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チャッカマン・オフロード  作者: 古川アモロ
第13章「身も蓋もないバイブルを焼き捨てる夜へ」
97/249

第97話 「シスターズ」



 パ――――――ン!

 パ――――――ン!!

 パンパ―――――ン!!



挿絵(By みてみん)



「おかえりなさいませー!」

「おめでとうございます、神父さま!!」

「お疲れ様です! イエー!」

    


 大歓声(だいかんせい)

 待ち受けていた6人の修道女が、いっせいにクラッカーを鳴らした。


 紙吹雪(かみふぶき)を浴びるルディ。

 マジにひっくり返るトラとフォックス。


「ありがとう、ヤエ、アルル、ステフ、セラス。それに運転お疲れさまだったね、レオ、ケイト」

 ひとりひとり名前を言いながら、ルディは車を降りる。

 

 どうやらそのうちの2人。

 レオとケイトが、トレーラーを夜通し運転していたらしい。



 ていうか、外は夜だ。

 もしかして、あれから24時間以上たって、次の日の夜か!?

 丸一日経過しているらしい。


 トレーラーが着いたのは教会。

 広い庭園のなかに、レンガ造りの教会が見える。



「こっちだ。来たまえ」

 先導(せんどう)して歩くルディが、ついて来いと教会に向かう。あとに続く6人の修道女、トラ、そしてフォックス……



挿絵(By みてみん)


 

 ズシ、ズシ。

 トラの足音だけが、やたら闇夜にやかましく響く。


「なあ、ここってアンタの教会なのか?」

「ああ。そして、今日から我々のアジトになる。君たちの部屋も用意させよう」

 

「ていうか、いま何日?」

「14日だ。君たち、丸1日寝ていたんだよ」


 門をくぐり、立木や植木のあふれる広い中庭をすすむ9人。


 やがて建物の全景が見えてきたが……これはまるで、トラが長靴に呪われた教会そっくりではないか。

「あーらら、ふるさとを思い出すぜ」

 いや3か月前までいた故郷ですけどね?

 懐かしがるトラ。



 一方、にぎやかな神父の周囲。 


『ここに戻ってくると、いつも神を身近に感じますね。ルディ神父』

「そうだな咲き銛」


 " ()(もり) " の(おだ)やかな声が、夜の闇にひびく。

 本当にルディと仲がいいらしい。

 ……アイテムが、人間と?


 そして(まわ)りを取り巻く、若い娘たち。 


「ね~神父さまぁ。レインショットの最期ってどんな感じでした?」

「思いっきり苦しめて殺してくださったんでしょ、キャー!」

皆さん(・・・)にメール送っときましたよ。もう返信がすごくて……」

「電話も鳴りっぱなしだったんですから~」


 キャピキャピ言いながら、ルディを取り巻いて歩く。一様(いちよう)に修道服を着ているが、この軽さはどうだ。

 

「てゆうかシーカは? 一緒じゃないんですか?」

「アンタ、シーカ好きね。どこがいいのアイツ」

「ねー、後ろの2人見て。なんか超、陰気臭(いんきくさ)いんだけど」



 後ろの2人……



 あとに続く、トラとフォックス。

 ズシズシズシ。

 トラの足音が石畳(いしだたみ)に響く。


「ねえ、オーナー。こりゃどうなってんすかね」

 ヒソヒソ。

「うーん。これはきっと、肉体オルグ(・・・・・)ってやつだな」

 ヒソヒソ。


「な、なんすかそれ」

 ヒソヒソ。

「宗教団体とか極左(きょくさ)団体がよくやる手だ。セックスを持ちかけて、入信をせまる勧誘方法だよ」

 ヒソヒソ。


「エッ!? じゃあ俺、もしかしてあのシスターたちに……怖い」

 ヒソヒソ。

「なんでうれしそうなんだ!」

 ヒソヒソ。


「あ、あんなことや、こんなことに。はぁ、はぁ、はぁ……」

「……トラ?」


「あっ、あっ、あっ。はーはー、はー、はー……」

「……だめだ、妄想モードに入っちまった」

 ぞっ。



挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)



「全部聞こえているんだがね!」

 ムッとした声で答えるルディ。

 聞こえていたらしい。

「彼女たちを侮辱(ぶじょく)することは許さん。いいかね」

 めっちゃ怖い声で怒る。



 対する、フォックスとトラの不真面目な態度。

「神父さん、タバコある?」

「お、俺はこのあとどんなスゴいことに……はぁ、はぁ、はぁ」

 まったく話を聞いていない。


「いい加減にしたまえ! トラくん、聞いてるのかね!」

 怒るルディ。


「そして、そして……ああもう、うっせぇな! 集中できやしねえ!」

 現実に戻ってくるトラ。

 妄想の世界から呼び戻されて、超不機嫌(ふきげん)なようだ。

「つーか神父さんさあ。ちょっといいスか?」


 トラはとつぜん(まゆ)をしかめ、女たちをかき分けてルディににじり寄る。

 ズシン!

 ズシンズシン!  

 ガン飛ばしまくり。

「ニニコどこにいんだよ? 助けてもらったことなんか、どうでもよくなってきたぜ。シーカの居場所も知ってんだろ、言えよ」

 ズシン!

 至近距離で(にら)みつける。


 いっせいに修道女が非難し始めた。


「なにこいつ! ねー神父さま、コイツなんなんです!」

「いまの聞いた? 助けてもらっといてバカだべ!?」

「超なれなれしいんだけど! こっち来ないでよ!」

「なにそのヨロイ! 長靴じゃん、だっさー」

「 " ()(もり) " 、こいつ黙らせてよ!」

「てゆーか、さっきからハァハァ言ってキモすぎ! こっち見ないでよ!」


 やいのやいの言うシスターたち。

 ひどく言葉が乱暴だ。

 ブッチ切れるトラ……


「ブ、ブ、ブチン! てめッ、もっぺん言ってみろ! 嫁に行けない体にされてーのかゴラァ!」

 ズシンズシンズシン!


「あッ、よせトラ!」

 叫ぶフォックス。


 だがその制止も間に合わず、トラは血走った眼で修道女に襲いかかる。まるで暴行魔……


「キャー!」

「こっち来た!」

「イヤぁ!」


 

挿絵(By みてみん)



『おやめなさい』

   

 バシ――――――ン!!

 咲き銛が槍を伸ばし、(ムチ)のごとくトラの頭を張り倒した。


「ほげ―――!!」

 うずくまるトラ。 

 ダンゴムシのように丸まった姿の小さいことよ。

「痛てええ! うおおおおおおおおおん!」

 


 こだまする悲鳴。

 女たちの歓声(かんせい)が上がる。


「わーい、いい気味! こいつザコすぎ。神父さまに勝てるわけないしぃ」

「いや……待って。こんな弱いヤツ、仲間にしてどうすんだ?」

「ぶっちゃけシーカくらい強いのかと思った」

「アンタ、ほんとシーカ()すね。なにがいいの?」

「え、カッコいいじゃん。マジで私、あれがタイプかも」

「わかる、超わかる! なんかアウトロ~って感じっしょ!」


 メチャクチャに罵倒(ばとう)される。

 いや罵倒どころか、もう誰もトラの話さえしていない。まだ頭を押さえて、うずくまっているというのに。


「うおおおおおおおおおおおおん、オーナー!」

 (くや)しくて泣くトラ。


 情けなさすぎて、フォックスは顔を(おお)う。

「アタシは情けない……」

 


()(もり)! 余計なことをするな!」

『お言葉ですがルディ神父! 私は彼女たちを守ろうと……』

 怒るルディ。

 弁解する、咲き銛。


「君たちもだ! 言葉を(つつし)みたまえ!」

「でも、でも、こいつがぁ」

 怒るルディ。

 弁解する6人の修道女。



 すぐそこに見える教会にたどり着いたのは、それから40分()ってからだった。



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終身刑の魔女より

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いま書いてるやつよ。





イタいぜ!



チャッカマン




マンガ版 チャッカマン・オフロード
 

 
i274608/

アニメーション制作:ちはや れいめい様



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