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チャッカマン・オフロード  作者: 古川アモロ
第8章「しょうもないミッションを焼き捨てる北狐へ」
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第61話 「カミング スーン」



 ズシン、ズシン!

 (せま)く長いミサイル艦の通路に、長靴の振動がひびく。


「やれやれ……一服(いっぷく)するのもひと苦労だぜ」

 

 当然ながら、艦内はどこでも喫煙(きつえん)可能というわけではない。喫煙所が3か所に(もう)けられており、そこ以外でのタバコの使用は厳禁となっている。

 現在地からもっとも近い喫煙ルームは、船体左部の第2甲板(かんぱん)にある。 


 そこまで足を運ぶついでだ。

 トラは第1甲板に出て、外の空気を吸いたくなった。





 ぜんっぜん話に関係ないので、さらっと読んでほしい。

 船のフロアについて説明しよう。


 通常「甲板」と言えば、外から見える「第1甲板」をイメージするだろう。

 その下にいくにつれて「第2甲板」「第3甲板」と、船底へいくほど数字が増える。


 そう。

 外から見えない、内部のフロアのことも甲板と呼ぶのだ。

 知ってた?


 ややこしいのは艦橋(かんきょう)構造物とよばれる、第1甲板に建てられた(とう)だ。

 ビルみたいな構造になっているのだが、1階部分は、さっきも言った通り「第1甲板」。

 じゃあ2階はというと「01甲板」。

 3階を「02甲板」という。

 ややこしいでしょ?


 とりあえずトラはいま、あえて遠回りして第一甲板(船の外)に出ようとしている。





「ふあ……うお、暗いな」


 ハッチを開けて外にでると、空も海も真っ暗だった。海風がトラを包み、ばさばさと髪を揺らす。


 直角に等しい船壁を見上げると、真っ黒にそびえるブリッジのあちこちに赤いライトが(とも)っていた。まるで鉄の化け物のように、しいんと(たたず)んでいる。

 聞こえるのは猛烈なエンジン音と、はるか遠くで無線機で通信する水兵の声だけだ。



挿絵(By みてみん)



 当然ながら甲板には、夜であろうと見張(みは)りの水兵が何人も任務についている。


「よう」

「おう、学生。散歩か?」

 すれ違う途中に声をかけられ、簡単にあいさつを返した。


「あ、こんばんわっス。お疲れさまス」 

 ガンガンと甲板を鳴らし、船体を右から左へと歩いて横切る。


 真っ暗な海。

 とにかく不気味でおそろしい。


 よくこの艦の乗員たちは平気なものだ、とトラは思う。

 自分は絶対、海兵にはなれないな。泳げねえし。薄気味悪いったらねえや……ちょっと待って。


 ちょっと待ってくれ。


「なんだありゃ……」


 なにげなく(なが)めた海上に、信じられないものを見た。



 水面に、人間が立っている。

  


「……うそ、だろ?」


 海の上を、巨大な腕の人間が(・・・・・・・・)歩いている。

 (いな)


 “ 巨大な腕を使って ” 海上を歩いている。


 真っ暗な海……そいつ(・・・)の姿は、シルエットしかわからない。


 

 トラは子供のころテレビで見た、手長猿(テナガザル)の芸を思い出した。

 その腕はサル自身の体長よりもながく、地面におろすと腕だけで体を浮かすことが出来た。足を地面につけることなく、腕だけで歩くユニークな猿の芸……



挿絵(By みてみん)



 南国の腕長(うでなが)珍獣でも、地面を歩くしか芸がないのに。あろうことか海の上を……妖怪じみた「なにか」が、こちらへ歩いてくる。


「俺もラリっちまったのか……?」

 いっそ幻覚の方がいい。

 トラがごくりと生唾(なまつば)をのむ。


 ちっとも笑えない。こわい。

 


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終身刑の魔女より

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いま書いてるやつよ。





イタいぜ!



チャッカマン




マンガ版 チャッカマン・オフロード
 

 
i274608/

アニメーション制作:ちはや れいめい様



ぜひ、応援よろしくお願いします。
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