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48 誓いの儀式

 魔王様、挙式。

 今日。

 ナウ。


「マジで今すぐやるの!?」


 急いだ方がいいのはわかるけど、急ぎすぎではありませんか!?


「仕方ないじゃない。小細工してくる勢力がいる以上、ソイツらを黙らせるには、横やり入れる暇を与えないほどソッコーで終わらせるに限るの!! 早ければ早いほどいいの!」

「それはそうかもしれないけど……!」


 ゼダンさんとアスタレスさんの魔王夫婦、状況の目まぐるしさに立ち尽くすしかなくなっているではないか。


「本当なら結婚なんて当人たちの同意があればそれでいいんだけど、この人たちの場合はそうもいかないわ!」

「『結婚した』という事実を万人に、ぐうの音も出ないほど盤石に認めさせないといけないからな! そこまでしてこそ悪巧みする者を黙らせられるというものだ!!」


 ヴィールまでノリノリになって。


 何がそこまで彼女たちを燃え上がらせるの? 政争が好きなの?

 ……あ、それか他人の恋路を無責任に応援できる立場が楽しいのか?


「はい! プラティさま質問です!!」

「よろしいベレナちゃん! 言え!!」


 テンション上がってる子がまだいた。

 本当女の子は恋の話略して恋バナが大好きだ。


「具体的に、皆が認める結婚のやり方って何でしょう! 何が必要なのでしょうか!?」

「いい質問ね! では教えてあげる! 必要なものは……!!」


 溜める。



「必要なのは……!」


 まだ溜める。


「立会人よ!!」

「「「立会人!?」」」


 大事なことなので復唱する。

 主に盛り上がっているのはプラティ、ヴィール、バティ、ベレナの四人。

 当事者である魔王さんとアスタレスさんは事態について行けず呆然としている。


「立会人は、その儀式がたしかに行われたことを証明する生き証人よ! 立会人の社会的地位が高ければ高いほど、結婚式の信頼度も高まるわ!!」

「下賤の輩がごちゃごちゃ口出しできないほどにな!!」


 それをもって、魔王さんとアスタレスさんの結婚の既成事実化を図ろうと?


「なるほど! じゃあここは、第一級の立会人の宝庫ですね!」

「ドラゴンのヴィール様に、人魚国の姫君プラティ様! そして何より聖者様もいらっしゃいます!」


 そんなバティとベレナの喝采に、プラティはチ、チ、チ……と指を振った。

 何故?


「甘いわね。もっとぐうの音も出ないような、最強の立会人が必要だわ!」

「最強の!?」

「皆様よりさらに上がいらっしゃるんですか!?」


 話がどんどん大きく膨らんでいる。

 プラティは、一体誰を立会人にするつもりなんだ?


              *    *    *


『……ワシか』


 ノーライフキングの先生が、用件を聞いて脱力した。

 突然呼び出されて何事かと身構えた末に「結婚式に立ち会ってあげて」だから、そうなってしまうだろう。


「のののののののの、ノーライフキング……!?」


 その横で魔王さんは、先生の姿に圧倒されていた。

 初対面だとそうなるよね。


「聖者殿がドラゴンだけでなく、ノーライフキングまで従えているという話は伺っていたが、実際目にしてみると実感が違うというか……!」


 従えてないです。

 ご近所の仲良しさんです。


「でもプラティ。先生をわざわざ名指しで立ち合わせるって。そこまで重要なの?」


 こういう言い方だと先生に失礼なような気もするが、今回まったく関わりがなかったこの人を、唐突に呼びつけた意味は……!?


「重要よ。だって先生は生前、どこか大きな教会の大司教だったんでしょう?」

「ああ」

「結婚式に聖職者は絶対必要じゃない! 愛を誓い合う二人を、神に認めてもらうのよ! これを経ずして何が結婚式だというの!?」


 言われてみればそうである。


 その観点で言うならば、先生はアンデッド化して聖職者歴千年以上。

 ここまで権威のある神の代理人はいない!


 ここはいっちょ、先生立会いの下、本格的な誓いの儀式を!?


『あ、あのー、盛り上がってるところ悪いんじゃが……!』


 先生が言いづらそうに言った。


『結婚式の執り行うのはいいんじゃが、新郎新婦はそこの二人じゃろ? 魔族じゃろ?』


 と魔王さんアスタレスさんを指し示す。


『ワシ、アンデッド化する前は人族だったんだけど……!』

「え?」

『崇める神も、人族を創造せし天神ゼウスなのじゃが。魔族だとアレじゃろう? 信仰しているのは冥神ハデスじゃろう?』

「はい……!」


 根本的なところで食い違いが!

 ってことはあれか? 魔王さんたちの結婚式を先生に執り行ってもらうのは、教会にお坊さん呼ぶようなものだってことか?


『まあ、何とかしてみるか』


 先生は袖を振るった。


「何とかなるんですか!?」

『千年以上生きておると、色んなことを覚えますゆえな。宗旨が違うと言っても、冥神ハデスに通じる祈りの作法は収めております』


 そう言って先生は、何やら手で印を結び、ブツブツと唱え始めた。


『……さきわえたまえ、みのらせたまえ、汝が地底に連れ去りし、女神の恵みを分け与えたまえ』


 ……なんか空気の重さがあからさまに変わってきた。

 真昼なのに薄暗くなってきたし。

 ただ事でない雰囲気になってきたんですが!?


『ここなるは神域と成し、思うままに清めたまえ……!』


 そして先生の祈りが通じるかのように、神が現れた。


 魔族の神。

 冥神ハデスが。

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