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チャッカマン・オフロード  作者: 古川アモロ
第13章「身も蓋もないバイブルを焼き捨てる夜へ」
96/249

第96話 「ベリーグッドナイト」



挿絵(By みてみん)



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 ドドドドドド……

 トレーラーは一路(いちろ)、大型道を東へ向かう。

 

 コンテナに詰めこまれたトラ、フォックス、そしてルディ。

 その内部は……すごい。

 

 コンテナの中は、まるで小さな教会だ。一番奥に(そな)えられた祭壇(さいだん)の前に、長椅子(いす)が並ぶ。

 その祭壇には蝋燭(ろうそく)が10本。

 

 ルディは手を組み、なにやらぶつぶつと祈りを捧げていた。ゆらゆらと揺らめく炎と、天井に設置された明かりが、煌々(こうこう)と鉄の部屋を照らす。


 くりかえすが、ここはトレーラーの中である。

 マジで何なのだろうか、この……移動式教会は?



 で、トラとフォックス。

 2人が長椅子に並んで座る。


「ねえねえ、オーナー。うふふ」

「……」

 フォックスに肩を寄せるトラ。

 逃げるフォックス。



挿絵(By みてみん)



「オーナーってば。うふふ」

 寄るトラ。


「……」

 (はし)っこに追いつめられるフォックス。

 やっと口を開いた。

「……なに?」


 トラが照れながら、ささやく。

「なんか……結婚式みたいですね」


 神父が(いの)りをささげる祭壇の前に、男女。

 たしかに結婚式のようだ。


 だがフォックスは、目も合わせずにつぶやく。

「葬式みたいだ」


 トラは意にも(かい)さない。

「オーナー、これで安心してできますね(・・・・・)。俺たち、その……いつします(・・・・・)?」

 もじもじ。

 照れながら、さっきの続きについて切り出す。

 こういうとこピュアな、かわいいトラ。


 ああ、楽しみだな。

 どんなスゴいことになるんだろう。

 うふふ。

   

 果てなく広がる、卑猥(ひわい)な妄想。

 そっとフォックスの肩に手をまわす。


 直後、トラの顔面にフォックスの籠手が叩きこまれた。


 ドガ!

「ぶげッ!」

     

 ボゴッ、バキャ!!

 

 タコ殴り……立て続けに()り出される、パンチパンチパンチ。

「ブッ死ね!!!」

「ぎゃ……やめ……なぜ……!」


 馬乗りになってトラを(なぐ)るフォックス。ボッコボコにされていく。やがてトラは意識を失った。 


 ルディはお祈りを中断し、フォックスを引きはがそうと(こころ)みた。

「やめたまえ! こ、こら。やめろ、やめないか!」


 全然やめないフォックス。

「死にさらせ!」

 ボグッ、ドガッ!


「……」

 気を失うトラ―――


「よさないか!」

 ついにルディが、フォックスを羽交(はが)()めにした。

 ようやく処刑は終わる。


「はぁ、はぁ、はぁ……」

「気が済んだかね、フォックスくん」


「はぁ、はぁ……ああ」

 汗をぬぐうフォックス。

 さんざん殴って、ようやく気が済んだらしい。


 トラは無残に、床に横たわる。

 死んだのか?



「トラくん、死んだんじゃあるまいね」

「知るか! アタシも寝る!」


 ぷんすか怒るフォックス。

 そのまま長椅子にごろんと寝転がった。


「ああ、そうしたまえ。着いたら起こしてあげるから」

 ふたたび祭壇に向かうルディ。

「おやすみ、私は祈りを続けるよ」



「……なあ」

「まだなにか?」


「このトレーラーなんなんだ? 教会みてえ」

「みたいじゃなくて教会だよ。僻地(へきち)や災害地に派遣(はけん)するためのね。移動用の教会だ」


「シーカは、あんたの連れなのか? ニニコ……妹が一緒にいるんだ」

「安心したまえ。シーカ君が、警察の捜査の(およ)ばない場所に(かくま)っているはずだ」



「……アタシ達、どこに向かってんだコレ」

「いいから寝たまえ」



「……ていうかこのトレーラー、誰が運転してんだ……?」

「寝たまえ」



 そう言ってルディはふたたび背を向け、祈りをささげはじめた。

 その後ろ姿を見ながら、フォックスの意識はだんだん薄れていった。



 おやすみフォックス。

 おやすみトラ。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 どのくらい時間がたったのか―――


 ギィイイイイイイイイイイィ!!

 トレーラーは、ブレーキ音を(きし)ませて停止した。グラリと荷台の2人に慣性(かんせい)がかかる。


 床に転がっていたトラが、停止の勢いでズズズと前方にすべり、ゴチンと頭を椅子の脚にぶつけた。


「ゴチン! アッ、()た! ……うーん、スヤ……」

 起きない。


 やれやれとルディが、トラをやさしく()する。

「着いたよ、起きたまえ」


「うー……ん」

 ようやく、むくりと上体を起こすトラ。その顔面は……かわいそうに、ボコボコではないか。

「ん……あれ? ここは?」



挿絵(By みてみん)



「起きたかね?」

「ぎゃあ―――!!」


 起き抜けに、30センチくらいの近距離でルディのガイコツ面。思わず叫ぶ。


「ギャアアアアア、化け物! あ、ああ……アンタか。悪い……」

 さすがに気まずいトラ。

 謝る。


「……いや、気にしていない。起きたまえ」

 完全に気にしているルディ。

 今度は、長椅子で眠るフォックスに近づく。

 

「フンガー、グー」

 (たか)イビキのフォックス。


「起きたまえ。着いたよ、フォックスくん。起きたまえ!」

 コンテナに響くルディの声。

 

 フォックスがじわじわと目を開き……やっぱり悲鳴をあげた。

「う……ん……うわっ、化け物!」

 長椅子から飛び起きる。

 いきなり目の前にドクロの仮面。 

 驚かないはずがない。

「お、おお………アンタか、ゴメン」

 頭をさすりながら起き上がるフォックス。

 謝る。


「……いや、気にしていない。起きたまえ」

 完全に気にしているルディ。



 と―――

 ガシャン、キイイイイ……



 荷台の扉が、外から開かれた。


 左右に開いた扉の向こうから……



 パ――――――ン!

 パ――――――ン!!

 パンパ――――――ン!!


「おかえりなさいませー!」

「おめでとうございます、神父さま!!」

「お疲れ様です!」



挿絵(By みてみん)



 大歓声(だいかんせい)

 待ち受けていた6人の修道女が、いっせいにクラッカーを鳴らす。

 

 紙吹雪(かみふぶき)を浴びるルディ。

 ひっくり返るトラとフォックス。


 なにこれ?



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終身刑の魔女より

 ↑

いま書いてるやつよ。





イタいぜ!



チャッカマン




マンガ版 チャッカマン・オフロード
 

 
i274608/

アニメーション制作:ちはや れいめい様



ぜひ、応援よろしくお願いします。
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