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チャッカマン・オフロード  作者: 古川アモロ
第5章「見る影もないラボを焼き捨てる涙へ」
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第35話 「ソゥ ベリー ベッド」





挿絵(By みてみん)



「ぎゃあ! もう来たのかよ!」

 悲鳴をあげるトラ。

 唐突(とうとつ)すぎる!!


 しかし驚いたのは一瞬のこと、すぐさま攻撃態勢に入った。

 うおお! とベッドを頭上に持ち上げる。


「死ねゴラ!」

 ぶんっ!

 渾身(こんしん)の力で、シーカめがけてベッドを振り下ろした!!


 だが……

     


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)



 バシン!


「痛てッ! うわっ……」

 ベッドを(かつ)ぐトラの右手を、シーカがハイキックで蹴り(はら)う。(ささ)えを失ったベッドが、トラの頭頂部に倒れこんできた。

 

 バ―――ン!!


「ほげ――――――!!」


 ズボォ―――ン!

 ベッドを、下から上へ貫通(かんつう)するトラの石頭(イシあたま)。首だけがマットレスのど真ん中(・・・・)をつき破った。

 う、動けない。 

 頭が抜けない!

「ちょっとタイム……タイム!」



「あ・あ・あ……」

 ブワァアアアアアアアアア!

 すかさず、シーカが朽ち灯をくりだす。


「タイムって……ヒィ!」

 真っ赤に光る(てのひら)

 マットレスをばらばらと砕きながら、トラの顔面に向かってくる!! 


   死ぬ!


   ガキン!


 死んだ!

 いや、死んでいない。

 顔のわずか数センチ手前で、()()が動きを止めた。


 ぐいぐいと左手を突き出そうとするシーカ。

 なのに、腕が前に進まない。


「な、な、なに……」 

 がっちりと左手を固定される感触……なにかに引っかかっていることに気づく。



挿絵(By みてみん)



「うひ……」

 トラの顔中に汗が()き出る。

 間一髪(かんいっぱつ)

 ベッドのスプリングを束ねて、バネの(たて)を作った。朽ち灯の角ばった部位が引っかかっている。

 た、助かった……


「ぎぃぃいい! は、離れろ……」

 安心している場合じゃない、パワー全開で押し戻す。

 

   瞬間!!

   ボッ!


「ぶわ!!!」



挿絵(By みてみん)



 朽ち灯の掌から、炎が放たれた。

 超至近距離からの火炎放射! 

 顔が燃える。


「あじゃじゃじゃじゃじゃ! ヒーッ!」

 炎に包まれるマットレス。

 バタン!

 ガシャン!

 

 ズボッ……

 ゴロゴロとベッドごと転げまわり、なんとか首を引き抜いた。


「熱っちぃ、ひー、ひー!」

 両腕でめちゃくちゃに顔をこすり、なんとか火を消した。顔面も服もボロボロ、()()げ……髪の毛がチリチリパーマになる。


 焼けた髪と、焼けた化学繊維の猛烈な(にお)い……それでも、その程度で済んでいる。

 まさか手加減してくれたのか?

 いや、まさか。



『ふむ……いい焼き加減だ。だが、まだまだ炎が弱いな』


 暗い暗い通路に、低い声がとどろく。


『どうもしっくりいかん。 “ ()籠手(ごて) ” ほどの火力が出ん。奴ならケシ(ずみ)に出来たのだろうが……』


 ぶつぶつと、何事かくり返している朽ち灯。

 それをボンヤリと(なが)めるシーカ。


 (スキ)だらけだ!


「お返しじゃあああああああああ!!」

 ドガァ!

 まだ火がくすぶるベッドを、シーカに向けて蹴り飛ばした。


 直撃―――しない。

 

   ガコン!

   ガラガラガラ……


 ひょいと(かわ)され、はるか後方でベッドがバラバラになった。

 


「バカ野郎、避けんなボケ!」

 ワーワー! 

 ダン、ダン、ズシンと地団太(じだんだ)を踏む。



『バカは貴様だ……ひとつ覚えというやつだな……』

 軽い口調で、(あざけ)る朽ち灯。


 しかし―――


「お前には言うとらんわ! でしゃばんな!」


『……な、に?』


 絶叫するトラ。

「で! しゃ! ば! ん! な! っつたんだ。手袋の出る(まく)じゃねえぞボケ!」


 トラはシーカをにらみ続けている。

 朽ち灯などまったく見ていない。眼中に無し――――――



『お、おのれ小僧……よう言うたわ。よほど死にたいと……』


「ふう――――――、……あのさぁ」

 ボリボリと髪をかき上げ、ようやっとトラは朽ち灯を(にら)む。

「なんで俺が、手袋と会話せにゃならねぇんだ?」



『な、ん』


 朽ち灯の声がつまる。

 トラがシーカを指さし、吐き捨てた。


「おい左手野郎。そいつのスイッチ切っとけよ。廃墟じゃ当然のエチケットだろ?」

『に、人間、人間ご、ごと、きが……わ、我に、な……な……な……な……』


「ダアアア! うっとうしい! シーカかてめえは!」

『な…………! な……』


 朽ち灯が言葉を震わせる。

 なにがそんなにショックだったのだろうか。

 自分を人間に例えられたこと、だろうか。


 一方、ひたすら無表情だったシーカは、目を見開いた。トラにも、彼の驚愕(きょうがく)が見てとれる。

 だが数秒のち……


「フ・ふ・ふ・フ・フ」

 笑っている、のか?

 声を(しぼ)り出すように、肩を上下させてシーカが笑っている。



「なに笑ってやがる……笑ってんだよな? それ」


「あ・あ・あは・は・あ」

 引きつるように口元をゆがめ、笑っている。

「あ・あ・あは、あ……あ!」



『なにがおかしい、シーカ……』

    

 グルンッ。


 ガヂャン!

 朽ち灯が高く持ち上がり、シーカの頭をがっしりと(つか)んだ。



挿絵(By みてみん)



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終身刑の魔女より

 ↑

いま書いてるやつよ。





イタいぜ!



チャッカマン




マンガ版 チャッカマン・オフロード
 

 
i274608/

アニメーション制作:ちはや れいめい様



ぜひ、応援よろしくお願いします。
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