11,プロローグ
トンネルを抜けたら……妖精がこっち見てた。
約1年前にも頭をよぎっていった有名な台詞を、1歳の誕生日にまた繰り返すことになるとは……やっぱり後半は少し違ってたけど。
窓のある位置に、薄い羽のような物をプルプル震わせている小型の人のようなモノが見える。
魔力(仮)しか見ることができない自分の瞳にそれは映っている。
今日は自分の1歳の誕生日で、さっきまで下の階のパーティルーム?でたくさんの人から祝福を受けていた。
今は自分の部屋で母親のクレアに、幸せそうな顔で抱きしめられている。
クレアの放出した魔力(仮)を見て、1年かけて訓練した成果として同様の放出をすることに成功したところだ。
きちんと成功した証に、クレアがより一層幸せな笑顔をしてくれた……のだが、すぐに窓のモノに気づいてしまったわけだ。
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どこからどうみても妖精にしか見えないソレは、不思議そうな顔でこちらを見ている。
魔力(仮)の放出を見ているのだろうか?
目線が自分達ではなく、その周囲に向いているような気がする。
顔立ちや体形は女性の物だ。
少女のような大人の女性のような、どちらにも見えるし、どちらにも見えない不思議な顔立ちをしている。
髪は顎までくらいの若干カール強めで、前髪を自然に目の上に流している。
このヘアスタイルは、ピュアカールだったろうか。
お洒落さんな妖精だな。
色は相変わらずわからない、でも全体的に柔らかそうな印象が強い。
そんなことを思っていると、彼女は部屋の中に入ってきた。
自分の勘違いじゃなければ、確か窓は閉まっていたはずだ。
通り抜けた……?
窓が開いているなら、エリーの花壇に咲いている大量の花の香りがするはずだ。
冬季にも綺麗に咲いてくれる優秀な花だと自慢していたのは、つい最近のことだ。
窓は魔力(仮)がないから見えない。
暖房も動いているし、窓が開いていたら冷たい風が入ってくるはずだ。
もしかしたら、風の関係で入ってこないだけかもしれないがそんなことがあるのだろうか?
彼女はゆっくりと近づいて、放出された魔力(仮)を触っている。
触れる度に、顔が綻んでいる。
妖精にもこの放出は、同じように感じられるようだ。
空中を滑るようにくるくると、放出された魔力(仮)をゆっくりと触っていく。
そんな彼女を凝視していたら、その視線に気づいたようだ。
小首を傾げながら、妖精は自分の目の前に降りて来る。
そのままこちらを見ながらゆっくりと、頭の周りを回り始める。
クレアに抱きしめられているので、あまり視界を回せないのだがそれでも出来る限り彼女を視界にいれようとがんばった。
それで妖精は見られていることを確信したようだ。
ちなみにクレアの目の前を通ったにも関わらず、彼女は妖精にまったく気づかなかった。
やはり、妖精が見えているのは自分だけなのだろうか?
妖精も同じことを思ったようで、周りを2周したあとにクレアの前に戻って手を振ったりしている。
クレアは気づく様子がまったくない。
薄くだけどちゃんと目は開いていたし、頬と頬をすりすりしながら魔力(仮)の放出を続けている。
目の前の目測20cmの物体に気づかないのはいくらなんでもありえないので、見えてないのだろう。
ちなみに自分の放出は、妖精を見つけた瞬間に途切れてしまった。
妖精はクレアに自分の姿が見えていないことを確認すると、こちらに戻ってきて何やら口をぱくぱくさせ始めた。
喋っている?
どんなに耳を澄ませても、彼女の声は聞こえない。
それに気づいたのか彼女は、困ったような顔をしている。
うーん、とわかりやすく何かを考えていたかと思うと、今度は手を振ったり何かのジェスチャーっぽいものをしたりしてくる。
しかし如何せん意味はわからなかった。
しばらくアレやコレやと頑張っていた彼女だったが、クレアが抱擁を終えて
「リリーの好きなご本を読んであげるわねぇ~どれがいい~?」
といって膝の上の定位置に自分を移動させ、積んで置いた本を取り上げ目の前に持ってくる。
本は見えないが、クレアの手が本を何冊か持っているかのような形になっている。
妖精もそれに合わせて、クレアの手の横に移動して少し眺めた後、自分には見えない本を指差した。
読んで欲しいのだろうか?
とりあえず、害意は感じないし自分にはどの本がどの本なのかわからないし、妖精の選択に答えてみよう。
妖精が指差している場所の前に、クレアの手をぺたぺた触って少しずつ移動させる。
妖精が何度もびしっ!びしっ!と、擬音が聞こえてきそうな感じで指差している。
指差している本まで2冊他の本をぺたぺた触りながら、辿りつくと彼女は大きくうんうん頷いたので、その本をばしばし叩いてコレに決定の合図を送る。
「はいはい、これねぇ~」
クレアは毎回こんな感じで、本を読むときに選ばせてくれる。
といっても触っても何かわかるわけでもないので、選ばせて貰ってもあまり意味はないんだけどね。
普段は、読んでもらったことのある本だったら、クレアの手を叩いたり手を大きく動かしたりして違うのを選ばせて貰う。
まぁ今回は妖精が選んだんだし、読んでもらったことのある本でも別にいいかなと思ったけど。
妖精がまた口をぱくぱくさせている。
さっきと同じで声は聞こえないし、読唇術もできないから何をいってるのかわからない。
口がぱくぱくし終わった後、なぜか彼女はドヤ顔になった。
なんかすごく似合ってる。
選んだ本をクレアが読み始めると、妖精はこちらの肩の上に座ってきた。
いきなり近づいてきたから、ちょっとびっくりしたけど、こちらのそんな挙動は妖精には関係ないようで、気にするそぶりも見せない。
横目でそんな彼女を盗み見ると、足をぶらぶらさせながら、リズムに乗ったように頭を揺らしている。
なんだかとても楽しそうだ。
そんな彼女の仕草を見ながら、楽しい楽しい朗読タイムは進む。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
朗読タイムは、アレクが部屋に来るまで続いた。
どうやら、残っていたお客さんも全員帰ったらしい。
肩の上の妖精はアレクにも見えていないようだ。
アレクを見てから妖精を見ると、またドヤ顔をしていた。
ドヤ顔好きだなこの子。
アレクの膝の上に移動して、朗読タイムは終了となった。
今度はアレクとのスキンシップタイムとなるようだ。
パーティの時に1歳になったばかりの子供が、お礼を言うという暴挙をやらかしてしまったためだろうか。
アレクは抱き上げた自分を顔の前まで持ってくると
「パパだよ、パ・パ」
とか言い始めやがりました。
お礼を言った後の祭りでの
" こんなにたくさんの人の前でお礼が言えるなんてすごい!天才だ! "
とか。
" うちの子なんてお礼が言えるようになったの2歳近くだったのにすごいわぁ! "
とか、正直やらかしてしまった感がすごかったようで、自重しようと思ったところにこれだ。
当然、シカトしてやりましたよ!
それにめげずに何度もパパパパ、繰り返すアレクを妖精はこちらを見た後、何か悲しいモノでも見るかのようにみていた。
わかるよ妖精ちゃん、でもそんな悲しい顔はやめたげて。
アレクと自分のスキンシップタイム、もとい一方的にパパパパ言ってるだけのを、しばらく見た後、妖精は何かを思い出したような仕草をしたあとこちらを向いて、また何かぱくぱく口を動かし始める。
だから何言ってるのかわからないってば。
言うだけ言ったあと、手を振ってくる。
なぜかまたドヤ顔だ。
そして最初来た時と同じように、窓のある方に飛んでいった。
やはり窓を開ける動作のようなものはなく、そのまま飛んでいってしまった。
アレクとのスキンシップタイムは、言葉の練習から高い高いに移行していたが、そんなことには構うことなく、妖精が飛んでいった方をじっと見ながら。
不思議なこともあるもんだ、やっぱりここは異世界なのかな?
と、頭の中で呟いた。
第2章スタートです
ドヤ顔さんとの出会いです
他の人の小説を読んでから自分のを読み直すと思うのですが、圧倒的に会話量少ないですよね
状況描写ばっかりなのが原因なのですがどうしたもんでしょうな
読んでてちょっとうーんって思っちゃいましたね
難産だった第2章なんですが、少しネタが出来たんで進み具合がよくなりました
この調子でいけるといいです、割とまじで
ご意見ご感想お待ちしております
3/9 句点、文頭スペース、三点リーダ修正
3/10 禁則処理修正
5/3 誤字修正




