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チャッカマン・オフロード  作者: 古川アモロ
第10章「恥も外聞もないトリップを焼き捨てる馬鹿者たちへ」
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第80話 「エンジェル」



「ああああああああああ!」

 炎に向かって駆け出したニニコ。

 


挿絵(By みてみん)



「行くな!」

 阻止(そし)するフォックス。

 がばりと身を起こし、ニニコの腰に手をまわした。激痛―――


「うー! うー! は、はなして!」

「ぎいい、い……は、離すか!」

 暴れるニニコ。

 取り押さえるフォックス。死ぬほどの痛みに襲われる。


「なん、なんで……? なんで、こんな簡単に殺せるの……?」

 嗚咽(おえつ)



   そこへ―――


   戻って来やがった。



「ニャハハハハ! レベッカ見ぃつけたあ」

 マリィが戻ってきやがった。

 高笑い。

「なに泣いてるの、レベッカ(・・・・)? フゥとケンカでもしたの?」


 割れた窓から再び、マリィは司令室に戻ってきた。大量の雨水を(まと)った()義肢(ぎし)が、ジャブジャブと波を打つ。

 巨大な、水の腕……



挿絵(By みてみん)



 飛び上がるニニコ。

「ひぃ! 生きてる!?」 

 逆にフォックスにしがみついた。


 目を疑うフォックス。

 マリィの生還に、声を()まらせる。

 そして、耳も疑った。

「マ……マリィ、生きて…………レベッカ、だと?」

 

 レベッカ、だと?



「ニャハハハ!」

 けたたましく笑うマリィ。

 だがその顔はとても優しい。狂気のような笑い声からは想像もつかないような、優しい顔で2人にほほ笑む。

「ニャハハ……ただいま、レベッカ」



 窓から吹きこむ雨、風。

 廊下から流れこむ熱、煙。

 どうにかなってしまいそうな温度、湿度―――


 ぶわりとひろがる美しい水の(つばさ)に、蛍光灯の光がきらきらと反射する。羽衣(はごろも)のようだ。


「ニャハハ……暑いですねえ」

 

 ばしゃ、ばしゃ。

 マリィが2人に近づいてくる。じゃぶじゃぶと水音をたてる翼、いや()義肢(ぎし)



「ひ……ひ……」

 ニニコの(おび)えかたはひどい。こ、殺される―――


 だがマリィは、にっこりとほほ笑んで2人を素通(すどお)りした。そのまま、煙の立ちのぼる通路へむかう。

 つかつか。

 じゃぶじゃぶ。


「ちょ……マリィ!」

「どこへ!?」

 (さけ)ぶフォックスとニニコ。


「お姉ちゃんに(まか)せなさい!」

 自信満々に答えるマリィは、炎の中に突入した。



 その直後……


 ジュウウウウウウウウウウウ!!



 すさまじい勢いで湯気が廊下に発生し、司令室いっぱいに水蒸気が流れこむ。やがて、ごうごうと(たけ)っていた炎が小さくなってゆき、完全に消えた。


「フゥ! レベッカ! 大変です、生きてますよ。みんな生きてますよ!」

 通路の向こうで叫ぶ、マリィの声――――――



挿絵(By みてみん)



 姿こそ見えないが、男たちの声が聞こえてくる。


「うう……」

「い、痛え……」

「が、ああ……」


 弱々しいうめき声。

 だが、間違いなく海兵たちは生きている!


 フォックスとニニコが安堵したのもつかの間……



「えれえことです、フゥ!」

 タッタッタッタ!

 マリィが大慌(おおあわ)てで戻ってきた。


 ()義肢(ぎし)を包んでいた大量の水が、無い。(はだか)になったアームが、がしゃがしゃと音を立てる。


フゥ(・・)! 全員生きてましたよ。村のみんな(・・・・・)が生きてます、あなたの両親も生きてましたよ!」

 ダッシュ。

 全速力で、ニニコの前にやって来た。



「ヒー!」

 逃げようとしたニニコだったが、あっさり捕まってしまう。そしてマリィに抱きしめられた。

「離して! ワーワー、ギャーギャー」

 半狂乱……


 抱きしめられた。

 とてつもなくやさしく、強く。



「フゥ、みんなが生きてます。よかった……」

 フォックスの名を呼びながら、ニニコを抱きしめるマリィ。

 ニニコを、だ。 

 そして。

 ……そしてマリィは、フォックスを抱きしめた。

レベッカ(・・・・)。パパもママも生きてましたよ。よかった……よかった……」

 

 フォックスを抱きしめるマリィ。

 “ レベッカ ” の名を呼びながら、フォックスを抱きしめる。


 フォックスの困惑はひどい。意味不明―――


「マリィ……なに言ってんだよ。レベッカは……あんたの妹は……殺されたろ。ちょっと待て、レベッカ? アタシのどこが(・・・・・・・)レベッカだよ?」

 


挿絵(By みてみん)



「あ……フォックス……ガソリンが……」


 ニニコが小さな声で訴える。

 その体が、(かわ)いていく。

 体中を(ひた)していたガソリンが、重力を無視するように()義肢(ぎし)に集まりだした。


「あ……」

 フォックスも同様。

 体を(ひた)していたガソリンが、どんどんと渇いていく。

 もう、まったく濡れていない。


 肌も、髪も、衣服も、床も、ガソリンに濡れているところはもう存在しない。


 ()義肢(ぎし)

 水な義肢の表面に集まっていく。

 水な義肢に、ガソリンの(まく)が出来た。



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終身刑の魔女より

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いま書いてるやつよ。





イタいぜ!



チャッカマン




マンガ版 チャッカマン・オフロード
 

 
i274608/

アニメーション制作:ちはや れいめい様



ぜひ、応援よろしくお願いします。
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