表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チャッカマン・オフロード  作者: 古川アモロ
第7章「神も仏もないシナリオを焼き捨てる海へ」
53/249

第53話 「デストロイヤ」




 場面は、大きく変わる。 

 とある海上―――


 とある海上を南下する、ミサイル駆逐(くちく)艦がある。そこにトラ、フォックス、ニニコの3人はいた。


 せわしく船員たちが行き来する甲板(かんぱん)に、ガン、ガンと長靴の音が響く。

 紙の(たば)を手に、トラがやってきた。


「オーナー……あ、じゃない。博士(はかせ)、データをまとめました」

 


「ご苦労、トラくん。君はじつに優秀だな」

 手すりにもたれる(・・・・)フォックスが振り返る。


 フォックスのスタイルはまるで……博士みたいだ。

 長かった髪をバッサリ短くし、黒縁(くろぶち)のメガネをかけている。科学者っぽい白衣がばさばさと海風にあおられ、ショート(たけ)のチューブトップ、短いスカートから、まぶしく(はだ)がのぞく。


 一方、右腕にはギプス。

 籠手(こて)が見えなくなるまで包帯を巻きつけ、首から布を()っている。アイテムを隠すための偽装(ぎそう)だろうか。


「うむ、痛てて。潮風が骨折にしみるなぁ」

 誰も聞いていないのに、ケガの具合を(うった)えるフォックス。これっぽっちも痛そうな顔をせず、右腕をさする。



 そこへニニコが、カンコンと艦橋(かんきょう)の階段を下りてきた。


「フォックス……じゃない、お姉さま。少佐が呼んでますわ」 


 白いサマードレスがひらひらと、青い海によく映える。ポニーテールに()った髪に、スカーフのリボンが可愛(かわい)い。


 ……お姉さまって誰だよ。

 フォックスのことか?



「ニニコちゃん。少佐さんとお呼びしなさい、うふふ」

「ごめんなさい、お姉さま。うふふ」


 仲のいい姉妹……を(よそお)うフォックスとニニコ。

 微笑(ほほえ)ましく、2人を見る助手……を装うトラ。



 …………こいつら一体なにしてやがる? 


 しかも軍艦の上で。

 なんでこんな「お芝居」をしているのだろうか。


 

挿絵(By みてみん)


 

「ふぅ……」

 トラがやれやれといった顔で、ボリボリと髪をかき上げる。

 彼の髪も変わってしまった。濃いオレンジがかった金髪だったはずだが、そこに黒のシマ模様が(はい)って、なんか本当の(とら)っぽくなった。バカっぽくなったとも言えるが。

 そのうえ天然パーマみたく、バッサバサのチリッチリだ。


 前髪をいじりながら、トラがぶつぶつと文句をこぼす。どうもシーカに燃やされてから、髪色も髪質もすこし変わってしまったらしい。


「燃えたから毛質が変わるなんてこと、あんのかなあ。でも現にこんな……まいったな」

 ブツブツ。

 あいかわらず独り言が多いトラ。


 そのかわり、顔のヤケドはすっかり完治した。ちょっと(あと)が残っている程度である。 



 そこに―――


「やあ、ここにいたのかね。博士」


 真っ白な軍服を着た人物が現れた。

 50代くらいの、かなり高官と思われる、背の高い軍人。将校のようだ。


 軍人の登場に、ニニコが気づく。

「あ、お姉さま。少佐さんが来られましたわ」



挿絵(By みてみん)

 


「すまないね、ニニコちゃん。ついでがあったので降りてきてしまったよ。いやあ、今日はいい天気だね」

 ほほえむ軍人。

フォックスの前まで歩み寄ると……ニヤニヤと笑みを浮かべた。

「ちょっといいかな、バーベキュー(・・・・・・)ファイア博士(・・・・・・)


 完全にフォックスをあざ笑うような目。

 ほかの誰にも聞こえないような小声で、あろうことかバーベキューファイアの名で彼女を呼んだ。



「ええ、よろしくてよ。それにしてもご出世なさいましたね、レインショット中尉(ちゅうい)

 フォックスの表情は……笑顔。

 とてつもなく嫌悪感に満ちあふれた(・・・・・・・・・・)笑顔。おそろしく冷たく、とても小さな声で、彼の名を呼んだ。



 レインショット――――――中尉(・・)

 少佐じゃなくて?



「博士、ついてきてくれ。私の部屋で話そう」

 

「ええ。じゃあトラくん、ニニコちゃん。行儀(ぎょうぎ)よくしてるのよ?」

 2人に、にっこりと笑いかけるフォックス。

 

 歩き出した軍人。

 ジョンソンなのか、レインショットなのか……とにかく彼のあとについて、フォックスも艦内へ向かった。


 甲板に残されたトラとニニコ。

 これは……なにがどうなっているのか?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


終身刑の魔女より

 ↑

いま書いてるやつよ。





イタいぜ!



チャッカマン




マンガ版 チャッカマン・オフロード
 

 
i274608/

アニメーション制作:ちはや れいめい様



ぜひ、応援よろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ