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チャッカマン・オフロード  作者: 古川アモロ
第10章「恥も外聞もないトリップを焼き捨てる馬鹿者たちへ」
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第79話 「ロックオン」



挿絵(By みてみん)



 司令室に、いまごろやってきたレインショット。


 いままで、どこにいやがったのか?

 ふらふらと憔悴(しょうすい)した様子で歩み寄ってくる。

 

「ふ、ふふふ、ふふ……そうら!」

 ポリタンクのキャップを外し、2人に投げつけた。


 バシャアアアアアアアアア!



「きゃあ!」

「ぶ……! て、てめえ……!」 

 

 放り投げられたポリタンクは、中の液体を()き散らして、彼女たちの手前でバウンドした。

 ずぶぬれになる2人。

 その鼻をつくにおいに、ニニコがおののく。


 こ、このにおいは……フォックスが、体中を(ひた)す液体の正体に気づいた。最悪の予想が的中―――


「ガ、ソリン……やっぱな……くそったれ」

 

 ガコン!

 (カラ)になったポリタンクが、ごろごろと転がって倒れた。



 レインショットは2人に目もむけず、床になにか(・・・)を置いてしゃがみこんだ。薄い板のようなもの……タッチパネルのタブレットだ。

 (ふる)える手でケーブルをつなぎ、反対側を巨大な機材のひとつに差している。


 手前のモニターが、パッと別の画面に切り替わった。



 ガソリンまみれのニニコが叫ぶ。

 悲痛な声で!

「な、なにをしてるの……ねぇ!」


「うごくな!」

 ジャッ!

 拳銃を取り出したレインショット。


 飛びかかろうとしたニニコだったが、銃口を向けられ硬直(こうちょく)する。


「ひ……」

 こ、この人、正気なの……?



 ガソリンまみれのフォックス。

「レ……レインショット……」



「ジョンソン少佐だ! 何度言わせる!」


 フォックスの呼びかけに(ここでの記載は、以降もレインショットで統一する)、レインショットは怒鳴(どな)り返した。

「ふ、ふ……君のことだ。自分の命と引きかえにしてでも、わ、私を焼き殺しかねんからな……だ、だがニニコちゃんを巻き()えには出来んだろう? ふ、ふ」



「さあ、どうかな……ニニコ、動くなよ。あいつはマジで撃つぞ」


「う、う……」

 マジで撃つぞの言葉に、ニニコは行くことも引くこともできずにいる。ただ、自分に向けられた銃口におびえている。

 


 銃をニニコに向けたままタブレットを操作する、器用なレインショット。すいすいと動かす指に合わせ、司令室のモニターすべてが、おなじスクロールをする。


「ふ、ふふ、ふふ……ま、まさかサルガッソを殺すとはね。な、なんの役にも立たん女だった……くそったれが!」

 画面が切り替わる。

「お、おかげで、自分の手でこの船を沈めなくてはならなくなった……ハイドランジアも失った。組織の連中になんと言えばいい……? 今まで貯めた金をすべて吐き出さねば、私は殺される! 最悪だ!」


 レインショットにはもう、まったく余裕がないらしい。

 顔中汗だくになり、まるで10才も()けたように見える。



 いや……

 自分の手で沈める(・・・)―――?


「どういう意味、だ……沈める、だと……」

 ばしゃ、とガソリンまみれの床を(たた)き、籠手を持ち上げるフォックス。



「おっと! バカなことはよせ。ふ、ふ、ヘ、ヘ……で、できたぞ……!」


 できた、とレインショットが(つぶや)いた数秒後。スピーカーから機械の音声が流れる。

 ノイズ混じりの、恐ろしい音声。



《ザザザ……インストールブロックを解除します。よろしいですか?》 

「ふ、っふふふ」


《ウィルスを検知しました。インストールを続行しますか?》

「ふ、ふふふ」


《ザザ……プログラムを実行しますか?》

「やかましい! さっさと実行しろ!」

 

《コードFC21承認。M3垂直発射システム、良》

 ザザ。


《第1VLS、1号、2号、3号発射準備、良》

 ザザッ、ザザ。


艦対艦(かんたいかん)ミサイルDD、高空巡航射撃、良。誘導射撃、良》

 ザザザ。


《 目標 “ かしはら ” 、良 》

 ザザ。



挿絵(By みてみん)



「は、はははは、ははは」

「てめ……アホか!」

 狂ったように笑うレインショット。

 怒号を上げるフォックス。



「は、ははは……さようなら。ふたりとも」

 ひゅうひゅうと息を荒げるレインショット。強引にケーブルを引き抜き、タブレットをつかんで出口へ後ずさる。


 そのまま、彼は走り去った。


  

 司令室に残されるフォックスとニニコ。

 


「え……? え……? フォックス……」

 きょろきょろするニニコ。

 意味が分からない、なにが起こっているのか―――


「ぐ……マ、マジかよ……」

 苦痛に顔をゆがめ、フォックスがなんとか立とうと身をよじる。立てない。


「ニニコ……ミサイルだ……」

「え……?」


SSM(ハルバード)SLCM(フランキスカ)か知らねえが、レインショットの野郎、対艦ミサイルの発射スイッチを押しやがった……そいつが、ブーメランみたく戻ってきやがる」

「え……」


「この艦を、ぶっ飛ばす気だ……」


 ゾッ……

 ニニコの表情が凍りつく。



「ニニコ……廊下(ろうか)に、ここの将官が倒れてるはずだ。起こして来い……いますぐミサイルの発射を止めねえと……」

「で、でもフォックス……入口が……」


「あ? ……!!! マジかよ……」



 炎。

 通路に、めらめらと炎がきらめいている。


 ごうごうと(たけ)る炎が、司令室の真ん中からも見える。


 ガソリンまみれの体で、もう廊下に出ることはかなわない。いや、この吐き気を(もよお)すようなにおい。猛烈な肉の()(くさ)さ。


 なにが燃えているのか。

 艦長ら、海兵たちが燃えている……はずだ。


「あ、あ、あ……」

「信じらんねえぜ……」


 気を失いそうになるニニコ。

 だが、すぐさま炎に向かって駆け出した。


「ああああああああああ!」 

「行くな!」



挿絵(By みてみん)



 制止するフォックス。

 どこにそんな力が……



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終身刑の魔女より

 ↑

いま書いてるやつよ。





イタいぜ!



チャッカマン




マンガ版 チャッカマン・オフロード
 

 
i274608/

アニメーション制作:ちはや れいめい様



ぜひ、応援よろしくお願いします。
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