字修正

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