第77話 「リピート ファースト エピソード」
「ああああああああっしゃあああ!!」
ズッドオオオオオン!!
「火のッ、用――――――心!!」
ズウウウウウウウウウウウウウウウウウウン!
甲板が揺れる。
ズシン!
ズシン!
ズシン!
マリィの目の前に、長靴。
……トラが現れた。
「オーマイガッ! ライブで燃えてんじゃねえか!」
叫ぶ。
「要救助者を発見! ちきしょうめ、俺しかいねえ! ぬええええええええええい!」
奇怪なかけ声とともに、トラはマリィの体を持ち上げた。
「ま……待ってくださ、うぎゃアッ!」
甲板にコゲついていた腹の皮膚が、ベリィと剥がれる。
「ひいいいいいいいいい!」
痛みに身をよじるマリィ。
灼熱地獄から解放されたが、まだ地獄は終わっていない。
「ハー、ハー! お、重い。しっかりしろ! もう心配ないぞ」
マリィを抱え、ずんずんと進むトラ。
ジャラジャラと引きずられる水な義肢。
意味不明の事態に、マリィがゆっくりと口を開く。
「な、なにを……なんのマネ、ですか……」
「俺はサウスキティ消防組合のバイトだ! 火の用心!」
「……いえ、何をしてるんですか……?」
「救助だ! 火の用心!」
トラは真剣そのもの。
やりたい放題だ。
マリィは激痛で動けない。
されるがままだ。
「……なぜ、私を、助けるんです?」
「ハァ、ハァ……話すと長い!」
「……そう言わずに」
「火元で消火活動に加わろうとしたら、ハァハァ、もう鎮火のメドは立った、邪魔だからあっちいけと、ハァハァ、言われて、し、仕方ないから、ハァハァ、いつもの巡回コースを、ハァハァ、回ってたら、タカのやつが橋を迂回しろとか、ハァ、ハァ!」
「……全然わからないんですけど……ああ、なるほど……まだハイド、ランジアが……」
まだハイドランジアの効果が抜けていないらしい。
フォックスと初めて会った日の記憶と、混同しているようだ。
そのとき―――
サアアアアアアアアア……
「おお、雨……!」
「!」
2人が空を見上げる。
雨。
雨が降ってきた。
ジャアアアアアアアアアアアアア!
焼けた甲板に水滴が降りそそぎ、蒸気が立ちこめる。
「よかった! これで火が消えるぜ」
喜ぶトラ。
「……よかった。これで、水な義肢の本領が発揮できます」
喜ぶマリィ。
ずるずると引きずられる水な義肢に、水滴が集まりだした。




