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チャッカマン・オフロード  作者: 古川アモロ
第12章「なす術もないパニックを焼き捨てる神の使いへ」
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第86話 「ネクストデイ」



 翌朝。


 ミサイル駆逐艦「かしはら」が、無残(むざん)な姿で海に浮かんでいた。

 周囲には、小型の船、船、船が集まっている。



 救助信号が発令されて、7時間が経過した。


 時刻は11時42分。

 艦橋(かんきょう)といわず、甲板といわず、艦上はメチャクチャだ。


 軍、海上警察の巡視艇(じゅんしてい)哨戒艇(しょうかいてい)が18隻、通報を受けて()けつけた。その上空を飛ぶヘリコプター15機……すべて警察のヘリだ。


 だが、マスコミのヘリコプターは1機も飛んでいない。

 これほどの事件にもかかわらず、1機も。



 海上―――



 “ かしはら ” の周辺を潜水(せんすい)していたダイバーが、海面に顔を出した。(くわ)えたレギュレーターを口から(はず)すや、哨戒艇に向かってさけぶ。


「発見した! 発見!」

 

 ダイバーは、海中から男の死体を(かか)えて戻ってきた。マリィが海に放りこんだ水兵のひとりだ。

 死んでいる。

 これで行方不明者は1人減り、死者は1人増えた。


 死者8名。

 行方不明者16名。

 重体者33名。

 重傷者16名。

 軽傷者57名。


 壊滅(かいめつ)状態である。



 かしはらの生存乗員は、すべてヘリコプターで基地に帰還させられた。艦に残っている乗組員はもういない。


 しかし……甲板には、数十名の人間がいる。


 彼らは「かしはら」の乗員ではない。事件後、はじめて艦にやってきた一団だ。


 いったい何者なのか。

 全員が潜水(せんすい)服のような、耐火(たいか)服のような……防護スーツを着ているではないか。

 放射線区域で活動するみたいな、全身防御の宇宙服に身を包んでいる。あわただしく、甲板のあちこちを動きまわる宇宙人たち。


 

 彼らが集めているのは、()義肢(ぎし)だ。


 甲板のいたるところに埋まる " ()義肢(ぎし) " のパーツを、ひとつひとつ、ほじくり(・・・・)出していく。


 ひとつ。

 またひとつ。

 パーツが逃げないよう慎重(しんちょう)に、慎重に―――数人がかりで慎重に、ジャッキや(てこ)を使って取り外しては、金庫に厳重に封印していく。

 

 わめきたてる、義肢ぎしのパーツ。


『やめろ……』

『背だ、背を……』

『放せ……』


 金庫に、仕舞(しま)われていく。



挿絵(By みてみん)



 ガシャン!


『出せ……』


 最後のパーツが封印された。

 うず高く()まれる金庫、金庫、金庫―――全部で150個。


 1金庫にひとつずつ、()義肢(ぎし)のパーツが閉じこめられた。



※ ※



「作業完了しました、エイプリル主任!」


 防護服のひとりが、別の防護服に声をかける。



「ごくろう。全員、スーツを脱いでくれ」

 

 主任(・・)の合図で、全員が宇宙服……いや、防護スーツを脱ぎだした。スーツの中から、(あせ)だくの男たちが姿を現す。


「あ゛―――! 暑っちい!」

「ふぅ、たまらねえや」

「汗びっしょりだ、倒れそうだぜ……」


 男たちは、つぎつぎと金庫のそばに防護服を脱ぎ捨てた。

 もちろん主任も脱ぐ。


「ふぅ……ああ、すごい日差しだな」

 40代後半くらいだろうか。

 ヘルメットの下から、白髪(しらが)の混じった壮年(そうねん)の男が顔を見せた。ぱらぱらと(あせ)が飛び散る。

「ようし、みんな休憩してくれ。金庫の搬出(はんしゅつ)は、下の連中にさせるからな」


 主任……以下、エイプリル主任と表記する。

 エイプリルが(うなが)すと同時に、汗だく連中はガヤガヤと艦内に向かった。



 残るエイプリルと、山積みの金庫。


 金庫のひとつひとつから、コツンコツンコツンと音が聞こえる。()義肢(ぎし)が、中から金庫をたたいているらしい。

 コツン、コツン、コツン。


「ふふ……」

 薄笑いをもらすエイプリル。

 髪をかき上げて、彼も艦内に向かう……その途中、立ち止まって足元を見た。


「んん? なんだ、この()げあとは?」

 


挿絵(By みてみん)



 ミサイル発射口の手前。約2平方メートルが黒こげになっているではないか。彼はその上に立っている。

「ん、んん~。たしか報告書の何ページ目かに……誰だっけ」


 空を見上げるエイプリル。

 快晴。


「ああ! 思い出した、サルガッソ! 沈没屋サルガッソだ! ふうむ、名前は知ってたけど、まさか女だったとはねえ……」

 

 しみじみ……



 と!

 バンバンバンバンバン!!!

 

 (わき)にぶら下げていたリボルバー拳銃を抜き、マリィの死に場所に向けて発砲するエイプリル! 

 一瞬で全弾を撃ちつくした。なんという早業(はやわざ)……甲板のあちこちに、弾丸がバシバシと()ね返る。


 ガキン!

 ジャラジャラ、ガキン!

 すかさず弾丸5発を再装填(そうてん)した。

 わずか2.8秒!



 銃声を聞きつけた男が2人、ばたばたと甲板に戻ってきた。

「なんだ!?」

「なんの音だ……!?」

 

 彼らが見たものは、床に拳銃を向けるエイプリルの姿……


「しゅ、主任!」


 声に反応したのか、エイプリルは銃口を彼らに向けた!

 ジャキン!


「うわ!」

「ぎゃあ!」



「おっと! ゴメン!」

 あわてて銃を下ろす。

「ごめんごめん、思わず撃ってしまったよ。まったく “ オーパーツ ” のこととなると、僕はダメだなあ」

 何度も彼らに()びながら、拳銃をホルスターに仕舞うエイプリル。腰を抜かす2人に、すまなそうに手を差し出した。


「いやあ、本当にゴメンゴメン……いかんいかん、全弾()ってしまったな」



挿絵(By みてみん)



「また『魔王さま(・・・・)』に怒られてしまうなあ」



 風が出てきたらしい。

 波が高くなってきた。

 キラキラと海面に日差しが反射する。



 ……魔王さま?



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終身刑の魔女より

 ↑

いま書いてるやつよ。





イタいぜ!



チャッカマン




マンガ版 チャッカマン・オフロード
 

 
i274608/

アニメーション制作:ちはや れいめい様



ぜひ、応援よろしくお願いします。
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