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濁った瞳のリリアンヌ  作者: 天界
第一部 第6章 3年目 中編 2歳
112/250

99,bouquet

 魔道具工房見学当日までに実はお婆様の誕生日がある。

 テオとエリーがお婆様に内緒で教えてくれたのだ。



「それでね。私達はお婆様にお花の飾りをプレゼントしようと思うの」


「でもね普通に花の飾りを作っても数日で枯れちゃうのが問題だと思ったんだ」


「ふふ……でもそこはもう解決済みなのよ。お花の状態を保ったまま半年くらい維持する魔道具があるの」


「これはお母様に頼んで宮廷魔術師のワリゼロンド様に特別に作っていただいたものなんだ。それでも手に持てるサイズの大きさで生花にしか効果がないんだって」


「それでも私達には十分だからね。半年もかかったらしいけどこれでお婆様に半年は保つ素敵な花飾りをプレゼントできるわ!」


「わわ、エリーだめだよ。声が大きいよ」


「あ、ごめん。そういうわけだから、リリーも手伝ってくれる?」


「あい!」


「ありがとう、リリー。リリーにはお婆様に花飾りをプレゼントする役目をお願いしたいんだ」


「引き受けてくれる?」


「あい。でも、おはにゃつくるのてつだうの」


「ほんと? じゃあ一緒に作りましょう」


「ボク達が手伝ってあげるから安心してね」


「あい、よろしくおねがいしましゅ」



 2人のお婆様への手作りプレゼント作戦に自分も一枚噛ませてもらえる運びになり、手渡すだけではなんなので作成も手伝わせてもらうことにした。

 此処のところ急に歯が揃い始め、滑舌が著しく改善されているのにまだ慣れていないせいか少し早口になったりすると噛んでしまう。まだまだ精進が足りないご様子だ。


 事前に兄姉はエナ達にも協力を頼んでいたようで、お婆様をどこかに連れ出してくれるらしい。

 その間にエリーが厳選してきた彼女の花壇の花をテオがまだ若いアシラの木を加工してもらったマイクのような形をした棒に刺して形を整えたら魔道具を起動させ完成だ。


 どうやら自分達が作るものはウェディングブーケのようなものらしい。

 だがこの世界の結婚式ではブーケトスのようなことはしない。

 最初から兄姉がプレゼントを渡す役目を自分にやらせるつもりだったのと状態固定の魔道具の性質の関係上この形にしたらしい。


 クレアの誕生日にアレクが渡したようなたくさんの花束では自分はもてないし、小さい花束では味気ない。

 なので事前申請の必要のある学校の図書館を利用してまでどういった形がいいか調べたそうだ。

 そこで見つけたのがこのウェディングブーケの形だ。


 まずマイクの形をしたブーケスタンドの持ち手の部分と先端の格子状の部分は加工したアシラの木で出来ているのでよくみえる。

 清々しいまでに清涼な滑らかな魔力の流れ。

 魔道具の素材に適しているのがよくわかる素直な流れだ。これなら力に一切逆らわず全てを淀みなく流してくれるだろう。

 魔片や魔片を加工した魔結晶などを剥き身で使用しても多少のロスが出る。

 そのロスを無くす為にそれに適した素材を一緒に加工したりすることにより、魔道具の性質を向上できたりもする。

 ロスしてマイナスになるどころかプラスにしてくれるのがアシラの木を代表とした魔道具に適した素材なのだ。


 ブーケスタンドのアシラの木の中には宮廷魔術師に頼んで作成してもらった状態固定の魔道具が仕込まれている。

 これをアシラの木で包んでいる為効果の永続を実現している。

 アシラの木自体は多種多様なプラス効果を齎すことが出来るが、それはひとえに加工法によるものだ。

 今回使用された加工法は効果永続の為の圧縮加工。

 アシラの木自体が軟質な為、圧密化させることにより強度と魔道具への永続効果を与える力を引き伸ばすやり方だ。

 実際にはもっと複雑な工程がいくつか絡むのだが、先生の話が長引きそうなのでまた今度ということになった。

 もちろんこれは授業ではなく雑談だからだ。


 エリーの用意した花とテオの用意したアシラの木のブーケスタンド。

 あとは花を刺して飾りつけ、魔道具を起動させるだけ。

 だが問題はやはり飾りつけだ。


 図書館にあったウェディングブーケの話は文字による記述であり、絵はなかったそうだ。

 エリーが懇意にしている花屋や職人達やテオの手伝いをしている庭師なんかにも色々と聞いて回ったらしいがウェディングブーケ自体を知らないのでなかなか難しかったようだ。


 それでもテオとエリーは学校で王子様、お姫様と呼ばれているのは伊達ではないようでその辺のセンスもかなりの物を持っている。

 毎日最高級品を身近で使っているんだ。感性の養われ方も常人の比ではないらしい。

 自分にはよくわからないところだ。


 アシラの木は魔力があるので見えるが、花は当然見えない。

 当然色もわかるわけもなく、自分はエリーの言う通りに花を設置していくだけだ。


 最初はオアシス――マイクの集音機部分のスポンジのような物――から広がるように葉付きの茎を設置して斜めに少し大きめのメインとなる花を設置。

 そこからサブの花材を斜めに配置し、横から見ると丸く繋がるようにしていく。


 なぜわかるかというと、そこは我らがちっこいさま。

 薄い魔力でオアシスに配置された花を精密に再現してくれるのだ。

 さすがに色まではわからないがそのおかげで花や茎、葉がどういった形角度で配置されていっているかがわかる。

 これは実際に見えていなければ難しい。自分が同じ事をやろうとしてもできないほどだ。

 ただこれはものすごく疲れるらしく、我らがちっこいさまでも小さな物にしか短時間でしか出来ないそうだ。

 ウェディングブーケの大きさは自分が持てるサイズなので非常に小さい。

 これでは部屋の調度品や部屋全体なんてとてもじゃないが無理だ。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 正面を埋めるように花と花材を配置したら次は全体を埋める作業に移る。

 花の配置は最初に刺した葉付きの茎から出ないようにしているらしい。よくわからないがエリーのこだわりのようだ。

 テオとエリーでこっちの色の方がいいとか、お婆様にはこっちよ、とか騒がしいくらいに賑やかに作業を続けていく。


 花や花材を配置し終えると、次はループリボンの設置だ。

 これは出来合いの物を買ってきたらしく、やり方も教わってきたそうなので手早く終わった。

 すでにちっこいさまは疲労困憊で限界らしく花も見えなくなっている。


 最後に問題がないか、綺麗に出来ているか、配色は万全か、色々と2人が確認して魔道具を起動させる段階までやってきた。



「さぁ、リリー。魔道具を起動させてブーケの状態を固定しましょう」


「この大役はリリーに任せるよ!」


「あい!」



 キラキラの瞳で若干重くなったブーケを手渡され、教えられた通りに魔道具を起動すべく起動イメージをアシラの木のスタンドの下部に設置されている結晶部分に触れて流し込む。


 魔道具の起動は本体となる魔片、魔結晶と直接繋がっている部分に触れて起動イメージを送り込むことにより起動する。

 この特注の状態固定の魔道具は当然認証を必要とするタイプの魔道具なので起動イメージを流し込むと認証が起動し、頭の中に認証要求が来るが教えられた通りに認証をすると起動するための準備が始まった。


 生活で使うような日用品の魔道具や戦闘で頻繁に使われるような魔道具にはこの起動準備時間がほとんどない。

 だが今回起動させた魔道具は特注品。

 複雑な魔術がいくつも封じられているらしく、起動に少し時間がかかる。

 ほんの少しの時間待つと魔道具が起動完了しアシラの木の魔力が活性化すると共に術式群が広がりその効果を増幅させて、オアシスに配置された全ての花と花材を包み込むように展開していく。


 包み込まれたウェディングブーケはその形をおぼろげに見せているが術式群がはっきりみえてしまうので綺麗とはちょっといえない。



「完成だよ、リリー! さすが、リリーだよ! 完璧だ!」


「ありがとう、リリー! あなたがいなかったら完成しなかったわ!」


「にーに、ねーね。よかたねえ」



 テオとエリーのいつもの大げさな兄姉馬鹿な物言いには慣れているのでスルーしておく。

 でもまだこれで終わりじゃない。


 自分にはお婆様にこの素敵な術式群……じゃなかったウェディングブーケを手渡す大役が残っているのだ。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 お婆様の誕生日はブーケの完成から2日後に盛大に催された。

 お爺様の時はそれほどでもなかったのだが、今回はお婆様の知名度的な問題だったのだろう。

 知らない人が何人も招待されていた。

 お婆様の知名度から何百人という単位かと思ったが数人だけが厳選されてやってきた。

 これは自分の為らしい。お婆様達が何ヶ月か前から調査を行い、そこではっきりと白だとわかった人のみが招待されたというわけだ。

 多少でも疑いが残るような者は例えその地位が高い者であっても断ったそうだ。

 まぁその調査のおかげで何人かが貴族の地位を剥奪されたらしいけど、それは別の話。


 その代わりものすごい数の贈り物が、招待されなかった人達から届いた。

 例え招待されずともお婆様の知名度というものは凄まじいもので、繋がりを得る為にたくさんの人達が贈り物をしてくるのだ。



 本日の主役であるお婆様だが、その腕には常に自分が居て招待された数人から祝福の言葉と共に自分のちょっとしたお披露目も行われた。

 主役はお婆様のはずなのにものすごく嬉しそうな顔で自慢げに紹介してくれるお婆様とお爺様に心の中で苦笑しつつも素直な子供を演じてみた。


 これはお婆様に事前に言われていたことで、紹介はするけど騎士や専属に挨拶した時のようなしっかりした態度ではなく、年相応の幼い態度を取って欲しいということだった。

 恥ずかしいくらいで特に異存はないので自分の保身の為にも演技をするのは吝かではない。

 むしろお婆様にそんなお願いをされたことの方がびっくりだった。


 たった2歳の幼女に幼い演技をしてくれと頼むのだから。


 まぁお婆様の言いたいことは非常によくわかる。潔白が証明されているとはいえ、自分のことを素直に明かす必要性はないのだ。



 挨拶やら紹介やらが終わると次は家族からのプレゼントタイムだ。

 まず最初に両親からドレスがプレゼントされたらしい。当然見えないのであとで着て貰おう。そうすれば見えるはずだ。

 続いて最後のはずのお爺様が跪いて指輪をプレゼントしていた。

 その姿はプロポーズをする時のような感じで、言葉もそれっぽいものだった。

 あの筋肉ダルマのお爺様からこんな気障な台詞が出てくるとは思いもよらなかったので順番を変えたことも忘れて呆然としてしまった。


 ちなみになぜ順番を変えたのかと思っていたら、どうやらトリは可愛い可愛い孫達に譲ってくれるらしい。


 プレゼントをし終えたお爺様がお婆様の隣で似合わないウインクをしてくるので、なんとなく気づいた。



 最後はテオ、エリー、自分の孫ーズだ。



 テオとエリーに挟まれるようにして、今日の為に特注された2歳児が着るようなドレスではない大人っぽいカクテルドレスのようなアフタヌーンドレスのようなシックな感じのフォーマルなドレスに手には3人で作った渾身のブーケ。


 ゆっくりと近づく自分達にお婆様は口元を両手で押さえて瞳の魔力はゆらゆらと揺れている。


 あと5歩くらいの距離でお婆様が両膝を突いて自分を出迎えてくれる。



「ばーば。おたんじょうびおめでとうございましゅ」


「「お誕生日おめでとうございます、お婆様!」」


「ありがとう、リリーちゃん、テオちゃん、エリーちゃん。ふふ……。とても綺麗ね」



 ブーケを受け取ったお婆様は今まで見たこともないような1番の笑顔を返してくれた。



「スタンドはボクのアシラの木で、花はエリーのだよ!

 リリーも一緒に作ってくれて、魔道具の起動もリリーがしたんだよ!」


「あらあらまぁまぁ、それは重要な役目をしたのねぇ。さすが、リリーちゃんねぇ~。

 ふふふ……。みんなの気持ちがこもったとても素敵なプレゼントだわ。今まで1番の最高の誕生日だわ」



 魔道具の起動はそんな大役ではない気がするけど、お婆様も兄姉も嬉しそうにしているし野暮なことはいいっこなしだ。


 一頻りブーケを堪能すると、片手で10歳と8歳の孫を抱え、もう片方でブーケと2歳の孫を抱えあげる。

 さすがは我らがお婆様。

 その見た目にはありえない豪快な力と繊細なタッチで柔らかく自分達を包み込んでくれる。

 抱え挙げられた時に周りからおぉ、と大きなどよめきが起こったがそこは最強のお婆様をよく知っている面々。

 すぐにどよめきも収まり暖かい拍手が大きなパーティホールを包み込んだ。



お婆様の誕生日でした。

一体お婆様はいくつになったんでしょうね。

おっと誰か来たようですね。


あ、ちょ……ごめんなさ……たs


次回は本編100話記念特別番外編です。



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