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チャッカマン・オフロード  作者: 古川アモロ
第11章「一点の穢れもないマリィを焼き捨てる炎へ」
84/249

第84話 「レインショット」



挿絵(By みてみん)



「ぎょえ!」

 飛び上がるトラ。

 

 空気を引き裂くような高音を(かな)でながら、3発のミサイルがこちらに飛んでくる。

 

「ははははは……なんじゃ、そら」

 べたんと(しり)もちをついた。

 もう動く気力もない。

 いや、動けたとしてもどうしろってんだ。

「だめだ、こりゃ……」



 (せま)るミサイル。

 瞬間!




 ドオオオオオオオオオオオオオオン!

 ドオオオオオオオオオオオオオオン!

 ドオオオオオオオオオオオオオオン!!



挿絵(By みてみん)



 艦に衝突する数十メートル手前で、ミサイルは自爆した。

 いや自爆ではない。


 爆風――――――

 海上が、昼のような明るさに照らされる。


 ミサイルの破片が、何百何千と降りそそぐ。幾億(いくおく)の火の()……

 

 

 トラがデッキを見上げる。

 司令室から3発の炎の矢が撃ちだされ、ミサイルを爆破した。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 司令室内部―――


 水兵たちが押し黙っている。

 言葉が、出てこない。


 全員が、窓の外―――ミサイルの大爆発の様子をながめている。呆然(ぼうぜん)……


 いやひとりだけ。

 コンピューターの画面を(いま)々しく(にら)む、背の高い水兵がいる。とつぜん彼は、キーボードを床に投げつけた。


 バアン!

 バラバラに砕ける鍵盤(けんばん)


「ふー、ふー……大尉(たいい)、やはり動きません。速射砲も近接防御砲(シウス)も、対空ミサイルもです……!」

 怒りをこらえようともせず、水兵は吐き捨てる。


「ウィルスです。なんらかのコンピューターウィルスに感染しています。迎撃(げいげき)システムがダウンしています……くそったれ!」

 ガシャア!

 足元の機材を蹴りとばした。



 大尉と呼ばれた中年の将校(しょうこう)は、彼の行動をいさめることもせずに、ため息をもらす。

「ふぅ……なんにせよ助かりました、博士。あなたがいなければ、我々は()()みじんでした」


 おそろしい声。

 そして大尉は、フォックスの右腕を指さした。


「ところで……それ(・・)は何ですか? 博士」



挿絵(By みてみん)



 ヒョオオオオオオオ……

 割れた窓から風が吹きこみ、(きわ)に立つフォックスの体を()らした。


 まっすぐに水平線に向けて籠手を伸ばしたまま、彼女は動かない。


 雨が弱まってきた。

 西の空から雨雲が晴れ、月がのぞく。

 東の空から、日がのぼり始めた。


 雨が、止んだ。



 大尉が、今度は強い口調でたずねる。


「博士。さっきの炎は何ですか?」



「フォ……お姉さま……」

 おそるおそる、ニニコが声をかける。お姉さま、と。



 反応がない。

 周囲を取り囲む水兵たちも、目の前で起こった事態に言葉を失っていた。


 博士が右手から炎を放ち……ミサイルを撃ち落とした。

 なんだ、そりゃ……?



 数秒、数十秒の沈黙。

「いまのはですね……レインショット(・・・・・・・)です」


 そこにいる全員に背を向けたまま、フォックスは答える。


「さっきの炎の名前はですね、レインショットです。雨を打ち消すんです、シャレてるでしょう?」

 ガシャンと籠手を下ろし、振り返る。


「なんちゃって……」



挿絵(By みてみん)



 炎に包まれるフォックス。

 いや燃えたのは、彼女の服。


 右腕から拡散した炎によって、彼女の服が焼けて……焼けてしまった。  


「大尉。お願いがあるんです」

 振り返ったその顔は……泣いているのか? いや、雨に()れているだけなのか……やさしく微笑(ほほ)んでいる。笑みを大尉に向ける。



「ジョンソン少佐を殺させて」


 微笑んだその顔を、ニニコに向けた。


「……なあんちゃって」

 


 なにも答えないニニコ。

 なにも答えない海兵たち。



 朝が、完全に明けた―――



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終身刑の魔女より

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いま書いてるやつよ。





イタいぜ!



チャッカマン




マンガ版 チャッカマン・オフロード
 

 
i274608/

アニメーション制作:ちはや れいめい様



ぜひ、応援よろしくお願いします。
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