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濁った瞳のリリアンヌ  作者: 天界
第一部 第6章 3年目 中編 2歳
119/250

106,calm



 いつも通りにレキ君ルームでサニー先生の授業を受ける。

 でも今日から少し違った授業内容になっている。先日行った魔道具工房見学で実際に目にした魔道具作成が思いのほか気に入ってしまった自分のリクエストに応えた授業となっているのだ。


 具体的にはリズヴァルト大陸の魔道具技術の授業を受けている。

 授業内容はリズヴァルト大陸の魔道具技術より遥かに進んでいる世界の隣の森の魔道具技術までを視野に入れて行われる予定だ。

 でもまだ始まったばかりなので世界の隣の森の技術はまだまだ先になりそうだ。


 先日実際に自分の魔力しか見えない目でも魔道具製作を見ることは出来た。

 それによりわかったことがいくつもあり、知識として知っていた魔道具製作方法だけでは気づけないこともたくさんあると再認識できた。

 だが自分の場合は、気づいたからといって即実践というわけにはいかない。

 魔道具工房自体の見学でさえ、何度も策を巡らせて最終的には絡め手を使って実行までもっていかなければいけないものだったのだ。


 そんなわけで今日も知識を得るためにサニー先生の授業を受けるのだ。



「――つまり魔片と合成する素材の分量には決まりがあり、その範囲内でしか効果を示すことはない。

 多すぎても少なすぎてもだめということだ。

 更にリズヴァルト大陸で発見されている合成技術は膨大ではあるが、まだまだ少ない方だ。

 世界の隣の森にはもっと高効率な物が大量にある。だがまずはこちらの大陸の技術の基礎を納めて貰うためにも――」



 魔道具の器である魔片に素材を適量合成するとその魔片の質をコントロールすることができる。

 だがサニー先生の解説通り、その量は多すぎても少なすぎてもいけない。ある程度の誤差は範囲内だが、質を求めていくと誤差範囲もどんどん狭まっていく。

 この辺は生前の世界の科学の実験のようでもあり、なかなか楽しい。

 問題は量が膨大なことだが、自分にはクティと同じ自分専用のアーカイブが存在するのでそちらに保存しておけば問題もなかったりする。覚えるけど。


 アーカイブは資料のようなものなので、検索しなければ見ることができない。

 なのでやはり自分の記憶にとどめておくことは必要なのだ。

 便利な機能でも弱点は存在する。その弱点をカバーし、有効活用するには普段からの努力が必要だ。


 努力なら自分の最も得意とするところなので、まったく問題ない。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 大き目の魔片にいくつもの素材をブレンドし合成する様を描いたクティの魔力は、サニー先生の授業通りに変化していく。

 たまに爆発するけどそれはご愛嬌というものだ。


 実際に爆発するのかは知らないけど、難易度が高かったり調合量がシビアだったりする場合の警告の意味もある。

 クティはおふざけ大好きだけど授業では意味のない行動は取らない。

 たまに授業に関係ないのを魔力で描くのもご愛嬌というやつだ。



 問題ない。可愛いので許す。許されなくても許す。

 例え世界が敵に回ったとしても許されるのだ。クティ万歳。



 だがやはり魔術の時もそうだったように、知識がどんどん増えていくと実践したくなってしまうのが世の常。

 複雑極まる合成レシピを頭に叩き込みながらも、どうやって実際に魔道具製作を行うかを検討し始める。

 素材と封水晶と魔片さえあれば自分にも魔道具が作れるのだが、その3つを集めるのが非常に困難だ。

 魔片はテオから貰った物が1つあるけれど、それは今はお婆様が大事に仕舞っていてくれるので言えば見せてくれる。

 封水晶や素材はどうやって手に入れたらいいのかまったくわからない。

 1番はやはり工房に行くことだろう。あそこならすぐに見つかるだろう。


 自分には素材が見えないがクティ達に手伝ってもらえばある程度はクリアできる。

 それ以前に工房に再度訪問することや魔道具を製作するという行為自体が問題となってくるのだが……。


 何にせよ、前途は多難のようだ。


 今は知識を増やし、いつでもチャンスがあれば実践できるようにしておくことが大事ということなのだろう。

 いざチャンスが来て知識不足でふいにしては目も当てられない。


 気合を新たにした自分に対するサニー先生の合成レシピ講座はより深く複雑になっていくのだった。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆








【レキ君。初めての魔道具製作は何がいいでしょうねぇ】


「……わふん」


【レキ君的には空気抵抗をコントロールできる系ですか、ふむふむ】


「わひゅん、ぶふぅ」


【おっと、鼻を擽っちゃいましたね。ごめんごめん。

 でもレキ君も本当に大きくなったよね……。私の成長も君くらいに早ければもっと楽に交渉できたかもしれないのにねぇ~】


「わふ」


【ひゃあ。もう、くすぐったいですよ。お返しに尻尾を梳いちゃうもんねー】



 レキ君の顔を撫でてあげていると尻尾の逆襲を受けてしまったので今度は尻尾を梳く為に捕まえる。

 とてとてとレキ君の尻尾を追いかけるけれど、レキ君の尻尾は縦横無尽に駆け巡ってなかなか捕まってくれない。



【むぅ……。逃げないでレキ君~】


「わふん」


「きゃあん」



 最終的には折れてくれるレキ君の尻尾を捕まえてもふもふしてから、手櫛でゆっくり梳いてあげる。

 毎日レキ君のマッサージ担当の人が専用の櫛でブラッシングしているので突っかかるようなこともなく滑らかに流れていくその毛先1本1本を堪能できる。

 レキ君の尻尾を梳きながらもクティが私の尻尾も梳いて~、と乱入してくるので存分に可愛がってあげる。


 クティの魔力で描く尻尾には触れることができないけれど、クティの髪はレキ君並、いやそれ以上のさわり心地だ。

 レキ君の尻尾を梳く振りをしつつもクティの髪をさわさわする。



【クティの髪はやっぱり気持ちいいなぁ……。世界で1番だよ】


「えへへ~。私もリリーに髪触れるの大好きだよぅ~。禿散らかしてもいいくら触りまくって~。えへへへへへ~」


【禿ちゃうのはだめだけど、クティの髪なら1日中触っていてもいいくらいだよぉ~】


「私もリリーになら年単位で触られていたいよ~」


「「えへへ~」」



 最後には一緒になって声に出してお互いの幸福を噛み締めあう。

 そんな幸せいっぱいの魔力の発露で覆われてしまっているレキ君ルームには少し距離をあけて控えているお婆様や専属がいるが、もちろん彼女達の表情は見なくてもわかる。


 暖かい慈愛に満ちたたくさんの視線に見守られながら今日もクティとの幸せな時間をたっぷりと過ごすのだった。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 ちなみにサニー先生はイチャラブタイムが始まるとそそくさと自分の勉強をしにいってしまう。

 前回の帰省時に色々もって来たらしく、授業がないときなどは本を読んでいたりする。

 その本なのだが、なんと自分にも見えるのだ。


 かなり分厚い本で装丁は革張りっぽい重厚な感じ。タイトルはなく、複雑な模様が入っている表紙だ。

 気になって1度、先生に見せて欲しいと言ったのだが断られた。

 今世で自分が読めるかもしれない始めての本なだけに大分後ろ髪を引かれるがしつこくするのも躊躇われる。


 サニー先生が意地悪でそんなことをするはずがないので、きっと何かしらの理由があるのだろう。



 禁書とか。発禁物とか。大人な絵本だとか。



 読んでいるサニー先生に変わった様子もないことから性的興奮を覚えるような本ではないのかもしれないが、先生の表情はいつにもまして真剣だ。



 まぁ先生は半眼無表情でいることも多いので上手に隠しているだけかもしれないけど。

 無表情のスペシャリストとしては見破ってやりたいところだけど、それはソレのご様子。なかなか難しい。

 魔力の流れも平常運転だし、やはり違うのかもしれない。


 タイトルもないのでまったくわからないが、博識な先生が読む本なのだから相当難しい本なのだろう。

 いつか読ませてほしい。


 そんなわけで最近の先生はイチャラブに突っ込みを入れるのではなく、静かに読書をしていることが多い。


 クティとのラブラブな時間を邪魔されないのはいいのだけど、なんだか物足りないと思ってしまうのはどうなんだろうか。

 先生の突っ込みが日常的に入っていたからだろう。


 クティも突っ込みが入るような行動の時はちょっと身構えて、でも何もこないのでサニー先生の方を見て口を尖らせていたりする。

 その尖った口を指でツンツンしてあげればすぐにご機嫌になったりするので今のところ問題はない。


 ただやっぱりサニー先生も含めてイチャラブな時間だったのでちょっと勝手が違うのも否めない。


 クティが我慢できない時は読書中の先生に突撃していって無理やり引きずりこんだりするけど、そういう場合はきちんと乗ってきてくれるのでサニー先生も嫌がっているわけではないようだ。


 むしろ普段の3倍増しくらいで打撃の威力が向上しているような気もするけど。

 もしかしてあの本は打撃技の本なのだろうか。

 武闘派研究員の先生っぽくて違和感がなさすぎる。



 今日も我慢できなかったクティによるボディプレスを受けた先生が、腰溜めにした拳を伸び上がるように捻りを加えて打ち上げる。

 燃えるような炎を全身に螺旋を描きながら多段ヒットしていくその様はまさに指を滑らせるように連打するLv1の16ヒットだった。



 どう頑張ってもLv1では16ヒット以上いけなかったなぁ、と遥か昔のように感じる記憶を思い出したのだった。



神龍拳!

ガードさせても削りまくれるという大好きなスパコンでしたね。


スティックで指を滑らせるようにボタンを連打するあの方法は自分が通っていたゲーセンで流行っていたやり方ですね。


気に入っていただけたら評価をして頂けると嬉しいです。

ご意見ご感想お待ちしております。


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