前へ目次 次へ 16/49 名のない寒がり 冬一番の寒がりが ほら、今日も僕らの傍に そいつは何をどうしても 暖かくはなれないんだ 何しろ姿がないからね 毛皮も身に纏えない だから誰かにくっつくけれど みんないそいそ離れてしまう だから 僕は時々 コートのボタン搔き合わせ 全身いっぱい抱き締めてやる するとそいつは喜んで ピンと張った清らかな想いを 僕に注いでくれるのさ 切ない香り漂わせても 芯はとびきり力強い そんな奴からの 心からの贈り物 そいつに名前はないけれど いつしか「北風」と呼ばれてる