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濁った瞳のリリアンヌ  作者: 天界
第一部 第6章 3年目 中編 2歳
115/250

102,magic item


 魔道具職人は例外なく魔術師だ。

 魔術を魔片などの魔術を閉じ込める性質を持つ特殊な物質に封じ込めることにより、魔術の設定時間である詠唱を省き、魔力の消費を抑え、誰にでも簡単に魔術を扱えるようにしたものが魔道具だ。


 魔道具に封じられた魔術は全ての設定項目を埋められた状態で存在している。

 そのため誰が使っても同一の効果にしかならない。逆に言えば同じ効果を寸分違わず発揮できるということでもある。

 ただし、魔道具には回数制限が存在する。

 強力な手札となりうる魔術が誰にでも簡単にデメリットなしで扱えるわけがない。

 生活魔術などの日常生活を豊かにしてくれる類の魔術であってもこれは変わらない。

 魔道具は例外なく回数制限が存在するのだ。


 だがこの回数制限というものは魔術を封じ込める腕や魔術により大きく変わってしまう。

 もちろん魔術自体の設定でも大きく変わってしまう。

 その他にも封じる媒体である魔片の質や大きさなどでも変化する。


 魔道具とは様々な要素により、それこそ同じものは存在しないほど繊細な物なのだ。



 とはいっても、完全に同一の物はなくても大体似たような物なら作成できるので生活魔術を封じた魔道具は数多く生み出され、それこそオーベント王国では誰しも日常で使っているほどである。

 例えば明かりの魔道具。

 室内照明や街灯やランタンなど夜や暗闇ではなくてはならない魔道具だ。

 これにより所謂陽が昇ったら起き、陽が沈んだら寝る、というスタイルから夜通し起きて陽が昇ったら寝るというスタイルの人達が生まれ、生前の世界のような夜型人間なども数多く存在している。

 またこの明かりの魔道具は熱を発しない為、夜通しつけておいても火事になったりしないので非常に便利だったりする。

 安い物なら光量調節できず、夜に5時間くらい1巡り(週間)程度使っただけで使えなくなったりするが、それなりの物になると1月程度はずっとつけていても問題なかったり、光量調節が出来たりする。もちろん光量を上げればそれだけ消耗も早くなる。

 回数制限という言い方がこの辺の使用状況により変動するので微妙な言い回しだが、回数制限という言葉で存在するので仕方ない。


 その他にも生前の世界で必需品となっていたコンロや洗濯機や冷蔵庫なども魔道具として存在している。

 コンロは簡単な火の生活魔術を使った低威力の物が主流だが、大火力のそれこそ攻撃魔術に匹敵するくらいの物まであったりする。

 洗濯機は深めの桶に汚れ物と洗浄効果のある魔道具をいれ、使用するタイプが主流。

 生前の世界の箱型の物はないらしい。

 それでもそこそこの時間でかなり綺麗にしてくれる。もちろん高い物には手もみ洗い風とか特色を活かしたたくさんの洗濯方法を選択できる物まである。

 クリストフ家にあるのはそれプラス乾燥機の魔道具までついたタイプの巨大なやつらしい。

 是非1度見てみたい。


 冷蔵庫はあまり普及していない。

 氷の魔術で冷やした後に発生する水が問題となっているらしく、いまいち開発が進んでいない。

 だが利便性は高い為、排水設備を用意できる環境の家で且つ開発が進んでいない為、とても安価とはいえない金額を払える者のみ買っていくそうだ。

 まぁクリストフ家には当然ながら大型の冷蔵庫や小型の物まで色んなところに設置してあるらしい。

 外見は箱なので魔力は見えず、今まで発見できていないのも仕方ない。


 このように魔道具とこの世界――オーリオールの人々はきっても切り離せない関係にある。



 そして我がクリストフ家には魔道具工房が敷地内にある。


 それはクリストフ家が魔道具開発と販売で多大な利益をあげているためだ。

 宮廷魔術師である母のクレアは第2級魔術師だ。

 魔術師であるクレアは当然魔道具も作れる。

 しかも第2級というのはただでさえ少ない魔術師の中でも頂点に近い位置にいる稀有な存在だ。

 もちろん上には第1級や特級などがある。

 だが、広いオーベントでも第1級魔術師は片手で数えられるほどしか存在しない。

 リズヴァルト大陸全域を含めても両手両足で数えられるほどだ。


 特級に至ってはオーベントには存在しない。

 これはクティが建前上探している特級魔術師とは違う階級上の存在だ。

 なので自分がその候補であっても特に問題にはならない。



 ちなみにクリストフ家にはその広大な敷地面積を覆うように結界が張られている。

 クティ曰く2秒で侵入可能らしいが、それはクティだからだ。

 普通なら2秒どころか年単位の時間をかけても侵入できない強固な結界だそうだ。

 もちろんそんな時間をかければ毎日巡回しているクリストフ家の使用人兼文字通り番犬な皆様にさくっとさくさくされてしまう。


 異常なほど強固な結界だが、これもクティ曰く魔道具だ。

 クティがそういうならそうなのだが、クリストフ家は広大な敷地を誇っているほんとに街の中にある屋敷ですか、というレベルの家だ。

 そんな敷地の全てを結界が覆っているというのは信じがたい話だった。


 サニー先生の授業で習った2級までで使える結界では、数多くの小さい結界を繋いで巨大な結界とする魔術の魔道具を同時起動させているという結論に達する。

 クティが使える結界をまさかクリストフ家が魔道具として所持しているわけがないのでそういう結論になる。


 しかしそれは維持するのに尋常じゃない資金がいることになる。

 そこまでして敷地の全てを結界で覆う必要があるのか甚だ疑問だ。やるならせいぜい屋敷を覆う程度だろう。

 それでも馬鹿にならない額がかかるらしいが。



 そう、普通はそう考えるものだ。



 だがクリストフ家には普通じゃない人が若干名いる。

 魔王や勇者の類を敵に回せる人間が存在するのだ。

 そんなクリストフ家が普通の手段を使うわけがないのだ。



「ふふ……懐かしいわぁ。まだわたくしがじーじと出会う大分前かしら。

 迷宮で遊ぶのが楽しくて色々な迷宮に赴いたものよ」



 迷宮。

 魔物の母と呼ばれ、迷宮内で文字通り魔物は生まれる。

 そして迷宮内で魔物を倒すと魔片が手に入る。逆に迷宮内でしか魔片は手に入らない。

 テオが迷宮見学でお土産に魔片をプレゼントしてくれたので実物を持っているが、お婆様はどうやらお爺様と会う前に迷宮で遊んで(・・・)いたらしい。



「相当遊んでいたのだろうな。

 確か40年ほど前にリズヴァルト大陸の大迷宮がいくつか消滅させられた、と報告があったなぁ……」



 サニー先生が虚空を見つめながら、ポツリと呟いたのがやけに大きく聞こえた気がする。



「迷宮は魔物だからねぇ~。1番奥のところに迷宮の大きさに応じて魔片が設置されてるんだけど、大迷宮クラスになるとその魔片が魔片とは言えない様な巨大な物になるんだよねぇ。

 まさに魔石と呼ぶに相応しい物になるんだけど……。そういうので魔道具を作ると回数制限の桁がいくつか違ったり、魔術自体の質とかが極端に高性能になったりするんだよねぇ~」


【ということは……】


「質もコントロールして範囲と持続時間に絞った結果だろうねぇ。アレは」



 つまりお婆様が戯れで手に入れてきた魔石を使ってクリストフ家の結界は維持されているのだ。



 お婆様一体どれだけすごい魔石を取ってきたんだろう……。

 サニー先生が黄昏て、クティが呆れるくらいだから相当な大迷宮の魔石を手に入れてきたんだろう。ちょっと見てみたい。



「ふふ……。リリーちゃんがもっと大きくなったらね?」



 いつもののほほん笑顔が悪戯っぽい小悪魔な微笑になっていた。



 こんなお婆様……初めてです……。

 一体どんな魔石なんだ……。



 悪戯っぽい笑みなのに背筋を這い上がる悪寒にお婆様の恐ろしさを再確認した日だった。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 サニー先生とクティによる魔道具の復習とお婆様のすごさを思い知った日の翌日。

 ついに今日は魔道具工房見学の日だ。



 クリストフ家には魔道具工房がある。

 あるんだが、実は5つある。


 そう、1つではないのだ。

 5つ。


 普通は大きな街に1つあれば十分な規模の魔道具工房が5つ。

 しかもそのうちの3つはクリストフ家以外のオーベントの街にある魔道具工房よりも、規模が大きい。

 施設が巨大なのはもちろん質は当然オーベントの魔道具工房よりも良い。

 この場合の質とは魔術師のことだ。


 魔術師の質とは所持している階級が基本となる。

 クレアなら第2級。

 3級クラスになれば宮廷魔術師として召し抱えられるレベルだ。

 クリストフ家の魔道具工房に在籍している魔術師は全部で45名。

 その全てが第5級魔術師以上である。


 第5級クラスの魔術師は所謂中級魔術師と呼ばれる者達になる。

 これは魔術師の中でもという意味であり、一般人から見たらすでに超人の域にある。

 生活魔術はもちろん攻撃魔術も扱え、その一撃はまともに受けたら完全武装した騎士クラスでも即死しかねない威力を持つ。

 中級魔術師も第7級からと幅が広いがその中でもぎりぎり上級魔術師に足をかけているのが第5級魔術師だ。


 希少な上級魔術師達が国に仕えずクリストフ家の魔道具工房に在籍しているのは、その潤沢な資金と第2級魔術師であるクレアの存在が大きい。


 それなりに存在する宮廷魔術師や第1級の魔術師よりもクレアが有名な理由は当然魔闘演での活躍と、敷地を覆う巨大な結界魔道具の製作者であるからだ。


 そんな上級魔術師達の中でも上位に位置する魔術師達が在籍している工房が今日の見学先。


 お婆様とお爺様とテオとエリー。

 4人の専属全員と騎士団から3人。他のメンバーはすでに工房内のあちこちで目を光らせているらしい。


 この工房見学に1番反対していたエナはというと。



「さぁ、リリー。今日はずっと私の側を離れちゃだめだからね!」


「はぁ~い」



 最後の最後まで抵抗したエナが最終的な条件として提示したのが工房見学中エナの側を離れないことだった。




冷蔵庫の魔道具は溶けて出た水を再度冷やして氷に利用することにより解決できそうなところまできていますが、まだコストや構造なんかの問題で販売には至っていません。


エナ達がいつも使っている掃除道具も魔道具で、小さな雑巾の形でゴミを吸着し保持する機能がついています。

実はこれ非常に高価な魔道具だったりするのです。なので一般家庭では掃除はまだ普通に魔道具を使わず行われていたりします。


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