表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チャッカマン・オフロード  作者: 古川アモロ
第7章「神も仏もないシナリオを焼き捨てる海へ」
52/249

第52話 「オゥ マイ フリーキング ゴッド」




 槍! 

 槍の雨!!

 胸甲 “ ()(もり) ” が、槍を何十本も伸ばす!



挿絵(By みてみん)

 


 コートが八つ裂き状に千切(ちぎ)れ飛ぶ。そして、隠れていた咲き銛の姿が(あら)わになった。

 前面から背面から、トゲが四方八方めちゃくちゃに伸びる。ルディの周囲にある、ありとあらゆる物に、槍が突き刺さった。


 無事なのは祭壇(さいだん)だけ……シーカが腰かける長椅子も、機関銃で撃たれたかのように穴だらけにされた。


 シーカは?



 ガキン……!!


「お、お、お……」

 

 無事だ。

 顔面に向かって伸びてきた槍を、朽ち灯の(てのひら)を広げて、ガキン! と防いだ。


「ギリ、ギリ、ギリ……」

 歯を(きし)り、ガイコツ面を(にら)む。

 こうなったら、シーカは怖い。

「こ、こ、こ……」

 朽ち灯の掌が、ボゥと光る。臨戦態勢(りんせんたいせい)―――



 しかし、ルディの様子がおかしい。

「お、お、お、いまこの少佐(しょうさ)を、この少佐の名を……いや、中尉(ちゅうい)の名を……」


 シーカの形相などまったく気にせず……いや、気づいていない。

 ガクガクと全身を震わせている。


 少佐―――……中尉?


「お、お、お、おおお……い、いま、フォックスは、な……なんと言った……? この軍人(・・・・)を、なんと呼んだのだ……? 穢卑面(エヒメ)……」

 


『はじめはジョンソン少佐と言った。次に、レインショット中尉と言ったな。この男が、お前の探していたレインショットか? おい……おいルディ、大丈夫か?』


「あ、ああ……大丈夫だ……」


 大丈夫だと答えているが、ルディの様子は尋常(じんじょう)ではない。ぶるぶると手足が痙攣(けいれん)しているではないか。



※ ※



 がしゃン、とシーカが構えを()いた。


「あ……お?」


(どうやら、槍はもう飛んでこないみたいだな)

(フォックスがなにか言ったらしいな……って、このガイコツ男、まだ震えてるぞ。)

(れいんしょっと……? 何のこっちゃ)

(少佐? 中尉? どっちなんだ)


 しばらく怪訝(けげん)な顔でルディを(にら)んでいたが、もう危害はないと見たのか、シーカはまた無表情に戻った。



  と――――――



「シーカくん!!」


バッ!!

 突然、ルディが振り向いた。ふたたびアップで(せま)ってくるドクロ仮面。



「う、おっ!」

 ビビるシーカ。


「取り乱してすまない、シーカ君。申し訳ないのだが、私たち(・・)は出かける」

「え……ど、ど、どこへ?」


「空港だ。いますぐ航空券を予約せねば……君はここで、私が帰るのを待っていてくれたまえ」

「あえ、おえ?」


「トラ君たちは、私が連れてこよう。ここは好きに使ってかまわない」

「で、で、で……」


「それから、若い修道女(シスター)たちが君にキャイキャイ言ってたようだが、(みょう)なちょっかいを出さないように。絶対に出さないように。わかったね? では行ってくる」

「ほ、ほ、ほ……」


「おっと言い忘れた。祭壇(さいだん)には触らないこと。では行ってくる」

「ね、ね、ね……」


「ああ、それから……修道女にちょっかいを出さないこと。いいね。では行ってくる」

「け、け、け……」



 まったく会話になっていない。

 何度も修道女のことで念を押して、ルディは背を向けた。



「ほ、ほんとに、行く、行くの、か? お、お、お……」


 引きとめるシーカに一瞥(いちべつ)もくれない。

 ルディは、すでに出かける気満々。


 煙羅煙羅(えんらえんら)も怒る。

『ちょっと待て、貴様どこに行くつもりだ! おい、()(もり)! どこに行く気だ!』


 ()(もり)の回答。

『申し訳ありません、煙羅煙羅。ルディ神父の人生に関わることなのです。レインショットを殺してきます。足枷、焼き籠手、真っ白闇は、必ず連れてきましょう。しばし、さらば……』



『待て、レインショットとはなんだ!? おい!』


 煙羅煙羅(えんらえんら)の叫びにも全く反応しない。

 かつ、かつかつ……バタン!

 (いきお)いよくドアを開けて、ルディ神父は出て行ってしまった。


 

 シーカは?

 置き去り―――


 ボッロボロの礼拝堂に、蝋燭(ろうそく)の明かりが揺れる。

 わけもわからず、取り残されるシーカ。

 本当になにも教えてくれないまま、ルディは行っちまった。



「ちょ、ちょ、ちょ……あ、え、えん、煙羅、え……」

 困った様子で、煙羅煙羅に助けを求める。


『ふぅむ』

 煙羅煙羅はしばらく考えこみ……

『まあ、ヤツらに任せようか』


 安易な結論を出した。



※ ※



 真っ暗な廊下を歩くルディ。

 かつかつと早歩きをしながら、息を(あら)げている。


「シスター・レオ! いないのかね!? 車を出してくれたまえ、空港に向かう!」

「シスター・ケイト! ケヴィン議員に連絡をとってくれ、ケイト!」

 大声をあげる。


「シスター・レオ! シスター・ケイト! どこにいるのですか!?」



 廊下の奥から、「はーい神父様」と、若い女が返事をする声が聞こえた。ぱたぱたと、スリッパの音が近づいてくる。



挿絵(By みてみん)



 …

 ……

 …………


『ルディ神父、ようやく見つけましたね……神よ、感謝いたします……』

 咲き銛の声が響く。

 

「そうだな、咲き銛。殺してやろう。殺してやろう。咲き銛。殺してやろう」

 およそ、神父とは思えないセリフを()りかえすルディ。


「神よ……感謝いたします。ようやく会えるな、 “ レインショット ” ……会ったこともないお前(・・・・・・・・・・)を、なんど夢に見たことか……」

「おぼえたぞ、貴様の顔……殺してやる……」

穢卑面(エヒメ)よ。このままヤツを捕捉(ほそく)してくれ。()がすなよ、絶対に逃がすなよ……」


   

『いいともルディ。フン、お前がこんなに笑う(・・)のは初めて見たな』



挿絵(By みてみん)



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 同じころ、先ほどの礼拝堂では。


 煙羅煙羅(えんらえんら)がパニックになっていた。

 おそろしい事態。

 死ぬよりも恐ろしいトラブルが煙羅煙羅を襲う。



  パキ……

  パキパキン!!


『あ……あ……』


 悲鳴。


  パキン!!

  パキン!

  パキ……!


『わ、我の、体が……』


 煙羅煙羅の頑強(がんきょう)装甲(そうこう)に、スキマが―――パキパキ、パキ!!



「ままま、かかか、こっこ、……!!」


 シーカもパニックになっていた。

 煙羅煙羅がなんかおかしい! 

 必死に訴え……られていないが、とにかく必死にうろたえる。


「ル、ル、ル、ル、ルディ~!」

 

 神父を探すため、大さわぎしながら礼拝堂を飛び出したシーカ。その左肩では煙羅煙羅が……恐ろしい姿に変わりつつあった。

 恐ろしい姿に。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


終身刑の魔女より

 ↑

いま書いてるやつよ。





イタいぜ!



チャッカマン




マンガ版 チャッカマン・オフロード
 

 
i274608/

アニメーション制作:ちはや れいめい様



ぜひ、応援よろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ