表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チャッカマン・オフロード  作者: 古川アモロ
第10章「恥も外聞もないトリップを焼き捨てる馬鹿者たちへ」
74/249

第74話 「クラッシュ」



「う! い、イヤ……あ、あぶ、う、ぷはッ! ぷぺッ、ぺ……」

 小さな口に、()義肢(ぎし)(つめ)のひとつを突っこまれた。



挿絵(By みてみん)



 口内に広がる鉄のにおい。

 にちゃにちゃと歯にまとわりつく血を、何度も吐きだそうと()きこむ。だが爪はがっしりと固定され、口から離れない。

 懸命(けんめい)に首を振る。

 痛い、痛い……!

 

「ケヘン! ゲふぇ……は、はにを……!」

 目に涙をため、爪から逃れようとニニコは(あば)れる……でも逃げられない。猛烈(もうれつ)な吐き気。

 胃液が逆流する。

「ごろじてやる……」


「あはははは。せっかく()いてあげたのに、また血だらけになりましたねえ」


「じ……じで! 死で……!」

「ママに逆らうからよ。ムカつく……!!」



   と――――――



※ ※



「博士!」

「動かないで下さい!」

「博士、止まりなさい!」


   出口の向こう。

   水兵が大声で叫んでいる。

   博士、と。



「博士! どこかへ行きなさい、殺しますよ!」

「クソッ! お母さま(・・・・)の抹殺命令は乗員にだけだ。撃てねえぞ」

「構うか、構うかよ! オレは誰!?」


 司令室のそとで、男たちが叫んでいる。



※ ※



「? な、なんです。一体……?」


 ニニコをいじめて(うす)ら笑っていたマリィが、声のするほうへ首を向けた。


 通路の向こうから……なにが起こっているのか?

 (さわ)ぎまくる男たちの声がする。


「なに……?」


 (さわ)がしいですねえ。

 何事でしょう。

 さっきの彼ら、なにをモタモタしているんでしょうか?


 待って。

 ……博士?


 フゥじゃないでしょうね。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 

「博士! ここは通しませんぞ!」

「どうしてもってんなら、俺を倒せ!」


 司令室に面するせまい通路で、フォックスは水兵らに行く手を(はば)まれていた。

 


「どいていただけますこと? 急ぎますの」


 フォックスは白衣を左手にぶら下げ……いや、なにか(・・・)を包んでいるらしい。白衣を風呂敷(ふろしき)のように使い、なにかを包んで持ってきた。


 ゴミ箱くらいの大きさの、重そうななにか……



「博士! それはなんです、こちらによこしなさい! ギャハハ!」

「早くしろ、中身はなんだ! 見せたら撃つぞ。あ、ちがう。見せなかったら撃たないぞ、いや」


 屈強(くっきょう)な大男たちが、殺すの殺さないのと異常な目つきで近づいてくる。明らかに、ハイドランジアのトリップ状態だ。

 フォックスは(ひる)むこともなく一歩踏み出し、つぶやいた。



「ここにいる野郎どもの、アゴはどこだ?」



  『あっち』

  『ここ……』

  『そこ……』



 バキバキバキバキバキバキバキバキバキ!


  「ぐぎゃ!」

  「ゴァ!」

  「ギャ……!」


 バキバキバキバキバキバキバキバキバキ!



挿絵(By みてみん)



 目にもとまらぬ速さ!

" 焼き籠手 " が水兵たちのアゴに、右ストレートを見舞う。完全にオートの動作……まるでヘビー級のボクサーのパンチだ。それが30連撃!


 ブっ飛ばされた海兵たちが、バンバンと壁にたたきつけられた。みな一撃で倒され、床に折り重なる。

 10秒もしないうちに、全員をノックアウトしてしまった。

 

 もう立ちはだかる敵はいない。


 いざ―――司令室のなかへと踏みこむフォックス。



 その目に、マリィの姿をとらえた。

 その目に、()義肢(ぎし)に拷問されるニニコの姿をとらえた。


「よう、サルガッソ」


 ()し殺すような声で、フォックスがつぶやく。

 悪魔のように冷たい声。


 右手の籠手が、ガシャリと震える。

 左手の白衣の包みが、ガシャリと震えた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


終身刑の魔女より

 ↑

いま書いてるやつよ。





イタいぜ!



チャッカマン




マンガ版 チャッカマン・オフロード
 

 
i274608/

アニメーション制作:ちはや れいめい様



ぜひ、応援よろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ